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Yamareco

記録ID: 1974037
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
塩見・赤石・聖

千枚岳 〜思い残し〜

2019年08月13日(火) 〜 2019年08月14日(水)
 - 拍手
体力度
6
1〜2泊以上が適当
GPS
13:41
距離
20.2km
登り
2,094m
下り
2,069m
歩くペース
標準
1.01.1
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
6:32
休憩
0:24
合計
6:56
4:54
11
5:05
5:05
128
7:13
7:17
83
8:40
8:45
48
清水平
9:33
9:40
20
10:00
10:00
87
11:27
11:35
15
11:50
11:50
0
11:50
2日目
山行
6:01
休憩
0:05
合計
6:06
4:44
47
5:31
5:35
35
6:10
6:10
19
6:29
6:29
11
6:40
6:40
42
7:22
7:22
10
7:32
7:32
83
8:55
8:56
101
10:37
10:37
13
10:50
椹島ロッジ
天候 12日 椹島へ 曇り
13日 千枚小屋へ 曇りのち雨
14日 千枚岳往復、下山 雨
過去天気図(気象庁) 2019年08月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
8/12 静岡駅発10:00(しずてつ南アルプス登山線、3,100円)畑薙第一ダム臨時駐車場着13:20、発14:10(特種東海フォレスト送迎車)椹島ロッジ着15:10
8/14 椹島ロッジ発13:00、畑薙第一ダム着13:50、発14:30(しずてつ南アルプス登山線、3,100円)静岡駅着18:00
※南アルプス登山線は台風の影響で、15、16日運休となった。
コース状況/
危険箇所等
新しい吊橋が架けられ、登山道も左岸に付け替えられた。距離は短くなったが、旧道合流後の岩場越えは残る。それにしても2/7、3/7の札を見た時のショックは筆舌にし難い。水場の清水平は絶妙な位置にある。蕨段の先で、見てはならないものがかすめて行った。
その他周辺情報 椹島ロッジのシャワー 9時から13時、500円
椹島ロッジ、思わず個室を選んでしまった。コンセントも有り、消灯時間は自由。
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椹島ロッジ、思わず個室を選んでしまった。コンセントも有り、消灯時間は自由。
リニアの工事で其処此処に重機置場や作業所が点在するが、興ざめしないよう配慮が為されている。
5
リニアの工事で其処此処に重機置場や作業所が点在するが、興ざめしないよう配慮が為されている。
白籏史朗写真館の前はテントサイトになっていた。
5
白籏史朗写真館の前はテントサイトになっていた。
明日も明後日もこの天気がもってくれれば。
3
明日も明後日もこの天気がもってくれれば。
レストハウスで串カツ。ビールではなくコーラでね。
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レストハウスで串カツ。ビールではなくコーラでね。
ずらりと並ぶ南アルプス南部の山々。椹島はさながら南の上高地である。
8
ずらりと並ぶ南アルプス南部の山々。椹島はさながら南の上高地である。
早朝のセンターを後にする。
4
早朝のセンターを後にする。
滝見橋の旧登山口。
3
滝見橋の旧登山口。
新登山口の吊橋。
4
新登山口の吊橋。
急坂、岩場を抜けて、先ずは第1の鉄塔下を通過。
3
急坂、岩場を抜けて、先ずは第1の鉄塔下を通過。
1時間が過ぎた。第2の鉄塔下。休みたい。
3
1時間が過ぎた。第2の鉄塔下。休みたい。
風が心地よい。静かな道。
5
風が心地よい。静かな道。
尚も続く急登、と思いきや、
3
尚も続く急登、と思いきや、
林道出合。。。
本当に残念です! 7分の2ということは、まだあと5時間あるのね。
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本当に残念です! 7分の2ということは、まだあと5時間あるのね。
その7分後、小石下、迷わず休む。
4
その7分後、小石下、迷わず休む。
2度目の林道出合。。。
3
2度目の林道出合。。。
出発後4時間弱、中間地点、清水平に到達。実に旨い湧き水だった。
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出発後4時間弱、中間地点、清水平に到達。実に旨い湧き水だった。
時は流れ、蕨段。コース名の所以。既に疲労困憊。
4
時は流れ、蕨段。コース名の所以。既に疲労困憊。
すれ違いが落ち着くと再び静かな時間。それにしても青空、1日遅かったかな。
3
すれ違いが落ち着くと再び静かな時間。それにしても青空、1日遅かったかな。
あと2時間!ですね。もう無理です。まだ標高差1,000mを越えていない。
3
あと2時間!ですね。もう無理です。まだ標高差1,000mを越えていない。
見晴岩、当然スルー。
2
見晴岩、当然スルー。
往時をしのぶ余裕全く無し。
2
往時をしのぶ余裕全く無し。
このあたり最も辛かった。
6
このあたり最も辛かった。
駒鳥池。畔まで下りる体力気力無し。行動食を取り、息を整えるのに、立ったまま7分かかった。
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駒鳥池。畔まで下りる体力気力無し。行動食を取り、息を整えるのに、立ったまま7分かかった。
風倒樹林。決して間伐をした訳ではない。森林限界が近いと錯覚してしまう。
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風倒樹林。決して間伐をした訳ではない。森林限界が近いと錯覚してしまう。
着きました。夢にまで見た7分の7。
8
着きました。夢にまで見た7分の7。
そして優しき千枚小屋。息も絶え絶えに受付を済まし、思いきり水分を補給した。
7
そして優しき千枚小屋。息も絶え絶えに受付を済まし、思いきり水分を補給した。
今日は寝袋の間隔が広め。素泊まりでも本館でゆっくり眠れる。
8
今日は寝袋の間隔が広め。素泊まりでも本館でゆっくり眠れる。
8月14日、朝から雨。台風による影響か、風も出てきている。さんざん迷った挙句、荷をデポせず悪沢岳を目指した。
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8月14日、朝から雨。台風による影響か、風も出てきている。さんざん迷った挙句、荷をデポせず悪沢岳を目指した。
二軒小屋への分岐を通過。
2
二軒小屋への分岐を通過。
通過点のはずだった千枚岳に到達。風が強くなってきた。悪沢岳の往復をするべきか、千枚小屋に連泊すれば叶うけど。
13
通過点のはずだった千枚岳に到達。風が強くなってきた。悪沢岳の往復をするべきか、千枚小屋に連泊すれば叶うけど。
果たして5時35分、悪沢岳への道を見つめ、山頂を後にした。
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果たして5時35分、悪沢岳への道を見つめ、山頂を後にした。
何をしに来たのか。この数か月間の、計画を楽しんできた時間が頭の中を過ぎる。そしてそれを打ち消すように、荒天による停滞、林道閉鎖、登山バスの運休などが思い浮かんできた。
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何をしに来たのか。この数か月間の、計画を楽しんできた時間が頭の中を過ぎる。そしてそれを打ち消すように、荒天による停滞、林道閉鎖、登山バスの運休などが思い浮かんできた。
小屋まわりのお花畑に戻ってきた。このまま下ろう。
4
小屋まわりのお花畑に戻ってきた。このまま下ろう。
6時35分、駒鳥池を通過。
3
6時35分、駒鳥池を通過。
この道を通る。まるで昨日!のことのようだ。こののち、後悔の念が生まれる度に、打ち消すのに必死になった。
3
この道を通る。まるで昨日!のことのようだ。こののち、後悔の念が生まれる度に、打ち消すのに必死になった。
7時35分、蕨段を通過。
3
7時35分、蕨段を通過。
清水平。このあたりから本降りになった。稜線はどうなのだろう。
3
清水平。このあたりから本降りになった。稜線はどうなのだろう。
岩場越えを忘れていた。四苦八苦しながらようやく登山口の吊橋に到着した。長い5時間だった。
5
岩場越えを忘れていた。四苦八苦しながらようやく登山口の吊橋に到着した。長い5時間だった。
昨日と同じように自炊場を見つめる。まさかこの時間、此処に居ることなど思いもよらなかった。
4
昨日と同じように自炊場を見つめる。まさかこの時間、此処に居ることなど思いもよらなかった。
貴方のお蔭でこうして登山を楽しめるのです。また来れば良いのですね。大倉男爵殿。
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貴方のお蔭でこうして登山を楽しめるのです。また来れば良いのですね。大倉男爵殿。
時は流れ、静岡駅前の「鐘庵」。桜えびそばと静岡おでん、いつ来ても美味しい。また必ず来ますね。今度は計画完遂してから。
16
時は流れ、静岡駅前の「鐘庵」。桜えびそばと静岡おでん、いつ来ても美味しい。また必ず来ますね。今度は計画完遂してから。

