早池峰山☆霧の山上での美しき神楽の舞
- GPS
- 03:49
- 距離
- 7.1km
- 登り
- 725m
- 下り
- 728m
コースタイム
- 山行
- 2:43
- 休憩
- 1:19
- 合計
- 4:02
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
611 早池峰山
東北への出張ついでの山行の最終日に選んだのは早池峰山であった。この週末の日曜日が早池峰山の山開きの日になる。この日から8月の第一週の週末に至るまでの週末は早池峰山に至る道路がマイカーは通行が規制され、岳登山口から小田越の登山口までシャトルバスで向かうことになる。
早池峰山を訪れるなら小田越の登山口からのピストン往復ではなく、鶏頭山まで縦走したいと思っていたので、この縦走はシャトルバスが運行される期間に限られることになる。しかし、この日は山開きの行事が行われ、開山式に続いて山頂では早池峰神楽が奉納されるという。当然ながら登山者が多いことが予想されるが、山上で奉納される神楽は是非とも鑑賞してみたいものである。
土曜日の夜に仙台への出張の仕事が終わり、新幹線で花巻に向かう。新花巻駅は新幹線の地方駅にありがちな、周囲には田園が広がりわずかに民家があるばかりの駅だった。駅前でレンタカーを借りると残照の空に向かって夕暮れの中を台温泉の小さな旅館を目指す。
翌朝は朝食の前に近くにある釜淵の滝と緒ヶ瀬の滝を訪れる。釜淵の滝は花巻温泉を流れる台川の奥にあり、川沿いの遊歩道を歩いて行くと滝前に展望台が設けられていた。巨大なドーム状の大きな岩を流れる滑滝は高さ8.5mと落差こそ少ないものの幅は30mもあるらしい。花巻温泉から台温泉に向かう道に入ると滝の案内こそないもの、カーナビにも川沿いに緒ヶ瀬の滝のスポットが表示される。滝の手前の道路余地に車を停めると小さな神社があり、川に降りる小径が目に入る。緒ヶ瀬の滝は17mの高さから二筋に別れて落下する美しい直瀑であった。岩手県の観光協会のページによると麻をカセにかけたように見えることに名称が由来するという。
旅館は私が早池峰山に行くことを告げると朝食の時間を30分前倒しで6時半に部屋に運んで下さる。前日の夕食でもご飯の美味しさに驚いたのだったが、宿の人にそのことを伝えると非常に喜ばれる。「銀河の雫」という岩手で栽培される高級品種らしく、普段の日常生活で毎食で炊くような品種ではないらしい。
花巻の市街から早池峰を目指して車を運転すると北東の方角に周囲の山々から抜きん出て一際高い山が目に入る。残念ながらその山頂部のみには笠雲がかかっているようだ。
岳登山口の駐車場には7時50分頃に到着するが、すでに広い駐車場は満車であった。駐車場の係の男性は「嶺南荘の駐車場に行ってください」というが、地元の人はご存知なのかもしれないが、果たしてその嶺南荘はどこにあることやら。100mほど上に行ったところに七折の滝の駐車場があるが、ここはまだまだ余裕があった。この駐車場のあるポイントに下山するつもりだったので好都合だった。
再び先ほどの歩いて駐車場に戻ると先ほどとは別の男性が「チケット売り場が嶺南荘に移動したので、私の車で送ってあげます」との親切な応対。およそ1km弱ほど進んだところにある嶺南荘まで送ってくださる。8時過ぎにバスが到着すると20人ほどの登山者がバスに乗り込む。
バスは上から降りてくるバスを待って出発する。驚いたことに降りてきたバスは5台、7時に出発したバスのようだが、相当な数の登山者が既に入山しているようだ。
山にかかる雲がかなり低くなっている。河原の坊と呼ばれる登山者用の駐車場がある地点を越えると、バスは次第に濃い霧の中へと入ってゆく。小田越には簡易トイレがいくつも設けられており、登山口では携帯トイレも売られていた。
登山口からは前日までの雨のせいか泥濘んだ登山道を歩く。しばらくしてすると何十人もの大行列に追いつく。どうやら登山道が狭く追い越しが出来ないので先頭をゆくパーティーの後に行列が出来ているようだ。標高1400mを越えたあたりですぐに森林限界を越えると途端に道が広くなり、行列を一気に追い抜かせて頂く。その先でも数組の大人数のパーティが登っておられるたが、パーティーをかわすと途端に人も疎になる。
