ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 8268140
全員に公開
沢登り
大台ケ原・大杉谷・高見山

【台高】本沢川・黒石谷(奥黒石谷〜菅平谷 周回)

2025年06月07日(土) [日帰り]
 - 拍手
GPS
--:--
距離
12.1km
登り
1,031m
下り
1,026m

コースタイム

日帰り
山行
12:20
休憩
0:00
合計
12:20
5:00
30
黒石谷出合(林道入り口)
5:30
180
黒石谷に入渓
8:30
40
霞滝
9:10
70
標高820m二俣(奥黒石谷と菅平谷の二俣)
10:20
60
鬼滝
11:20
50
奥黒石谷を離れ、標高1030m左岸枝谷に入る
12:10
110
中間尾根の鞍部から菅平谷へ下降開始
14:00
70
乙女滝
15:10
110
標高820m二俣(奥黒石谷と菅平谷の二俣)
17:00
20
林道に出る
17:20
黒石谷出合(林道入り口)
地図の軌跡は手書きで、細部は適当です。特に帰路の右岸仕事道は全く反映されてませんので、ご注意を。
天候 曇り時々晴れ
過去天気図(気象庁) 2025年06月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
黒石谷沿いの林道は入り口にゲートがあり進入不可。出合から少し進んだところに道幅が少し広がったところがあり、端に寄せて駐車した。
コース状況/
危険箇所等
【ルート状況】
・ 黒石谷の標高約820m二俣の左俣が奥黒石谷、右俣が菅平谷。沢登りの対象としては鬼滝のある奥黒石谷のほうがよく登られており、菅平谷の記録はごく少ない。今回は奥黒石谷を遡行し、菅平谷を下降した。
・ 黒石谷は通過困難というほどの箇所はなく、ほどほどの遡行難度だったが、高巻きは急斜面が多く慎重な行動が必要(懸垂までは必要なかった)。水量は割と多く、盛夏であれば積極的に泳ぎを交えた遡行が楽しいと思う。今回はまだ気温が低かったため泳ぎは極力避けたが、それでも腰程度の渡渉は随所で必要。
・ 奥黒石谷に入ると遡行難度はぐっと低くなり、いくつか出てくる大滝も巻きは容易(もちろん、直登する場合はこの限りではない)。
・ 下降路とした菅平谷は、上部は平流で何も出てこないが、北流していた谷が東に流下方向を変えるあたり(だいたい標高1010m付近)から急に険しくなり、ナメと滝が連続する。詳細は写真欄に譲るが、切り立った斜面の巻き下りが連続し、通過には慎重を要する(正直、この核心部だけ見れば奥黒石谷より遡行難度が高いと思う)。乙女滝(40m)とその上にある広いナメ床の美観は、今回の山行で個人的に最も印象に残ったハイライトだった。また、菅平谷が奥黒石谷に合流する手前付近にかなり険悪なゴルジュがあり、今回は巻き下ったが、遡行する場合はなかなか手強そう。
・ 全体的にナメが多く、ぬめりが強い印象だったので、自分としてはフェルト足袋で来てよかったと感じた。

【下山について(黒石谷右岸の仕事道)】
・ 下山核心と言われることもあるこの谷。一般的には、車一台を大台ヶ原ドライブウェイに回しておいて同ドライブウェイまで登り上げるか、黒石岳(P1348)から北尾根を辿って黒石谷出合に戻るルートがとられることが多い。