感想

 入山が1日遅かった。せめて夜行で向かっていれば。悔やむことしきり。でももう終わってしまったのだ。いつか彼の地を踏めるよう努力を惜しまずにいよう。

 台風の進み方はあまりにも遅く、天気図から目が離せなくなった。加えて先週痛めた腰の具合がよろしくない。そして何より雨の中、崩壊地の縁を歩くことに不安を感じ始めていた。土壇場で当初のコースに変更することにした。あるぺん号は乗合バスでは無いからキャンセル料をしっかり払わなければならない。痛いなあ、腰も出費も。とにかく8月12日朝、品川駅から西へ向かった。
 静岡駅に降り立つのは、もう何度目だろう。いつも見上げると青空が広がっている。このまま隠れないでください。念じながら登山バスに乗り込む。空いていた。キャンセルが多いのだろう。単純だから途端に不安になってくる。窓の外を見ずに3時間熟睡することにした。
 臨時駐車場には13時20分に到着、予定どおり送迎バスを待つ。24年前、4年前、畑薙という場所を訪れた。今日も少しだけ緊張している。林道は、ダンプやトラックが頻繁に通行しているせいか更に悪路へと変化していた。
 椹島は、登山基地であると同時に、大プロジェクトの工事現場となっていた。とはいえ、しっかりと区画はされており、静かで気持ちの良い時間を享受することができる。受付を済まし、早速、散策をすることにした。変わらず、青空は雲間から顔を覗かせ、テラスで気分よく軽食(串カツとコーラ!、普通下山後だろう)を楽しんだ。
 
