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ハイキング
御在所・鎌ヶ岳

雨乞岳・七人山

2025年04月12日(土) [日帰り]
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天候 北、風力2/晴/10℃
過去天気図(気象庁) 2025年04月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車

感想

山行記録691 令和7年4月12日 (土)
    冬枯れの森に芽吹きの気配 〜雨乞岳・七人山
        単独 地図:御在所山

 4月になった。武平峠の向こうに顔をのぞかす雨乞岳にも白さがなくなり、積雪期は終わりを告げた。
 とは言え、気分的には積雪期7Mtの余韻を引きずっていて、中途半端になっている雨乞岳へ行ってみようかと考えていた。

 毎年春になると郡界尾根から東雨乞経由で七人山へ遊びに行く。今回もそのコースにしよう。
 天気はというと、週の後半は上空に強い寒気(鈴鹿の山上空500hPaで−27℃)が流入して大気の状態が非常に不安定になり、昨日も雷が昼頃までしつこくゴロついていた。土曜日にはその寒気も一旦抜けて、天気が回復するようであるが、日曜日は一転して春の嵐になるらしい。行くとすれば間違いなく土曜日である。

 武平トンネルを抜けて500mほど進んだ滋賀県側最初のヘアピンカーブから郡界尾根の沢谷峠近くのピークに登るルートから入ってみた。今ではすっかり知れ渡り、道迷いのポイントとしても有名になってしまった、高低差150mほどの急登である。地図で見る限り尾根といえば尾根であるが、下りでは2回尾根を外れる場所がある。どんな感じで道を外してしまうのかも気になっていたので、ついでに確認してみようと考えたワケである。

 寒気が通過した余韻で、武平峠はヒンヤリした北風が吹いている。上空はよく晴れているが、郡界尾根には少しガスがかかっている。これも陽が高くなれば消えていくだろう。
 5:42入山。まずは、すぐ上に見える鞍部状へ向かう。踏込んでみると、ルートはシッカリ刻まれている。詰めで大きな段差を樹の根をつかんで登るが、それ以外は悪い道ではない。
 南北に細く伸びる鞍部状に乗る。尾根の先端方向を遮るように倒木があって、間違えて直進しないような感じになっているが、何にもなければまっすぐ行ってしまいそうな踏跡がある。地図を見る限り、まっすぐ尾根を下ってしまったとしても、スカイラインの切土の上に突き当たった段階で、武平峠側の斜面に逃げればナントカなりそうな緩斜面がある。一方、反対側の斜面に逃げてしまうと、ソコソコ急な谷に追い落とされてしまいそうではある。
 鞍部状から急な尾根の登りにかかる。地図によれば上部は斜面の直登と変わらないはずである。急登の途中には杉の大木が立っていて、昔からなにがしかの往来があったのかな、みたいなことを考えながら登っていくと、尾根に取り付いて方向を変える。この地点には尾根をまっすぐに下ってしまいそうな踏跡は見当たらない。6:05沢谷峠のピークに到着。約20分で郡界尾根に登り着いてしまった。

 尾根に乗ると冷たい北風。寒気に伴う気圧の谷が通過した後だから冷たい空気が引き込まれたんだろう。そうは言っても4月なので、動いてさえいれば心地よさにも変わっていく。
 次の迷い尾根のピークに登ってみると、周囲の森はガスで若干煙り気味。目の高さにガスの雲頂が広がっている感じで、その上に七人山が平らに浮かんでいるのが見える。
 次の鞍部に降りると薄いがガスに包まれ、再びピークに登ると今度はガスが薄れていて…。ガスの上面というのは、海のように波打っていて、高く盛り上がることもあれば、引いていくこともある。もう一度ガスの上に浮かぶ七人山にお目にかかれないかと思ったが…、「一期一会なんやな」。

