天水山(痛恨の滑落)


- GPS
- 05:01
- 距離
- 9.6km
- 登り
- 515m
- 下り
- 558m
コースタイム
天候 | 薄曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
尾根すじ以外はまだ残雪が結構あります。テープ類は見当たりませんでした。 |
その他周辺情報 | 松之山温泉鷹の湯 |
写真
感想
大厳寺高原キャンプ場駐車場6:42〜林道T時路8:00〜天水山9:30/10:15〜滑落10:25〜駐車場12:33
大厳寺高原はかなり前のGWの時期に3回ほど来たことがあり、残雪とブナの淡い新緑の取り合わせの美しさ、またいかにも越後らしい山麓の風景が気に入っていた。天水山は眺めるだけだったが、信越トレイルの一角として名前を見るようになり、登っておこうと思い立った。
前日の当間山の経験から軽登山靴で出発。往路は途中まで行ったことのある尾根道を選んだ。入口は分かりにくいが、駐車場から100mほど進み、斜め後ろに戻る感じのコンクリ道に入る。一度折り返し、突き当たりから左に頼りない踏み跡(道標なし)を進む。以前散歩で歩いた時より荒れた感じだが、迷うことはない。すぐにブナの大木が現れ、気分の良い散歩道になる。意外に小さな登り降りが多い。当間山にたくさん咲いていたイワウチワが全く見当たらないのが不思議だ。次第に左(東)側の沢の源頭に雪堤が残っているようになり、ブナの谷間を気ままに歩き回ったことを思い出す。登りらしい登りを越えると、芝生になった920m峰(ヤマレコのマップでは大厳寺山とあり)に飛びだす。正面の天水山の山肌は既に青々としているが、残雪の白い筋が鮮やかだ。暖かいが曇り空で遠方は霞んですっきりしない。
しばらく緩く下ると、未舗装の林道に合流する。尾根の左をトラバースしていく林道を辿ると、この辺りから残雪が増え、断続的に道の上や左側の斜面を覆っている。雪は締まっているので、森の風景を楽しみながら気持ち良く歩いて行ける。やがて東西に走る舗装の林道に突き当たる。完全に雪の下になりそうだったので、ここでチェーンスパイクを装着した。正面に落ちてくる沢筋は雪に埋まっており、後でここを降りてこようという腹があるので「しめしめ」と思った。林道は緩く下っていくので気楽な散歩だ。わずかに雪が途切れるところは脇の落葉の上を歩く。そこそこ歩いた頃に、左から林道が上がってきて、地図にない小舎(トイレ)のある小広い場所に出た。
ここから夏道となるのだが、取り付きが分からない。二つ落ちてきている尾根上を探ってみるが踏み跡らしきものはなく、やむなくヤマレコアプリのお世話になる。尾根の左手の緩い沢状の斜面を、軌跡を辿っていくと、なんとなく幅の広い道の形になってきて左へトラバース気味に登っていく。地面が現れた時には、普通の山道になっており傾斜を増して尾根にからんでいく。方向が南に変わったところからは、GPSを追うのはやめて、稜線の方向を目指して雪の貼りついている部分を斜上していくと、ピタリと登山道が稜線に出る箇所に登り着いた。左手に注意しながらさらに雪の上を進むと、道標が目に入った。踏み跡は尾根筋の一番高い所を通っていて、この後頂上まで雪を踏むことはなかった。当間山では見かけなかったイワカガミが敷いたように咲き乱れており、久々の再会が嬉しい。左の雲の切れ間からは、深く掘り込まれた信濃川は山かげに隠れているが、整然と仕切られた田んぼが薄日に光るのが見下ろせる。ここにきてようやくイワウチワもまとまって出てきたが、終わりかけている花が多い。当間山より標高が高いので不思議なのだが、積雪や諸々の条件の違いのためなのだろう。最後の登りに掛かると、遠望からは予想しなかった急登が続き、苦労する。やっとのことで、頭上に標柱が目に入り、信越トレイルの看板が設置された頂上に辿り着いた。
1088mの標高点を探してみたが笹薮の中なのか見当たらず、頂上広場に戻り、コーヒーを淹れてゆっくり過ごす、小さな虫がまとわりついて煩いが、刺すものではないようだった。トレイルの地図を眺めると、やはり歩いてみたくなる。南に雲の隙間から苗場山らしい平坦な山稜や、鳥甲山と思われる丸い頭が覗くが、全貌は望めなかった。
