野伏ヶ岳 〜気象遭難、今そこにある危機、大いなる教訓山行〜


- GPS
- --:--
- 距離
- 27.1km
- 登り
- 1,875m
- 下り
- 1,878m
コースタイム
06:05 大進橋 左岸駐車場
07:15 和田山牧場跡入口
08:50 大進橋 左岸駐車場
10:00 和田山牧場跡入口
10:30 尾根へ急斜面登始
10:50 ダイレクト尾根に取付き
11:00 ダイレクト尾根1370m付近 昼食 11:20
12:25 野伏ヶ岳山頂 13:30
14:15 和田山牧場入口
14:45 大進橋 左岸駐車場
【登り時間:03:15(小休憩含む)】
【昼食・大休憩時間:01:25 】
【下り時間:01:15(小休憩含む)】
【総行動時間:08:40】
天候 | 【 嶺北(福井)の天気】 天 気:晴れ 最高気温:17.3℃ 最低気温:1.7℃ 露点温度:4.4℃ 湿 度:43% 風 向:南 風 速:3m/s 現地気圧:1019.9hPa 海面気圧:1022hPa 降 水 量:0.0mm 積 雪 深:0cm 日 の 出:6:04 日の入り:18:04 【見地気象】 低気圧が去り、移動性の高気圧に覆われた良い天気 日差しが強くて日焼け止めが必要 観天望気 明日の雨前で正午より霞模様 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
住処:04:15〜東海北陸自動車道高鷲IC〜白山中居神社:05:40 【アプローチ】 白山仲居神社駐車地まで凍結なし。 ウイングヒルズ白鳥リゾート近くの車道に少し積雪箇所あったが 帰りにはもうありませんでした 【駐車場】 ・白山中居神社横に駐車広場がありここに車を止めます。 ・石徹白川大進橋の右岸・左岸にも数台止めれます。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【登山ポスト】 確認できず 【ト イ レ】 白山中居神社横の駐車広場にトイレあり 【登 山 道:ダイレクト尾根ピストンルート】 石徹白川に架かる大進橋を渡りしばらく林道をを進む。林道を忠実に辿れば 和田牧場跡地にでますが、何度かショートカットできます。途中から林道を 離れ九十九折の林道から途中から林道を離れ、スギ林の中のルートをとって 和田牧場跡に向かう。大きくショートカットし石徹白川側のち尾根筋を登り 和田牧場跡にあがると一面に広がる雪原に東尾根とダイレクト尾根が牧場に 向かって伸ばし、長い頂上の南面はカール状となって三角錐の野伏ヶ岳に迫 力がある。雪が眩しいばかりに薙刀山から貫禄の野伏ヶ岳が迫りだしている って展望は晴れていればの話でした。 進行方向にダイレクト尾根が見える。湿地帯を右に丘を左手に進み、ダイ レクト尾根の下部に取り付き、そのまま急登を直登してダイレクト尾根に上 がる。ここからきびい尾根の登りが始まる。潅木の中を尾根伝いに高度を上 げる潅木の数も少なくなる。二段の大きな傾斜を登り北東尾根との合流しし ばらく歩くと野伏ヶ岳山頂です。 好天であればルートロスの危険性は低いルートなのですが、視界不良時は しっかりしたルーファイが必要です。野伏ヶ岳山頂からの下山時、そのまま 北東尾根へ下って行く危険性が高いです。 【雪質状況】 林道の初期部に2箇所地面の見えている場所があります。どんどん地面が現わ れ始めると思います。林道行軍時から締雪で壺足で踏み抜きなし。ダイレクト 尾根取り付きへの急登からアイゼン着用 下山時はダイレクト尾根中腹より壺足。程よい締り雪で表面の融解が進むも 程よい締り雪はそのままなので足制動でスイスイ下山でした 【出会った登山者】 ソロの男性スキーヤーさん:1組 ソロの妙齢女性者さん :1組 男女のペア登山者さん :1組 ソロの男性遭難登山者さん 1組 【野伏ヶ岳について】 野伏ヶ岳(のぶせがたけ)は、白山の南側に位置し岐阜県郡上市白鳥町と福井県 大野市の境にある、標高1,674 mの山。