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Yamareco

記録ID: 6223101
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
東海

【奥美濃】第五次ベロリ穴探査 〜新情報に基づく再探索(磯倉のクラ,再び)〜

2023年11月25日(土) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
12.6km
登り
1,702m
下り
1,695m

コースタイム

日帰り
山行
11:50
休憩
0:00
合計
11:50
6:30
80
駐車地
7:50
7:50
60
磯谷に降り立つ
8:50
8:50
190
磯谷北又・南又の二又(クラモト)
12:00
12:00
130
磯倉のクラ(岩場)エリアの探索開始
14:10
14:10
80
探索終了,下山開始
15:30
15:30
170
磯谷北又・南又の二又(クラモト)
18:20
駐車地
天候 小雨(標高800m以上は雪)のち晴れ
過去天気図(気象庁) 2023年11月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
磯谷ベロリ橋の南詰にある駐車スペースに駐車。スペースはかなり広く余裕あり。
コース状況/
危険箇所等
〜これまでのあらすじ〜
・ 第一回目の探索(2020年12月)…磯谷北又から磯倉ピークに登るついでにベロリ穴探索
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2781989.html
・ 第二回目の探索(2022年11月)…磯倉ピークの南西尾根にそびえる岩場(磯倉のクラ,またはイソグラ)を探索
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4852483.html
・ 第三回目の探索(2022年11月)…「美濃徳山の地名」にベロリ穴の位置が記されていることを発見し再探索
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4936363.html
・ 第四回目の探索(2022年11月)…あきらめきれずもう一度再探索
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4955798.html

 旧徳山村の磯谷の奥にあるとされる「ベロリ穴」。徳山の民話「猟師と白い熊」の舞台になっており,また国道417号線の奇抜ネーミング橋の白眉である「磯谷ベロリ橋」の名前の由来にもなっている伝説の岩穴である。これまで4回にわたりダム湖に閉ざされた磯谷に分け入りこの岩穴の探索を行ったが,発見に至らなかった。
 今回は,ブラックさんからご提供いただいた新情報をもとに,突然やってきた初雪に磯谷が覆われる中,再探索を行った。その結果やいかに。

