黒部下廊下
山キチどん
その他3人 - GPS
- 12:24
- 距離
- 25.7km
- 登り
- 1,279m
- 下り
- 2,203m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 6:43
- 休憩
- 0:19
- 合計
- 7:02
| 天候 | 1日目(10/15)：快晴 2日目(10/16)：快晴 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2016年10月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
下山口：黒部峡谷鉄道欅平駅（自家用車は回送サービス利用） |
写真
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岩壁を穿って造った道であることがよく解る
欅平上部展望台より
感想
1日目(10/15)： 快晴
黒部川は上流から上廊下、中廊下、下廊下とその渓谷美を現してきたが黒部ダム建設によって中廊下はダム湖に水没した。黒部ダムから下流の下廊下は断崖絶壁に付けられた道が危険極まりないが上級の登山者に愛されている。下廊下の南半分は旧日電歩道と呼ばれ日本電力�蠅�黒四ダム建設の調査の為急峻な黒部川の岩壁に掛けた桟道が由来だ。仙人ダムより下流、北半分は東洋アルナムがそれ以前に開削し水平歩道と呼ばれている。
天候不順が続いた今秋で一番の晴れとなった週末、山岳会メンバー4人で黒部ダムから欅平へと下廊下を歩いた。今年は異常な暖冬で例年なら残雪でほんの数日しか正式開通しないが今年は雪の痕跡すら目にすることなく歩くことができた。
夜行列車が無くなり、さわやか信州号も無くなり、早朝に扇沢に着く方法は自家用車しかなくなってしまった。そうなると同じ場所に下山して来るという制約が伴う。それを補う商売が自家用車回送サービスで今回はお世話になった。N尾さんとK藤さんに切符行列に並んでもらい、その間にT橋さんと大町温泉郷の案内所に戻り車を預けた。料金はJAF割引で18,000円と高く見えるが120�劼離織�シー乗車を考えると安いものだ。しかも送迎車で扇沢まで送ってくれた。10月の連休が過ぎトロリーバスは始発が7:30と1時間遅くなり快晴の登山を目指す登山者で切符売り場は長い列ができていた。
“トロリーバス”と云われているが分類上は“無軌条電車”と云われるれっきとした鉄道でアナウンスでも「次の列車は」と言っていた。定刻、バスならぬ電車の2台目に乗り黒部ダムへと向かった。建設工事の途中で大破砕帯にぶち当たり難航した工事の様子は、石原裕次郎の「黒部の太陽」で見たとおりだ。トンネルには破砕帯の箇所が電光で示されていた。
“列車”が到着すると観光客は黒部ダムの展望台に向かうのだろうが、この便は殆どが登山者でこれまた大半が下廊下へと下りて行った。我々もK藤さんのトイレを待って出発した。大勢の人で今日の阿曽原泊りは大変なことになりそうだ。先ずはダムの最下部まで下り堰堤の踏み板で黒部川を渡り左岸に取付いた。日電歩道は粗全て黒部川の左岸を高巻いて付けられている。内蔵助谷までは比較的穏やかな道だったが内蔵助谷出合を過ぎると俄然厳しさが増し大タテガビン南東壁は黒部三大岩壁の真下をへつった。昨年は残雪が多く遂に開通することなく終わってしまった日電歩道だが今年は異常な暖冬で北アルプスも雪が極端に少なかったので8月初めにはこのルート上の雪は無くなったそうだ。しかし桟道は一冬越すと傷みが激しく、補修に時間が掛かったようだ。いくら補修されても危険さは最上級で登山者もヘルメットを被っている人が多かった。
