記録ID: 6056852
全員に公開
沢登り
北陸
【越美】日野川前谷・源平谷
2023年10月14日(土) [日帰り]
福井県
岐阜県
hillwanderer
- GPS
- --:--
- 距離
- 8.2km
- 登り
- 887m
- 下り
- 883m
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日帰り
- 山行
- 9:30
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 10:00
| 天候 | 曇りのち雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2023年10月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
＜関連記録（前谷の他の枝谷）＞ ・ 日野川前谷・ヨセン谷（シン谷） https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3322353.html ・ 日野川前谷・スギ谷 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2425509.html 【日野川前谷・源平谷】 ・ 日野川は広野ダムの奥で大河内川と前谷に分かれ，前谷はさらに左俣（源平谷），中俣（ヨセン谷。シン谷とも），右俣（スギ谷）に分岐して越美国境稜線に突き上げている。今回登ったのは左俣の源平谷。 ・ 前谷に入渓して堰堤を越え，しばらくして出てくる4m滝は，以前は釜の手前の右岸の壁にフィックスロープがあったが，それが撤去されているため，少し難度が上がっている。その部分を登ってもいいのだが，やや壁が立っているため，釜を泳いで滝身すぐ右岸側の壁を登ったがほうが簡単だと思う。 ・ 左俣の源平谷に入ってすぐのミニゴルジュの3段滝は，見た目は威圧的だが割と簡単に登れる。この谷の核心は，何といっても中間部に出てくる高い岩壁に囲まれた第2のゴルジュ帯で，滝のホールドが細かく，直登の場合は確保を要する。今回は単独で抜けられる自信がなかったため，右岸を高巻いたが，高い岩壁と濃密なシャクナゲの藪を危うく縫うような大高巻きとなり，本当に大変で全くおすすめできない（といっても，ゴルジュ内を突破できない限りそれしか活路はないのだが）。 ・ 詰めは当然のことながら濃密な笹薮ではあるが，比較的短い藪漕ぎで眺めの良いロボットピーク（Ca1280mピーク）に出られるので，この山域では比較的マイルドなほうと言える。 【下山路について】 ・ 稜線上は登山道のない藪尾根なので，下山路は考えておく必要がある。現実的な選択肢としては�．蹈椒奪犯�根（ロボットピークの北西尾根），��長トコ谷のシンノ谷下降。もちろん源平谷を下降しても良いのだが，険しい谷のため時間がかかると思われるので省略。今回は�，硫執瀟�をとった。 ・ �，離蹈椒奪犯�根（ロボットピークの北西尾根）は，かつてロボットピークにロボット雨量計があったころの道跡がわずかに残っており，それが辿れる。といってもロボットピークから標高1050m付近まではかなり藪が濃いので，踏み跡を外さないように注意（特に，ピークから少し斜面を下ってわずかに平坦になったあたりが獣道が錯綜して分かりにくい。少なくとも尾根を外さないように注意）。1050mから下部は藪がほぼなくなって快適に下れる（ところどころマーキングあり）。尾根の末端まで来るとやや踏み跡が分かりにくいが，左手に見えてくる小さな沢（白谷）に沿って尾根を下るように意識すれば大きく間違うことはないと思う。所要時間は2時間ほど。 ・ �△猟好肇鈎�のシンノ谷は，ロボットピークの北東側の小さな鞍部に突き上げている谷で，同鞍部から下降するのが良いと思う。大きな悪場もなく良いペースで下れる。下部で2箇所大きめの滝場が現れるが，どちらも左岸側を巻き下ることが可能。所要時間は下降の場合4時間ほど。長トコ谷については以下の記録を参照。 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3391866.html |
写真
大河内川沿いの林道は，以前より少し荒れている印象。ときどき車を降りて落石を取り除けながら低速で慎重に進み，前谷出合を少し過ぎたあたりの草深い路肩にやや強引に駐車。