<ルート状況>
・磯谷は基本的に穏やかな流れで遡行は問題なし。今回歩いた区間までであれば,両岸の河原をうまく歩けば,足をほとんど濡らさずに歩行可能。
・今回探索した磯倉のクラ(クラは岩場のこと。イソグラとも)は,非常に険阻なうえに藪が濃く,行動に注意が必要。特に,今回は枯葉の上に新雪が載った非常にスリッピーな状況で,アイゼンが欲しくなるくらいだった。また,尾根が急峻で藪で見通しが悪いこともあり,下山時のルートミスに注意。
今回の探索ルートを地形図にまとめてみました。(クリックで拡大)
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今回の探索ルートを地形図にまとめてみました。(クリックで拡大)
探索のスタートは今日もここから,磯谷ベロリ橋。冠山峠道路の開通で,一気に交通量が増えたなぁ。こんな早朝でも普通に車が(両方向から!)走っていてびっくり。
探索のスタートは今日もここから,磯谷ベロリ橋。冠山峠道路の開通で,一気に交通量が増えたなぁ。こんな早朝でも普通に車が(両方向から!)走っていてびっくり。
いつも通り磯谷右岸尾根から磯谷にアプローチ。まだまだ良い紅葉が残っております。
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いつも通り磯谷右岸尾根から磯谷にアプローチ。まだまだ良い紅葉が残っております。
いいねぇ
(ちなみに,これは先週の磯谷右岸尾根。初雪と紅葉の素晴らしいコラボ。そう,実は先週も来ていたのです。特に成果はなかったし大人の事情もあるので記録はアップしませんw)
(ちなみに,これは先週の磯谷右岸尾根。初雪と紅葉の素晴らしいコラボ。そう,実は先週も来ていたのです。特に成果はなかったし大人の事情もあるので記録はアップしませんw)
磯谷に降り立った。今回は,ブラックさんからいただいた新情報をもとに,磯倉のクラ(岩場)エリアを再探索するので,とりあえず磯谷を遡行し,二又を目指す。
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磯谷に降り立った。今回は,ブラックさんからいただいた新情報をもとに,磯倉のクラ(岩場)エリアを再探索するので,とりあえず磯谷を遡行し,二又を目指す。
と,霧が晴れ,前方に目指す磯倉のクラ(岩場)エリアが…。うわ,めっちゃ雪つもっとるやん! 足元,フェルト沢足袋(+チェーンスパイク)なんだけど,大丈夫かな…。
※ 雪で分かりにくくなっているが,写真中央付近の黒く見える部分が岩場(岩の上にヒノキやヒメコマツが密生している)
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と,霧が晴れ,前方に目指す磯倉のクラ(岩場)エリアが…。うわ,めっちゃ雪つもっとるやん! 足元,フェルト沢足袋(+チェーンスパイク)なんだけど,大丈夫かな…。
※ 雪で分かりにくくなっているが,写真中央付近の黒く見える部分が岩場(岩の上にヒノキやヒメコマツが密生している)
磯谷北又と南又の二又に到着。
磯谷北又と南又の二又に到着。
二又に広がる平坦地は,かつてクラモト(磯倉のクラの下,という意味だろう)と呼ばれ,出作り集落があった場所。かなりの規模の石垣が随所にみられる。
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二又に広がる平坦地は,かつてクラモト(磯倉のクラの下,という意味だろう)と呼ばれ,出作り集落があった場所。かなりの規模の石垣が随所にみられる。
苔むした石垣。
お宮の跡らしき小さな四角い石積み。
お宮の跡らしき小さな四角い石積み。
古い茶碗のかけらが転がっていた。当時の生活が偲ばれる。
古い茶碗のかけらが転がっていた。当時の生活が偲ばれる。
水路もきちんと石垣で組んであった。
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水路もきちんと石垣で組んであった。
さて,ここから磯倉のクラ(岩場)に直接向かうべく,磯谷の北又・南又の中間尾根(磯倉ピークの南西尾根)に取りつく。第二回の探索の際,下降時に使った尾根だ。
さて,ここから磯倉のクラ(岩場)に直接向かうべく,磯谷の北又・南又の中間尾根(磯倉ピークの南西尾根)に取りつく。第二回の探索の際,下降時に使った尾根だ。
この尾根,下部は穏やかで美しい広葉樹林が広がり,なかなかの隠れ紅葉スポット。期せずして紅葉狩りを堪能できた。
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この尾根,下部は穏やかで美しい広葉樹林が広がり,なかなかの隠れ紅葉スポット。期せずして紅葉狩りを堪能できた。