対岸に鳴沢、鳴沢小沢、新越沢など後立山連峰の急峻な山から流れ落ちる谷は滝が連続し豪快な眺めを示していた。黒部別山谷は黒部別山北峰の懐から切れ込んだ谷で、丸太橋が掛けられ渡渉した。対岸はアカムケの壁で白竜狭に繋がり例年遅くまで残雪が谷を埋める地帯だが今年は雪の欠片も見ることはなかった。旧日電歩道最大の見せ場は十字峡で剱沢と棒小屋沢が東西から黒部川に流れ込む。剱沢を吊橋で越えるが一人づつ渡らなければならない。吊橋の南側は広場になり登山者が憩っていた。
仙人山ガンドウ尾根に源を発する半月沢の出合付近は半月狭と呼ばれS字狭に繋がるが渓谷の対岸にトンネルの出口のような施設が見えて来た。これは黒四地下発電所で発電された電気を運ぶための電線の出口で二ヶ所あり黒部川に纏わり付きながら里へと下って行く。旧日電歩道は東谷の出合で60m余り標高を下げ東谷吊橋で右岸に渡った。関電の施設の広場に到り暫し休憩した。作業道となり東谷山の尾根の張出しをトンネルで抜けて北に回り込むと雲切谷と仙人谷が黒部川に流れ込んで仙人ダムで堰き止められていた。旧日電歩道と呼ばれるのは此処まででこの先は水平歩道と呼ばれている。水平歩道は960m前後まで高度を上げると欅平の上まで阿曽原を除いて略この高度を維持しているため名付けられたようだ。
仙人ダムの堰堤で再び黒部川を渡り左岸に戻った。少し下流には関西電力専用鉄道の軌道と導水管がセットになった鉄橋が架かっていた。平成10年11月に関西電力の見学会に参加したときこの鉄橋の上でトロッコを降りトンネルに入って行って黒四発電所を見学した。左岸に渡り、登山道を探すと建屋内に導かれ、折れ曲がった突き当りに「←雲切新道 水平歩道➝」の指導標があり右に曲がった。屋内の通路は冬季歩道のようなトンネル部分もありやがて専用鉄道と交差した。鉄橋には屋根が付けられ今でも乗降場の役目も果たしているようだった。反対側に目をやると高熱隧道で吉村昭の小説「高熱隧道」で詳しく記されている。熱気は今も変わらず湿気も高いので忽ちレンズが曇り、息苦しさを感じた。トンネルを出ると人見平で関西電力の寮があり発電所の社員がここで暮らしているようだ。
人見平を抜けると再び登山道となり東谷吊橋へ下った分だけ登り返さなければならない。坊主山東尾根の先端を回り込み、暫く水平に進んだが再び下りに転じる処に山を登って行く微かな踏み跡を発見、嘗ての仙人温泉から仙人谷の北岸の中腹に付けられていた道で平成15年に剱北方稜線を縦走し下りて来た道だが、雪渓が遅くまであり危険だったので平成19年に雲切新道が開かれ廃道になってしまっている。
100m余り下り阿曽原小屋に到着した。今日の小屋は満室で飛び入りでもどんどんやってくるので大変な状態になるだろう。テン場はと見るともうかなりのテントが張られていた。テントは一人700円、お風呂代500円も徴収された。4テンを張るスペースを探すのは大変で結局トイレの前しか場所がなかった。阿曽原温泉は50m程下にあり10分程下らなければならない15:30から1時間は男性、16:30からは女性の時間となり以後繰り返す。10分も下るが河原からはまだ高い所にあり脱衣場もなく露天風呂が一つあるだけだった。
加藤さんの入浴上がりを待って夕食にして小屋のビールロング缶（700円）と持ってきたウイスキーが心地良く回り真っ先に脱落して寝てしまった。
2日目(10/16)： 快晴
4時頃になるとテン場はざわざわしだした。目が覚めてしまい予定の4:30より早く起床し朝食の準備を始めた。まだ真っ暗なうちからヘッドライトを付けてどんどん出発して行った。今日の行程は欅平までの10�厖召蝓�5時間のコースタイムだ。明るくなり6時少し前に出発した。先ずは阿曽原谷まで下降し、それからの登り返しは150mで水平歩道の標高960m前後まで戻った。途中振り返ると阿曽原小屋とテン場が望め下の方には温泉の湯気も上がっていた。