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大河内川沿いの林道は，以前より少し荒れている印象。ときどき車を降りて落石を取り除けながら低速で慎重に進み，前谷出合を少し過ぎたあたりの草深い路肩にやや強引に駐車。
適当なところから大河内川に降り，前谷（写真の右側の流れ）に入渓。出合付近でイノシシの群れが鼻を鳴らしながら慌ただしく逃げていくのに出会った。
前谷に入ってすぐに出てくる堰堤の左岸側を高巻いて越える。この堰堤の巻きは切り立っていて意外にちょっと悪いのをすっかり忘れていた。慎重に通過。
堰堤の上はしばらく河原状。以前はこんなに土砂が堆積していなかったように思うけど…。前回訪問時からの間にあった大雨の影響だろうか。
4m滝が現れる。以前は釜の手前の右岸側の壁にトラロープが過剰なくらいがっちりフィックスしてあったが，撤去されていた。おそらく実力派の沢ヤさんの「粋な計らい」だろう。
4m滝が現れる。以前は釜の手前の右岸側の壁にトラロープが過剰なくらいがっちりフィックスしてあったが，撤去されていた。おそらく実力派の沢ヤさんの「粋な計らい」だろう。
トラロープがあった箇所の壁はやや立っているので，釜を泳いで滝身すぐ左手の壁を登ってクリアした。こちらの方が簡単だと思う。（写真は登り終えてから見下ろして撮影）
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トラロープがあった箇所の壁はやや立っているので，釜を泳いで滝身すぐ左手の壁を登ってクリアした。こちらの方が簡単だと思う。（写真は登り終えてから見下ろして撮影）
しばらく歩いて，スギ谷出合を通過。スギ谷出合のV字谷ぶりはなかなかのものだが，スギ谷自体は穏やかで容易な谷。
そして今回入る源平谷の出合に到着。源平谷はいきなり壁が極度に立ったゴルジュから始まる。
初めて見た時は，その暗く険悪なオーラに，これは高巻くしかないのでは？と思っていたこのゴルジュだが，近づいてみると意外に簡単に登れそう。ゴルジュ内の滝は3段とも直登。
初めて見た時は，その暗く険悪なオーラに，これは高巻くしかないのでは？と思っていたこのゴルジュだが，近づいてみると意外に簡単に登れそう。ゴルジュ内の滝は3段とも直登。
むしろゴルジュを抜けた後のこのわずか2mほどの小滝のほうがややこしかった。左隅の岩の間を強引に這い上がる。
びっくりしたのが，ゴルジュを抜けた後の左岸側の台地に，炭焼き窯の跡と思われる石積みを発見したことだった。石積みの上に大木が育っていたので，相当古いものだと思われる。こんな険しい谷のゴルジュの真上で，まさか炭を焼いていたなんて…。杣道はどこを通っていたのだろう？
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びっくりしたのが，ゴルジュを抜けた後の左岸側の台地に，炭焼き窯の跡と思われる石積みを発見したことだった。石積みの上に大木が育っていたので，相当古いものだと思われる。こんな険しい谷のゴルジュの真上で，まさか炭を焼いていたなんて…。杣道はどこを通っていたのだろう？
出合のゴルジュを抜けると，急に谷は穏やかに。周囲の緑も濃く気持ちいいのだが，悪場の続く険しい谷を期待して入ると，ちょっと拍子抜けするかもしれない。
周囲はブナやサワグルミ，ホオノキなどの樹林が美しいが，あまり大木は見かけない。先ほど炭焼き窯跡もあったし，意外に人が入っていた谷だったのかもしれない。
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周囲はブナやサワグルミ，ホオノキなどの樹林が美しいが，あまり大木は見かけない。先ほど炭焼き窯跡もあったし，意外に人が入っていた谷だったのかもしれない。
そして右岸に大きめの枝谷を見送ると，7mほどの滝。逆層で滑りやすそうなため，左岸の壁を灌木にぶら下がり強引に這い上がって巻く。
滝上はちょっとした廊下になっており，大きな滝が出てこないか半ば警戒，半ば期待して歩いて行くが，小滝が詰まっているだけで難なく抜けられた。
と，行く手に大きな壁が見えてきた。明らかにこれまでと異なる険しい渓相が予想され，緊張が走る。