・ 今回は周回ルートをとったこともあり、黒石谷右岸の仕事道を辿って下山した。この仕事道は、少なくとも奥黒石谷と菅平谷の二俣(820m二俣)より下部は大部分の道型が残っており、多くの区間は割と普通に歩ける(それより上部は歩いていないので分からないが、遡行しながら眺めた感じでは崩壊が激しそうだった)。ところどころ道が崩壊している箇所があるが、小さく巻くなり迂回するなり、少なくとも普段沢登りしていて悪場に慣れている人であれば通過可能だと思う。ただ、1か所、断崖絶壁にボロボロの丸太橋が掛かっている箇所は迂回困難(写真No.93。丸太橋は他にもあるが、他は全部通過又は迂回可能)で、そこだけは手前から一旦谷に降りて明神滝と男女滝を巻き下り、そこから登り返して仕事道に戻った。また、仕事道がつづら折りになっている箇所もあるので、ヘアピン箇所で道を失わないように注意する必要がある(このつづら折りは結構長く続き、入念に勾配を抑えようとする意志を感じるので、この道はただの仕事道というよりは、木材の搬出に利用したいわゆる「木馬道」なのかもしれない)。今回、実際にこのつづら折り箇所で20分ほど迷ってしまった。目の前から突然道がなくなったら、つづら折りを疑ってみてください。
黒石谷沿いの林道はゲートが降りていて入れず、付近の道幅が広いところの路端に寄せて駐車した。
黒石谷沿いの林道はゲートが降りていて入れず、付近の道幅が広いところの路端に寄せて駐車した。
黒石谷林道入り口。ここから歩いて入渓点までアプローチする。林道は落石で埋まっている箇所が多く、ほぼ廃道に近い。
黒石谷林道入り口。ここから歩いて入渓点までアプローチする。林道は落石で埋まっている箇所が多く、ほぼ廃道に近い。
林道がある区間にも立派な滝が多数掛かっており、林道がない昔の渓谷美と遡行の困難さを想像してしまう。
林道がある区間にも立派な滝が多数掛かっており、林道がない昔の渓谷美と遡行の困難さを想像してしまう。
林道はシームレスに仕事道につながっており、そのまま歩いていくと…
林道はシームレスに仕事道につながっており、そのまま歩いていくと…
気が付いたら、眼下の谷では既に滝場が始まっているっぽい。しまった、行き過ぎた?
気が付いたら、眼下の谷では既に滝場が始まっているっぽい。しまった、行き過ぎた?
講義に遅刻した学生のような気分でコソコソと谷に降りたのが、ちょうどこの滝の上だった。帰宅してからルート本をチェックすると、どうやら最初のゴルジュの出口の12m滝っぽい。このゴルジュはどうせ仕事道で巻くことになるようなので、結果的にここから入渓したのは正解だったようだ。
2
講義に遅刻した学生のような気分でコソコソと谷に降りたのが、ちょうどこの滝の上だった。帰宅してからルート本をチェックすると、どうやら最初のゴルジュの出口の12m滝っぽい。このゴルジュはどうせ仕事道で巻くことになるようなので、結果的にここから入渓したのは正解だったようだ。
しょっぱなから素晴らしい渓谷美。この2条7m滝は左側の水線の際を直登。
2
しょっぱなから素晴らしい渓谷美。この2条7m滝は左側の水線の際を直登。
この長淵の奥の3m滝は泳げば直登可能だそうだが、悩むことなく左岸から巻いていく。つまらん奴ですみません。だってまだ6月初旬で寒いんだもの。
4
この長淵の奥の3m滝は泳げば直登可能だそうだが、悩むことなく左岸から巻いていく。つまらん奴ですみません。だってまだ6月初旬で寒いんだもの。
巻きながら3m滝の上に続く斜滝群を見下ろす。
1
巻きながら3m滝の上に続く斜滝群を見下ろす。
この美しい4m斜滝を越えると…
この美しい4m斜滝を越えると…
10m滝。登れそうだがフルシャワーが避けられないので、右岸から巻きます。
1
10m滝。登れそうだがフルシャワーが避けられないので、右岸から巻きます。
すぐ谷に戻ると、ビッグな滝が2つ連なる豪華な空間。男女滝(2条12m)と明神滝(25m)だろう。
1
すぐ谷に戻ると、ビッグな滝が2つ連なる豪華な空間。男女滝(2条12m)と明神滝(25m)だろう。