最初に通過した括れは巨大な一枚岩の水が流れるナメ滝で名前があってもよさそうな規模だった。水平歩道は黒部支流の谷が深く日電歩道のように真っすぐには進まず谷を通過するたびに大きく湾曲している。坊主山の東尾根の先端を回り込むように進行方向が西に向くと折尾谷の深い括れで、先端部は堰堤が築かれ登山道はその中で10m余りのトンネルを潜って対岸に抜けた。折尾谷の流量は左程ではなく、丸太橋でも良さそうに見えるが雪の積もり方が半端ではなくこう云う対策が必要なようだ。
黒部川はどんどん高度を下げて行くのに水平歩道の標高は殆ど変わらず川床は250mも下になってしまった。桟道を歩く高度感は凄まじく、岩に張られた針金に手を添えないと断崖の縁では足が竦みそうだ。尾根の張出したところは大太鼓と名があり対岸の奥鐘山(1,543m)が近づき、西壁が黒部川から直接立ち上がり圧倒的な迫力を示していた。これは「黒部の怪人」と呼ばれ黒部三大岩壁の一つに数えられている。他は昨日通った丸山東壁の「黒部の巨人」と大タテガビン南東壁の「黒部の魔人」で全部下を通ったことになった。
再び尾根を回り込み西に向かうと志合谷の切れ込んだ谷で両サイドは岩壁に水平歩道が穿たれていた。折尾谷以上に嫌悪な谷で水平歩道は150mのトンネルで通過する。トンネル内は真っ暗で足元は湧き水が流れていた。水平歩道の最も象徴的な部分でヘッドライトを付けて突入する。素掘りの部分があり天井低く背を屈めないと頭をぶつける。志合谷北岸は険しく桟道が付けられない所にはトンネルが穿たれていた。断崖の右側が志合谷から黒部川に戻ると奥鐘山の西壁が真向いとなり圧倒的な迫力を顕示していた。奥鐘山の陰で見えなかった名剣山(1,906m)が姿を現し、その谷間の祖母谷が黒部川に合する所にある欅平の位置が判別できるようになってきた。
谷の切れ込みが多くなってきて、2.5万図上でもかなり湾曲している。蜆谷（しじみだに）の大きな括れを越えると送電鉄塔に達し後立山連峰が旭岳(2,867m)から杓子岳(2,812m)まで望めた。欅谷で2.5万図に名前のある谷は終り再び送電鉄塔が現れると欅平上部展望台で後立山連峰は不帰嶮、唐松岳(2,696m)まで姿を現した。今日は遠望も良く雲一つない快晴で堪能できた。阿曽原からずっと坊主山の北尾根の山腹を歩いてきたが、上部展望台で尾根先端部の稜線となりパノラマ展望台(858m)に達した。その名の如く展望は素晴らしく後立山連峰の他毛勝三山も望むことができた。
折り返すように欅平への下山路となり260mの下降で欅平駅に到着し、長かった下廊下縦走を終えた。7分後にトロッコがあったが少し寛ぎたく1本後の10:43発のチケットを取った。下りの列車は観光客でどれも満員だったが、まだこの時間の上りは比較的余裕がありゆったり座れた。釣鐘駅に達すると毎年必ずあった百�涼�の万年雪が今年は完全に溶けてしまい、来年からは「万年雪」ではなく「一年雪」とでも呼ぶのだろうか？ 宇奈月駅に到着すると駅前の駐車場に回送されている筈のT橋車を探し出し、無事に乗り込んだ。トロッコに乗っているとき柳橋駅の手前で対岸に見えた“とちの湯”が今日の立寄り湯だ。黒部川の対岸を迂回して辿り着いた。今年はどうしたことかカメムシが大発生し、温泉の施設の内外はカメムシが占拠していた。温泉でゆっくり過ごし北陸道に乗って帰京の途に付いた。
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