中央分水嶺高島トレイル全線スルーハイク


- GPS
- 80:18
- 距離
- 86.5km
- 登り
- 6,601m
- 下り
- 6,588m
コースタイム
■1日目 13日(木) 沿面距離22km、累積標高差+2060m/-1632m、行動時間7:48
国境10:25―11:53乗鞍岳―13:30黒河峠<水汲み19分>―14:45三国山―15:32赤坂山―15:39粟柄越―16:47大谷山―17:22抜土―18:13近江坂分岐南の林道
■2日目 14日(金) 沿面距離34km、累積標高差+2899m/-3014m、行動時間12:38
近江坂分岐南の林道4:35―4:48近江坂―5:18大御影山―7:41三重嶽―9:34武奈ヶ嶽―11:00水坂峠<ルートミス・水汲み23分、休憩10分>―12:41二の谷山―13:15桜峠<別荘地での逡巡12分>―15:08行者山―15:54横谷峠<水汲み、テント場探し45分>―17:13標高693mピーク
■3日目 15日(土) 沿面距離31km、累積標高差+2822m/-3108m、行動時間10:33
標高693mピーク4:55―6:03駒ケ越―6:12駒ケ岳―6:55与助谷山―7:26桜谷山―7:34木地山峠<水汲み21分>―8:41百里ヶ岳―9:27根来坂―10:00おにゅう峠<舗装路引き返しピークを通過>―11:48ナベクボ峠―12:16三国峠12:30―12:55地蔵峠13:00―13:58岩谷峠―14:28三国岳14:36―15:28桑原橋バス停
※三国峠以降はコースタイムの半分のペースで走っています。
天候 | 13日:快晴 14日:晴れ 15日:昼前から雨 気温 13日:10:25国境バス停(標高390m)30℃、18:05近江坂分岐(840m)18℃ 14日:03:52近江坂分岐南の林道(810m)18℃、09:23武奈ヶ嶽付近(828m)21℃、 17:05横谷峠付近(642m)22℃ 15日:5:15宿泊地の698mピーク付近19℃、15:27桑原橋バス停(400m)21℃ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:桑原17:28―市営バス針畑線220円―18:06朽木学校前18:17―路線バス朽木線720円―18:45安曇川駅 ※針畑線の車両はワンボックスカー。2〜3分の早発もあるようなので、早めに待機した方が無難。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
公式ガイドブックによると「歩くのに最小限を合言葉に」整備したとのこと。高島トレイルの黄色いテープがコースを示しているが、配置の間隔にはかなりムラがある。配置してほしい場所(登山口や分岐、方向を見失いがちな広い鞍部など)にはないことが多い。さらに、黄色いテープの色が新緑や明るい樹皮に調和して目立たないことも。テープを頼りに歩くというよりは、正しいルートを歩くとテープが出てくるというつもりでいた方が良い。 基点から明王ノ禿までは、狭い道に張り出した枝葉にこすりながら進むことになる。この時期、毛虫もよくぶら下がっているので、なるべく肌の露出を抑えたほうが良さそう。明王ノ禿以降は道幅が広がる。 マキノ駅の観光案内所で、公式ガイドブック(1000円)とマップ(800円)を買える。 公式ガイドブックは日帰りで区切って歩く登山者を対象に書かれたもので、水場やテント設営適地の情報は一切掲載されていない。トレイルの雰囲気・傾向や歴史的背景を知るのには役立つ。 公式マップは1/25000地形図をベースにしたもので、等高線がはっきり印刷されている。コースタイムも掲載されているので、計画を立てる(見直す)のに役立つ。もちろん水場の情報も掲載されているが、ナベクボ峠や地蔵峠などの水場が掲載されていない。また、水場の位置が少しずれているものもある。コース表示も、根来坂〜おにゅう峠間の道を舗装路でなく行き止まりになる尾根道を案内しているなど、釈然としない部分がある。