剱岳
- GPS
- 27:25
- 距離
- 16.6km
- 登り
- 1,867m
- 下り
- 1,869m
過去天気図(気象庁) | 2007年08月の天気図 |
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アクセス | |
予約できる山小屋 |
|
ファイル |
非公開
2730.xls
計画書
(更新時刻:2010/07/28 08:54) |
写真
感想
初めての剱岳を満喫してきました。
私が剱を初めて意識したのは、恥ずかしながら、ちょうど1ヶ月前に登った鹿島槍ヶ岳冷池山荘そばのテントサイトから、夕闇に浮かぶ印象的な剱の稜線に心を動かされたときです。
その時点で鎖場のある山に登ったのは丹沢表尾根の一度きり、の私にとって、まさか1ヵ月後に剱に登頂しているとは思ってもみないことでした。
ただ、高所恐怖症がなかばコンプレックスになっていた私にとって、岩場が長く高度感もバツグンで、一般登山道では一番難しいと通常言われている剱岳をたとえ登頂できずとも少しでも知ることは、今後の登山の内容を決めていくためにも有益かな、と思い、今回の山行を決意したのでした。
間近で見る剱は、想像していた以上に力強く精悍で、かつ端正な佇まいの、険しくも美しい山でした。
実際に岩肌に触れてみても、それは堅牢で、少なくとも私にとっては、そばに設置された鎖よりも安心感を与えてくれるホールドとなりました。
心配していた高度感は、ひたすら続く岩場を通過することに集中していたせいか、あまり気にならず、そのため「怖い」と感じることもほとんどありませんでした。
登山経験の豊富な同期に囲まれて、山歩きの経験の少なさ、突然発覚した高所恐怖症など、登山に消極的になる要素はいろいろありました。
それでも、私の能力+αの山行に参加させてくれた会の皆さんの懐の深さに甘えながら、少しずつ自信をつけることができ、今回の剱岳の登頂につなげることができたのだと思います。
また、事前の岩トレをはじめ、当日も本当に適切なアドバイスをしてくださったraityouさん、同じ目標を持ったmarinaさんのお2人には、安心感をいただきました。すごく感謝しています。
ありがとうございました!
・憧憬の剱
今回は自分にとって特別の山だ。まず最初の一つのチェックポイントとしながら、長いこと近づくことができなかったのがこの剱岳だった。
剱を知ったのは5年前だ。山の世界に入って3ヶ月目のことで、立山を訪れた時だった。切れ落ちた断崖、垂直な岩壁、歩いて登る山としては最も困難な山の一つと聞く。ボクの感覚では、そこに身を置くことなどあり得ないことだ。これを苦も無く突破できる、そうなれば全く違う世界が見えてくるのではないだろうか。そんなことを5年前に考えていたのをはっきりと覚えている。
5年間、仕事や骨折、常に山からはある程度の距離にあった。特に2年前の左足の骨折は全てをスタート以前にしてしまった。
再び山に戻れたのはここ一年のこと。無駄に過ぎた5年を思うと、ひたすら焦る。
ここ最近は無駄とも思えるような、バカバカしいトレーニングも繰り返した。
ウイークポイントになっていた左足もある程度鍛えた。
自分にとってのベンチマーク、今回はそういう意味の山だ。
・一日目
予定だった最終日の天気が良くないようだ。それを避けるためにも、そして岩場の前哨戦として体を慣らすためにも、雄山を経由して剣沢を目指す。
ターミナルから一歩出ると、5年目3回目の立山はバリ晴れ!!こんなの初めて!!マジで最高!!スタート地点から、あらゆる場所がわざとらしいぐらい美しい。「エホバの証人」とか「ものみの塔」とかのパンフレットに描かれている天国とか約束の地とか、そんな感じみたいな!
そんな夢心地の中、一ノ腰、雄山と高度を上げる。風も心地よく、快適なアプローチ。
雄山山頂からは、目指す剱岳の姿が見え始める。女性的な雄山、立山三山とは対照的に、荒々しいヤスリのような岩肌。
雄山から先は一気に人気もなくなるが、ひたすら快適な縦走路を進む。剱が見え隠れしながら、徐々に存在感を増してくる。
剣沢のテント場の上まで来ると、剱はいよいよ堂々と正面に構えている。鞍部を抜ける恐ろしげな雲を纏い、切り立った稜線を連ねる重厚感溢れる山塊は、力強く美しく、シビレるほどカッコいいのです!!