男女滝は2条とされるが、2つの流れが離れすぎていて、別々の2つの滝に見える(男女間の距離? 深いな〜)。中央のリッジが登れるとされるが、実際に見てみるとブッシュがひどくてあまり登る気になれず、左側の滝の左手を小さく巻き気味に登った。
2
男女滝は2条とされるが、2つの流れが離れすぎていて、別々の2つの滝に見える(男女間の距離? 深いな〜)。中央のリッジが登れるとされるが、実際に見てみるとブッシュがひどくてあまり登る気になれず、左側の滝の左手を小さく巻き気味に登った。
男女滝の上は、台高名物の巨岩迷路。右岸側の隅に登りやすい箇所があります。
1
男女滝の上は、台高名物の巨岩迷路。右岸側の隅に登りやすい箇所があります。
そして、明神滝(25m)。なかなか素晴らしい滝だが、この後も続々と大滝が出てくるので、感動表現は抑え気味にしておこう。
1
そして、明神滝(25m)。なかなか素晴らしい滝だが、この後も続々と大滝が出てくるので、感動表現は抑え気味にしておこう。
右岸のちょっと浅い谷状になった箇所から高巻きに入る。けっこう急斜面で大きめの巻きになるが、下山時に仕事道の危険箇所を迂回するためにノーロープで巻き下ったくらいなので、まあ何とかなる。
右岸のちょっと浅い谷状になった箇所から高巻きに入る。けっこう急斜面で大きめの巻きになるが、下山時に仕事道の危険箇所を迂回するためにノーロープで巻き下ったくらいなので、まあ何とかなる。
岩に挟まれた小さなコルのようなところを目指してトラバースしていくと、ぽっかりと滝上に出た。
岩に挟まれた小さなコルのようなところを目指してトラバースしていくと、ぽっかりと滝上に出た。
明神滝の上の左岸側には、大トチノキが堂々とそびえていてビックリ。白山とか奥美濃とかで見かけてもおかしくないくらいのサイズだ。この谷はほぼ全部植林なのだが、時々トチノキの巨木が残されているのを見かける。切るには惜しいと思われたのだろうか。
4
明神滝の上の左岸側には、大トチノキが堂々とそびえていてビックリ。白山とか奥美濃とかで見かけてもおかしくないくらいのサイズだ。この谷はほぼ全部植林なのだが、時々トチノキの巨木が残されているのを見かける。切るには惜しいと思われたのだろうか。
これは扇滝15mのようだが、落ち口に倒木が引っ掛かっているせいか、水流が扇状ではなくなっている?
1
これは扇滝15mのようだが、落ち口に倒木が引っ掛かっているせいか、水流が扇状ではなくなっている?
扇滝は右岸から巻くが、登っていくと仕事道に出てしまった。少し上流側に歩き、何とか立木や木の根を頼りに歩いて降りられる斜面を見つけ、谷に戻った(懸垂下降は不要でした)。
扇滝は右岸から巻くが、登っていくと仕事道に出てしまった。少し上流側に歩き、何とか立木や木の根を頼りに歩いて降りられる斜面を見つけ、谷に戻った(懸垂下降は不要でした)。
その後もいくつか小滝を越えて…
1
その後もいくつか小滝を越えて…
深切谷出合を通過
深切谷出合を通過
すると、深い淵が現れ、その奥に大きな滝が落ちているのが見える。盛夏なら泳いだだろうが、今は全く泳ぐ気になれず、左岸側の岩棚の上に上がって小さく巻き気味に越えていく。
1
すると、深い淵が現れ、その奥に大きな滝が落ちているのが見える。盛夏なら泳いだだろうが、今は全く泳ぐ気になれず、左岸側の岩棚の上に上がって小さく巻き気味に越えていく。
おお、見えてきた、大滝だ。
おお、見えてきた、大滝だ。
この谷で一番の大滝と言われる、霞滝45m。さすが堂々たる滝だ。(でも正直、下降時に菅平谷で見た乙女滝のほうが何となく大きそうに見えたけど、気のせい?)
2
この谷で一番の大滝と言われる、霞滝45m。さすが堂々たる滝だ。(でも正直、下降時に菅平谷で見た乙女滝のほうが何となく大きそうに見えたけど、気のせい?)
