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2010年08月12日 09:53未分類全体に公開

続「山でのこわーい話」

歳を重ねるにつれ昨日の食事の内容を忘れてしまうのに、なぜか40年前の苦労して登った山の事は鮮明に残っているのですかね。前回の日記で上高地までをアップしましたので今回はその続きをお話しします。
「氷壁」のモデルになった、1955年のナイロンザイル切断事件、その当時からその後も、奥叉白池のタカラの木の周辺は雪崩が来ない伝説がありましたが、そのタカラの木が雪崩で飛んでからは、奥叉谷の右手の慶応尾根から屏風岩のコル(今のパノラマコースでしょうね)に出て北尾根経由で前穂高の東壁を登るようになっていました。
私達は、その北尾根を登り前穂高のピストンの計画をたてました。その当時、徳澤には橋がなく、雪に埋もれた梓川を靴も濡らさずに徒渉し、奥叉白谷を少し遡り尾根に取り付きました。トレースなど、なかつたのでルート選定に時間がかかり、樹林帯の中で第一歩の設営をしました。昨日も天気図をとっていて気にはしていましたが、どうやら日本海に発達した低気圧が進んできて、本州にも低気圧が発生する、いわゆる二つ玉低気圧の模様になってきました。夜異様な温かさを感じながらシュラフに入りもぐりこみましたが、すぐに大雨が降ってきて南風も強烈に激しさをましてきました。当時の冬用ドームテントや我々の冬装備は雨にはまったくの無防備で、すぐにシュラフは濡れ寝ている状態ではありません。そして暴風雨が続いた夜半から、大音響とともに、奥叉白谷の雪崩の音がひきりなしに続き、樹林帯の中でも生きた心地はしませんでした。そのうちカミナリのような大木の倒れる音までしてきました。テントの中で装備を着け、万一に備えるのが精一杯でした。明け方やっと暴風雨が収まり、外に出てみると、針葉樹の大木がテントのそばに倒れていて、もしテントに当たっていれば、ひとたまりもありませんでした。このずぶ濡れの状態での前進は冷凍人間を作るだけ、すぐに徳澤の冬期小屋にUターン、その途中見たこわーい光景、奥叉白谷を埋める巨大デブリ、そして雪のブロックと供に流れている増水した梓川でした。ここで明神まで戻り2時間の遠回りか、濡れついでに徒渉するか迷いましたが、選んだのは徒渉でした。リーダーがまっ先にザイルをつけ横断し、その後全員が無事渡り終えました。私はこの徒渉がこの山行で一番こわーい体験になりました。徳澤の冬期小屋は、管理人も他パーティも居ず、独占で薪ストーブを使用して乾かすことができました。しかしその後2日間猛吹雪が続き3日目にやっと晴れましたが、もう北尾根を登る時間も気力もなくなっていました。
そこで蝶ガ岳を選び出発しましたが、ノートレースのルートはそう簡単ではありません、森林限界がやっと、ここでイグルーを作り快適に一泊し、早朝蝶ガ岳に向かいました。そこで見た物はモルゲンロートで赤く染まった穂高でした。リーダーが「ひどい目にばかりあったが、ちゃんと最後にこんな素晴らしい御褒美をくれたよ、だから山はやめられねーよ」でした。この一言がこの山行のすべてを表していて、私もこの光景をみて感動したのを今でも思い出します。
行きに苦労した釜トンの出口のデブリも雪解けでほとんどなくなり、今度は振り返らずに釜トンネルを出ると、もうそこは春まっただ中でした。
最後までお付き合いありがとうございました。
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コメント

RE: 続「山でのこわーい話」
凄い体験談でびつくりです。
kazuhiさんは、掘り出せばもっと凄いのが出てきそう。
こんなところ(プロ不の写真)を登って来られたのですもの、当たり前ですね

氷壁にもこの辺の雪崩の音の事が書かれていると記憶しています。
雪崩は遭いたくありませんが、音がだんなか聞いてみたいものです。
あっ!暮れの山行決まりました。
2010/8/12 15:25
RE: 続「山でのこわーい話」
背筋が凍る…というより、胃が痛くなるような恐ろしさです。

今では天気図も携帯からですが、ラジオから得た情報を手に頭をつきあわせて…
雰囲気はこちらの方が恐ろしいですね。
二つ玉低気圧に暖かな風、そして雨…轟音

翌日の光景には…すくみ上がりますね。


貴重な体験談、ありがたいです
2010/8/12 18:03
RE: 続「山でのこわーい話」
citrusさんこんにちは。

冬の前穂北尾根、魅力ありますね、ピストンで行くか、奥穂から涸沢岳西尾根下山のどちらかですね。
どちらにしても、以前citrusさんが登られた西穂からの縦走と匹敵するグレードの高さだと思います。

台風4号東北地方に上陸の気配ですね。くれぐれもお気をつけください。
2010/8/12 18:29
RE: 続「山でのこわーい話」
komadoriさんこんにちは。

2008年の4月に徳澤にテントを張り蝶ガ岳に行きましたが、稜線直下で坐骨君が騒ぎ出し頂上までは届かずでしたが、素晴らしい穂高を眺めることができ大満足でした。
次は涸沢と思っていましたが、なかなかふんぎれないでいましたが、ヤマレコの涸沢フェスタが良いきっかけを作ってくれました。
穂高と皆様に会えるのを楽しみにしています。
2010/8/12 18:41
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