北岳バットレス第4尾根
コースタイム
[2日目] 1時:起床-2時:白根御池小屋-5時20分頃:Dガリー登攀開始-第4尾根下部岩壁-10:20第4尾根テラス-16時前頃:最終ピッチ(チムニー)登攀終了-平坦地(休憩)-17:15北岳山頂-19:20白根御池小屋(幕営)
[3日目] 6:50白根御池小屋-9:00広河原
※アプローチや下山に時間がかかったのは体力がないからだが、登攀そのものにどうしてこんなに時間がかかったのかしら?(^^;
貸し切りだったので、他のパーティに迷惑をかけずに済んでよかった。
ロープワークのトラブルやルーファイに悩んだり、その他で1時間程度のロス。
残置無視によるランナー及び終了点構築の時間増加を約1時間半(5分×19P)と見積もっても、残り7時間半もかかっている計算。
クライミングそのものは、平均より遅いとは思えないし…。
ピッチ数が多ければ多いほど、上記いずれもが掛け算で影響するので、ロープワークのロスをなくし、あとは全てを少しずつ洗練させるしかないのかしら?
※登攀日となる2日目、ヘリが来るからということで、一旦テントを撤収しなければならず参った。
ヘロヘロになりながら帰ってきてから、また改めてテントを設営する羽目になるとは…。
※追記
北岳バットレスの登攀に10時間もかかったと言うと驚かれるのですが、だったら自分で登ってみてくださいよー、と言いたいですね(笑)。
残置無視(小垂壁除く^^)、フリー、初見(トポはOK)で、bガリーからなどと言わず、きっちり下部岩壁から。
特に初見というのが案外難しいんじゃないでしょうか?
(自分は、4尾根本体だけ初見でしたが)
1回目は連れられで登ってしまっている人が多いでしょうし、そうでなくても先行パーティがいないという幸運に恵まれなければならないですからねー、ウシシ^^。
天候 | <晴れのち霧> 北岳バットレス第4尾根に行ってきた。 今年どうしても登りたかったルート。 時間はかかったが、下部岩壁から第4尾根本体を経て山頂まで登りきり、思いを果たすことができた。 それもこれも、一緒に行ってくれたcherroさんのおかげ。 バリエーションルートとしては初級で、クライミングそのものは難しくないが、体力的にたいへんな登山だった。 あくまでも自己満足だが、十分自己満足していいと思う。 特にcherroさんは経験の少ない中で、より頑張った。 お互い上手く出来なかったことについては、貴重な経験として今後に活かしましょう。 北岳バットレス第4尾根は、そもそも自分が行きたかったルート。 ここに至るまでの練習も含め、お付きあいいただいて本当にありがとうございました。 そして、ご自身も達成感を覚えてくれたなら嬉しい限りです。 懲りずに、今後ともよろしくお願いします^^。 |
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過去天気図(気象庁) | 2015年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
・いわゆる本チャン、バリエーションルート。 自分の定義とは異なるが、ヤマレコには他に適切なジャンルがないので、アルパインクライミングに分類した。 →やはりどう考えてもアルパインクライミングではないので、フリークライミングに修正。 ・このルート(特に複雑な下部岩壁)をトポを見ないで登ることは、自分の実力では到底無理なので、昨年同様Mガイドのスーパートポを参考にした。 ・最終ピッチの城塞チムニーを除き、ピッチ毎にリードを交替し、つるべで登った。 ・4尾根本体、マッチ箱の頭からの懸垂下降支点と、その手前の垂壁の中間支点だけは残置支点を使った。それ以外の支点はカムとスリングを使用。 ・ちょいとトラブルのあった4尾根本体4Pの垂壁で、ロアーダウンした以外は、すべてフリー。 ・下部岩壁で虫にたかられ、虫除けを持って来なかったことを後悔した。 ・bガリーから先行したパーティがいたのかもしれないが、dガリーから下部岩壁も、4尾根本体から山頂までも貸し切り。前後に誰もいなかった。 自分たちで登攀ラインを見出だすことを楽しみ、後続に迷惑をかけることもなく、ラッキーだった。 |
写真
装備
備考 | ・カム…スモール〜キャメロット#3まで2セットから, スモール〜中間の似たようなサイズを間引いた。キャメロット#4は持って行かなかったが, 問題なかった。 ・ピトン…5種類1セット(結果的に使用せず)。 ・アルパインQD…各自5本持って行ったが, 各自3本で十分だった。 ・スリング…120cmスリング各自2本+240cm1本。240cmは役に立った。 ・環付カラビナ…各自2。 ・カラビナ…各自2。各自1でよかったか? ・アタックザック…ザックは一つでフォローが背負うシステムを取ったが, 重すぎた。リードも少しは背負った方がよかった。正直リードの方が楽だった。 ・その他…ルベルソ, ハンマー, ナイフ, 捨て縄(共同)。 ※持って行かなかったもの…ナッツ, ナッツキー, PAS。 |