正面から
右岸から巻き上がると、またもや仕事道に出た。さすがオール植林の谷、仕事道は右岸高くずっと続いているようだ。
右岸から巻き上がると、またもや仕事道に出た。さすがオール植林の谷、仕事道は右岸高くずっと続いているようだ。
仕事道を少し上流側に歩くと、小さなルンゼをまたぐ箇所で路盤崩壊。もしくは、もともと掛かっていた桟橋が失われたのか。ここは手前から小さく巻き、慎重にルンゼを横断して向こう側に渡る。薄く踏み跡あり。
仕事道を少し上流側に歩くと、小さなルンゼをまたぐ箇所で路盤崩壊。もしくは、もともと掛かっていた桟橋が失われたのか。ここは手前から小さく巻き、慎重にルンゼを横断して向こう側に渡る。薄く踏み跡あり。
巻き終わって谷に降り立つと、ちょうど霞滝の落ち口だった。落ち口の上は美しいナメになっている。
1
巻き終わって谷に降り立つと、ちょうど霞滝の落ち口だった。落ち口の上は美しいナメになっている。
霞滝からすぐ上が奥黒石谷(左)と菅平谷(右)の二俣。
霞滝からすぐ上が奥黒石谷(左)と菅平谷(右)の二俣。
二俣には飯場があったのか、大きな石垣が残っている。最近泊まった方がおられるらしく、焚火の跡が残されていた。
1
二俣には飯場があったのか、大きな石垣が残っている。最近泊まった方がおられるらしく、焚火の跡が残されていた。
左俣の奥黒石谷に入り、いくつかの小滝やナメを越えていくと…
左俣の奥黒石谷に入り、いくつかの小滝やナメを越えていくと…
美しい滝場が。
幅広の15m滝。ここは左岸から巻き越えた。奥黒石谷に入ると両岸の立ち具合もやや穏やかになり、高巻きも比較的容易になる。
2
幅広の15m滝。ここは左岸から巻き越えた。奥黒石谷に入ると両岸の立ち具合もやや穏やかになり、高巻きも比較的容易になる。
その後も、規模は小さくなりながらも相変わらず美しい渓相。
1
その後も、規模は小さくなりながらも相変わらず美しい渓相。
そして鬼滝、2段20m。鬼滝と言うからどんな恐ろし気な滝なのかと思っていたら、意外に優美な滝でした。林業用のワイヤーが垂れ下がっているのがちょっと残念。植林の盛んな谷だから仕方ないけど。
2
そして鬼滝、2段20m。鬼滝と言うからどんな恐ろし気な滝なのかと思っていたら、意外に優美な滝でした。林業用のワイヤーが垂れ下がっているのがちょっと残念。植林の盛んな谷だから仕方ないけど。
ここは右岸の小尾根から巻き上がる。眼下に鬼滝を眺めながら。
1
ここは右岸の小尾根から巻き上がる。眼下に鬼滝を眺めながら。
鬼滝の落ち口も美しいナメ。
1
鬼滝の落ち口も美しいナメ。
その後はだいぶ穏やかになり、もう終わりかなと思っていると…
1
その後はだいぶ穏やかになり、もう終わりかなと思っていると…
コンター1000mを過ぎたあたりの谷がうねっている箇所で、急に両岸が切り立ってゴルジュとなる。その奥にいくつかの滝が落ちているようだ。
2
コンター1000mを過ぎたあたりの谷がうねっている箇所で、急に両岸が切り立ってゴルジュとなる。その奥にいくつかの滝が落ちているようだ。
ゴルジュの底を見下ろしつつ、右岸から巻き上がる。
1
ゴルジュの底を見下ろしつつ、右岸から巻き上がる。
ここでも仕事道が出てくる。一部石垣が崩れている箇所もあるが、慎重に通過すれば問題ない。しかしこの石垣、こんな崖の真ん中によく組んだなぁ…
2
ここでも仕事道が出てくる。一部石垣が崩れている箇所もあるが、慎重に通過すれば問題ない。しかしこの石垣、こんな崖の真ん中によく組んだなぁ…
ゴルジュ出口の滝の落ち口。
1
ゴルジュ出口の滝の落ち口。
そこから上は谷は穏やかになり、これ以上遡ってもあまり変化はなさそう。しかしまだ時刻は11時。予定では定石通り黒石岳から北尾根で下山するつもりだったが、思ったより時間に余裕があるので、ここから尾根を越え、右俣の菅平谷を下降することに決めた。
そこから上は谷は穏やかになり、これ以上遡ってもあまり変化はなさそう。しかしまだ時刻は11時。予定では定石通り黒石岳から北尾根で下山するつもりだったが、思ったより時間に余裕があるので、ここから尾根を越え、右俣の菅平谷を下降することに決めた。
ちょうど目の前には標高1030mで左岸に流入する枝谷がある。この枝谷を上がれば鞍部を越えて菅平谷側の源流に出られるので、この枝谷を登ることに決めた。