両白山地の山で、日本三百名山及びぎふ 百山に選定されている。北側には、両白山地の山々が連なり南側に能郷白山など の越美山地の山々が連なる。 両白山地の一ノ峰と銚子ヶ峰の間から、願教寺山(1,691 m)→ヨモ太郎山→日 岸山→薙刀山(1,647 m)→野伏ヶ岳→小白山へと南に延びる細長い尾根上にある その尾根の南端は九頭竜川で遮られている。南側の小白山との間には、橋立峠( 三ノ又谷と小白山谷との分水嶺)の鞍部がある。野伏ヶ岳の東側には、石徹白川が あり、その支流の推高谷と小白山谷の源流の山である。 豪雪地帯であり一般的な登山道がなく、春先の残雪期に登られる山である岐阜 県郡上市上在所にある白山中居神社から、石徹白川の大進橋を西に渡ると、野伏 ヶ岳方面への林道がある。この林道終点の標高1,050 m付近までは杉の植林地と なっている。林道終点の先は和田ノ小池や池塘がある以前は和田山牧場だった平坦な場所がある。 春先にこの雪面の上にテントを張って、周辺の山へ登るスキーヤーやハイカー がいる。その上部の山腹には、ブナ林が多い。山頂付近は、クマザサに覆われて いる。 牧場跡から山頂から南南東に伸びる「ダイレクト尾根」と呼ばれる稜線を利用 するルートが一般的である山頂には、三等三角点が設置。山頂からは、北に別山 とその左奥に白山、東には大日ヶ岳と稜線越しに北アルプスと御嶽山、南に能郷 白山や荒島岳、西には経ヶ岳と赤兎山などを望むことができる かつては野伏ヶ岳と小白山(おじろやま、標高1,609 m)との鞍部の橋立峠が岐 阜県郡上市白鳥町と福井県大野市打波との往路に利用されていた。 【日帰り温泉】 石徹白峠山温泉:満天の湯 住所:岐阜県郡上市白鳥町石徹白峠山 (ウイングヒルズ白鳥リゾート敷地内) 電話: 0575-86-3487 料金:800円(JAFカード提示で10%off) (アルペンカードで100円引き) 営業:10時〜21時(平日10時〜20時)・年中無休 http://winghills.net/bath/ 奥長良の名湯・秘湯 湯の平温泉 〒501-5303 岐阜県郡上市高鷲町大鷲1792番地 定休日:毎週木曜日(祝祭日の場合は営業) ※設備点検等の臨時休業あり 営業時間:午前10時〜午後9時30分(最終受付午後9時)TEL/0575-72-6455 露天風呂/男女各1ヶ所 内風呂大浴場/男女各1ヶ所 ジャグジー/男女各1ヶ所 休息広間/2ヶ所 特産品・お土産コーナー マッサージチェアなど(有料) ロッカー/コイン式脱衣ロッカー(返却式) 入泉料 大人 (12歳以上) 小人 (6歳以上12歳未満) 500円 250円 http://www.yunohiraonsen.jp/index.html 今回は上記の湯の平温泉へ行ってきました スキー帰りのお客さんで若者がいっぱい、小さな温泉なので ちょっと洗い場待ちがありました。 【その他情報】 ●郡上観光どっと混む|郡上市観光連盟公式サイト http://www.gujokankou.com/ ●白鳥観光協会 http://shirotori.gujo.to/ ●石徹白公式HP 『石徹白人』 http://www.itoshiro.net/ ●石徹白ニュース http://itoshironews.blog62.fc2.com/ ●石徹白の山河マップ http://www.itoshiro.net/nature/index.html |
写真
感想
愛する人を失った家族の悲しみが、どれだけ深いか。
それは今まで嫌になるほど見てきた。
自分を待っている人のことを思えば、
絶対に山では事故を起こせないはずである。
『レスキュー最前線 長野警察山岳遭難救助隊』
「遭難したんです。雪洞で過ごしたんです。」
衝撃の言葉で幕を開けた日でした
私は17日も休みであったので西穂高岳独標か唐松岳なんて考えていたのですが
16日の悪天候での野伏ヶ岳を終え、晴天の野伏ヶ岳に会いたくて忘れ物を取りに
帰る気持ちで3時に起きて石徹白に向かいました。