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感想
[ピッチごとの備忘メモ]
自分用の備忘メモで、記憶違いも多々あると思いますので、当てにしないでくださいね。
このルート(特に複雑な下部岩壁)をトポを見ないで登ることは、自分の実力では到底無理なので、昨年同様Mガイドのスーパートポを参考にした。
尾根中間部にある4尾根本体の取りつきまでは昨年登っているので大体は覚えていたが、昨年とは一部違うルートを通ったと思われる。
○dガリーから4尾根下部岩壁
全て残置無視、フリー、広義のナチュラルプロテクション
・1P目 dガリー…g
昨年はパートナーが出だしでピトンを打ってリードしたが、今回自分がリードしてみるとカムが決まるラインが見つかったので、ピトンは使わなかった。
・2P目 dガリー継続…c
昨年は先行者を避けるためルンゼに挟まれた小尾根を自分がリードしたが、今回は誰もいなかったので、cherroさんがdガリー本筋と思われる左のルンゼを選択。
その後右にトラバースすることが自分は分かっていたので、右の小ルンゼを選択してもらいたかったが、大きな問題はないのでお任せした。
このピッチは、スーパートポにロープレスと書いてある部分を含む。
・3P目 dガリー継続…g
右にトラバースする踏み跡が見えたので、途中からトラバースしてピッチを切った。
・4P目 崩壊箇所トラバース…c
恐らく昨年トラバースしたところとは違う崩壊箇所だと思う。
ノープロだが、ロープをつけたままトラバースしてもらった。
・5P目 フレーク…g
ここのルーファイで色々と迷ってしまった。
踏み跡を辿ってそのままトラバースし続けたらcガリーに出てしまい、そこからcガリー経由で4尾根テラスに向かった方が速いということは分かっていたが、下部岩壁を省略したくなかったので一旦戻った。
結局現場判断で決めたフレークのラインを登ったら下部岩壁核心のクラック取りつきに辿り着いたが、これがスーパートポにある下部岩壁の1P目だったのかどうか、未だによく分からない。
・6P目 クラック…c
下部岩壁核心のクラック。
昨年もフォローでザックを背負って登ったが、昨年よりは簡単に感じた。
クラックと言ってもハンドジャムが必要なのは1〜2手だけで、それ以外はいいホールドを使える。
・7P目 ハング下からリッジへ…g
ほぼ歩き。ノープロで右から回り込んでハング上のリッジでピッチを切った。
・8P目 リッジ…c
出だしの緩い傾斜から一旦平坦なところに出て、その先の傾斜が強くなるところでcherroさんがルートに迷っていたので、ピッチを切ってもらった。
・9P目 リッジ継続…g
昨年は自分がピッチを切らずに継続して登ったラインなのだが、すっかり忘れており、はてさてどこを登ればよいやらと行ったり来たりしてしまった。
結局右から巻き気味に上部のリッジに上がり、そのままリッジを登った。
案外難しいと思った。
・10P目 リッジ継続…c
また傾斜が緩くなったところから這松を抜けて4尾根本体のテラスに出た。
○4尾根本体
4P目を除き残置無視、フリー、広義のナチュラルプロテクション
・1P目 クラック…g
4尾根本体の核心と言われているクラック。
昨年見たときは短いし簡単そうと思ったが、いざ登ってみるとかなり広いクラックで、簡単というほどでもなかった。
出だしで一手フィストジャムを使うところが核心で、その後はホールドを使える。
cherroさんはフィストでも広すぎるので、リービテーションで登ったとのこと(笑)。
クラックは短いので、そのまま緩傾斜を進み、できるだけロープを伸ばした。
ここからピラミッドフェイスの頭までは幅の広い緩傾斜が続いていて、どこでも登れる感じなので、トポにあるルートだったかどうか分からない。
・2P目 緩傾斜継続…c
ピラミッドフェイスの頭手前まで。
cherroさんに、白い岩のクラックはどれかと訊かれたが、さっぱり分からなかった。
・3P目 ピラミッドフェイスの頭を巻く…g
ピラミッドフェイスの頭を直登するのかと思い、一瞬ぎょっとしたが、右から簡単に巻けた。
この辺りはトポと照合できず。
このピッチで自分がその先の小垂壁手前までピッチを伸ばしていればよかったのだが、安定したテラスで終了点作りにちょうどいいピナクルを見つけ、歩きの部分を残してピッチを切ってしまったため、次のピッチでcherroさんを悩ませることになってしまった。これは自分のミス。
・4P目 小垂壁からマッチ箱の頭…c
小垂壁にノープロで取りつき、クライムダウンできなくなったため、やむを得ず残置ピトンにクリップしてロアーダウンしてもらった。
ここは唯一カムでプロテクションが取れないピッチで、残置無視するにはピトンを打つしかない。
自分が真下でビレイしていれば相談できたのだが、自分の場所からは何をしているのか見えなかった。