第2のゴルジュが始まった。入り口は3mほどのつるりとした滝でふさがれている。中間までのホールドは目で追えたが，その上が細かそうで，登れるか自信がなかったため，右岸から巻きに入る。
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第2のゴルジュが始まった。入り口は3mほどのつるりとした滝でふさがれている。中間までのホールドは目で追えたが，その上が細かそうで，登れるか自信がなかったため，右岸から巻きに入る。
両岸は圧倒的な岩壁に鎧われ，その中に，見える限りでも4段ほどの滝が連なっている。まじまじと観察したが，3段目の8mほどの滝をフリーソロするイメージがどうしても湧いてこない。残念だがこのまま高巻きを継続することに。
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両岸は圧倒的な岩壁に鎧われ，その中に，見える限りでも4段ほどの滝が連なっている。まじまじと観察したが，3段目の8mほどの滝をフリーソロするイメージがどうしても湧いてこない。残念だがこのまま高巻きを継続することに。
だが，この高巻きも相当に悪い。屹立する岩場の迷路を縫うように登り，岩場の上では決まって濃密なシャクナゲに絡めとられ，一時はこのまま時間切れになってしまうのでは，と不安にかられるほどの苦境に陥った。
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だが，この高巻きも相当に悪い。屹立する岩場の迷路を縫うように登り，岩場の上では決まって濃密なシャクナゲに絡めとられ，一時はこのまま時間切れになってしまうのでは，と不安にかられるほどの苦境に陥った。
と，目の前にようやく穏やかなブナの斜面が広がった。ゴルジュ帯を越えたのだろうか？ 谷に向かって降りていく。
ようやく谷に降り立った地点は，なんと，ちょうどゴルジュ帯の最後の滝の落ち口だった。冴えてるぜ！（高巻いて逃げたくせに…）
降り立った地点から上では，谷は穏やかさを取り戻していた。ほっとして遡行再開。
といっても，滝はまだまだ出てくる。この10mほどの3段滝はホールドが豊富で直登。一部シャワーになりメチャクチャ冷たかったが，先ほどのゴルジュ帯を巻いてしまったので，せめてもの意地を張った形。ただ，3段目は少しかぶり気味で難しそうだったので，左手から小さく巻いた。
といっても，滝はまだまだ出てくる。この10mほどの3段滝はホールドが豊富で直登。一部シャワーになりメチャクチャ冷たかったが，先ほどのゴルジュ帯を巻いてしまったので，せめてもの意地を張った形。ただ，3段目は少しかぶり気味で難しそうだったので，左手から小さく巻いた。
そして，水が切れたところでこの枯滝。上部のホールドに乏しく難しそうに見えたため，ここで遡行を打ち切って左岸側の尾根に逃げる。
尾根上は笹と灌木の濃い藪だが，何となく獣道が走っており，極力それを追っていく。この山域にしてはまだマイルドと言える程度の藪だ。
20分ほどの藪漕ぎで，ロボットピーク（Ca1280m峰）に到着。膝丈程度の笹原の広がり，相変わらず無雪期でもこの稜線随一の眺めを持つピークだ。向こうに見えるのは笹ヶ峰。
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20分ほどの藪漕ぎで，ロボットピーク（Ca1280m峰）に到着。膝丈程度の笹原の広がり，相変わらず無雪期でもこの稜線随一の眺めを持つピークだ。向こうに見えるのは笹ヶ峰。
笹ヶ峰の手前の夏小屋丸（P1294m）。ここから見ると，一面の笹原に輝いて，笹ヶ峰より貫禄のある山体に見える（実際，夏小屋丸も結構眺めが良くて，なかなか好印象のピーク）。ちなみに，尾根筋に道が付いているように見えますが，これはあくまで獣道で，登山道ではありません（登山道並みに快適に歩けるのは確かですが）。
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笹ヶ峰の手前の夏小屋丸（P1294m）。ここから見ると，一面の笹原に輝いて，笹ヶ峰より貫禄のある山体に見える（実際，夏小屋丸も結構眺めが良くて，なかなか好印象のピーク）。ちなみに，尾根筋に道が付いているように見えますが，これはあくまで獣道で，登山道ではありません（登山道並みに快適に歩けるのは確かですが）。