さて下りだ。登りのルートは東西に大きく振っているので無駄な気がするし、頂上から北面を下降しているレコもあったので、そうしようと思っていた。偵察すると、ほんの3メートルほど笹薮を踏み分ければ雪面に出られ、おそらく下までつながっていると思われた。靴ひもが少し緩いと感じたが、スパッツをしているので締め直すのも面倒くさいと、そのまま斜面を下り始めた。真下に落ちる沢は、地図で林道の法面が崖になっていそうなので、狙いの沢に入るために、左寄りに樹林の雪面を下降していく。雪は柔らかく危険は感じなかったが、チェーンスパイクの爪はズレてあまり効かなかったので、ストックを支えにした。眼下に白い雪原が広がった所で、傾斜の緩そうに見えた右下へと向きを変えた一歩目の左足が滑った次の瞬間にはもう身体が滑り出していた。摩擦を増やそうと脚を広げてみるが効果はない。木の枝の上を通過したので掴もうとしたが無理だった。恐怖や「死ぬかも」と感じなかったのは、猛スピードではなかったのと、足が下の体勢のままだったからだろう。真下に大木が近づいてきたので、止まるだろうとは思いながらとにかく減速したかったのだがどうしようもなく、そのまま根周りのホールに落下し尻もちをついて止まった。
なぜか気持ちは意外に冷静で、脚は何ともないのはすぐ分かった。立ち上がって点検すると、左手の甲をすりむいて血がにじみ、左のストックのリングが無くなっていたが、その他に被害はなく、本当にラッキーだった。滑った距離は40メートルくらいのようだった。恐怖よりは判断ミスをした悔しさと恥ずかしさの方で頭が一杯だったが、落ち着くために傷の手当てをして靴ひもを締め直し、この先は傾斜が緩むので下降を続けることにした。一歩一歩ていねいに踏んで、その後は問題なく沢状に沿って下り、間もなく林道に降り立った。
大厳寺山までは往路と同じなので気楽だったが、頭の中は後悔がグルグル巡って山を楽しむという気分にはなれなかった。芝生のピークで、切り替えるためにコーヒーを淹れたり濡れ物を干してゆっくり過ごす。北西の方には顕著な独立峰や、海沿いの建造物らしいものが霞むが、手持ちの資料からは特定できなかった。その先は無難に来たルートを戻るか、予定どおり東に下るかかなり迷ったが、標高も下がるし尾根上にはもう雪はなかろうと東に降りることにした。しばらく灌木の尾根道を歩くと、再びブナ林になる。道が大きく右にカーブすると、またベッタリの残雪だ。正直、もうやめてくれと思ってしまう。夏道は全く分からないのでナビ頼りだ。ずっと雪の上を歩き、最後にアスファルトの車道に降り立った時には、さすがにホッとする気持ちがこみ上げてきた。
〔総括〕
今季最後の雪歩きでとんだ味噌をつけてしまい、残念極まりない。登山は数十年も続けているが、自分自身の事故らしい事故は初めてで、後悔と落胆は大きい。
・軽登山靴にチェーンスパイクという中途半端な装備で残雪の山に入ったのが間違いだった。グズグズの雪にスパイクは効かず、軽登山靴ではキックステップが十分に決まらない。散歩以上の登山をするのなら、億劫がらず冬靴を使用すべきだった。
・今回は登山道ではない箇所を下降中のアクシデントだったが、登った夏道にも同程度の傾斜部分はあり、ルートに関わらず雪上を歩く以上必ず伴う危険と考えるべきである。
・今までアイゼンなど装備の性能に助けられていた感覚で、大丈夫だろうと安易な足運びをしてしまった。一歩一歩をより慎重丁寧に踏んでいくべきだった。
・以上のように、残雪期の山を甘く考えていたのが根本的な問題であった。暖かいから簡単というわけではない。足元が不安定な点は、冬季よりむしろ警戒しなければならない。
・冬季でなくとも、怪我防止のためにはなるべく軍手や手袋は着用した方が良い。
・この時の服装は三季用ズボンにスパッツ。上半身は防寒にナイロン雨具を着ていた。下も雨具だったら、さらにスピードが出ていただろう。雪上ではなるべく摩擦の大きな衣類を着用しておく方が良い。
・今回、脚を負傷せずに自力で下山できたこと、落ちたツリーホールに突き刺さるような物がなかったのはひとえに幸運だった。最近、それなりの年齢になり、雪山をやることはともかく、単独であることにはいくらか不安を感じるようになったところだった。これも神仏のご加護と警告だったのか。今後の方向は真剣に考えなくてはならない。
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