それでも、高島トレイルをスルーハイクするなら手に入れておきたい。 今回の計画にあたって一番参考になったのは、雑誌『BE-PAL』2013年6月号付録の『日本全国10大トレイルBOOK』。水場やテント設営適地などが言葉で説明されていて分かりやすかった。ただし、横谷峠〜おにゅう峠を10時間15分、おにゅう峠〜桑原を11時間20分と過大評価していて、計画を立てるのに戸惑った。(公式マップではそれぞれ7時間30分、9時間50分) ■水場の状況 空梅雨の影響なのか、全体的に渇水気味。後半に行くほど水場が頼りなくなる。重くても、汲めるときに汲んでおいた方が安心。浄水器が必要。毎回煮沸するのは現実的ではない。 ・黒河峠の林道を北に下った小川・・・水量豊富。 ・三国山前後の小川・・・汲めた。 ・抜土・・・林道沿いの小川。ゲート付近は淀んでいた。近江坂への急登に差し掛かった辺りで汲めるようになる。 ・近江坂分岐を南に下り、林道を西に200mほど進んだ辺り・・・汲めた。 ・三重嶽の南、855mピーク付近にある池・・・モリアオガエルが生息するため池。ほかの池と違って水量豊富なので、非常時であれば。 ・水谷峠、二の谷山登山口に入ってすぐの流れ・・・汲めた。ただし、流れてくる水の源は治山施設(小さなダム)で、溜まった水は真緑である。 ・桜峠から別荘地へ向かう途中の小川・・・汲めそう。環境センターが近くにあるのは気になるが。 ・横谷峠から林道を西に200mほど進んだ辺り・・・汲めた。 ・木地山峠から東へ150mほど下りた沢・・・汲めたが、細い。近くに石囲いしてある場所があり、テントを張るのに良さそう。峠の西側にも水場があるらしいが、未確認。 ・おにゅう峠〜ナベクボ峠間、803mピークに登り返す直前・・・「水2分」という標識に従い南に進むと小川があるが、水溜り程度の水位で汲めなかった。 ・ナベクボ峠から南に下った谷・・・未確認。 ・三国峠南の分岐から林道に合流した場所・・・休憩舎・トイレがあるので、水場もそこだと思われるが、未確認。 ・地蔵峠・・・探したが見つからなかった。 公式サイトのQ&Aに主な水場の情報を掲載 http://www.takashima-trail.jp/question.html ■携帯電話(SoftBank)の電波状況 ・マキノ駅・・・圏外 ・水坂トンネルの上部・・・圏内 ・桜峠周辺・・・圏外 ・横谷峠北西の693mピーク・・・圏内 ・三国峠周辺・・・圏内?(アンテナは立ったがデータ通信できず) ・桑原バス停・・・圏外 |
写真
感想
日が暮れるまで歩き、好きな場所でテントを張る。そんな自由な楽しみをしてみたい。でも、テント場が指定されている日本の山では、難しいことです。高島トレイルの魅力を感じた理由は、テント指定地がないこと。自分の判断で宿泊場所を決められることです。もちろん、平坦で植物を傷付ける心配のない広さが必要ですし、水場は限られているので、ある程度適地は絞られます。80kmにも及ぶロングトレイルを一度に踏破するために、どこで水を補給し、どこに宿泊するか考えるのは楽しいものでした。
心配なのは、水場の情報。正確な位置、どんな形なのか、涸れていないか、情報が不足していました。公式サイトのQ&A、雑誌『BE-PAL』の付録記事、ヤマレコの記録などを総合しても、結局は行ってみないと分からないことの方が多かったのです。山奥で水がなくなるのは恐怖です。終盤は水が得られず、残り少ない水で踏破するためにとった行動は、「その日の内に走りぬいて下山し、野営の水を節約する」というものでした。
以前にも、同じく80km程度の信越トレイルを踏破しました。GPSトラックの元データを比較すると、信越トレイルは沿面距離79km、累積標高差+5100m/-5800m。高島トレイルは沿面距離87km、累積標高差+-7800mにも達しました。明らかに高島トレイルの方がハード。コース表示も高島トレイルの方が少なく、地形もより複雑で、読図の力も試されます。
それだけに、踏破したときに得られた満足感も大きいです。
(富士山の裾野を半周するトレイルランレース「STY」の実測は、沿面距離85km、累積標高差+-4400mでした。)