結局自分は歩いてそこまで行った。
原因は色々あるが、まずは自分がピッチを切った場所が悪かった。
小垂壁の上部は見えていたので、その手前までロープを伸ばすべきだった(小垂壁の取りつきも平坦なテラスだった)。
cherroさんは恐らくそれまでが簡単だったので、その延長のような感覚で取りついてしまったのだろう。
またそこまで全てカムでプロテクションが取れていたので、ピトンを置いていってしまった。
取りつく前にピトンを取りに戻る、核心手前だったので一旦ピッチを切る、あるいは会話のできる距離だったので自分を呼び寄せるべきだったというのが、二人で出した結論。
そして、そもそも自分がそこまでロープを伸ばしていれば、そこで相談できたことなので、申し訳ないことをした。
改めてピトンを打つかどうかはお任せしたところ、cherroさんは残置だらけで打つところがないと判断し、残置ピトンにクリップしてフリーで登った。
自分がフォローしてみると体感5級ぐらい、ホールドの細かいスラブで、プロテクションさえ取れば大したことないが、さすがにノープロで登るべきところではなかった。
また、両手を使ってピトンを打ちながら、フリーで登るのは難しいのではないかと思われる。
・5P目 マッチ箱の頭から懸垂下降
どこに下りればいいのかよく分からず悩んだが、cherroさんのアドバイスで、かなり下の方だが平坦なところに下りた。
ここで支点を作れたので、これは正解だったが、懸垂下降のロープワークでちょっと失敗。
50mロープ一本で足りるので、巻き上げたロープから一本だけ取り出そうとしたら絡んでしまった。
もう一本も一旦畳まなければならないのだから、二本同時に作業すべきだった。
<追記>
後からもう一度よく考えてみたら、もっとマシな方法があった。
フォローで到着した自分がセルフビレイをとって、ロープを2本ともハーネスから外し、懸垂下降支点に通して連結する。上になっているフォロー側からロープを落としていけば絡むことはないだろう。そして、落とし止めになっているリード側のロープを最後に外して、末端を落とせばよい。
懸垂下降を終えて、ロープを引き抜いてから2本同時に畳み直せば、時間的ロスも少ない。
・6P目 dガリー右端ルンゼ…g
上から見ると急傾斜でプロテクションも取れないように見えたが、下りてから見上げてみると緩傾斜で、プロテクションも豊富に取れた。
・7P目 dガリー右端ルンゼ継続〜旧枯木テラスまで…c
枯木テラスの先が崩壊箇所で、断崖絶壁。この先は恐ろしいトラバースですよと、cherroさんに脅された。
・8P目 旧枯木テラス〜城塞チムニーまでトラバース…g
手がかりはガバッと持てるが切れそうに尖ったリッジ。
リッジの向こうは断崖絶壁、こちら側は足ががりのないスラブで、途中で途切れたところを跨がなければならない。
ほぼノープロでトラバースしたので、恐ろしかった。
この部分はそう遠くない将来、崩壊するのではなかろうか。
残置終了点は城塞チムニーのやや下のスラブにあったが、チムニーそのものに終了点を作ったので、次のピッチでスラブパートは省略できた。
・9P目 城塞チムニー…g
cherroさんが途中までリードしたが、2つ目のカムが決まるところまで手が届かないということで、自分に交替。
見た目簡単そうだったが、いざ登り始めてみると、出だしは意外に傾斜が強かった。
ズリズリ這い上がって次のカムを決めるところまでランナウトするのに、ちょっと勇気が必要。
残置ピトンもあるが、使わなくてもプロテクションは取れる。
ここでリードを交替するとき、またロープが絡んでしまった。
恐らく自分が巻き上げたロープを引っくり返して渡すときのやり方が雑だったからだろう。練習しなければ。
・10P目 緩傾斜から安定した広場まで…c
トポでは前のピッチで終了、その先はロープレスとなっているが、ロープをまとめるには安定していなかったので、ロープをつけたまま登ってもらった。
・山頂まで
安定したところでロープやギアを整理しつつ休憩。
その先は、お花畑についた明瞭な踏み跡を辿ると登山道に合流し、登山道を通って山頂まで。
途中で雷鳥が目の前に現れ、癒された。
北岳に登頂したのは始めてで、それがバットレスだったので嬉しかった。
・山頂から白根御池小屋
稜線は涼しくて快適だったが、樹林帯に入ると蒸し暑くて地獄の下山となった。
2時に白根御池小屋を出発して、帰って来たのが19時半。
17時間半行動というのは、自分史上最長。前日の20kgを超える歩荷と合わせ、疲れはてた。
時間がかかってしまったのは、選んだルート、スタイルに加え、スキル不足、体力不足が要因だが、そういった現実の中で二人とも精一杯頑張ったと思う。
誰かに評価してもらいたくてやっているわけではない。
あくまでも自己満足だが、十分自己満足していいと思う。
特にcherroさんは経験の少ない中で、より頑張った。
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