登山口に向かう石徹白区内から、すでに野伏ヶ岳は美し望めていたました。良
き日である事に感謝。白山中居神社に着くと昨日と打って変って駐車場には一台
も駐車している車はなし。私は昨日と同じ大進橋手前、石徹白川左岸の駐車スペ
ースに駐車し準備し06:05に登山開始。昨日聞かれなかった小鳥のさえずりを耳
にしながら林道を進みました。雪質は昨日の降雨と朝の低温によって壺足で十分
な締り雪。日陰部分によっては、ちょっと表面が滑る箇所もあるのでアイゼンが
あっても良いかとも思いましたが、雪が切れ林道地面が見えている箇所が2か所
あるので壺足。結局、ダイレクト尾根取り付きまで壺足でした。
和田山牧場跡地について、光り輝く野伏ヶ岳。昨日からは想像もできない光景
に自然と高揚する自分。昨日の疲労も感じず時間的にもまだ余裕があるので野伏
ヶ岳山頂に登って雪庇状況を見て小白山か薙刀山へ向かおうと思いながらトレー
あとを行かずノントレースの雪平原を歩き始めると、和田山側の樹林帯近くで他
の登山者さん1名が座って休んで羊羹を食べておられるのが目に入り、私から挨
拶の声を掛けました。神社駐車場や石徹白川両岸に私より先に駐車していた車が
無かったので一番乗りは自分だと思っていた私は、きっとテン泊の方なのではと
僕:「おはようございます。」
T:「・・・・・・・・・・・・・おはようございます。」
僕:「いい天気になりましたね。テン泊だったんですか?」
T:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
返って来ない返事。気に障ることを言ってしまったのかと、思う雰囲気が漂う。
下に置いてあるソロの男性登山者のザックは30Ⅼ程度。積雪期のテン泊ではない
様子。そしてなにより異なものを感じる。間があって彼から発せられた言葉
「遭難したんです。雪洞で過ごしたんです。」
かなり私にとっては衝撃的な言葉でした。彼(以後T氏)をよく見れば、かなり
顔が青白く、挨拶の返事に遅れがあるのは低体温によって滑舌し難いのか、遭難
という体験後の精神的なものによる反応遅延なのか、判断が難しいところですが
最初に感じた『異なもの』の雰囲気の正体は判明したわけです。
僕:「大丈夫ですか!?。温かいお湯あります!!飲みますか?
昨日からビバークですか!?」
T:「はい。大丈夫です。お湯は要らないです。昨日から。」
返事の反応遅延あるが滑舌はしっかりしており聞き取りやすい、淡々として見え
るが今一歩、集中力に欠ける印象
僕:「実は昨日も僕は野伏ヶ岳に登っていて、昨日は天気悪かったですもんね。
寒かったでしょ。怪我は? 歩けますか?。何か痛い所は?」
T:「ありがとうございます。はい大丈夫です。歩けます。もう歩いて戻ります」
そう言ってT氏はピッケルを持って立たれました。
僕:「一人で大丈夫ですか?」
T:「大丈夫です。」
僕:「お気をつけて」
T:「はい。」
そうして、林道に向けて歩き出すT氏。後から見た歩き姿にフラツキは認めない
暫くT氏が下って行くのを見送り、自分も野伏ヶ岳に向かって歩みを進めた時に
自ら『遭難し雪洞で過ごした』と言われる登山者に初めて会い少しならずも動揺
のある自分。しっくりこない。引っかかる気持ち。動揺す頭をでいろいろ考える
T氏が今、繋いだ命もこの下山の一時間の林道歩きで転倒したり道に迷ったり二
次遭難に遭う可能性は?集中力に欠ける印象に、何よりも弱々しさを感じる状態
のT氏を思うと、お節介かもしれないが『登山口まで一緒に降りよう』と私も林
道へ引き返しました。T氏に追いついて
僕:「お節介かもしれませんが、心配なんです。
登山口まで一緒に付き添っていいですか?」
T:「はい。お願いします。」
拒否されるかと思いましたが承諾下さったので一緒に下ることにしました
一緒に黙々と下りました。T氏が遭難し同日・同山に私も居たので気象条件は
わかるのですが私は内心、T氏に聞きたいことがいっぱい浮かんで来ていました
どこで迷ったのか? どの時点でビバークを決めたのか? 救助の連絡は?