 967m独標への登りにかかる。太陽が昇ったばかりで寒々とした雰囲気を感じるのはやはりガスのせいだろう。ピークに登りつくと周囲はモヤっとかすんでいて、そのガスが陽射しも遮っている。
 尾根は一旦急降下する。ルートが一般化する前に破漕ぎで入った時は、シャクナゲの抵抗に難儀したが、すっかり歩きやすくなってしまった。自然界にとっては好ましいことではないだろう。
 1014m独標手前のピークの急登に取掛かる。去年だったか、大きくジグザグを切るルートを辿ってみたら、傾斜が緩すぎてめんどくさかった。今日は素直に直登に近いジグザグを辿る。キツイはキツイが意外に短く、ちょっとガマンすれば大したことはない。

 登り詰めてピークの北側を巻いて尾根に乗ったら、右側の谷が這い上がってきて、次第に二次林の斜面に変化していく。ガスも晴れて斜面に朝陽が射込んで、森の樹々の影が並んでいる。風が尾根に遮られて風のざわめきもなく、まばらに鳥のさえずりと、時々キツツキが幹を突つく音だけ…。
 尾根近くのブナの根元に腰を下ろす。見下ろす谷の向こうには森を透かして鎌ヶ岳。その足元の谷にはまだ残っているガスが陽射しを受けてうっすら白く漂う。
 後続の鈴の音が聞こえたような気がしたので出発。鞍部に降りたら東雨乞の詰めが始まる。標高差約250mだからゆっくり登って45分ぐらいかな。例によって鼻で息ができるぐらいのペースで登っていく。

 1/3ほど登った平坦地あたりまで来ると、そろそろ強くなりだした陽射しが暑い。上っ張りをザックに押し込むと、まだまだヒンヤリした風が心地よい。
 毎度のことながら黙々と登り、東雨乞から南に延びる尾根に乗ると傾斜が緩む。
 8:10東雨乞岳到着。見渡せば、イブネの向こうには、真っ平らなガスが愛知川上流域を雲海のように覆っている。
 少し時間も早いので、いつもパスする雨乞岳の三角点峰まで往復してみる。ここを歩くのは何年ぶりだろう。イブキザサの猛烈な抵抗で難儀するイメージしかない。そのイブキザサは、背は低くなったとはいえ一面に残っている。シカに食い尽くされてしまってもおかしくない平頂なので、不思議な気がするのが悲しい。
 ルートには所々に岩が突き出ている。ササの海を足探りで歩いていた頃は、足元の岩が見えずによく蹴っつまづきながら歩いた感覚を体が覚えている。

 10分程度で三角点に辿り着く。8時半だというのに、すでに10人ぐらいが腰を下ろして賑やかである。山頂の池にあいさつしたら、そそくさと退散。東雨乞岳に戻り、靴紐を締め直したら直ちに出発。七人山に向かって高度を下げる。少しまとまった下りなので、ヒザに負担をかけないように注意しながら足を出す。寒の戻りで時雨れたために、粘土質のルートは滑りやすい。ただ、この斜面にはササがあるから、昔のように両手を広げてササでブレーキをかけながら下る。
 七人山西鞍部を通過。下りから登りに転じると足に来るので、スピードを抑えながらノソノソ登っていく。

 まだ冬枯れの森に春の陽射し。シジュウカラやヒガラのさえずる声。時折聞こえるキツツキのドラミング。アンテナを大きく広げるイメージで平頂の一番奥へ。去年だったか、大きなサルの姿が見えたので奥へは行かなかったが、今日は一番東の端まで行って見る。
 本当ならこの森も、もっと下生えがあってもいいのではないかと思う。シカが増えすぎたことで、ササが食い尽くされただけではなく、樹々の新芽も餌食になって幼木が育たない。だから、今の森が寿命を迎えて枯れていくと、その代わりになる新しい世代が居ないので更新できない。一見のどかな森も、おそらくそんな大問題を抱えている。