ちょうど目の前には標高1030mで左岸に流入する枝谷がある。この枝谷を上がれば鞍部を越えて菅平谷側の源流に出られるので、この枝谷を登ることに決めた。
もうかなり源流に来ているのだが、周囲は相変わらずほぼ100パーセント植林。紀伊山地は植林が盛んな地ではあるのだが、この谷の植林の徹底ぶりには逆に頭が下がるほどだ。よくこんな険しい谷に植林しようと考えたなぁ…
1
もうかなり源流に来ているのだが、周囲は相変わらずほぼ100パーセント植林。紀伊山地は植林が盛んな地ではあるのだが、この谷の植林の徹底ぶりには逆に頭が下がるほどだ。よくこんな険しい谷に植林しようと考えたなぁ…
ほぼ問題なく枝谷を登っていき、途中で現役と思われる林道をまたぎ…
ほぼ問題なく枝谷を登っていき、途中で現役と思われる林道をまたぎ…
奥黒石谷と菅平谷の中間尾根の鞍部に到着。ここも安定の植林。
奥黒石谷と菅平谷の中間尾根の鞍部に到着。ここも安定の植林。
鞍部から菅平谷の源流へと降りていく。
鞍部から菅平谷の源流へと降りていく。
菅平谷は次第に水量を増し、谷らしい姿を整えていく。
菅平谷は次第に水量を増し、谷らしい姿を整えていく。
途中で放棄された植林小屋が右岸に現れる。植林小屋があるといいうことは、奥黒石谷と同じように仕事道が残っているかもしれないと考え右岸側を注意して観察したが、道らしきものは残っていなかった。
途中で放棄された植林小屋が右岸に現れる。植林小屋があるといいうことは、奥黒石谷と同じように仕事道が残っているかもしれないと考え右岸側を注意して観察したが、道らしきものは残っていなかった。
菅平谷の上流部はほぼ平流。下降がはかどるのはありがたいが、沢登り的にはパンチ不足。このへんが菅平谷があまり登られていない原因なのかもしれない。
菅平谷の上流部はほぼ平流。下降がはかどるのはありがたいが、沢登り的にはパンチ不足。このへんが菅平谷があまり登られていない原因なのかもしれない。
と、それまで北流していた谷が東に向きを変え始めたあたりで、谷の雰囲気が一変。急に谷一面に岩が張り詰め始めた。
と、それまで北流していた谷が東に向きを変え始めたあたりで、谷の雰囲気が一変。急に谷一面に岩が張り詰め始めた。
おっと、滝だ! 左岸を巻き下る。
おっと、滝だ! 左岸を巻き下る。
10mほどの滝だった。
10mほどの滝だった。
さっきまでの平凡な流れはどこへやら、ここからはナメと小滝が連続。
1
さっきまでの平凡な流れはどこへやら、ここからはナメと小滝が連続。
そして磨かれたような一枚岩のナメ床が、谷いっぱいに広がる区間。まさかマイナーな菅平谷でこんな美観に出会えるとは思っていなかった。
2
そして磨かれたような一枚岩のナメ床が、谷いっぱいに広がる区間。まさかマイナーな菅平谷でこんな美観に出会えるとは思っていなかった。
いいねぇ
ナメを構成する岩盤が、褐色と黒色にくっきり分かれているのが面白い。黒蔵谷の高山谷にある八丁涸漉でも同じようなカラーリングの岩があったけど(あっちはもっとシマシマだけど)、地質的に何か関係があるのだろうか。
1
ナメを構成する岩盤が、褐色と黒色にくっきり分かれているのが面白い。黒蔵谷の高山谷にある八丁涸漉でも同じようなカラーリングの岩があったけど(あっちはもっとシマシマだけど)、地質的に何か関係があるのだろうか。
美しいナメをひたひた歩いていくと、また滝にぶつかる。左岸から巻き下って…
美しいナメをひたひた歩いていくと、また滝にぶつかる。左岸から巻き下って…
美しい滝場
その下もナメ滝が続く
その下もナメ滝が続く
おっと、また滝! しかも、これはかなり大きそうだ。
おっと、また滝! しかも、これはかなり大きそうだ。
この滝上にもトチノキの巨木があった。
1
この滝上にもトチノキの巨木があった。
右岸に薄い獣道を見つけ、それを辿って巻き下る。スリップしたら谷底へ一直線、かなりの急斜面で、慎重にトラバースしていく。
右岸に薄い獣道を見つけ、それを辿って巻き下る。スリップしたら谷底へ一直線、かなりの急斜面で、慎重にトラバースしていく。
巻きながら眼下の滝を眺める。思っていた通り、これはかなりの大滝だ。
1
巻きながら眼下の滝を眺める。思っていた通り、これはかなりの大滝だ。