昨日沢山のテン泊者が居たので多くの雪洞もあったどの雪洞で野宿したのか?
昨日どのような軌跡を辿ったのか? 野伏ヶ岳は何度も登っているのか?
初めて登ったのか? 装備の内容は? 雪山経験歴は? 登山経験歴は?
装備の中で何か持参していれば良かったと思うItemはあるか?
逆に装備していて非常に助かったItemはあるか?
ビバーク中どんな思いだったのか?
本当に一杯聞きたいことが次から次に浮かんで来ていたのですが、今だ表情が
硬く意気消沈・意気阻喪なT氏の気持ちを慮って黙々と淡々と歩きました
その中でも、少しお話しした内容は下記の通りです。(会話した内容順に)
僕:「昨日の低気圧は思っていた以上に早く石徹白に来ちゃいましたね。でも
今日は移動性の高気圧に覆われて天気良くなって良かったですよね」
T:「はい。」
本当にいい天気だったので
僕:「○○登山靴ですね。昨日は雨も酷かったし登山靴の中濡れてませんか?」
T:「少し濡れてるかな 今は、冷たくは無いです」
アイゼン装着の重足を投げ出すような大股歩きからしてT氏に疲労があることが
感じられました。
僕:「携帯持ってます?家族とか 心配さえている方とかに連絡されました?」
T:「携帯持ってます。昨日は通じなくて」
野伏ヶ岳付近の携帯電話電波状況は私の持っているDoCoMoにおいてはダイレ
クト尾根や山頂付近では繋がります。私は野伏ヶ岳に6度登っているのですが、
何度か山頂部とダイレクト尾根にいる時に携帯が鳴ったことがあるので繋が
ります。しかし、樹林帯や和田山牧場跡地付近では携帯を確認したことが無
いので繋がるかは分かりませんが、T氏の話では繋がらないとのこと。もし
繋がっていたら事態は変わっていたのだろうか?
僕:「昨日、僕たちのパーティーは6時半位に登り始めたんです。僕たちは
6時過ぎには神社に着いたんですが、駐車場がいっぱいで、なんとか
石徹白川の左岸に駐車できました。どこに駐車されたんですか?