以下、行動の詳細です。
■1日目 13日(木) 距離21.5km、累積標高差+2060m/-1632m、行動時間7:48
台風3号「ヤギ」の進路が東へそれ、西日本は晴れの予報に変わったことで、暖めていた計画を実行することにした。京都駅から特急サンダーバードを乗り継ぎ、9:26にJRマキノ駅に到着。ここから基点となる国境(くにざかい)まで、バスが出ている。駅内に観光案内所があり、公式ガイドブックとマップが売っていたので、購入しておく。地形図を張り合わせてルートを引いたものを用意してきたが、やはりコースタイムなどの情報が載っていると参考になる。ただ、コースが不透明な実線で引かれ、等高線やピークの数字が隠れてしまっているので、地形図の方が読図しやすい。2種類の地図を使い分けていくことにする。
ほかに乗客がいないためか、10:04の定刻より早くバスは出発した。20分ほどで、国境バス停に到着。登山口のポストに登山届けを提出し、80kmの旅へ出発。
出発時の荷物の重量は、水や消耗品を除くベースウェイト5.7kg、込みのパックウェイト9.2kg(うち、水1.5L)。今回の行程では何度も給水するため、水の容器はハイドレーションパックではなく、ボトルにした。両方のショルダーハーネスにボトルホルダーを取り付け、モンベルのパフォーマンスボトル(容量650ml)2本を差す。
ところが、気がつくとボトルの吸い口がない。駅でザックから取り出したときに落としたか、バスの中に落としたか・・・。軽量化のために1個だけ持ってきていて、残量のあるボトルに付け替えるつもりだったのがアダに。一応バス停まで戻って探すが落ちていない。なくても使えるからと、気を取り直して再出発。
それにしても暑い。気温は30℃。直射日光に焼かれながら、雪のないスキー場を登っていく。まずはリフト上部からトレイルを目指す。しかし、リフト上へ登ってみても標識はなく、目の前は崖で行き止まり。ばかな、と思って公式マップを見ると、もう一本あるリフトの方が正しいコースだった。この日差しの下を戻りたくない・・・と思いながら崖の端まで行って顔を上げると、高島トレイルの黄色いテープが下がっていた。
トレイルに入ると日陰でほっとする。すぐに北東からの尾根に合流。西を目指す。11:53乗鞍岳に到着。通信施設らしい小屋がある。これ以降、巨大な通信アンテナが連なる様子が一望できた。敦賀の変電所から送られてくる送電線が稜線をまたいでいる。現在地を特定するのに、とても役に立つ手がかりだ。650mピークの鉄塔からは、南東に琵琶湖、北西に日本海(敦賀湾)が望めた。
途中、野生の雉を見た。登山道のすぐ左手を巨大な鳥が走り去っていったが、特徴的な尾羽だった。どうしても動物の方が先に反応して、撮影が間に合わない。
風化した花崗岩の急斜面を下り、13:30黒河峠(くろことうげ)に到着。トレイル上で唯一のトイレがある。暑さで水を消費した。給水しておきたい。水場は、峠を横切る林道を北に200m下った左手にある小沢。コンクリートの橋がかかっていて、近くには高島トレイルのテープも下がっている。浄水器に汲み取り、濾過しながら胸のボトルに移していく。水を汲んで黒河峠まで戻るのに19分。
この辺りの区間は、道が細く、張り出した枝葉にこすりながら進まなくてはならない。毛虫が道の真ん中にぶら下がっていることもあり、ぶつからないように神経を遣った。
景色は、明王ノ禿を境に変わる。樹林帯が開け、大谷山を越えるまでは草原地帯が続く。左手に琵琶湖を眺めながら歩く、序盤のハイライト。ただし、この日は強風に見舞われた。西に高気圧、東に台風が変化した低気圧があり、西よりの風が吹きつける。サンバイザーを飛ばされないようにハットクリップをつけ、地図をしまって樹林帯に入るまで耐える。
17:22抜土に到着。高島トレイルのツアーでは、林道が横切るこうした峠で宿泊することが多いらしい。近くには水場がある―はずだが、林道から見える小川は淀んでいる。日没にはまだ2時間ほどある。近江坂分岐を南に下りた林道まで進み、そこで宿泊することにした。
