鳥海山 ホワイトアウトの幻影


- GPS
- 33:23
- 距離
- 33.0km
- 登り
- 1,914m
- 下り
- 1,895m
コースタイム
- 山行
- 7:33
- 休憩
- 2:02
- 合計
- 9:35
天候 | 21日:快晴 ほぼ無風 22日:曇り 外輪山は強風&雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
入口にはゲートが設置されているが、車は通れるようになってました。 ゲート付近はまだ雪はありませんが、標高650m位からは雪道。 車は通れるが、除雪車は来ないので大雪になったら閉じ込められる危険あり。 利用は、あくまでも自己責任で。 轍が残っていたので車で入れる所まで進み、そこからは徒歩で登山口向かいました。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
もう完全に雪山。 2日間、山中では誰とも会わなかった。 この時期ともなると鳥海山に入山する登山者は少ないようである。 人気の百名山とは言え、トレースは期待出来ないだろう。 ●鳥海公園青沢線〜滝ノ小屋 標高843m付近までは車の轍が残っており歩くのに困難は無かったが、 それ以降、轍は消失しトレースも無し。 車道終点(登山口)までは約6kmのラッセルとなった。 雪の深さはワカンを履いて脛位まで。 傾斜は緩いので、ワカンよりもスキーやスノーシュの方が楽だと思う。 ●滝ノ小屋 夏は営業小屋だが、今は無人。 利用料金:400円、小屋の料金箱に納める。 広く快適な山小屋だが、冬期はトイレが利用できない。 ドアは3重構造だが外ドアの建付けが悪く、風が吹くと開いて 雪が室内に入り込んでしまう。 チェーンがあるので、それでしっかりドアを固定してから外出するように。 ●滝ノ小屋〜河原宿小屋 雪が深くなれば様々なルートで外輪山を目指す事が出来るが、 滝ノ小屋周辺は薮が出ており、どこでも歩けるような状態では無い。 今回は夏道沿いに進み、河原宿小屋を経由して外輪山を目指した。 河原宿小屋までは一ヶ所急な登りがあるが、特に危険な箇所は無し。 まだ薮が所々で出ているので、ガスってもホワイトアウトまでは至らないと思う。 夏道を忠実に辿っても良いが、今回は白糸ノ滝の沢の右岸上を歩いて 河原宿小屋へ向かった。 薮の大半は雪で覆われて歩きやすい状態になっており、少し近道できる。 視界が悪くても沢が目印になるので、このルートはオススメできる。 ●河原宿小屋〜外輪山(伏拝岳) 全域が雪で覆われており、もう夏道は視認できない。 周囲は広大な雪の斜面であり目印が乏しいので、道迷いに注意。 ガスるとホワイトアウトの危険がある為、天候が安定しない状況での立入は 止めた方が良い。 標高1900m付近の薊坂までは傾斜は緩いが、それ以降は傾斜が上がり 滑落危険が出てくる。 今回はアイスバーンの箇所は無く、安定した雪だったので困難は無かったが、 今後は厳しくなってくるだろう。 ●外輪山(伏拝岳〜七高山) 外輪山に到達すると一気に風が強まるので、防風防寒装備は必須。 岩影等の風を凌げる箇所はあるが、強風の中を強行突破せざるを得ない箇所も 幾つかあり、環境的にはかなり厳しい。 七高山付近が特に過酷であり、西からの強風をまともに受ける事になるので、 風の強い日の登頂は困難になる。 風下側は急斜面であり飛ばされると滑落に繋がるのでピッケル必帯。 ガスで視界が悪いとルートが解りにくくなるので、視界の無い日も厳しい。 今回はその2つが重なったので、かなり厳しい登山となった。 幸い気温は高かったので無事登頂出来たが、これで気温が低かったら 撤退せざるを得なかっただろう。 外輪山から下山する際、河原宿小屋への下降路が判りにくい。 まだ道標は見えているので下降点は判別出来るが、雪が深くなり隠れると難しいだろう。 今後は下降点に目印の竿竹を立てる等、対策が必要になるかもしれない。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ゲイター
バラクラバ
着替え
靴
ザック
サブザック
アイゼン
ワカン
ピッケル
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材(3日分)
調味料
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
常備薬
日焼け止め
保険証
携帯
時計
タオル
ナイフ
カメラ
ポール
テントマット
テント
シェラフ
ロープ(30m)
ハーネス
制動器具
カラビナ複数枚
スリング
スノーバー
アイスバイル
|
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備考 | ロープ(30m), ハーネス, 制動器具, カラビナ複数枚, スリング, スノーバー これら装備は新山登頂用として持参したもの。 天候不良により新山は中止し、七高山までにしたので今回は使用する機会は無し。 だが、パーティであればホワイトアウト時の対策としてロープ類は持参すべきだろう。 アイスバイルは、外輪山の斜面が凍結した場合に備えて持参したものだが、 今回は凍結しておらず、安定した雪面だったので使用しなかった。 |
感想
ホワイトアウトは、雪や雲などによって視界が白一色となり、
方向・高度・地形の起伏が識別不能となる現象。
ホワイトアウトの状況に陥ると、錯覚を起こしてしまい、雪原と雲が一続きに見える。
雪山登山においては危険な状況であり、足場の起伏が把握出来ないので、
特に下降での滑落事故が多発する。
鳥海山の外輪山に到達した時、状況はまさにホワイトアウトだった。
岩が出ている場所では地形は把握できるが、岩が途切れ雪一色となると地形は把握出来ず。
足場の起伏も把握出来なくなってしまうので、一歩足を踏み出すのも恐ろしい。
厄介な状況になった。
パーティであればアンザイレンで進むのが定番であろうが、ソロではそうもいかない。
強行するか、撤退するか・・・
強風の中、岩影に身を潜めてしばし考えた。
熟考の末、進む事を選んだ。
ガスと強風、二つの悪条件が揃っているが、気温は高く行動は可能である。
そして、外輪山には細尾根や雪壁のような難所となる箇所は無い。
この状況でも突破出来る自信はあった。
ホワイトアウト状況下ではどのようにして進むべきか?