足元には数多くの高山植物が咲いている。黄色い花はミヤマキンポウゲと思われる。赤紫色の花はミヤマシオガマだろう。小さな細長い花弁を有するのはコミネザクラで、この早池峰山の固有種らしい。
登山道は岩場が続くが、岩石は蛇紋岩という種類のものらしい。人がよく足を乗せる場所はツルツルとなっているので不用意に足を置かないように注意する必要がある。
剣ヶ峰の分岐には9時半に到着する。剣ヶ峰まで1.2kmと記されているので、神楽の奉納が始まるまで1時間あるので、往復するのに丁度良い時間だろう。歩き始めるとすぐに「この先登山道はありません。登山道未整備」との立看板が現れる。しかし、明瞭な登山道が剣ヶ峰に向かって続いており、難度は決して高いルートではないように思われる。
尾根を進むと雲の上を剣ヶ峰に向かってゆくハイマツの細尾根が目に入る。雲上のトレイルを爽快に歩くことを期待したが、その見込みは甘かった。すぐにも南側が雲が上ってきて、尾根にかかり始める。
剣ヶ峰から振り返ると早池峰山の上の方はすっかり雲の中に入ってしまっていた。雲の下に広がる北側斜面を見ると、樹々の新緑はまだ始まっていないことに気がつく。早池峰の夏は短いのだろう。
早池峰の山頂に向かう登山道に戻ると早速にも残雪が現れた。山頂直下の梯子を前に再び大渋滞となっている。丁度、先ほど大パーティーが到着したところのようだ。山頂直下の左手に登りやすい岩場があるので、そこを攀じ登って避難小屋の裏手から山頂広場に出ることが出来る。
山頂広場では大きな岩の下の小さな平地を囲んで多くの人が神楽を待っていた。どうやらここで神楽が舞うらしい。まもなく神楽の前に山頂の小さな社殿の前で宮司さんによる祈祷が始まる。
祈祷が終わるといよいよ神楽が始まる。山頂に立ち込める霧が神楽に一層の幻想的な雰囲気を演出しているように思われた。しかし、冷たい風が吹き抜けていく中、太鼓と鉦はともかく、笛を奏でるのは果たして大丈夫かと心配になる。グローブがなければ指先が悴むような風の冷たさである。
神楽が一通り終わると、鑑賞していた登山者達は皆、下山の途につく。天気も良くないので鶏頭山への縦走は諦めて、私も他の登山者に混じって下り始める。山頂直下の梯子を下り、雪渓の上に降り立ったところで再び山頂から神楽の音が聞こえる。慌てて先ほどの岩場を攀じ登り山頂に戻ると、山頂の社殿の左の十一面観音の前で再び神楽が舞われているのだった。山頂に残っている数人の人がその周りで神楽を見ているばかりだった。静かな霧の山頂での神楽の感動は表現する方法がない。東北に住んでいたらこの季節に何度でも来訪したいと思うところだが、それが簡単ではないのが残念だ。
二度目の神楽が終わる頃には山頂の霧の中にはいつしか小さな雨粒が混じるようになっていた。いよいよ下山の途につく。先に降る人達の列に追いつくことになる。岩場の梯子では大渋滞が生じているが、階段を避けて岩場を下降して渋滞をバイパスする。雲の下に出たのだろう。周囲の景色が見えるようになるが、途端に蒸し暑く感じられるようになる。
樹林帯に下るとほとんど登山者を見かけなくなったので、神楽を鑑賞されておられた登山者をほとんど追い抜いてしまったのかもしれない。
小田越のバス停に到着すると次のバスまで40分以上待たなければならない。山から降りると天気が好転するというのは良くある話である。早池峰山を下から見上げていると雲が上に上がり、西に伸びる稜線が雲の中から姿を現す。しかし、早池峰山の山頂は相変わらず雲に覆われたままだった。
このバスは有難かった。というのも岳登山口に至るまでの間、少しうとうとと眠りにつくことが出来たからだ。登山口からすぐに車を運転することになったら、睡魔に襲われていたことだろう。
早池峰の道の駅に立ち寄ると幾つかの野菜以外はほとんど売られているものがないように思われたが、驚いたのは数多くのワインが売られていたことだ。いずれも地元のものらしい。思わず早池峰神楽という名称の赤ワインを含めて三本も赤ワインを買い込んでしまった。
新花巻駅に向かうと間も無く小雨が降り始めた。新幹線の時間まで余裕があるので、駅に戻る前に萬鉄五郎の記念館と毘沙門堂に立ち寄る。東北新幹線のはやぶさ号は全車指定であり、残りわずかな空席を辛うじて確保することが出来た。京都への長い新幹線の帰路に着く。仙台が近づくと車内放送で満席であることが案内されていた。
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