日が傾いた18:13に林道へ下りる。公式マップよりも近い、200mほど西の山側に水が出ていた。給水後、ビラデスト今津方面登山口の横にツェルトを設営する。短辺2か所をペグダウンした後、反対側のポールを立てると設営が早いと聞いたので、試してみる。林道の路面は硬く、ペグが刺さらずに苦労したが、8分弱でとりあえず設営完了。
固形燃料ストーブで湯を沸かし、ラーメンとクスクスを食べ、コーヒー2杯を飲んで水1Lを消費。朝早くに出発するため、火を使わない朝食をとることにし、ストーブは片付けておく。気温は20℃程度。半袖でいて、寒くも暑くもない。寝袋はジッパーを全開にして、掛け布団として使った。
深夜。強い風がツェルトを大きく揺らしていたが、とうとうポールを倒してしまった。小物は片付けていて飛ばされる心配もなかったし、もう一度設営するのも面倒だったので、ツェルトを掛け布団のようにして、そのまま眠った。星空がきれいだなー(棒)
■2日目 14日(金) 距離33.3km、累積標高差+2899m/-3014m、行動時間12:38
3:50ごろ起床。スティックパン2本とナッツを少し食べ、出発の準備をする。昨夜の風でペグが抜けたのかと思ったが、意外にも全部刺さったままだった。ポールから出しているガイラインを一直線に伸ばしていたので、横からの圧力に負けたようだ。次は、張り方を変えてみよう。
林道を4:35出発。13分ほどで、近江坂に合流。霧がかかった平坦なブナ林の中を進む。水を汲んだら、このブナ林に泊まるのも悪くなかった。
5:18大御影山に到着。この近くに巨大なマイクロウェーブ反射板が設置されているが、こんな意外な場所で迷いそうになった。反射板に向かって左に進むと、いつの間にか南を向いている。戻って反射板の裏から反対側を目指そうとすると、標識があり、「本谷」を案内している。それは南に下った地名のはずで、混乱した。霧深く、方向感覚が狂い、コンパスがおかしくなったのかと疑う。結局、大御影山近くまで戻り、進んだ地形とGPSの表示を比べながら進んだところ、高島トレイルのテープを見つけた。
ここまで滋賀県と福井県の県境を辿ってきたが、大日尾根の分岐で大きく南へ向きを変え、県境から離れる。いつのまにか霧が晴れ、左手に今日歩いてきた尾根を望めた。
7:41三重嶽(さんじょうがだけ)、9:34武奈ヶ嶽を通過。アップダウンが繰り返され、体力を奪っていく。『BE-PAL』の付録によると、高島トレイルが整備されるまでは訪れる人も稀な秘境だったとか。来るのが大変な割りに山頂からの展望はあまり得られないということであれば、それも頷ける。それでも、貴重なモリアオガエルの棲む池など、発見はあった。
水坂峠(みさかとうげ)へは長い急坂を下る。高島トレイルの公式サイトでは国境から出発することを勧めているが、その理由の一つが、この坂を登らないためだ。曲がるべき場所で直進して戻ること数回、やっとのことで水坂峠へ到着。時刻はちょうど11:00。出発から6時間半。
舗装路を横断して向かいの登山道に入ればよかったのに、水場が舗装路を西に歩いた先だと勘違いして、10分以上のロス。
ここ水坂峠の水場は、二の谷山登山口に上がってすぐの小沢。治山施設(小さなダム)にせき止められた水が少しずつ放出されている流れを利用する。横谷峠まで水場はないとの情報だったので、しっかり時間をかけて汲んでいく。
すぐに出発しようと思ったが、どうも先ほどの稜線で体力を使いすぎてしまったらしい。武奈ヶ岳を望む鉄塔の下で、10分ほど昼寝をした。
水坂峠から桜峠までは国道367号線を歩いてショートカットすることもできるが、せっかくなので二の谷山を経由し、13:15桜峠を通過。ここから舗装路を歩いて、搦谷越(からみだにごえ)の別荘地を通り、行者山へ向かう。