今日の朝は何処にも車止まってなかったので、もしかして他の交通
機関で?」
T:「8時くらいに自分の車できました。神社の上の方に止めました。
8時半くらいから歩き始めたと思います」
自分のPartyより2時間遅れのSTART。もしすれ違うとしたら下山時となるが、
私はT氏の姿恰好・ウエアに覚えが無かった。
1時間ほど一緒に歩きましたが会話したのは上記程度です。
林道の地面が見えている箇所でT氏はアイゼンを外し壺足になると、やはり緩やか
な林道の下りなのですが踏ん張りが効かず、足を滑らせる場面もありましたが無事
に人の生活圏である白山中居神社手前の橋まで戻ってくることが出来ました。人の
生活圏まで無事に戻って来れればあとはT氏単独で行動し帰ることが出来るだろう
と思い、白山中居神社手前の橋で別れることにしました。
僕:「もう、ここまで来れば大丈夫ですね。家族の方に電話してあげてください。
きっと心配されています。昨日の雨で携帯が濡れて使えないかもしれないし
電源は?もし使えないようでしたら僕の携帯で電話してください」
T:「はい。一人で大丈夫です(ザックの左肩装着ケースから携帯を出して)
大丈夫だ携帯電源あります。」
僕:「ヤマレコって知ってますか?ネット上で山の記録を共有するサイトで」
T:「知ってます。山のサイトで」
僕:「本当ですか? 僕はそこで自分の山行記録をUPしてるんですが、
今日あった体験をUPしていいですか?」
T「はい。かまいません。」
今回の山行記録の感想記載の内容についてはT氏の同意を得て記載しています
遭難直後で、遭難したことによる自責の念を抱いているであろうT氏に対して
無事に戻って来ることが出来て良かったと思う。そのことを強く伝えたくて
僕:「あの悪天候の中、大変だったと思いますけど
本当に無事で良かったですね。無事に家に帰って下さい」
T:「はい。ありがとうございます」
そしてT氏と握手しました。そのT氏の手が暖かであったことが印象的です
T氏が神社駐車場を過ぎ坂を上がっていくのを見送って私は再び野伏ヶ岳へ
私自身、遭難は『滑落遭難』『気象遭難』とに大別されると認識しています
今回のT氏の遭難は気象の変化に伴ういわゆる『気象遭難』にあたると思わ
れます。私は、今までの登山歴の中で実際に滑落した登山者を目撃したこと
はありませんが立山縦走中や、西穂高岳に登っている同日・同山に『滑落遭
難』があったことはあります。しかし、今回は同日・同山にて『気象遭難』
していた登山者があり、実際その登山者と遭ったという事実から得る教訓は
私にとってとても重く深い。
日常の生活を送っている世界と比較にならないほど、山は本来リスクファ
クターの多い危険な場所であること。登山者であるならば誰しもが耳に目に
したことのあるフレーズです。しかし十分に理解されているとは言い難い
とかく登山者は「自分はリスクを冒している」という自覚を持つことが難し
いと言われています。1)
私自身も「自分は遭難しない」「遭難するような危険な山へは行かない」
とまでのレッテル張りはしていないものの山や自然、そして気象条件の変化
に対するリスクを過小評価した認識を持っていたことは否定できません。
そんな中、17日の朝、和田山牧場跡地の灌木帯近くで遭難したT氏に遭っ
て、付き添って林道を下りている時にイメージを膨らませると実感する恐怖
と危険性。その時一瞬、T氏が自分に見えたのです。私がT氏のように誰か
に付き添われて下山する。そんな可能性はいつも登山している私の側にある
山に入っている以上、今そこにある危機は常に私の中にもある。
同じ日に同じ山頂を目指したT氏と私
T氏は遭難し、誰かが残した雪洞で寒さに凍えながらビバークしている時、
私は無事に下山し岳友と共に楽しく温泉に浸かり、美味しいものを食べな
がらミーティングを行っていた。安全登山などについて・・・・
T氏と私の立場が入れ替わっている可能性
今一度、私は自分自身問いかける「本当にリスクを感じているか?」
そして、T氏も今は温かい湯に浸かって美味しいものを食べて笑顔でいる
ことを願っています
山に関わる者にとって
怖さはとても重要なパートナーだ
怖さがあるからこそ 的確な判断が出来る
怖さに押しつぶされることなく
怖さに耳を傾けろ
ソチオリンピックフリースタイルスキー 男子スロープスタイル
イタリア マルクス・エーダー選手の言葉より
気象遭難、今そこにある危機、大いなる教訓山行
ありがとうございました
野伏ヶ岳さん
※1)引用文献:
2014年3月号『山と渓谷』どんな心理作用が遭難事故を引き起こすのか?
