百松沢山〜冬尾根登行・常次沢下降〜
- GPS
- --:--
- 距離
- 6.9km
- 登り
- 497m
- 下り
- 816m
コースタイム
アクセス |
利用交通機関:
バス
|
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感想
高校山岳部1年生部員だけでの山行第2弾。
常次沢の沢登りの予定が、アクシデント?により、
送電線の鉄塔のところから冬ルートの尾根を藪こぎするハメに。
南峰にも登り、常次沢を下った。
■秋の百松
ここはどこだろう?見ると、何ともう藻岩山より高いではないか!という事は、高度にして後500m弱登ればいいだけである、と得をした気になるが(実際そうとも言えるのだが)、どこかわからないのでは仕方がない。
その日、我々は百松沢山の常次沢を目指して来ていた。一年だけだった。福井えん堤からだいぶ入って飯場を過ぎ更にしばらく行くと、広い場所に出た。そして、そこには、たくさんの男達が居た。よく見ると彼らは“山に生くる人々”ではなく、聞くと送電線の鉄塔を建てる人々であった。
彼等は我々を質問攻めにした。「どこへ行くんだ?」「熊が出るぞ」等々。彼らは百松を知らない様であったが、一人が「上へ行くんだべ、乗っていかないか?」見ると、皆トラックに乗り込んでいる。そしてそのトラックは何とチェーンをしているのである。僕が古堂達の方を振りかえると、皆乗り気(乗る気)だったので、乗る事にした。ああ、愚かにも、僕はそのトラックが常次沢の方へ行く物と信じて疑わなかったのである。
しかし、出発した途端、僕は不吉な予感を感じた。そしてその予感が正しかった事はすぐ明らかになった。トラックは我々の予想(期待)とは裏腹に右側の斜面を登り始めたのだ。しまった!我々は顔を見合わせた。しかし今さら“降ろしてくれ”と言うのはしゃくにさわるし、こっちからでも行けるかもしれない(甘い考え)と自分を納得させて、素知らぬ顔で黙っている。
トラックは猛スピードでどんどん高度をかせいでいくので、荷台で中腰になって必死にわくにつかまっていなければならない。しかし、林道というのは恐しく長いものだ。行けども行けども終わらない。スピードが落ちるので終りかと思うと実はまだまだなのである。
ようやく止まった所は林道の終点だった。右側の斜面(すごく急な)には直登する道がついている。それは道というよりは、送電線の鉄塔の下の木を倒したというだけではあったが、充分あるける状態にあった。
という訳で冒頭の場面に戻る。地図とコンパスを取り出してみると、現在位置はすぐわかった。斜面にむかって右側に見えるあれがP.708に違いない。そしてこの斜面の上がザッテル上の尾根に違いない。という事は冬のコースである。
とにかく尾根の上に出てみようという事で鉄塔建ての人々を追った。相当急で疲れる。尾根の上で彼らとわかれると、もう一度位置を確認する。左に続いている尾根を登って行けばいい事は確かである。もちろん道などなく、薮こぎだが、時間はたっぷりあるから大丈夫だろう。という訳で僕がトップになって薮をこいで行った。
ところがすぐ雨が降り出した。それに何やらうるさい音がすると思ったらヘリコプターである。鉄塔の資材を運んでいるに違いない。いささかムードをこわされる。こんな所まで来て、騒音公害に悩まされるとは…。
一つ目のコブに来る頃には雨は激しくなっていた。このコブは右側をまく。すると、もうだめである。何も見えない。笹は背より高いし、細い尾根とは違って見通しがきかない。それに曇りである。頂上など見える筈が全然ない。コンパスだけが頼りだ。時々木の上に登って、尾根が続いているらしい方向を確かめる。頂上は地図からいうと、だいたいあっちの方向だろう。尾根から降りない様に行こう。
