三ノ沢から槍ヶ峰と三ノ峰往復


- GPS
- 05:09
- 距離
- 4.9km
- 登り
- 727m
- 下り
- 728m
コースタイム
- 山行
- 4:27
- 休憩
- 0:42
- 合計
- 5:09
天候 | 曇時々晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
踏み跡は明瞭ながら、ルート外す可能性あり。崩壊、滑落、転落要注意。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
|
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感想
梅雨のさなかの三連休、天気予報も定まらないが前線は南下傾向にあり、日本海側に期待が持てるところだ。夏になるとアルペンな空気を吸いたくなるのが人情。我々の暮らす阪神間から日帰り圏内にある山で、アルペンな雰囲気を持つ唯一の山が大山だろう。二週間前に訪ねた冠山(福井・岐阜県境)ではニッコウキスゲが完全に消滅していて、ここのところ山の花から見放されてもいる。大山は花にも恵まれた山だ。ただし、西日本には2000mを越える山は一つとてないから、稜線上でも真夏は暑さから解放されるわけではない。東京にいるときには暑気払い標高は2500mと思っていたし、東北では少なくとも1500mは越えないと、という感じだったので、西日本で1700m、というのでは、涼気は望めない。
昨日まで”てんくら”予想で土曜日が「C」だった大山山地、直前に「A」にかわっている。明日の日曜日にはもう「C」予想だから、今が山行の好機だ。大山最高峰の剣ヶ峰に登るルートとして知られる三ノ沢にはまだ行ったことがない。槍ヶ峰の西隣の三ノ峰から剣ヶ峰の間の稜線は崩壊が進んでいてリスクがあると聞いている。asakinuは近頃ふらつき傾向が強まっているし、kinuasaは右肩の腱板断裂で右手に力を入れられない状態が続いている。ここは安全第一で、三ノ峰までとしよう。花にはちょっと中途半端なタイミングだが、なにか咲いている筈だ。あとは、天気がどこまでもってくれるかである。
六甲・北六甲有料道路から中国道に入り、米子道で蒜山ICへ。慣れた道だが遠い。出発時には怪しげだった空模様も、米子道を北西に向かって走るうちに薄日も射すようになり、期待感が高まっていく。蒜山山麓のちょっと洒落た雰囲気の高原地帯を抜けて大山山麓道路を鍵掛峠の駐車場に向かう。鍵掛峠は大山連峰の格好の展望台だ。峠についた時には山にかかっていたガスもとれて、今日目指す槍ヶ峰から三ノ峰の稜線を目前に眺めることができた。1700m程度の山とは思えない高度を感じさせる迫力ある姿の山々である。駐車予定の文殊堂へは鍵掛峠からほんの僅かの距離だ。昨年登ったキリン峠東の稜線への入口(文殊峠入口)を過ぎて三ノ沢の橋を渡ったところに文殊堂の小さな祠はある。そのすぐ下の広い駐車スペースに車を置く。
三ノ沢右岸の工事用道路を登っていくが、意外にすぐに道路は終わって、山道が始まる。よく踏まれているがマーキング等はほとんどない。山道に入ってすぐの堰堤を越えてルートは涸れた三ノ沢の左岸の林下についている。よくふまれた道だ。いくつかの堰堤を左岸沿いに越えて進んだところでルートは堰堤壁から左下の沢床に降りるのだが、左岸に沿って真っすぐついた踏み跡も明瞭で、うっかりそちらにはいってしまう。この踏み跡はどんどん高みに上がっていく様子なのでアレっと思っていると、沢床を下ってくる男女のペアの会話が聞こえてきて、我々がルートを外していることを悟った。幸いすぐに気づいたためロスはほとんどなしだった。沢床を横切って右岸にわたり返し、大きな堰堤を左から越す。堰堤横の斜めの法面を登ることになるが、朝までの雨でコンクリート表面が濡れている。トラロープが何本も下げられているが、kinuasaは右手に力を入れられない状態なので難渋する。
この堰堤を越えて林内を進み、石屑で埋まった氾濫原に出ると、眼前に大山主峰のパノラマが一気に開ける。今からあそこに登るんだと思うと気合が入る。カールの底のように広がった沢床の石屑の上を、踏み跡を拾いつつ上流方向に進んで、右手のカバノキ科の幼樹の中の踏み跡を登る。足元にはヤマハハコ、ダイセンクワガタ、キュウシュウコゴメグサなどが咲いている。この辺りからオオバギボウシやシシウド、クガイソウなどがあらわれて、高山的なお花畑の雰囲気が出て来る。なんだか岳沢カールの中にいるような気分である(もう45年くらい尋ねていないが・・・)。大山主峰の岩峰がガスに隠れたかと思うとスッと姿を現わして、そのたびに鋭いピークの数々がぐっと自分に迫ってくるのだった。傾斜がどんどん増していく。ルートはところどころで分岐融合しつつ続いている。登るたびに崩壊が進む泥のルンゼ状を抜け、珍しくトラロープ補助のある急勾配の箇所を越えると岩肌が迫ってきた。槍ヶ峰の首元を巻きに入る。岩盤は湿っていてダイモンジソウの類が白い花をつけている。黄色いのはアルプスならシナノキンバイというところだが、ここではヒメヘビイチゴのようだった。シロタマノキも小さな花をつけている。石ザレ斜面の頂部を横切って草付を登り切り、鞍部に乗る。一人の登山者が痩せた岩稜上を辿って槍ヶ峰のピークをうかがっている。我々は順当に三ノ峰方向へと辿る。今登ってきた稜線の左側もさることながら、右側はキリン沢の谷底へすっぱりと切れ落ちている。一歩一歩慎重に歩を進め、狭窄部を抜けると狭いながらも平坦な山頂に達した。「三ノ峰」の山名板が置かれている。ようやく緊張から解放されてゆったりとくつろぐ。ここで昼食だ。
あいにくガスがかかっている。ガスは気まぐれに濃淡をつけて去来し、それが薄らぐ合間には、のこぎりの歯のように天につきでた槍ヶ峰の尖峰が目前にのぞまれるのだった。反対方向に目を転ずると、最高峰、剣ヶ峰がその全容を露わにしていたが、それも一瞬でまたガスの中に消えた。時には太陽がガスの切れ間から弱い光を発しているのだったが、晴れ渡る気配はみじんも感じられない。あきらめて、涼しく快適な山頂を後にする。
再び狭窄部を慎重に通過して、槍ヶ峰の頸部地点から右に下降を始める。登りながら「ここを下るのもなかなかだな〜」と思っていたが、案ずるより産むが易し、でどんどん下る。崩壊のルンゼも、降りでは新雪斜面のかけ下りよろしくあっという間に通過する。
最下部の樹林下の道を歩きながら、下生えの豊かさを改めて実感する。これが本来の山の姿だ。関西の山からは下生えが全くなくなっている。シカの食圧のせいだ。雪深い地のみが、こうして豊かな植生を維持できているのだ。ヤマブドウは青い実をつけている。これとて、久しぶりに見る実りである。サルナシも!なんと懐かしいことだろうか。どこにでもある筈のフキも久々に見て、少々育ち過ぎだがいただいて帰ることにする。マタタビの花の辛みをちょいと楽しんでいるうちに、もう文殊堂に降り立っていた。こうして、久々にアルペンな雰囲気を楽しんだ二人であった。
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