心のメカニズム P36
参考文献
1)ヤマケイ文庫ドキュメント気象遭難 著者:羽根田治
2)ヤマケイ文庫トムラウシ山遭難はなぜ起きたか 著者:羽根田治、飯田肇ら
山のリスクを過小評価してしまう心のメカニズム
山のリスクを回避する最上の対策は、リスクから物理的に遠ざか
ることである。しかし、山には多かれ少なかれリスクが存在し、困
ったことに山を愛する者は率先してそこへ出かけていく。つまり、
自分から好んでリスクを冒してしているわけであるが、登山者によ
ってはあまり認識がなく、どうもリスクそのものを軽んじてしまっ
ているように見える人もいる。
一般に、リスクにはボランンタリー・リスク(自発的リスク)と
インボランタリー・リスク(非自発性)がある。登山やラフティン
グ、スキューバーダイビング、ヨット、ハングライダーなどは当然
ボランタリー・リスクの範疇に入る。一方のインボランタリー・リ
スクとは、たとえば義務や仕事などで仕方なく危険な作業をするこ
とを指す。Chauncey starというリスク研究者によると、「ボランタ
リー・リスクは、インボランタリー・リスクに比べると受容範囲を
1000倍程度広げてしまう」そうだ。わかりやすく言えば、同じ山に
登る場合、職務で登る測量士などに比べると、登山者は1000分の1
程度のリスクしか感じ取っていないということになる。自分の楽し
みの為に山に登っている登山者が「自分はリスクを冒しているんだ
」という意識をあまりもっていないのは、それがボランタリー・リ
スクであるために、相対的にリスクを感じ取りにくいからで、知ら
ず知らずのうちにリスクの中に足を踏み入れていったり、無意識的
に過大なリスクを冒したりして遭難してしまうわけです。
と同時に、普段私たちが生活している日常社会が、比較的安全な
世界であることも、リスクを知覚を鈍化させる一因になっている。
「自分は安全な枠組みの中にいる」という意識は、山に行ったから
と言って突然変わるものではない。すると、本来、山にはさまざま
なリスクがあるはずなのに、それらも安全な範疇にある日常的なも
のとお考えてしまう。山でリスクを回避するには、日常とは別の世
界に身を置いていることを自覚する必要があるのだが、その認識が
もてず、気象条件変化などの重要性を過小に評価してしまう。
このように、ある程度までの異常を異常と感じず、正常な範疇内
のものとして処理する心のメカニズムを「正常バイアス」と呼ぶ
正常バイアスは、過度の緊張によって心に余計な負担をかけるのを
防ぐ一種の安全装置のようなものなのだが、山に行ったときにこの
正常バイアスが働いていると、リスクを敏感に感知する妨げとなり
それを回避するチャンスを失してしまうことになる。災害時に避難
行動を取れない人が多いのも、この正常性バイアスに支配されてい
ることによる。
「自分は遭難しない」「遭難するような危険な山には行かない」と
思っている人は、ボランタリー・リスクや正常バイアスが作用して
いるものと思ったほうがいい。それは山のリスクに対して無防備で
あることを意味しており、いつも遭難事故の当事者になっても不思
議ではない。また、山のリスクについて理解しているつもりでいる
人も、いま一度「本当にリスクを感じているか」と自分自身に問う
てみてはどうでしょうか
※1)引用文献:
2014年3月号『山と渓谷』どんな心理作用が遭難事故を引き起こすのか?
心のメカニズム P36
参考文献
1)ヤマケイ文庫ドキュメント気象遭難
著者:羽根田治
2)ヤマケイ文庫トムラウシ山遭難はなぜ起きたか
著者:羽根田治、飯田肇ら
コメント
この記録に関連する登山ルート
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こんにちは。
とても深い内容で大きく考えさせられました。
とともに,一緒に下山されたkennkenさんの行為には頭が下がります。
なかなか出来ない事かと思います。
自分もヤマレコなど見て,気軽に次はここへ行ってみよう!