緊張の大高巻きを終え、ちょっと谷を引き返して大滝を見に行く。周囲の黒々とした岩壁が厳めしいオーラを放つ。
1
緊張の大高巻きを終え、ちょっと谷を引き返して大滝を見に行く。周囲の黒々とした岩壁が厳めしいオーラを放つ。
大滝の直下から(滝の最下部の10mくらいが見切れてしまっているが…)。帰宅してから調べると、乙女滝40mとのことだった。正直、45mと言われる霞滝より大きそうに見えたけど、気のせいかな? とにかく、それくらい迫力のある滝で、今回の山行で最も印象的だったかもしれない。
1
大滝の直下から(滝の最下部の10mくらいが見切れてしまっているが…)。帰宅してから調べると、乙女滝40mとのことだった。正直、45mと言われる霞滝より大きそうに見えたけど、気のせいかな? とにかく、それくらい迫力のある滝で、今回の山行で最も印象的だったかもしれない。
乙女滝の最上部のアップ。乙女滝と言う割には、これはなかなか荒々しい乙女だ。
1
乙女滝の最上部のアップ。乙女滝と言う割には、これはなかなか荒々しい乙女だ。
ちなみに、この滝を高巻いて降りてきたルンゼがこれ。遡行する際も、乙女滝の手前にあるこの右岸のルンゼから高巻きを開始するといいと思います。しばらく登ると誰かが付けた赤いテープがあり、そこから獣道が滝上へとトラバースしている。
ちなみに、この滝を高巻いて降りてきたルンゼがこれ。遡行する際も、乙女滝の手前にあるこの右岸のルンゼから高巻きを開始するといいと思います。しばらく登ると誰かが付けた赤いテープがあり、そこから獣道が滝上へとトラバースしている。
まだまだ滝場は続く。これは左岸から巻き下る。地形図ではド派手な岩記号が張り巡らされているので無理かなと思ったが…
まだまだ滝場は続く。これは左岸から巻き下る。地形図ではド派手な岩記号が張り巡らされているので無理かなと思ったが…
割と楽に巻けた。10mほどの形の良い滝。(「折合滝」というそうです)
1
割と楽に巻けた。10mほどの形の良い滝。(「折合滝」というそうです)
このあたりは地形が険しすぎるためか植林も影を潜め、背の高いサワグルミが何本も佇立している。
1
このあたりは地形が険しすぎるためか植林も影を潜め、背の高いサワグルミが何本も佇立している。
荒々しい谷を下っていくと…
1
荒々しい谷を下っていくと…
もう少しで820m二俣に戻れそう、というところまで来て、ついにここでストップ。斧で立ち割ったような険悪なゴルジュが切れ込んでおり、これ以上の水線沿いの下降は無理だ。
もう少しで820m二俣に戻れそう、というところまで来て、ついにここでストップ。斧で立ち割ったような険悪なゴルジュが切れ込んでおり、これ以上の水線沿いの下降は無理だ。
ゴルジュをのぞき込む。いくつかの滝が落ち込んでいるようだ。懸垂でゴルジュ内に降りられないこともないが、ゴルジュ内で次の支点を取れないとマズイことになるため、高巻くことに。
ゴルジュをのぞき込む。いくつかの滝が落ち込んでいるようだ。懸垂でゴルジュ内に降りられないこともないが、ゴルジュ内で次の支点を取れないとマズイことになるため、高巻くことに。
右岸斜面を行くが、岩が張り出していてなかなか急峻。
右岸斜面を行くが、岩が張り出していてなかなか急峻。
暗いゴルジュを脚下にのぞき込みながら、慎重なトラバースを続ける。このゴルジュの周りは今回の山行では唯一と言っていいくらいの深い自然林に包まれているが、それを楽しむ余裕はあまりない。
1
暗いゴルジュを脚下にのぞき込みながら、慎重なトラバースを続ける。このゴルジュの周りは今回の山行では唯一と言っていいくらいの深い自然林に包まれているが、それを楽しむ余裕はあまりない。
なんとか懸垂なしで谷に戻った。写真はゴルジュの入り口。入り口の滝だけなら何とか登れそうだが、その奥にも困難そうなゴルジュが続いている。
なんとか懸垂なしで谷に戻った。写真はゴルジュの入り口。入り口の滝だけなら何とか登れそうだが、その奥にも困難そうなゴルジュが続いている。
って、行く手にもまだゴルジュが! 一瞬ドキっとしたが、ここは何とかクライムダウンで直進できそうだ。
1
って、行く手にもまだゴルジュが! 一瞬ドキっとしたが、ここは何とかクライムダウンで直進できそうだ。
うおっ、またまたゴルジュ! その先には820m二俣らしき明るい空間が見えているのに、これは非情。
1