遙か北方には，白山の姿もくっきりと浮かんでいる。冬季でもないのに，ここまではっきり白山が見えるのは珍しいなぁ。
どんより曇っていて光量も乏しいのに，妙に遠くまではっきりと見渡せる，不思議な日だった。今この稜線に立っている人間は，おそらく自分一人だけだろう（三周ヶ岳まで行けば，誰かいるかもしれないけれど）と思うと，この風景が特別なものに思えてなかなか立ち去りがたく，予定より長居してしまった。
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どんより曇っていて光量も乏しいのに，妙に遠くまではっきりと見渡せる，不思議な日だった。今この稜線に立っている人間は，おそらく自分一人だけだろう（三周ヶ岳まで行けば，誰かいるかもしれないけれど）と思うと，この風景が特別なものに思えてなかなか立ち去りがたく，予定より長居してしまった。
名残惜しいが，下山といたしましょう。下山は長トコ谷にするか迷ったが，時間的なことを考えて，結局ロボット尾根（ロボットピークの北西尾根）を下降することに。背丈ほどの笹薮の下に続く踏み跡を慎重に辿っていく。
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名残惜しいが，下山といたしましょう。下山は長トコ谷にするか迷ったが，時間的なことを考えて，結局ロボット尾根（ロボットピークの北西尾根）を下降することに。背丈ほどの笹薮の下に続く踏み跡を慎重に辿っていく。
相変わらず藪っぽいロボット尾根を無事に下り切り，いつもの角材の一本橋で大河内川を渡る。
林道のいつもの木製看板のところまで戻ってきました。（以前はこの看板の下に「ササガミネ ト山口」という看板もあったけど，気づいたらなくなっていた）
装備
| 備考 | ・ フェルトソール沢足袋使用。沢自体はぬめりはそれほどないように感じたのでラバーでも可と思うが，ホールドがヌメっている滝もあるので注意 ・ 40mロープ携行。不使用だったが険しい谷のため必携。 |
|---|
感想
広野ダムの奥の日野川源流域には，小粒でもなかなかの滝場を擁し，しかも人の訪れの少ないシブい谷が揃っている。中でも大河内川と分かれる前谷は，特にゴルジュの発達した険谷で，一度足を踏み入れれば，どちらかというと穏やかな印象のあるこの山域のイメージが一変すること請け合いである。前谷の3つの枝谷のうち，中俣のヨセン谷（シン谷）と右俣のスギ谷は遡行したことがあったが，左俣の源平谷もいつか行ってみたいと思いつつ，なんとなく未訪問のままだった。
しかし，先日ネットを見ていたところ，なんと，沢登りをやる人間でこの人の記録を読んだことがない者は（たぶん）いないと思われる「富山起点！楽しい山登り」の主の方が，ごく最近，源平谷を登られているではないか。どこでこんな超マイナーな沢の情報を仕入れられたのだろう…（ちなみに，同じ前谷の中でも最も地味なスギ谷にもわざわざ入られている）。全くこのお方のアンテナの広さには驚嘆させられる。ということで（？），何かに急かされるように今週末は源平谷へ。
源平谷の第2ゴルジュは確かに凄かった。今まで入ったことのある日野川源流域の谷の中では，最も険阻な地形と言ってもいいかもしれない。さすがにこの滝場を単独で直登する自信はなく（数少ない先行記録はいずれもこのゴルジュを確保付きで慎重に通過している），情けなくも右岸を高巻いてしまったが，この高巻きも見上げるような岩と藪の城砦といった感じで，一時は時間切れを覚悟したほど，本当に大変だった。高巻きの最中に見た両岸に聳える高い壁，そしてその足元のゴルジュ内に連なる滝群の光景は壮観の一言で，目下の苦境も忘れてしばらく眺め入ってしまった。
新しい谷に入るたび，新しい風景にぶつかるのがたまらなく楽しい。越美のこんなに小さな谷でも，一つ一つの枝谷に入るたびに，これだけ鮮烈な空間に出会えるのだから，一生山登りが続けられる気がする。
藪漕ぎの果てに登り出たロボットピークは，相変わらずの素晴らしい展望。今この稜線にいる人間は自分だけ，と確信できる稜線はそうそうない。どんよりと曇っているのにやけに遠くまでくっきりと見通せる，明晰な線と暗色だけで構成された銅版画のような，不思議な空気感のある秋の山並みをしばらく眺めていた。
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