自分なら大丈夫だろうなんて,軽く考えて,
実際に山に行っていたような気もします。
私も「山と渓谷」の該当記事や,
羽根田さんの一連のシリーズも読んでいますが,
やはり他人事の部分もあったと思います。
自分を見つめなおし,この先も山を歩いて行こうと思います。
とても良い内容のレコをありがとうございました。
今朝の新聞に、近くの800m級の山で遭難死亡事故の記事を読んだところでした。原因は書いてありませんでしたが、低、高山問わず山には常に危険が潜んでいることを忘れないようにしたいものです。
kennkenさん、はじめまして
下山まで見送られてご苦労様でした。
ヘリでのレスキューを遠目に見た経験はあります。
わたしは、ときおりCPで遭難動画のサイトを見ます。
教訓として幾度も見てます。
リスキーな登山・・どうしてもやりたくなる厳冬期の尾根筋などがありますね。
また、強風で撤退する方と、前に行く自分。
何をもって大丈夫と判断しているのかと、自身に問いかけるとそこは危うい経験というものなんですね・・
すでに22日(土)から夜間登山で八ヶ岳に挑みます。
リスキー・・ですね(^^;
でわでわ
常に安全を肝に銘じているつもりなんですが・・
何らかのリスクはあるのかもしれませんね。
最後まで同行し、別れ際に握手したkennkenさんの行動にジワッときました。
自分の危険は誰でも自分で守ろうとしますが、他人への気持ちは人によって異なると思いますから。
自分なら同じ行動をとれたでしょうか?
いつも簡単な山でも登山口に戻ってくるとホッとして、大なり小なり緊張してた自分を感じます。
Tさんの行動がよかったのか悪かったのかはわかりませんが(Tさん気を悪くしないでくださいね)、もちろん好んで遭難しかけたはずもありません。kennkenさんが手を差し伸べて無事に下山できた。この、素晴らしい温かい出来事に拍手したいと思います。
私もこの景色が見たかったです。
それと物凄い出会いがありましたね。
ご同行お疲れ様でした。
私も90%単独行で山に入っていることを考えると、常に危険と隣り合わせで他人事では済まされないなと考えさせられました。
お互い気をつけましょうね。
3/16、私たち3人パーティーも野伏ヶ岳にいました。
詳しくは同行のokinawa123さんの記録がヤマレコにアップされてます。
当日、悪天候ながら多くの登山者を見かけました。踏み跡を消す風と足元さえ見えないホワイトアウトには危険を感じました。山頂手前で撤退されたパーティーもありました。
ダイレクト尾根と北東尾根の接点にストックが刺してありルートの判断に助かりました。昨年もこのポイントで迷いましたが、ちょっとした判断がルートミスになる可能性があると思います。この状況でGPSは大いに役立ちました。
Tさんが無事に下山されて何よりです。
kennkenさん、貴重な記録UPありがとうございます。
こんばんは
T氏さん、無事下山できてよかったです。
ソロ山行が殆どの僕で他人事とは思えずとても興味深く読ませて戴きました。
kennkenさんの取られた行動、素晴らしいです。じ〜んと来ました。
一晩中、孤独や恐怖、寒さと戦ったT氏はかなり心細かったと思います。
そんな中で声をかけられたkennkenさんは救世主に見えたのでは?
T氏は雪洞で一夜を過ごされたとのことですがもしも自分だったら・・・と思うとゾッとしました。
どんなに安全に気配っても山は危険と隣り合わせ、自分では回避できないリスクも周りにたくさんあると思っているつもりではありますが問題は実際にそういう状態に陥った時に、どのように対処するかが生死の分かれ目だと思います。
T氏は生還されたのだから適切な行動を取られたんですね。
僕は幸い、そういう事態に巻き込まれた経験がないのですが実際にそうなったらどう行動するだろう?
低山でも視界不良や道迷いで簡単に遭難するリスクがあるし雪山の低温の問題、孤独と恐怖・・・いろいろ考えされられました。
kennkenさん、お疲れさまでした。
そして貴重なレコ、ありがとうございました。
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