 ロッジの個室は思いのほか快適で、車中の熟睡は妨げにならなかった。午前5時、満ち足りた朝を迎え、先ずは千枚岳を目指し出発する。昨年7月に、登山口は滝見橋を渡った先に新たに設けられ、真新しい吊り橋が眩しかった。
 いきなりの急登で、息が上がる。けれども新道は尾根を行くため、すぐに高度を稼げるなあ、などと思っていると、今度は岩場の急降下である。こんなもの、明日のコルへの降下に比べれば、などと思っていると、登り返しに怖気づく。全く気持ちの変化が慌ただしい。半ば楽しみながら、鉄塔下を通過する。
 さらに進み、悲しい林道出合を過ぎると、さらに悲しい標識に出合う。7分の2という数字に衝撃を受け、今日の7時間の登りを今更ながら思い知る。傷心の思いで歩いていると、追い打ちをかけるかのように、2度目の林道出合。不自然に静かな時間が流れていた。
 清水平は絶妙な位置に在る。ちょうど急登に飽きてきた頃に現れる湧き水とベンチ。ここで休まない訳にはゆかない。迷わず座り、「7分の4」を茫然と見つめていた。意を決し、無心の歩みを始める。残り3時間などと考えてはいけない。
 1時間弱を歩いた頃だろうか、蕨段に着いた。標柱には千枚小屋まで3時間の表示。そんなはずは無い、下山者とのすれ違いも落ち着いていたから、ぶつぶつ呟きながらひたすら登った。ふと右手を見ると、車道を行き過ぎる1台の車がいる。そのときはそれどころでなかったからぼんやりと眺めていたが、のちに思い出すとかなり衝撃的な場面に遭遇したのだった。
 そんなこんなで椹島との標高差1200メートルに達した。頻繁に立ち止まるようになった。急坂は収まり、緩やかな傾斜が余計に辛い。静寂に包まれた駒鳥池では畔まで下りる気力は無かった。
 小屋の気配を今か今かと待ちわびていると、7分の7の標識、嬉しさが込み上げてくる。眼前にお花畑に囲まれた千枚小屋の姿があった。時に12時半、小屋の前には大勢の人が休んでいる。受付を済まし、喉を潤し、着替えた。素泊まりでも本館で休めることに安堵したのか珍しく食欲がある。雲に覆われた空を見上げながらゆっくりと口に運んだ。
 シュラフは一つ置きに均等に並べられている。例によって仮眠を取ることにした。きっかり2時間眠ったあと、外の雨に気付いた。通り雨らしく、16時前には上がった。17時、小屋前で夕食後のコーヒーを楽しむ。テレビで、明日の午前中は保つことを確認し、18時に就寝した。けれども天候が気になって夜半何度も目が覚めた。
 
 3時には、早出組が動き出す。予報よりも早く荒天になりつつあった。先ず、赤石岳山頂までの行程は諦めた。時間と共に荒川小屋までも遠く感じられるようになった。やがて臆病風が強くなり、悪沢岳の往復と千枚小屋の連泊を決め、5時前に出発した。
 雨は未だ本降りでは無いが、風は徐々に強さを増している。標高2880メートルの千枚岳山頂で途方も無く迷った。赤石岳にも悪沢岳にも登らず、何のための山行だったのか、後悔することは明白であり進むべきである。雨に濡れた岩場で風に煽られても平常心を保てるのか。自問自答を繰り返し、人生3度目の撤退に踏み切った。
 小屋までの道中、数組の人々とすれ違った。この選択は慎重すぎるのではないか、早くも自信を無くしていた。やがて、様々な分岐点を思い浮かべるようになった。夜行で入山し三伏峠からの南下コースを選んでいれば、そもそももう1日早く出発していれば、椹島から赤石岳の往復に割り切っていれば、考えれば考えるほど悔しく情けなかった。
 清水平から本降りになった。樹林帯の中といえども、ずぶ濡れになる。転倒に気を遣いながらなるべく無心で下りた。山頂からの5時間は果てしなく長く感じた。椹島に着いた時、不思議な気持ちに包まれた。安堵感ではなく、口惜しさでもなく、何故かそれは達成感に近かった。帰りの登山バスの空席を確認後、シャワーを浴びた。
 ダムまでの車中、明日、明後日の登山バス運休を知った。この山域では遠くても台風の影響を受けやすいのだろう。そして山頂で過ぎった「停滞」が、椹島でも起きる可能性のあったことを知らされた。いつの間にか雲間から強い陽射しが降り注いでいる。また一つ思い残すことが増えた。山を続けよう。束の間の青空を見上げ、ほんの少しだけ嬉しさを感じていた。

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