うおっ、またまたゴルジュ! その先には820m二俣らしき明るい空間が見えているのに、これは非情。
滝自体は高くないので、飛び込みで何とかなりそうにも見えたが、飛び込んだ先に岩でも沈んでいて足でもぶつけたら行動不能になる可能性もあるため(単独の場合、それだけでも即遭難となる)、大事をとって右岸斜面から巻いていく。写真ブレてますねすみません。
滝自体は高くないので、飛び込みで何とかなりそうにも見えたが、飛び込んだ先に岩でも沈んでいて足でもぶつけたら行動不能になる可能性もあるため(単独の場合、それだけでも即遭難となる)、大事をとって右岸斜面から巻いていく。写真ブレてますねすみません。
無事に820m二俣(奥黒石谷と菅平谷の二俣)に戻ってきた。菅平谷、マイナーな谷だけど、下部はなかなか充実してました。
無事に820m二俣(奥黒石谷と菅平谷の二俣)に戻ってきた。菅平谷、マイナーな谷だけど、下部はなかなか充実してました。
さて下山。下山ルートとしては、霞滝の上から黒石谷右岸の仕事道を下ることにする。ネットやルート本では「崩壊が激しく下山路としての使用は困難」とされているこの道、さあどこまで辿れるだろうか。
さて下山。下山ルートとしては、霞滝の上から黒石谷右岸の仕事道を下ることにする。ネットやルート本では「崩壊が激しく下山路としての使用は困難」とされているこの道、さあどこまで辿れるだろうか。
霞滝の上の崩壊箇所は、行きに一度通っているので順調に通過。
霞滝の上の崩壊箇所は、行きに一度通っているので順調に通過。
そのあとはしばらく平和。おや、意外に歩けるやん。
そのあとはしばらく平和。おや、意外に歩けるやん。
こんな風に丸太橋が落ちている箇所や…
こんな風に丸太橋が落ちている箇所や…
絶対渡りたくないボロボロの丸太橋が掛かっている箇所もあるけど、いずれも小さく巻いたり、迂回したりして通過できる。
絶対渡りたくないボロボロの丸太橋が掛かっている箇所もあるけど、いずれも小さく巻いたり、迂回したりして通過できる。
が、ついに「これは無理!」な箇所が出現。断崖絶壁に老朽化して今にも真っ二つに折れそうな丸太橋が掛かっている箇所。この橋は絶対に渡りたくないし、周囲の地形が険しすぎて高巻きも難しそう。
2
が、ついに「これは無理!」な箇所が出現。断崖絶壁に老朽化して今にも真っ二つに折れそうな丸太橋が掛かっている箇所。この橋は絶対に渡りたくないし、周囲の地形が険しすぎて高巻きも難しそう。
なので、一旦谷底に降り、谷を下降することに。そしてまた仕事道に戻れる機会をうかがおう。誰もが同じことを考えるようで、先ほどの「絶対無理橋」の少し手前にピンクテープが張ってある箇所があり、そこから尾根伝いにちょっと下ると明神滝の上に簡単に出ることができる。
なので、一旦谷底に降り、谷を下降することに。そしてまた仕事道に戻れる機会をうかがおう。誰もが同じことを考えるようで、先ほどの「絶対無理橋」の少し手前にピンクテープが張ってある箇所があり、そこから尾根伝いにちょっと下ると明神滝の上に簡単に出ることができる。
明神滝は行きと同じルートで右岸を巻き下り(急斜面だが何とかロープを出さずに下れた)、明神滝の滝下に立つ。
1
明神滝は行きと同じルートで右岸を巻き下り(急斜面だが何とかロープを出さずに下れた)、明神滝の滝下に立つ。
さらに男女滝も行きと同じルートで右岸側をクライムダウン。
1
さらに男女滝も行きと同じルートで右岸側をクライムダウン。
すると右岸に登れそうな斜面が出てきて、仕事道に無事復帰することができた。
すると右岸に登れそうな斜面が出てきて、仕事道に無事復帰することができた。
仕事道を少し歩くと、大規模な山崩れ箇所。道は完全に消失しているが、ありがたいことにロープが張ってあって容易に通過できた。
1
仕事道を少し歩くと、大規模な山崩れ箇所。道は完全に消失しているが、ありがたいことにロープが張ってあって容易に通過できた。
が、だいぶ下ってきたところで、突然目の前から道が消失し、20分間ほどロスト。
が、だいぶ下ってきたところで、突然目の前から道が消失し、20分間ほどロスト。
これは絶対おかしい、と道が消えた地点まで戻ってよく見ると、なんと仕事道は突然「つづら折り」となって180°方向を変えていたのだった(写真の矢印)。こんなん分かるかっ!