すんばらしい
この標高になると,カエデの色もよく冴えている。
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この標高になると,カエデの色もよく冴えている。
ミズナラの巨樹もあるよ
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ミズナラの巨樹もあるよ
しかし,ピクニック気分もそう長くは続かない。登高を続けると,しだいに左手に高々とそびえる岩壁が帯状に見え始める(木の間からなので写真が見にくくてすみません)。岩場エリアが近づいてきたのだ。
しかし,ピクニック気分もそう長くは続かない。登高を続けると,しだいに左手に高々とそびえる岩壁が帯状に見え始める(木の間からなので写真が見にくくてすみません)。岩場エリアが近づいてきたのだ。
シャクナゲの藪が現れると,磯倉のクラ(岩場)エリアは間近。濃い藪に覆われた急登で,登高スピードは一気に落ちる。
シャクナゲの藪が現れると,磯倉のクラ(岩場)エリアは間近。濃い藪に覆われた急登で,登高スピードは一気に落ちる。
しかも薄い積雪が現れ始め,枯葉の上に乗っていることもあって,かなりスリッピーな状況。沢足袋で来てしまったので足が冷たくて仕方ない。
しかも薄い積雪が現れ始め,枯葉の上に乗っていることもあって,かなりスリッピーな状況。沢足袋で来てしまったので足が冷たくて仕方ない。
尾根は急激に険しさを増し,岩場が断続的に現れ始める。
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尾根は急激に険しさを増し,岩場が断続的に現れ始める。
小さなナイフリッジ。戸渡りはちょっと怖いので,若干ゆるい右手側を巻き気味に進む。
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小さなナイフリッジ。戸渡りはちょっと怖いので,若干ゆるい右手側を巻き気味に進む。
尾根の両側には,覗き込むと背筋が寒くなるような急峻なルンゼがいくつも食い込んでいる。滑落したらひとたまりもなく谷底エクスプレス。
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尾根の両側には,覗き込むと背筋が寒くなるような急峻なルンゼがいくつも食い込んでいる。滑落したらひとたまりもなく谷底エクスプレス。
と,ちょっと驚く発見。なんと,明らかに人為的な切り株がある! こんな急峻な岩尾根に,伐採が入っていたとはにわかに信じられないのだが…。でも,よく考えれば,かつてここは,クラモトの出作り集落の「裏山」に過ぎなかったのだ。今回情報提供いただいた「磯倉の尾根のほうが行きやすい」というお話の通り,人が入っていたとしても不思議ではないのかもしれない。
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と,ちょっと驚く発見。なんと,明らかに人為的な切り株がある! こんな急峻な岩尾根に,伐採が入っていたとはにわかに信じられないのだが…。でも,よく考えれば,かつてここは,クラモトの出作り集落の「裏山」に過ぎなかったのだ。今回情報提供いただいた「磯倉の尾根のほうが行きやすい」というお話の通り,人が入っていたとしても不思議ではないのかもしれない。
やがて,大きな岩峰にぶつかるので,この岩峰の左手側面のバンドをトラバース。
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やがて,大きな岩峰にぶつかるので,この岩峰の左手側面のバンドをトラバース。
そしてたどり着くのが,この岩峰に挟まれた狭い鞍部。第二回の探索時にも,追い詰められるようにしてここにたどり着いた。今回も,他のルートがないか探しながら登って来たのだが,やはりここに来てしまった。磯倉のクラ(岩場)エリアの核心部に容易に入り込めるのは,やはりここしかないらしい。
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そしてたどり着くのが,この岩峰に挟まれた狭い鞍部。第二回の探索時にも,追い詰められるようにしてここにたどり着いた。今回も,他のルートがないか探しながら登って来たのだが,やはりここに来てしまった。磯倉のクラ(岩場)エリアの核心部に容易に入り込めるのは,やはりここしかないらしい。
尾根筋は岩壁にさえぎられており,クライミングの覚悟がない限り,尾根伝いの通過は不可能。
尾根筋は岩壁にさえぎられており,クライミングの覚悟がない限り,尾根伝いの通過は不可能。
