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山頂は複数の登山者で賑わっていました。その中に、明らかに軽装で周囲から浮いている登山者をみかけました。アイゼンは履いているものの、下半身はスウェットでローカットのシューズ、スパッツやピッケル等の装備は持っていませんでした。観光客がロープウェイを利用して千畳敷まで上がり、軽装のまま山頂まで登って来たのかなと感じました。山頂でしばらく休憩した後、自分は桂小場から登ってきたので、往路を辿って下山を開始しました。
下山開始後、しばらくすると、前方に先程のハイカーを発見。まっすぐ下山する訳でもなく、周囲をウロウロとしており、少し様子が変でした。また、あの軽装で馬の背の急斜面を降って来ている事や、ロープウェイ利用と思われるハイカーがこの場所にいる事に驚きました。近くを通った際に声を掛けられ、「濃ヶ池に行きたいのですが、分岐はここで合っていますか？」と尋ねられました。若干、片言の日本語で、風貌からは中国か韓国の方の様でした。このハイカーの方は地形図は持っていましたが、雪で夏道が覆われており分岐が分からないとのこと。GPSアプリで現在地を確認したところ、ちょうど桂小場ルートの八合目で濃ヶ池への分岐地点であったため、その旨を伝えました。しかし濃ヶ池へのルートはまだまだ雪に覆われており、トレースも全く無い状態でした。「濃ヶ池に行こうと思っているが、足跡も無いし、どうしようか迷っている」とのこと。地図を確認すると、濃ヶ池へはカールをトラバースするルートになっており、トレースが無いことや、雪崩のリスクもあることから、止めたほうが良いのではとアドバイスしました。ここまでのルートを確認すると、やはりロープウェイを利用して山頂まで登り、濃ヶ池や駒飼ノ池を周回してロープウェイ駅へ戻る予定でいたとのこと。すでに山頂から1時間近く下ってきており、再び山頂を経由して千畳敷まで戻るにはそれなりに時間と体力が必要かと思われました。しかし、現在地から千畳敷まで、夏道のCTで約3時間であり、ロープウェイの最終便まで5時間近くあったことから、来た道を戻ることを勧めました。ハイカーの方は最初は再び山頂まで登り返すことを躊躇っている様子でしたが、しばらく考えて納得されたようで、「私のためにあなたの時間を使ってくれて、どうもありがとうございました。」と、たどたどしい日本語で丁寧にお礼を言われました。そこで別れて私は桂小場に下山しましたが、その後しばらく、「あのハイカーの方は無事に下山出来ただろうか」と心配な気持ちが残りました。数日間、木曽駒ケ岳での遭難の有無をネットで確認していましたが、それらしいニュースもなかったので、無事に下山されたのだと思います。
特に事故には至らなかったようですが、あの軽装でその後天候が悪化したら、登り返す体力が残っていなかったら等と考えると、遭難というのはこのようにして起きるんだろうなと感じました。GW中、山では複数の遭難や死亡事故が起きていたので、他人事とは思えず、自身の山行でも改めて事前のルート確認や装備の充実等を図っていきたいなと感じました。
画像1:八合目の分岐点から見た、濃ヶ池方面
画像2:山頂から八合目分岐に至る、残雪の稜線
画像3:馬の背の下りの途中で