2
これは絶対おかしい、と道が消えた地点まで戻ってよく見ると、なんと仕事道は突然「つづら折り」となって180°方向を変えていたのだった(写真の矢印)。こんなん分かるかっ!
そのあとも仕事道は4回ほどつづら折りを繰り返す。これはさすがに人が歩く道としては冗長すぎる気がする。木馬道か何かだろうか? さすがに森林鉄道は敷かれていなかっただろうし…
そのあとも仕事道は4回ほどつづら折りを繰り返す。これはさすがに人が歩く道としては冗長すぎる気がする。木馬道か何かだろうか? さすがに森林鉄道は敷かれていなかっただろうし…
ちなみに、この冗長なつづら折り区間を大幅にショートカットするための踏み跡もあり。入り口にマーキングとケルンもあります。
2
ちなみに、この冗長なつづら折り区間を大幅にショートカットするための踏み跡もあり。入り口にマーキングとケルンもあります。
この苔むしすぎて健全性の不明な丸太橋は谷に一旦降りて巻いて…
1
この苔むしすぎて健全性の不明な丸太橋は谷に一旦降りて巻いて…
無事、林道に戻ってきました。なかなか盛りだくさんな下山となったけど、結果的には820m二俣(奥黒石谷と菅平谷の二俣)から約2時間。黒石岳から北尾根を下る(所要時間4時間)よりは早い、かな?
無事、林道に戻ってきました。なかなか盛りだくさんな下山となったけど、結果的には820m二俣(奥黒石谷と菅平谷の二俣)から約2時間。黒石岳から北尾根を下る(所要時間4時間)よりは早い、かな?

装備

備考 ・ フェルトソール沢足袋使用
・ ロープ40m携行したが使用場面なし。ただし険しい谷なので長めのロープ必携。

感想

 黒石谷は、台高の谷の中でもメジャーな部類に入ると思われるが、私は恥ずかしながら今回が初めての訪問だった。普段、変な山や変なルートばかり登っているので、色モノ専門かと思われてしまうかもしれないが、そんなことは決してなく、メジャーだろうがマイナーだろうが、良い谷には登りたい。黒石谷もたまたま行きそびれていただけです。
 当初は初見参ということもあり、オーソドックスに左俣の奥黒石谷を遡行して黒石岳から北尾根で下山しようと考えていたのだが、思ったより時間に余裕ができたため、これも2回目以降に入りたいと思っていた右俣の菅平谷を下降して周回することにした。菅平谷は今回予定外だったため事前にほとんど何も調べておらず、何が出てくるか分からなかったが、奥黒石谷に比べてマイナーで人がほとんど入らないということは、相対的に遡行価値が低い≒滝場も少ないということだろうし、問題ないだろうと考えた(この認識は結果的にある一面では正しく、またある一面では間違っていた)。
 黒石谷〜奥黒石谷の定番ルートはもちろん素晴らしかったことは言うまでもないが、結局、今回の山行で最も印象に残ったのは、意外にも菅平谷の乙女滝と、その上部のナメ床区間だったように思う。乙女滝は40mとされているが、黒石谷で最大とされる霞滝(45m)よりも迫力があって高さもあるように感じられた。これは事前知識なしにばったり出会ったことによるインパクトの大きさのゆえだろうか?
 黒石谷はほぼ全域にわたって徹底的なまでの植林が施されており、奥深い自然林での逍遥を愛する向きには大きな減点になると思われる。実を言うと私もそれが一因となってこの流域の谷になかなか足が向かなかった面もあるのだが、最近は宇江敏勝さんの著作に触れたりしたこともあり、紀伊山地での林業に関心が出て、こういう植林盛んな谷もそれはそれで興味深い。下山で辿った仕事道(木馬道?)にしても、信じられないような断崖絶壁に美しいと言っていいくらいの整然とした石垣が組んであり、その職人技に頭が下がる思いだ。こうした隠れた産業遺産ともいうべき道がただ崩壊するに任されているというのも、何とも惜しいことのように思われた。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:141人

コメント

まだコメントはありません
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。

ルートを登録する

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら