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2014年10月01日 23:28体験記全体に公開

御嶽の噴火に遭遇して

7月下旬梅雨明けの時期に登るはずだったが、不順な天気が続き
やっと実現した娘を案内しての御嶽登山。

雲の上に浮かぶ八ヶ岳、遠くに奥秩父、屏風のように連なる
中央アルプスと南アルプス更に富士山。素晴らしい展望が意のままだ。
いつもより硫黄の匂いがきついような感じだが風向きのせいだろうか。

辿りついた娘にとって初の3000m、剣ヶ峰から望む槍〜穂高。[9:35]
周囲は白いガスに覆われ始めたが、昼食を摂りながら山頂の一時を
楽しんで、眼下に見える紺碧の水をたたえた二ノ池を巡ってこよう。

素晴らしい展望を楽しみに山頂を目指す人達と挨拶を交わしながら、
二ノ池から王滝頂上まで戻って来た。[11:45]
後は色づき始めた紅葉を楽しみながら下山するだけだった。

嫌な岩場を過ぎ九合目の避難小屋(石室)が見え始めた頃だった。
雷鳴とも落石の音とも判断がつかない音に背後を振り返ると
王滝頂上辺りに異様な白煙が盛り上がった。[11:52]
噴火?!と思ったとたん濁った白煙が奥の院辺りまで広がり、
一気に登山者を飲み込むような勢いで押し寄せて来た。

数メートル先の避難小屋へ駆け込む余裕は無さそうだ。
娘の手を引いて祠?の陰に身を潜めたと同時に砂利混じりの火山灰が
降り注いできた。タオルで口を塞ぎ背中を丸める以外なす術がない。

僅かな時間で灰が薄れ明るさが戻ると、まるで雪山を思わせるように
一面が灰で覆われていた。[12:05?]
岩に積もった灰に滑らないように注意しながら避難小屋に目もくれず
一目散に下る。
雪渓が消えた谷沿いにさしかかった頃だろうか。更に大きな二回目?の
噴煙が襲ってきた。裸の登山道だ。脇の岩陰へ転げるように逃げる。
一度目よりも更に多量の小石が降り注ぐ。娘にハイマツ側に逃げるよう
に声をかけ、口を塞いでただ過ぎるを待つ。
暗いと言うより更に暗黒の火山灰が熱気をはらんできた。身体が熱い。
流石に戦慄が走る。

僅かな時間なのか、長い時間なのか分からない。
感覚では10分程だろか、急に熱が冷めて明るさが戻って来た。
口も鼻も灰だらけだ。全身に浴びた灰を払いのける時間も惜しい。
焦る気持ちを抑えて転倒に注意しながら悪い足場を下る。

背後には絶えず爆発音が続いているが、振り返る余裕も無く、
恐怖から逃げるように下る。
まず森林限界の八合目を下りきろう。
気づけば二ノ池から休憩していないので、娘に調子を聞くと
大丈夫だと答えるので、そのまま一気に下る。

やがて足元から火山灰が消えいつもの登山道が戻って来た。
あかっぱげを過ぎ大江権現まで下ってやっと無事下山を確信し、
自宅に連絡を入れる。圏外で無くて良かった。

田の原湿原のベンチ脇でやっとザックの灰を払いのけ、残った水で
口をゆすぎ、灰にまみれた顔を見合わせ笑う余裕が生まれた。[13:25]
 

登山口で警察、消防署員に問われる安否状況に答えて駐車場に戻ると
吹き上げる噴煙が一段と高くなっていた。

緊迫した駐車場を離れると斜面にはきれいな紅葉が色づき、
何事もないかのようなのんびりした風景が広がっている。


ほんのわずかな時間の違いで下山する事が出来て幸運だったが、
ニュースで悲惨な現状を見るにつけ、あの場所に居た記憶が蘇り
背筋が凍る思いだ。

誰もが美しい紅葉の御嶽を楽しみ、笑顔で帰宅するはずだったのに、
惨事の山に変わってしまった。
死者も47名を数え、未だに安否不明者が山中に残っている。
明日から天気も下り坂になると言う。
一日も早く全員の救出が終わり、家族の元へ戻れるようにと
強く願うばかりだ。

【噴火に遭遇してどのような状況だったか記録する事も無駄ではないと思い、
レコには書けなかった様子をまとめてみた。】
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コメント