せまい鞍部にひっかかった巨岩の下をくぐり抜けるように,左手の谷間へと急斜面を下降していく。第二回探索時はフリーで下降したが,今回は薄い積雪があり滑落の危険があるため,ロープを出した。
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せまい鞍部にひっかかった巨岩の下をくぐり抜けるように,左手の谷間へと急斜面を下降していく。第二回探索時はフリーで下降したが,今回は薄い積雪があり滑落の危険があるため,ロープを出した。
時折粉雪が舞う中,真っ白な雪に覆われた,不気味な谷間へと下降していく。
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時折粉雪が舞う中,真っ白な雪に覆われた,不気味な谷間へと下降していく。
見上げれば,霧氷をまとった磯倉のクラがいかめしく聳える。
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見上げれば,霧氷をまとった磯倉のクラがいかめしく聳える。
磯倉のクラ(岩場)の核心部の一つと思われる,谷間に降り立った。粉雪をまとった巨岩が累々と積み重なる。(「美濃徳山の地名」に記された地名でいうと,「ヘイロクボラ」という谷の上部だと思われる)
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磯倉のクラ(岩場)の核心部の一つと思われる,谷間に降り立った。粉雪をまとった巨岩が累々と積み重なる。(「美濃徳山の地名」に記された地名でいうと,「ヘイロクボラ」という谷の上部だと思われる)
下降してきた急斜面を見上げる。
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下降してきた急斜面を見上げる。
降り立った谷間の下方を見下ろした図。静寂のV字谷。
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降り立った谷間の下方を見下ろした図。静寂のV字谷。
ところで,第二回の探索時に撮影した岩穴は,あの岩の隙間だったかな?
ところで,第二回の探索時に撮影した岩穴は,あの岩の隙間だったかな?
そう,確かこれだ。でもね,この穴,だいぶ小さくて,如何せんオーラに乏しいんですよ。これくらいの岩穴なら探せば他にもあるので,やはりこれはベロリ穴ではないだろう。「美濃徳山の地名」では奥行25m,今回の新情報でも5〜6mと言われていることだし…。
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そう,確かこれだ。でもね,この穴,だいぶ小さくて,如何せんオーラに乏しいんですよ。これくらいの岩穴なら探せば他にもあるので,やはりこれはベロリ穴ではないだろう。「美濃徳山の地名」では奥行25m,今回の新情報でも5〜6mと言われていることだし…。
さて,今回はどこを探索しようかな…と周囲を見回していると,何と雪の上に大きなクマの足跡を発見! ベロリ穴が登場する「猟師と白い熊」の民話で語られている通り,やはりここはクマの棲家のようだ。もしかして,ベロリ穴の主かも?
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さて,今回はどこを探索しようかな…と周囲を見回していると,何と雪の上に大きなクマの足跡を発見! ベロリ穴が登場する「猟師と白い熊」の民話で語られている通り,やはりここはクマの棲家のようだ。もしかして,ベロリ穴の主かも?
とりあえず,このクマの足跡を辿ってみることにした。もしかしたら,クマの棲家とされているベロリ穴があるエリアに導かれるかも知れない。ただ,クマとの鉢合わせは避けたいので,クマの進行方向とは逆向きに(つまり,「行った方」ではなくて「来た方」に)足跡を辿ることにした。
※ 通常は,クマのフィールドサイン(足跡,爪痕,糞など)を見かけたら,できる限りその場から離れるべきですので,良い子はマネしないでね。念のため。
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とりあえず,このクマの足跡を辿ってみることにした。もしかしたら,クマの棲家とされているベロリ穴があるエリアに導かれるかも知れない。ただ,クマとの鉢合わせは避けたいので,クマの進行方向とは逆向きに(つまり,「行った方」ではなくて「来た方」に)足跡を辿ることにした。
※ 通常は,クマのフィールドサイン(足跡,爪痕,糞など)を見かけたら,できる限りその場から離れるべきですので,良い子はマネしないでね。念のため。
クマの足跡の逆向き追跡開始。まず,クマさんはこの狭いルンゼを登っていたので,苦労して攀じ登っていくが,途中でクマさんの足跡はぷいっと引き返していた…。なんだよ,無駄に登らされた…。
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クマの足跡の逆向き追跡開始。まず,クマさんはこの狭いルンゼを登っていたので,苦労して攀じ登っていくが,途中でクマさんの足跡はぷいっと引き返していた…。なんだよ,無駄に登らされた…。
そして次に,クマの足跡はこの岩に挟まれたせまい枝谷へ。なんだなんだ,ここにベロリ穴があるの?
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そして次に,クマの足跡はこの岩に挟まれたせまい枝谷へ。なんだなんだ,ここにベロリ穴があるの?
クマさんの足跡は,ためらうことなく一直線に谷間を進んでいた。
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クマさんの足跡は,ためらうことなく一直線に谷間を進んでいた。
しかしこの枝谷にはベロリ穴の姿はなく,クマの足跡は斜面をからむように稜線へ…。えええ,どこ行くのさ?
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しかしこの枝谷にはベロリ穴の姿はなく,クマの足跡は斜面をからむように稜線へ…。えええ,どこ行くのさ?
なんと,クマの足跡は稜線を乗り越え,一本東側の谷間へと続いていた…。この展開は想定外。(「美濃徳山の地名」に記された地名でいうと,「オオズイ」と呼ばれる谷だと思われる)
なんと,クマの足跡は稜線を乗り越え,一本東側の谷間へと続いていた…。この展開は想定外。(「美濃徳山の地名」に記された地名でいうと,「オオズイ」と呼ばれる谷だと思われる)
しかし,この谷も岩場だらけ! 少し降りて探索してみることに。
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しかし,この谷も岩場だらけ! 少し降りて探索してみることに。
うおー,なかなかのビッグウォール…。この一帯の尾根と谷は,本当に岩場だらけのようだ。しかし,見た限りでは,岩穴らしきものは見当たらず。クマさんの足跡も,ここで見失ってしまった。今回は時間がなく,あまりこの谷を探索できなかったが,今後もこの谷に入ってみる価値はありそうだ。
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うおー,なかなかのビッグウォール…。この一帯の尾根と谷は,本当に岩場だらけのようだ。しかし,見た限りでは,岩穴らしきものは見当たらず。クマさんの足跡も,ここで見失ってしまった。今回は時間がなく,あまりこの谷を探索できなかったが,今後もこの谷に入ってみる価値はありそうだ。
オオズイと思われる谷の源頭部から眺めた徳山湖方面。中央に本日のスタート地点である磯谷ベロリ橋が見える。蕎麦粒山や越美国境の山々にも,雪が来ているようだ。
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オオズイと思われる谷の源頭部から眺めた徳山湖方面。中央に本日のスタート地点である磯谷ベロリ橋が見える。蕎麦粒山や越美国境の山々にも,雪が来ているようだ。
仕方なく,元の谷に引き返し,谷のさらに上部を探索。目立った岩穴が見つからないまま,この巨岩に進路をさえぎられてしまった。頑張れば乗り越して先に進めそうだったが,時間も限られているし下降にも苦労しそうなので,ここでストップ。
仕方なく,元の谷に引き返し,谷のさらに上部を探索。目立った岩穴が見つからないまま,この巨岩に進路をさえぎられてしまった。頑張れば乗り越して先に進めそうだったが,時間も限られているし下降にも苦労しそうなので,ここでストップ。
うーん,この穴,浅いよなぁ。これは違うだろう。
うーん,この穴,浅いよなぁ。これは違うだろう。
奇岩にょきにょき。
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奇岩にょきにょき。
霧氷をまとった美しい壁。なかなかアルパインな眺めだ。
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霧氷をまとった美しい壁。なかなかアルパインな眺めだ。
さて,今度は谷の下流方向へ行ってみよう。実は,さきほどのクマさんの足跡が向かっている方向でもあり,あまり行きたくなかったが,前方を注視しクマ避けコールを繰り返しながら,急な谷底を慎重に下降していく。
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さて,今度は谷の下流方向へ行ってみよう。実は,さきほどのクマさんの足跡が向かっている方向でもあり,あまり行きたくなかったが,前方を注視しクマ避けコールを繰り返しながら,急な谷底を慎重に下降していく。
んんっ? 左岸の壁の上部に気になる穴らしき影を発見。でも,接近をためらうような急斜面にあり,角度を変えて観察すると穴も浅そうなので,たぶんベロリではなさそう…。
んんっ? 左岸の壁の上部に気になる穴らしき影を発見。でも,接近をためらうような急斜面にあり,角度を変えて観察すると穴も浅そうなので,たぶんベロリではなさそう…。
かなり急なので本当に下降できるのかためらわれるような谷だが,いざ下降してみると,途中までは割と簡単に下降できる。
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かなり急なので本当に下降できるのかためらわれるような谷だが,いざ下降してみると,途中までは割と簡単に下降できる。
こ,これは? うーん,でもこれ,狭いし(「美濃徳山の地名」では,ベロリ穴は「2〜3人並んで入っていける」とされている),攀じ登るのが容易でないような壁の上にあるので,これもベロリではないかな…。
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こ,これは? うーん,でもこれ,狭いし(「美濃徳山の地名」では,ベロリ穴は「2〜3人並んで入っていける」とされている),攀じ登るのが容易でないような壁の上にあるので,これもベロリではないかな…。
と,ついに高い滝が現れ,これ以上の下降は不可能になった。引き返そう。ところで,あの宙に浮いたみたいな巨大チョックストーン,すごいな…。(クマはどこかで谷の斜面を登り返したらしく,足跡は途中で消えていた。どうやらクマさんは,この険しいエリアの尾根と谷を縦横無尽に移動しているらしい。)
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と,ついに高い滝が現れ,これ以上の下降は不可能になった。引き返そう。ところで,あの宙に浮いたみたいな巨大チョックストーン,すごいな…。(クマはどこかで谷の斜面を登り返したらしく,足跡は途中で消えていた。どうやらクマさんは,この険しいエリアの尾根と谷を縦横無尽に移動しているらしい。)
ここにも大きな岩壁の割れ目が。でも壁の上部にありすぎ。これもベロリではないだろう。
ここにも大きな岩壁の割れ目が。でも壁の上部にありすぎ。これもベロリではないだろう。
日没まで時間がないので,探索終了とし,ロープを頼りに斜面を登り返す。残念ながら,今回もベロリ穴と確信できる穴は見つからず…。しかし,この磯倉のクラのエリアが岩場だらけであることを改めて確認できた。正直,ベロリ穴のひとつやふたつ開いてないと逆におかしいくらいの雰囲気だ。今後も探索の必要アリ。
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日没まで時間がないので,探索終了とし,ロープを頼りに斜面を登り返す。残念ながら,今回もベロリ穴と確信できる穴は見つからず…。しかし,この磯倉のクラのエリアが岩場だらけであることを改めて確認できた。正直,ベロリ穴のひとつやふたつ開いてないと逆におかしいくらいの雰囲気だ。今後も探索の必要アリ。
薄い積雪で滑りやすい急峻な尾根を慎重に下降し,二又のクラモトまで降りてきた。左手奥のこんもりした山が磯倉のクラがある尾根。こうしてみると,あの峻険な岩場も,クラモトの出作り集落の「裏山」にしか過ぎないという感が改めて感じられる。きっと昔は,ヒノキなどの部材を求める人や,それこそクマ打ち猟師が頻繁に入山していたはずだ。
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薄い積雪で滑りやすい急峻な尾根を慎重に下降し,二又のクラモトまで降りてきた。左手奥のこんもりした山が磯倉のクラがある尾根。こうしてみると,あの峻険な岩場も,クラモトの出作り集落の「裏山」にしか過ぎないという感が改めて感じられる。きっと昔は,ヒノキなどの部材を求める人や,それこそクマ打ち猟師が頻繁に入山していたはずだ。
暮れ行く磯谷をぶらぶら帰る。
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暮れ行く磯谷をぶらぶら帰る。
寺尾の手前で日没となったが,満月間近の月が非常に明るく尾根を照らしてくれて,ヘッドランプなしで下山することができた。
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寺尾の手前で日没となったが,満月間近の月が非常に明るく尾根を照らしてくれて,ヘッドランプなしで下山することができた。

装備

備考 ・ 40mロープ携行。磯倉の岩場エリアで尾根から谷に下降する際に使用。
・ それほど積雪はないことを想定して,足元はフェルトソール沢足袋+チェーンスパイクだったが,標高800m以上は薄い積雪がコンスタントにあり,正直後悔した。冬靴(磯倉の岩場エリアでは,アイゼンも必要)のほうがベター。

感想

 秋だ,紅葉だ,ベロリ穴探索だ! ということで,昨年に引き続き,今年も性懲りなく,紅葉(そして新雪)の磯谷を彷徨いつつ,神の化身とも言える白い熊が住まうという,伝説のベロリ穴を探します。
 今回は,ブラックさんからご提供いただいた新情報をもとに再探索を行う。大変ありがたいことに,ブラックさんがお知り合いの旧徳山村出身の方にベロリ穴について心当たりがないか聞いてくださったのである。そしていただいた貴重なお話は以下の通り。

【父親が磯谷で炭焼きをしており,自身もベロリ穴に行ったことがある方のお話(要約)】
・ ベロリ穴は,磯倉の岩場に開いた穴。
・ 磯倉の尾根伝いに行くと行きやすい。谷伝いに行っても行けるが,最後,急な岩場になるので注意(ザイル持参がおすすめ)。
・ 磯谷北又をしばらく行くと,二又に分かれるので,向かって左側の枝谷を登った記憶がある。最初は平坦で登りやすいが,奥に行くにしたがってタロ(滝のことでしょうか? hillwanderer注)も多くなるので注意。
・ 穴はしゃがまないと入れない。奥行きは5〜6mくらいだった気がする。

【父親が熊撃ち猟師をしており,父親に連れられてベロリ穴に行ったことがある方のお話(要約)】
・ 磯谷を登っていくと磯倉の山頂近くに大きく崩落した崖のような白いところがあり,その右側か左側か忘れたが,崖みたいなところのキワにベロリ穴があった。位置的には相当上のほうで,谷からすぐのところではない。

 この2つのお話を一読してまず気づかされるのは,どちらのお話も,私が第二回探索時に探索した「磯倉のクラ」(磯谷北又・南又の中間尾根(磯倉ピークの南西尾根)の中腹にある大規模な岩場。「美濃徳山の地名」では「イソグラ」と記載されている)をベロリ穴のありかとして言及されているらしいということだ。「磯倉の尾根」(おそらく,磯谷北又・南又の中間尾根のことだと思われる)伝いに行ける「磯倉の岩場」はここ以外にあり得ないし,「磯倉の山頂近くの大きく崩壊した崖のような白いところ」もここしか思いつかない。正確に言うと,磯谷北又の源頭付近にも白い崖のような場所があるが,こちらは「磯倉の尾根伝いに行ける」という条件を満たさなくなってしまう。
 ただ,一つ目のお話のうち,「磯谷北又をしばらく行くと二又に分かれ,その左側の枝谷を登った」という箇所は,地形図を見ると分かると思うが,ちょっと解釈が悩ましい部分。とりあえず,今回はこの2つのお話が「磯倉のクラ」を指しておられるものと考えて探索を進めたい。
 磯倉のクラは,第二回目の探索で既に入ったことのあるエリアだが,この時は,谷伝いで磯倉のクラに向かおうとして難渋し,時間を食ってしまったことと,そもそもこの頃はベロリ穴をフィクションの存在ではないかと疑っていたので,磯倉のクラの岩場の一部を見ただけで満足してしまい,実はあまりしっかり探索できていなかった。今回は,「磯倉の尾根伝いに行くと行きやすい」というお話を注目し,尾根伝いで磯倉のクラエリアに進入し,さらに詳しい探索を行おうと考えた。
 
 さて,実際の探索である。まずビビらされたのが,今回の探索予定地である磯倉のクラエリアに予想以上の積雪があったこと。先週末に降雪があったことは知っていたが,今週中ごろの気温上昇でもう溶けただろうし,当日朝に車から降りたところ,気温は低いものの徳山ダム周辺の山には全く雪の影がなかったため,たいした積雪はないものと考え,足元はフェルトソール沢足袋(+チェーンスパイク)で入山してしまったのである。当然,滑るし冷たいし…。でもそこは慎重な行動と根性でカバーし,真っ白な霧氷をまとって荘厳とも言える姿でそびえたつ磯倉のクラの岩壁の下に降り立った。
 結果,またしてもベロリ穴と確信できる穴を発見できなかったのは記録の通りなのだが,やはりこのエリアは岩場だらけで,今回情報提供いただいたお話の通り,ベロリ穴が存在する可能性は十分ありそうであり,今後も再探索の必要ありということは改めて確認できた。また,今回登路とした尾根上で人為的な切り株を複数発見できたことも興味深かった。正直,この鷹の巣のような険阻な尾根にわざわざ木材を求めて人が入り込んでいたこと自体,驚くべきことなのだが,現在では秘境のようにしか見えない磯倉のクラも,かつてはクラモトの出作り集落の「裏山」に過ぎず,山仕事の方々(その中に,クマ猟師の方ももちろん含まれるだろう)が少なからず入っていたことを実感することができた。この場所にベロリ穴のような伝説が生まれた素地は,そのようなところにあるのだろう。
 また,磯倉のクラの岩壁の下で大きなクマの足跡を発見したことも,自分としては嬉しい出会いだった。残念ながらクマの足跡の追跡(足跡の主と鉢合わせしないよう,進行方向と逆向きの追跡)は実を結ばなかったが,この峻険な岩場が実際にクマの棲家になっていることは確実なようだ。もちろん,どこかにクマの冬眠穴だってあるだろう。そしてそれがかつて麓の住人の方々にベロリ穴と呼ばれていた穴であったとしても,不思議ではない。
 最後に,情報をいただいたブラックさん,そして話主の旧徳山村ご出身の方々に厚く感謝申し上げます!

<余談その1>
 今回情報提供いただいたお話ではベロリ穴は磯倉のクラにあるとされている一方,3回目と4回目の探索で参考にした通り,「美濃徳山の地名」では磯谷北又右岸のタワンボラにあるとされていることは興味深い。これは私の憶測でしかないのだが,もしかしたらベロリ穴と呼ばれる穴は複数あるのかもしれない。長い歴史の中で、様々な人が様々な機会に山中で見つけた穴を,それぞれベロリ穴として後世に伝えてきたのではないだろうか。そうであるとしたら,真のベロリ穴が一つだけあるわけではなく,どのベロリ穴も等しく「ベロリ穴」と呼んでいいのだと思う。もしかしたら,我々にできることは,真のベロリ穴を「特定」することではなく,様々なベロリ穴伝承に教えを受け,できる限り多くのベロリ穴を見つけることなのかもしれない。自分としては,こう考えたほうがしっくりくる気がするが,どうだろう。

<余談その2>
 今回登路とした磯谷北又・南又の中間尾根,尾根伝いは途中で岩峰に阻まれるのでとても無理ですが,今回のように谷に降りて迂回すれば,どうやら岩場の上部に抜けてそのまま磯倉ピークに至ることが可能らしいことが分かってきました。この尾根から磯倉に登るのも登山ルートとして一興かも?

※「大人の水遊び」のもんりさんもベロリ穴を探索されています。おや,もんりさん,その穴は…!(もんりさんと足並みを揃えて場所などの詳細は伏せますが,この穴,私の記録にもちょこっとだけ登場したことのある穴です。)
・ 磯谷北又枝沢の沢登り(徳山ベロリン)https://ameblo.jp/pangani/entry-12830257735.html

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