広留野から青ヶ丸(またの名を兵庫鷲羽)
- GPS
- 07:20
- 距離
- 15.8km
- 登り
- 618m
- 下り
- 621m
コースタイム
天候 | 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2022年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
難路。切り開きされているが、スズタケの切断茎は飛び出していて、倒木等、多数。テープマーキングは随所にあるが、湿地や平坦部でのルートファインディングは慎重さを要する。不明瞭箇所少なからず。 |
その他周辺情報 | かじや温泉が河原地区にある。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
マーキング短冊
アイゼン
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感想
3週間前、但馬の小代区佐坊から仏ノ尾に登った。青ヶ丸まで行きたかったが、時間が押していて断念したのだった。その時は仏ノ尾も青ヶ丸もたっぷりの雪を擁しており、まだもうしばらくは雪を楽しめるかとの期待を持ったのだが、一方で春の花が開く他の山々の魅力も捨てがたく、2週間前は大和葛城山でカタクリとギフチョウのコラボを楽しみ、先週は比良の赤坂山でイワウチワ満開ハイクを楽しんだのだった。青ヶ丸は秋の紅葉期までお預けのつもりでいたが、気になってしょうがない。さらにはまだ雪が残っているという話を聞き及んで、気が付けば青ヶ丸へと向かっていたのだった。
青ヶ丸といってもそれがどのあたりにある山なのかすぐわかるのは、兵庫県の岳人の中でも相当のオタクだろう。『分県登山ガイド兵庫県の山』にも載っていない。但馬なので「宍粟50名山」にも当たらない。最近まで道がなかったから、積雪期限定という一般登山者からは縁のない存在。アクセスの悪さは天下一品。だが、一部の加藤文太郎フリークには有名な山なのである。孤高の登山家として名高い加藤文太郎は、職場のある神戸と実家の浜坂との間を歩いて行き来していたという。その時に好んでこの山域を歩いていたことだろう。加藤文太郎が兵庫アルプスと呼んで播磨・但馬の9座に日本アルプスの山の名を付したが、青ヶ丸はそのうちの「兵庫鷲羽」なのだそうだ。
さて今回は、因幡側からアプローチする。扇の山の南に位置する広留野(ひろどめの)という開拓地を起点に兵庫県境の分水嶺上にある畑ヶ平(はたがなる)扇の山登山口まで林道を辿り、ここから県境の尾根を辿って青ヶ丸をピストンする。
広留野への道路は、狭いながらも高速道路のような立派なコンクリート橋脚を持つピッカピッカの舗装道路だ。こんな山奥のわずかな戸数の開拓地にこんな道路が付けられているとは、意表を突く展開である。近頃耕作放棄地が目に付くようになっているが、この因幡の最奥に位置する広留野の広大な畑地はきれいに管理されていて実に頼もしい。元気の秘密を知りたいと思った。日本の農業のこれから、に何か示唆が得られそうな気がした。
広留野の広々した心地よい開拓地を、ほぼ予定通りの9時に出発する。林道はすぐに雪で覆われて、以後、畑ヶ平登山口までの七割方、雪を踏んで進むこととなる。林道とはいえ、周囲はブナを主体とする見事な温帯広葉樹林が続き、芽吹きから間もない浅い緑の木々が、真っ青な空と白い雪を背景に躍動する。残雪と新緑のコンビネーションの美しさは東北の初夏の山々で毎年楽しんできたのだが、近畿地方では雪融けがあっという間に進んでしまうので、滅多に遭遇することがなく、寂しく思っていた。因幡一の豪雪地帯で、雪と新緑の協奏に再び出会えたのだ。ところどころにサクラやタムシバが白いアクセントを添えている。オオカメノキも開花を始めて、夏が着々と近づいているのを知る。雪解け水を集めてほとばしる流れが、その躍動感を一層際立たせる。
諸鹿越の扇の山登山口から、扇の山とは反対側の尾根に取り付く。カラーマーキングがいくつもぶら下がった踏み跡入口は容易に見つかるが、その直後の篠竹が行く手を惑わせる。それを抜ければ、切り開きは比較的はっきりしている。小さなアップダウンをこなして進むと、平坦な湿地帯に出る。ここはルートを逸しやすいので慎重に進む。これを抜けてしばらくすると起伏の乏しい広い雪原状の疎林に出る。ここも進路を慎重に見極める必要がある。この雪原を抜けて広い尾根に傾斜がつくところから、篠竹藪が林下を覆うようになる。正しいルートは切り開きされているので、その入口をよく確かめることだ。切り開きには古い境界石柱が間隔を置いて埋設されている。また、白い「国有林」標柱もある。この辺りから黄色の幅広テープにマジック書きの目立つ道しるべ標が数か所、木に巻かれている。尾根からは左手に先日登った仏ノ尾が木々の間に姿を現わす。こちらから見ると、佐坊からの尖がった姿とは対照的な、なだらかな山容である。登り切ったピークの先にもう一つのピークが見える。中の丸である。中の丸で仏ノ尾方面への踏み跡を分かち、右方向に進む。傾斜が緩むと左に畑地が唐突に現れる。こんなところに?!といぶかしく思うが、ここまで林道が上がってきているのだ。太陽光パネルまで付設されている。この開拓地をかすめて我々は再び林の中へと進路をとる。傾斜が増すにつれ、眺望が得られるようになり、背後には仏ノ尾、そして右手には目指す青ヶ丸がなおも雪を纏って大きく臨まれる。そして最低鞍部からは激急登となる。篠竹や灌木をつかみつつ、雪に足をとられぬよう細心の注意を払ってしゃにむに登る。灌木が切れて視界が一気に広がる。左手にはすっかり雪の消えた鉢伏山と麓のおじろスキー場の全貌が航空写真のような鮮明さで見渡せる。そしてほんの数歩で誰もいない山頂に飛び出した。帰路は往路を忠実に戻る。登ってきたところとはいえ、スイスイとは戻れないのが「大人向き」のこの山だ。さらには、林道に戻ってからも分岐を見落としてルートを誤るという失態!ルートファインディングには慎重を期す必要がある。
今日は雪と新緑と青空、清流と木々の花たち、タヌキとリス、そして一筋縄ではいかない複雑ルートと、変化にとんだハードな山旅をすることができた。
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