 ブナの根元に腰を下ろし、腹ごしらえの後は、そのまま森を眺める。
 まだ季節は浅く、冬枯れの森に降り注ぐ陽射しは暑いが、風が冷たくて気持ちがいい。芽吹きには少し間があるようにも見えるが、ブナの枝先には新芽が膨らみ始めている。
 まばらではあるが、シジュウカラやヒガラの声が枝を伝って移動していく。時には腰を下ろして背にしているブナの枝もその通り道になる。北の方の斜面では、キツツキのドラミング。少し距離があるので、姿を見るのは難しいだろう、などと思いつつ、鳥たちをボーっと目で追う。

 すぐ近くの枝で「ツツピーツツピー!」。姿が見えた。「あれ?、ヤマガラや!。澄んだ声やな〜」。シジュウカラかと思った。
 しばらく眺めていると、ヤマガラがもう1羽近づいてきて、さえずっていたヤツの50cmぐらい先の枝にとまった。繁殖の季節である。たぶんさえずっていたのが♂、後から来たのが♀だろう。そう決めつけてぼんやり眺めていると、♀が少し離れた枝に飛んで行く。♂も、少し間をおいて近づくが、♀は飛び去ってしまった。♂が再びさえずるが、♀は戻ってこない。♂もそれを追うように森の奥へ飛び去った。
 再びボーっと森を眺めていると、今度は比較的近くでキツツキが枝を突っつく音。「アカゲラやな〜」。頭とハラが赤いキツツキが、10mぐらい先の樹の幹をせわしく動いたり、ピタッと静止したり。そんな様子を見ていると、もう1羽現れた。今度はうまく行くかな?。しかし、後から来たアカゲラは、サッと少し離れた樹に飛んで移動した後、森の奥へ飛び去った。たぶんそれが♀だったのかな。そして♂もそれを追うように森の奥へと飛び去った。
 こんなふうに、♀が♂を気に入らないと見るとサッサと飛び去って行くらしい。即断即決!。「シビアやな〜」。

 10時を回った。そろそろ山も賑やかになってくるから退散しよう。
 「また来ます」。クラ谷の道を下り始める。谷に入ると風が遮られて陽射しばかりが暑い。ノン気に行こう。思い出したように残雪が残る谷道を歩いて行くと、芽吹き始めたトリカブトが一面に広がったり。谷筋は春である。
 ノソノソ歩いて行くと、いつの間にかクラ谷からコクイ谷へショートカットする乗越にかかる。昼近くになってきたから陽射しも強く、バテないようにスピードを落として越える。コクイ谷に出たところで一休み。少し多めに水分補給。そろそろ夏山の体を作っていかないと持たない時期にさしかかっている。
 沢谷峠に向かってなだらかに登る。長い間、真綿で首を絞められるみたいにキツい登りだったが、鼻で息ができるペースを守るようになってからキツく感じなくなった。時間的にも1時間当たりせいぜい5分程度。ちょっとのことで体力の残り方が違うらしい。

 沢谷峠にさしかかる。途端にスカイラインを走る車や特に単車の音が聞こえてくる。
 郡界尾根の最初のピークに向かい、そこから下降路に入っていく。道迷いで有名になった尾根を、実際に下って検証してみる。
 最初に尾根から外れるところは、まっすぐ行っても尾根らしくなく、踏跡も見当たらないので、たぶんここは違う。ということは、やはり細長い鞍部状の所だろう。ハッキリした尾根だから踏跡もある。たまたま倒木で東斜面に下るように導かれるが、それがない場合は確かにまっすぐ行ってしまいそうである。

 斜面を下りきってスカイラインに出る。いきなり文明社会に飛び出した感じなので、何やら緊張しながら駐車場へ移動。11:46帰還。
 帰り道、スカイラインを下り、蒼滝トンネルを抜けて湯の山温泉を見下ろせる場所にさしかかって驚いた。斜面のサクラがすごい。先週まで下界のソメイヨシノが盛りだったが、1週間で一気に山へ駆け上がったようである。まだ中腹が盛り状態ではあるが、来週まで持つのかな?。
 山の上で冷たい風を楽しんでいたのがウソのようである。

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