一番いけないのは、何もせずに足を踏み出す事である。
ホワイトアウト状況下は、真っ暗闇の中をライトも付けずに歩くのと同じ。
自分が思っている斜面の角度と実際の角度に誤差があれば、当然足を踏み外し滑落する。
ホワイトアウトでの滑落事例の大抵は、このパターンだろう。
だから、一歩一歩、慎重に足を進めねばならない。
ストックでこれから足を踏み出す斜面の角度を判別し、ピッケルで確保した状態で足を出す。
この繰り返しで進んで行く。
「ホワイトアウトしたら、地雷原を進むような気持ちで進め。」
私は、そう教わった事があった。
いささか誇張しすぎな気もするが、確かに的を得た教えであるとは思う。
さすがに地雷原、とまでは行かないが、ホワイトアウトでの足運びは緊張する。
外輪山上は強風。
まるで巨大な生物の咆哮のような風音が常に鳴り響いており、
それが更なる心理的プレッシャーとなって上乗せされる。
やがて雪の塊のようなツブテが降ってきて顔に当たると痛い事><。
たまらずバラクラバとゴーグルを装着する。
気温はそれ程低くないので体温低下は感じないが、それでも充分に過酷な環境である。
そのような環境では、少しでも安心したくなり、人は幻を見てしまうのだろう。
ホワイトアウトの最中に幻を見た、という話をこれまで何度か聞いた事があった。
それは、有りもしない稜線だったり、人影だったり、中には屋台ラーメン屋が見えた、
と言う少しおかしな事例もあったりする。
その時、その人が抱いている願望が反映されてしまうのかもしれない。
実際、私も過去にホワイトアウトした際に幻を見た事がある。
ガスでルートを見失い、南蔵王の主稜線を彷徨っていた時の出来事であるが、
その時見たのは、まるで3000m峰ぐらいはありそうな巨大な天を突く山影であった。
だから、今回も幻だと思った。
・・・たぶん、そうだろう。
厳しい行程が続いたが、ようやく七高山に到達。
そこから新山を眺めてみた。
真っ白なガスで周囲は包まれており、新山があるべき方向には何も見えなかった。
強風の中で身を屈め、少しでも新山が見えないかとしばらく粘ってみたが、無駄だった。
今年最後となる鳥海山。
一目、新山を眺めたがったが、残念。
諦めて七高山を後にしようとした。
その時である。
ガスの中を蠢く黒い影のようなものを見た。
大きな影のような塊であった。
その塊は移動しており、まるで新山の山肌を這うように動いている。
大きさからして人では無い。
カメラを取り出し、その影を撮影してみた。
・
・
・
何も、写ってはいなかった。
私が見たのはホワイトアウトの幻影だろうか?
それとも・・・
謎を残しつつ、七高山を後にした。
コメント
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今時期ソロで鳥海山登れるのはLuskeさんぐらいではないでしょうか
冬期の天候が安定しませんよね
土曜日は下界は晴れていましたが、鳥海山は雲に隠れて見えませんでした。
ガスの中を蠢く黒い物体‥
* ̄(エ) ̄)ノ←もしかして眠りから覚めた?
前回のレコで今年は鳥海山で冬眠するからねって言ったきり、居なくなったんですよね。
鳥海山の主かもしれませんね
それにしても雪の鳥海山でホワイトアウトの情況でよくぞご無事で
まだ今期の雪山登山は始まったばかりですが、
もしかしたら、これが今期一番厳しい登山になるかもしれません^^;
流石は鳥海山、という気持ちです。
まだ初冬のこの時期に、あれだけ厳しい環境になる山は数少ないと思います。
今はまだ行けても、厳冬期はソロでは絶対無理だな、と思いました。
ガスの中なので遠近感が狂ってましたが、あの影は相当な大きさだったと思います。
もののけ姫のタタリ神みたいに見えて不気味に感じましたが、
もしかしたら、* ̄(エ) ̄)ノ ←この御方だったかもしれません。
なるほど、鳥海山で冬眠中でしたか(笑)
侵入者の気配を感じて起きてしまったのかな?
だとしたら申し訳ない事をしました。
春になってお目ざめになりましたら、
るすけが謝っていました、とお伝えください
冬の鳥海山すごいですね。
レコに書かれていてはじめて思ったのですが、車が入れても閉じ込められてでられなくなることがあるんですね。4WDでも同じことですよね。
ホワイトアウトの幻影!?
人が作り出す副産物なのか、自然が何か伝えようとしているのか。
、* ̄(エ) ̄)ノなのか・・・謎が深まるばかりですね。
いずれにしても、るすけさんは強靭な精神力と肉体をお持ちであることは今回からもよくわかりました
冬の鳥海山憧れるばかりでどんどん遠くなります(笑)
冬の鳥海山はシビれる山です
豪雪地帯なので、麓ですら雪で閉じ込められる危険は多々あります。
私の車は4WDですが、2日間にドカ雪があった時の事を考えると危険に感じたので
あまり上へは行かず、麓寄りに駐車しました。
七高山で見たものは・・・恐らくは幻覚だったのでしょう。
ですが、鳥海山はミステリアスな場所であり、
「昔々、手長足長という巨人が住んでいた。」という伝説が残っております。
もしかしたら、その巨人だったのでは・・・
と考えた方が面白味があるかもしれません
でも、人食い巨人だったそうなので、
実際に遭遇したら面白がってる場合じゃないですね^^;
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