有難うございます
onetotaniさん
こんばんは
多少は落ち着かれましたか。
テレビでは毎日のように伝えられる様子を
見るに、まだまだ行方不明者などの捜索が続きます。
警察、消防、自衛隊等の関係者の方々のご尽力感謝の念に絶えません。
そして貴重な体験を日記に残して頂き有難うございます。
今後もしも自分がそのような事態に遭遇したときに
どのような行動をとるべきか参考になりました。
登山は自己責任と言われますが、今回のこのような不可抗力に対して人間などちっぽけ存在だと改めて
感じさせられ山への向かい方を再度考え直す良い機会となったことは確かです。
2014/10/2 0:37
Re: 有難うございます
kazu97さん 今晩は。
少し冷静に振り返る事が出来るようになりましたので、記録に留めました。
改めて振り返るとつくづく幸運だったと思います。
2014/10/2 22:20
お疲れ様でした。ありがとうございます。
onetotaniさん,おはようございます。
一気に読んでしまいました。鬼気迫るものがあります。
「数メートル先の避難小屋へ駆け込む余裕は無さそうだ」まさに,そんな状況だったのですね。
とても貴重な記録をありがとうございました。

一生忘れることのできない体験だと思います。本当にご無事で何よりでした。大自然の前では,人間の存在の小ささが際立ちますね。自分への教訓としたいと思います。
2014/10/2 7:42
Re: お疲れ様でした。ありがとうございます。
totokさん 今晩は。

こんな経験は二度としたくないですね。
しかし他にも嵐、雷雨等さまざまな自然の脅威にさらされる可能性は有ります。
改めて少しでも回避出来るよう、準備は怠らないようにしたいと思います。
そんな教訓を貰った思いです。
2014/10/2 22:30
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
onetotaniさん、こんにちは

噴火時、9合目の避難小屋近くまで下山されていらっしゃたのですか。王滝頂上山荘から山頂にかけては死亡された方が多数みえるゾーンでしたが200mも離れてませんね。
娘さんを気遣いながらハイマツに身を伏せている時間はさぞかし長く感じられたと思います。
災害時どのように身を避けたらよいか、改めて学ぶことができました。

貴重な体験を残してくださいましてありがとうございます。
2014/10/2 9:38
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
higurasiさん 今晩は。

無事下山出来た安堵感を覚えてから数日が経ちました。
噴火は山を選べば避けられるでしょうが、山に潜む自然の脅威は他にも
多く有ります。

今回は不意の出来事に対し、ほんの僅かでも回避できるように
準備(装備、情報、状況判断など含めて)をする大切さを教わりました。
2014/10/2 22:48
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
こんにちはー
でも何はともあれ、ご無事で何よりでした。本当に人間の運命なんて紙一重なんだ、、、ということを改めて痛感しました。日々、大切に生きなくてはと思います。
鈴鹿、クラシ谷周辺を巡ってきました。そろそろ秋の雰囲気です。落ち着かれ、仙香池で一緒に逆さ仙香を眺めることができれば嬉しいです。
2014/10/2 15:42
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
yoshikun1さん 今晩は。

今回の経験は良い教訓になりました。
天候が味方をしてくれない場合でも、被害を最小限に留める準備、行動。
自らのスキルを高めて行かなければと改めて思います。
2014/10/2 22:57
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
お早う御座います
貴重な体験をなさったわけですけど、
田の原の大きな駐車場から
登られたと思います。
事前に変わったこと匂いとか振動は
感じられなかったでしょうか。
又注意を促すようなもの等。

大滝の頂上の下部
9合目の避難小屋のことが書かれていましたけど、だいぶ前に当コースを登りました。
その時、9合目の避難小屋はなかったような、
最近出来た避難小屋でしょうか。
2014/10/3 6:29
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
jykki-satoruさん コメント有難うございます。

御嶽の麓で生活しているわけではないので、明らかな異変が無ければなかなか
気付けないと思います。
又今回のような惨事が予見できたらそれなりの警告がされていたと思います。

王滝コースには九合目を示す石柱が二ヶ所に有ります。
私の言う九合目は奥の院分岐になる所で、ここには以前から避難小屋(石室)が
建っています。
2014/10/3 23:47
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
噴火に遭遇するとは。。。
大変でしたね。。。
2014/10/15 21:08
RE: 御嶽の噴火に遭遇して
goriraさん 有難うございます。
三週間が過ぎますます、厳しい捜索環境になってきましたが、
捜索活動が進むことを祈る事しかできません。

「山に対して謙虚になりなさい」と言われたようで
貴重且つ恐怖を感じた経験でした。
2014/10/16 0:03
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