別荘地入口はすぐに見つかった。看板の下の街灯は倒れ、ゲートは開けっ放しになり、最初の家屋は階段が崩れている。別荘地「跡」としか思えなかったが、中には利用されいてる建物もある様子。さて、公式マップには「別荘地入口から登る」と書いてある。行者山登山口を探すが、どこにもそれらしき道も、テープもない。別荘の奥を窺いながらうろうろする様は、住人から見たら不審者である。あきらめて、尾根の側面を直登して尾根上に出ることに。本日何度目の急登か。できるだけ標高差の小さい尾根の先端から上がるのが無難だろう。後から調べてみると、「国道367合線から椋川(むくがわ)へ向かう舗装路の脇に行者山登山口がある」らしい。別荘地に入らずに進んで登山口の標識を探すのが正解だったか。
15:08行者山に着くころには、疲労がピークに。別荘地で迷った時間を差し引いても、コースタイムより長い時間がかかった。当初の計画では駒ケ越(こまがごえ)まで進んで宿泊しようかと思っていたが、横谷峠辺りで妥協しようと考えていた。
15:54横谷峠到着。まずは給水。峠を西に200m進んだ水場で手持ちの容器を満タンにする。総量3.1L。ずっしりと重い。この峠には広場があると聞いていたのでヨロヨロ歩いて探すが、どうもしっくりくる場所がない。地図を見て考え・・・峠から1kmほど離れた693mピークに目が留まる。この平らなピークなら、設営適地があるはず。
最後の急斜面を登る途中、上の方からまっすぐ走ってくる影が。猪か?いや、雌鹿が駆け降りてくる。どこまで近付いてくるのかと身構えていると、ほんの2〜3m先で90度向きを変えて谷に下りていった。残念ながら撮影する余裕はなかったが、この鹿、きっちり踏み跡を走っていた。やはり獣も、動きやすい道を通るらしい。
17:13に693mピークへ到着。大日尾根の分岐で県境と離れた高島トレイルが、再び県境に合流するポイントでもある。ブナに囲まれた平坦で広いピークで、理想的な立地。ふかふかの路面で、ピンペグどころか枝でさえ刺せる。ツェルトの設営もはかどり、5分7秒との記録更新。森の中に自由にテントを張るという状況に、すっかり楽しくなっていた。それに、呼吸も楽だ。普段は慢性的に鼻炎で、点鼻薬とティッシュが欠かせないが、ここでは鼻をかんでもいなかった。やはり、空気がきれいということだろう。
携帯電話のネットワーク機能をオンにすると電波が入った。友人に進捗状況を伝えたところで力尽きた。
■3日目 15日(土) 距離30.7km、累積標高差+2822m/-3108m、行動時間10:33
4:10ごろ起床。8時間ほど熟睡した。ぼんやりと明るくなってきている。昨日と同じく火を使わない最小限の食事を済ませ、身支度をして4:55出発。
駒ケ越との間にある大きな池のほとりは平坦でテントを張るのに良さそうに思えるが、雨の後などはヒルが出ると聞く。ロングパンツの裾をスパッツの中に入れ、靴から脛にかけて満遍なく除菌スプレーをかけておく。這い上がってくる奴らがいないか、路面に目を光らせる。などと気を張っていたが、結局ヒルは1匹も見かけなかった。池もほとんど水が引いていて、写真で見ていたよりも、だいぶ小さくなっていた。
前夜に天気予報をチェックしたところ、この日は昼から雨が降るとのことだった。ザックカバーはないが、荷物が濡れないようにパックライナーでカバーしてある。気温が20℃を越えず、食料が減って荷物が軽くなっているので、昨日より楽に歩を進められた。
7:34、出発から2時間半で木地山峠(きじやまとうげ)に到着。この峠を挟んで東西両方に水場があるらしい。東に下りてみる。150mほど進むと、水の流れる音が聴こえた。流れは細く、蚊トンボのような羽虫が飛び回っているところに手を伸ばして容器が満たされるのを待たなければならなかった。それでも、貴重な水源。水を汲んで来た道を戻ろうとするが、杉の葉で踏み跡が分からず、急斜面を直登して木地山峠の少し上に出た。今回はこういうことが多い。
8:41百里ヶ岳に着いたとき、雨が降り始めた。ザックのサイドポケットから折り畳み傘を取り出し、さっと開く。レインウェアに着替えるまでの急場しのぎと思っていたが、道は広く邪魔にならなかったので、そのまま差し続けた。急斜面の下りでつかまれる木でもあれば畳んだが、基本的には差したままで三国岳まで行動した。