突然視界が開けた。二つ目のコブである。峰が三つ見える。右から、百松本峰、百松南峰、神威に違いない。烏帽子は南峰の陰で見えない。少し休み、写真などをとる。そこからは、2,30m程急に下る。右側をまく。それからすぐ急に上る。その上はちょっと平らだが、しばらく行くと急に下り、すぐまた急に上る。薮の中で、休み休み行く。
時々、本当にこっちでいいのだろうか?と心配になって、木に登って、尾根筋を確認し、頂上らしき位置を見きわめる。ところが、急な斜面を登ってその位置に来たが尾根はまだ続いている。しかし、後はだいたい平らである。そしてようやく僕は笹の中の足下に三角点を発見した。しかし、その時、すでに時計は1時を回わっていた。あんなに時間があったのに…。
ここは平らで、しかも視界がきかないので、おもしろくない。南峰の方が頂上らしいと聞いていたので行く事にする。クタバレをすると出る。ところがである。すぐまた三角点を発見してしまったのだ。どうやらこちらの方が頂上の様だという結論に達するが、もう一度クタバレをするのもアホらしいので、飯を食ってすぐ出る。
そこからは細い尾根の急な下りである。下まで降りると平らで、踏み跡がある。が、それをたどっていくと見失ってしまう。しかたなく薮をこいでいくと、また踏み跡に出るといった具合である。しばらく行くと、常次沢に降りるらしい左向きの道を見つけた。帰えりはここから降りる事にして、そばの目だつ木にブラックテープを貼る。
またしばらく行くと、南峰の基部に出た。その上の急斜面を登り切ると、やはり、話に聞くとおり、本峰とは比べ物にならない位頂上らしい頂上である。烏帽子の異様で巨大な姿が迫ってくる。そして神威の岩場。風が強い。神威へ行ってみたいという衝動にかられる。
百松沢を降りたいという望みもあきらめて(当然だが)降りはじめる。薮をこいで行く。ところが、行けども行けどもあの木が見当らないのである。まわりを見回わすが見当らない。ようやく数十m右側にそれらしき物を発見する。北村が確かめに行くとそうであった。
この降りは相当急だった。トップを北村に変わってもらう。笹のトンネルをくぐって行く。沢は初めチョロチョロだったが、段々大きくなる。すべるので、わらじをつける。沢登りの予定だったので我々は地下足袋だったし、わらじも持ってきていたのだ。
沢は大きくなるが、どうもおもしろくない沢である。スケールが小さいのだ(三の沢に比べれば大きいが)。それに滝がないのである。ようやくあった、といっても、高さはせいぜい5,6m。それも滝らしい滝はこれ一つなのである。途中、いたどりの集団がある。
しばらく行くと平らになって、いつの間にか道に出ていた。左側からも、沢が降りてきている。もうだいぶ暗い。道が何とも長い。行けども、行けども、まっすぐ、あるいは、曲りくねって、どこまでも続いている。
ようやく、行きの時の広場についた時は真暗であった。そこで、遅かったが僕は「このへんで一休みしてスペシャルでも食ってくべ」と声をかけたが、それには内心、行きの時のトラックがちょうど帰えってきて欲しいという、祈りにも似た願いと、わずかの期待があったのだ。
それは、ちょっとかなえられそうもない願いに思えた。だが、なんとすばらしい予知能力であろう。その途端、みごとに予想的中(予想かな?)。音が聞こえたかと思うと、あのトラックが灯りをつけて、斜面をかけ降りてきたのだ。我々は喜んだというより、呆気にとられて声もなかった。そして次の瞬間、思わず歓声を上げそうになった。
彼らも我々を見ると「まだいたのか!」とか「俺たちを待ってたんでないのか?」と疑う向きもあったが、こちらは言葉もない。薮こぎに疲れはてた我々が、彼らのマイクロバスに福井えん堤のバス停まで乗せてもらった事は言うまでもない。
(札幌西高山岳部部報「熊笹」18号より)
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