入り口正面に剱を向えたテントからの眺望。剣沢のテント場は、これまた天国だ。こんなところで飲むビールは最高だ。ここではプリン体もあまり気にならない。ビール一本なら大丈夫だ。
空はいわし雲が刻々と変化を見せ、早くも秋の様相。日が落ちると徐々に気温は下がるが、寒いほどではない。
夕食はMOUNTAIN HOUSEのフリーズドライ。これはかなりウマい!!レガーもそうだけど、フリーズドライは本当によくできている。
食事所が近場にないウチの職場で、多少の違和感を感じながら食べているこれらのフリーズドライだが(ココイチとかよりうまい)、正々堂々とこれらを食べられるのがテント泊の楽しみの一つだ。
明日はいよいよ剱岳。さっさと寝るが・・・やはり2時間で目が覚める。トイレに行くも、自分のテントを見失う。20分ほど徘徊。危うく朝までビバークするところでした!!最近はあり得ないところで迷ってばかり。ヤバイかも、自分。
・二日目
四時に行動開始。まだまだ暗い。日が昇るのは明らかに遅くなっている。夏とはいえ、もう一月で秋分の日。天気が崩れれば十分に危険だろう。今日は風が変に強く、天気が悪化しつつあるようだ。雨の中の岩場、鎖場だけは避けたい。
ダイナミックな雲の変化を見せる幻想的な日の出の中、剱に向けてグイグイ高度を稼ぐ。早くも一服剱への登りから岩場が始まり、ちょっとしたアスレチック気分が楽しい。鞍部で感じる風が気にはなるが、午前は雨の心配はないだろう。聞いていた急な登りも問題となるものは全くなく、ただ快適な岩場歩きが続く。前剱あたりまでは変化の激しい眺望の中、富山湾までも見渡せる。雲の変化は変わらず速い。
飽きずに岩場を越えていくと、いよいよ最も恐れていた断崖絶壁のトラバース・・・とはいえ、やはり足場は十分、鎖もホールドも存分であり、やや緊張しながらも特に問題はなく越えられる。先の鎖場もホールド、スタンスは過剰なほどで、斜度も高度も全く無く、楽しく進める。
登り最後の難関、カニのタテバイがいきなり現れる。「30mの岩を直登」「垂壁をフリーで攀じる」など・・・悪い噂の方に合わせて身構えておいた。そんな気持ちで見たタテバイは・・・・本当にこんな程度でカニのタテバイ?15mしかないし、斜度は60〜70度じゃないか?
悲観主義とは、こういう状況で強さに転じるのだ。もう、タテバイは登らずして登れている。この時点でボクはもう剱を登ったも同然だ。
頂上はガスの中。しばしば見える青空と、果てしない雲海。
クライミングギアを身に纏ったパーティが休んでいる。次は、そこまでイケるだろうか?あるいは、次は自分はどこを目指すだろうか。9月から予定しているクライミングスクールを、まずはしっかり頑張ってみよう。その成果に応じて自ずと見えてくるだろう・・・
ほどなく、カニのヨコバイが現れる。いつかはわからないどこか過去の時点であれば、恐怖で動けなかったかもしれない。切れ落ちた先を見ながら冷静に、ミスったら半端無い事態であることを考える。いざとなったら手だけでも支えられる、というかミスらないだろうな。最も緊張はしたが、まあ問題はない。
「垂直20mの梯子」もそこにはなかった。角度はあるし、そして10m以下だ。こんなものは会社の屋上にある、いつもの垂直10m梯子での懸垂(10回)より遥かに安全だ。梯子から下を見た瞬間、ボクはもう下山も終えていたのだ。
・帰宅
天気が崩れるのを恐れ、微妙な雨の中を下山。大混雑の室堂へ。
ここに来るのに色々な意味で遠回りしすぎたように感じる。もっと早くに山岳会に入っていれば無駄に時間を使う必要もなかっただろうな・・・
raityouさん、makikoさん、ありがとうございました。豊科インターからx時間。所沢は北アルプスの玄関みたいなもんですね!
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