9:27根来坂(ねごりざか)。地蔵堂があり、高島トレイルと福井県側の上根来に下りる道、滋賀県側の生杉(おいすぎ)に下りる道が交差する峠である。西を向くと、同じ方向に2本の道が分岐している。向かって左は登っていて、右は平坦。疲れていると楽そうな右の道を選びそうだが、不正解。高島トレイルは尾根を通っていく。こんな分岐にもテープはないので、自分で地図を読んで判断する必要がある。
それでも、地図が信用できなかったら? 次のおにゅう峠への道は、展望台の後、ピークを通って峠に下りるように公式マップに載っている。そのとおりに行ってみると、ピークの先端は切り立っていて、簡単には下りられない。根来坂からのコースタイムは10分だが、実際におにゅう峠に着いたのは10:00と、大幅に時間がかかっている。展望台から舗装路に下りてピークを巻くのが正解としか思えない。結局、公式のルートも厳密に考えず、迷わずに安全だと思う、または楽しいと思う道を行くべきか。
このおにゅう峠前のピークで、2羽目の雉に遭遇した。今回はこちらが先に気づき、撮影することもできた。ケンケンと大きな鳴き声が聴こえ、樹上を見ても何もいなくて、地面に視線を下ろしたら、霧の向こうに雉が歩いていた。少しの間観察していたが、バイクの音が聴こえ、その音に反応してか、雉はどこかに歩き去ってしまった。
晴れていれば、おにゅう峠からは若狭湾や朽木の山並みが展望できるらしい。この日は一面の乳白色。何もこんな日にバイクで来なくても。おにゅう峠に下りると、バイク乗りが1人、乳白色の空に向かってカメラを構えていた。目が合ったので挨拶をする。全行程中、声を交わした唯一の人間。
後半の水場は頼りない。ピーク803、オクスゲノ池の手前に「水2分」との標識があり、冷たい水を飲めたとの事前情報を得ていたので期待したが、小川には汲めるほどの水量はなかった。ナベクボ峠の南にも水場があるとされていたが、どれだけ下ったらよいか不明だったし、三国峠・地蔵峠の水場が控えているので見送った。
12:16三国峠を越え、水場に通じる分岐で立ち止まる。桑原バス停から出る土曜日の最終バスは、17:28発。2日目の移動距離が予定より短く、3日目のその時間までに下山できる自信はなかった。地蔵峠で最後の給水をし、トレイルの途中で宿泊して午前中のバスで帰ることを考えていた。それでここまでゆっくりしたペースで歩いてきたのだが。残りのコースタイムを確認すると、桑原橋バス停まで6時間20分。距離は11.6km。改めて現在時刻を確認すると、12:30。残り4時間弱。コースタイムの2/3で行動すれば―間に合う!
三国峠南の分岐から水場を往復しては、時間が足りなくなるかも知れない。地蔵峠で給水して、最小限の時間で走り抜けよう。地蔵峠の水場の位置は公式マップに記載されておらず、「地蔵峠周辺」という情報しかない。見つからなければ? そのうえ、バスに間に合わなければ? 野営に使える水の余裕はない。水なしで食べられる行動食の残りで食いつなぐしかない。
そんなことを分岐に立ちながら考え、走りぬくことを決める。
雨具はまとわず、濡れることを気にせず走り、12:55地蔵峠に到着。水場、水場は? 耳を澄ませるが、雨の音しか聴こえない。それらしき流れの跡も見当たらない。ザックの中の水筒から、胸のボトルに水をすべて移す。水の残量は1L弱。残り10km。13:00に地蔵峠を出発。
そこから先は、全力。ゆるい登りはすべて走り、急な登りも可能な限り早く脚を動かす。トレッキングポールで倒木を飛び越え、連続した動作で下りを攻める。
13:34カベヨシ、13:58岩谷峠を通過、そして、14:28に高島トレイル最後の山、三国岳に立つ。もう歩いてもバスの時刻に間に合う。水も足りそうだ。
その後も身体感覚を楽しみながらゆるく走り、15:28桑原橋バス停到着。桑原橋の観光トイレで濡れた服を着替え、桑原橋から東に300mほど進んだ桑原バス停に移動。裸足になって、ふやけた足を乾かした。
87km、累積標高差7800m、行動時間の合計は31時間。よく歩いた。
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