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本州、四国、九州の湖沼やため池に生育するミツガシワ科の浮葉植物ですが、多くの地方自治体で絶滅危惧種となっています。2020年の岡山県のレッドデータブックでは絶滅危惧�粁爐箸気譴討い覺�少価値の高い植物です。
このガガブタがどこで生育しているのか特定できないまま、数少ない情報を手がかりに、岡山市北区にある閑静な住宅街の近くにあるため池を訪問しました。ちなみに、2018年の調査では、確認できた池は県内に4ヶ所のみだったそうです。
幸い、今回訪問した池は、散歩する方、釣りを楽しむ方、ガガブタを見に来る方など、誰一人会うことがありませんでした。この関心のなさが自生地存続につながったのでしょう。ガガブタ保護の観点から敢えて具体的な地名や池の名前を伏せています。
ガガブタは水底の泥中に根を張り、水面まで長い茎を伸ばして、直径10�冂�のスイレンの葉に似た広楕円形または卵状円形の葉を浮かべます。和名は、鏡蓋（かがみぶた）からきているとされます。江戸時代頃の鏡は普段は箱に入れられていました。丸い葉と葉柄の様子が柄のついた鏡（柄鏡）の箱の蓋に似ているというのが、名前の由来だといわれています。また、ため池などの水面を鏡に見立て、葉が水面一面に繁茂している様子が鏡に蓋をしているように見えるということで、「鏡蓋」とされたという説もあります。
花期は7〜9月頃で、この日は予想以上にたくさんの花が開花していました。午前8〜9時頃に咲き、14〜15時頃には閉じてしまいますので、限られた時間にしか見られません。葉の直下に3〜10cm程の柄を持つ蕾が束生し、1日に1〜3個ずつ、水面上に立ち上がって咲いていきます。直径2�僂舛�い花は白色で5深裂（まれに4深裂）し、内側には白色の細毛が密生しています。ミツガシワとは違い花の中心部は黄色く、ヒメシロアサザよりも花は大きく毛深いです。このひげもじゃ姿がとても可愛くて、すっかり、ガガブタファンになってしまいました。つぼみはつるんとした楕円形で、翌日咲きそうなものもありました。
花にはめしべの柱頭が突き出た長花柱花と、突き出ない短花柱花があり、両方がないと結実しません。ただし、両方そろっていることはまれで、通常は夏から秋に葉柄の基部に太く硬い根がバナナの房状となった殖芽を形成し、これにより栄養繁殖します。この池では、帰宅後に写真や動画で確認できたのはすべて長花柱花でした。また、一部の株では、短い殖芽が見られました。おそらく、ここでは栄養繁殖のみを行っているのでしょう。このような集団では、一度消滅すると休眠種子からの再生は望めないため、あっという間に姿を消してしまいます。以前、県内某所で池の攪拌をしたところ、生えなくなってしまったそうです。また、ため池の改修工事や水質汚濁によってもどんどん少なくなっているそうで、なかなかデリケートな植物です。今回訪問した池は、端が一部干上がっていましたが、そこにも開花中の株がありました。多少の乾燥には耐えられるようです。また、池の中には空き缶やペットボトルがいくつか浮いていました。水は透明感がありましたが、あまりいい環境だとは思えませんでした。弱いのか強いのか、どちらなのでしょうか。とにかく、この池は放置されて現在に至っており、それがガガブタにとって好都合だったのは間違いありません。
観察できたのはガガブタだけではありません。池畔のわずか50ｍ程の間に、ヒレタゴボウ、アレチヌスビトハギ、メドハギ、ノアズキ、キバナウンラン、ホソバウンラン、ツユクサ、マルバハギなどが咲いていました。また、足元には可愛いヌマガエルや、吸水行動中のアオスジアゲハやナミアゲハ、シオカラトンボのオスも見かけました。30分程滞在しただけでしたが、すっかり満ち足りた気分になりました。この生き物に満ちた住宅街の小さなオアシスがいつまでも続きますように。
ミツガシワ系のチリチリ，味わいがあってすっかりハマります。静かに末長く楽しむことができるのを願わずにいられません。
池の近くに車が数台停まっていたのですが、
誰もこの池に来ないので、本当に人知れず密かに咲いていました。
長花柱花と短花柱花が同一水域に混生しないと結実しないのですが、
両タイプが混生する場所は稀という不思議な花です。
おそらく県内最大の群生地であるこの池を
今後もそーっと静かに見守っていきたいと思います。
我々の中ではこの池を“自然保護ビオトープ”と位置づけています。
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