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このペツル社カタログに掲載されたさまざまなロープワークや技術を網羅して書籍にしたものが、国際山岳連盟(UIAA)とペツル財団から『Alpine Skills:Summer handbook』(英語版と仏語版)というタイトルで(電子版も)でています。ロープワークなどに関しては、まあイラストを見れば、日本語でなくてもだいたい判るのですが、説明文などではつらいものがありました。
https://www.petzl.com/fondation/projets/memento-futurs-encadrants-clubs-montagne?language=en
先日、日本スポーツ協会(旧・日本体育協会)の山岳コーチ(旧・山岳指導員)の資格継続の義務研修があって、この書籍が、JMSCA(日本山岳SC協会)の創立60周年事業として、日本語に翻訳されて出版されていることが紹介されていました。『総合登山技術ハンドブック ‐ 夏季アルパイン』(JMSCA発行)というタイトルです。まさに待ってました・・・という感じです。
さっそく購入してざっと読んでみたのですが、正直、日本の登山文化(およびその教育)の貧弱さを思い知らされました。欧州の登山文化と歴史が違うと言ってしまえばそれまでですが、ほとんど健康登山に終始した日本の登山に、文化と呼べるものがあるのだろうかと感じると同時に、自分にとって、ハイキングからアイスクライミングまで網羅した登山書バイブルになりそうです。サブタイトルに夏季アルパインとありますが、ヨーロッパアルプスでは雪山なので、滑落停止やアバラコフの作り方まで説明されていて驚かされました。
この書籍は単に技術書として優れているだけではありません。UIAAが書いているということは、この本の内容が国際標準だということを意味することになるわけです。そういった意味で山岳会のリーダーや指導的立場にあるかたには必読書だと思いますが、講習会などになかなか行けない人にも非常に参考になる書籍としてお勧めします。購入は現在、以下の方法だけですので、ご注意ください。また2000部限定らしいです。
郵便振替で、1冊2200円。送料は無料、振替手数料は自己負担。
郵便振替口座番号:00110 −5− 546693
加入者名:(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会
※摘要欄に「書籍代」と記入し、
送付先の郵便番号・住所・氏名・電話番号を忘れずに。
この書籍の目次は次の通りです、自分が知りたい内容が載っているかなどの参考にしてください。
『総合登山技術ハンドブック-夏季アルパイン』(全368ページ)
■基本知識
A 山の環境
1 自然環境
1.1高度分布
1.2山岳地帯における生物の適応について
1.3よく見られる岩の種類
1.4氷河
1.5自然環境に付随する危険
1.6山でのコミ処理
1.7マナー
2 気象
2.1世界の主要な山岳地帯での気象バターンは?
2.2気圧とは
2.3雲の種類
2.4高気圧(高気圧域)とは?
2.5高気圧の影響
2.6「ところにより雷雨」のメカープム
2.7「ところにより雷雨」を察知しよう
2.8低気圧(低気圧域)とは?
2.9低気圧の中の状能
2.10温暖前線の接近
2.11寒冷前線の接近
2.12天気予報をよりよく理解しよう
2.13行動中の天候変化への対応
3 オリエンテーション(定位)
3.1オリエンテーション(定位)とは
3.2地図なしで現在地を確認する
3.3地図とは
3.4最適な縮尺を選ぶには
3.5凡例を理解する
3.6等高線とは
3.7ピークとくぼ地を見分ける
3.8谷と尾根を区別し、コルを見分ける
3.9断面形状を考えて斜面の斜度を予測する
3.10コンバスがないときに地図を整置する
3.11適切な地図読み
3.12地図とともに使う道具について
3.13コンバスとは
3.14磁北と真北の違い
3.15GPS技術の特長と限界
3.16コンバスで地図を整置するには
3.17視界がよい時に現在地を特定するには
3.18実際の地形を地図に反映させるには
3.19天気がよい時に現在地確認するには
3.20視界が悪い時にル-トを見定めるには
3.21地図で方位を決めて、実際にルートを辿るには
3.22八イキンクリーダーのコンバス使用方法
3.23目印を見失わないために
3.24障害物を避けるには
3.25コンバスを使って八イキング計画を立てよう
B バーティーリーダーになるために
1 バーティーの組織・統率
1.1バーティーの構成方法
1.2よく見られるバーティー内の人間関係力学
2.判断
2.1良い判断をするために
2.2ルートを計画する時に考えるべき基準
2.3リスクを最小化しながらルートを選ぶ
2.4山行中のリスクを予測する
2.5山行後の反省はなぜ必要か
C 環境に適応する
1.栄養と水分補給.
1.1三大栄養素
1.2水分補給が必要な理由
2.寒さ対策
2.1身体に熱がいきわたる仕組み
2.2風の強さと寒さの関係(風冷え)
2.3低体温症とは
2.4凍傷のメカニスム
2.5凍傷の各段階
2.6野外での凍傷処置
3.高山病対策
3.1高度と酸素濃度の関係
3.2急性高山病(AMS)の評価
3.3肺水腫と脳浮腫の識別
4.雷対策
4.1雷の直撃から身を守る
4.2落雷による接地電流から身を守る
5.太陽光・紫外線対策
D.救助
1.保護、救助要請、処置
1.1救急場面の初動
1.2緊急時に自分を保護し、要救助者を保護する
1.3救助要請
1.4救助要請の方法
1.5医療班が到着するまで
1.6気道確保
1.7大量出血時の処置
1.8呼吸停止および心停止時の処置
1.9意識のない要救助者の安全確保
1.10意識がある要救助者の安全確保
1.11気道が詰まったとき.
1.12医療班の到着を待つあいたに要救助者の安静を確保する
2.負傷者の救出
2.1負傷者の搬出
2.2ヘリコプターの着陸地点を選択する
2.3ヘリコプターの誘導
2.4ヘリコプターへの搭乗
3.ファーストエイドキット
■アルバインハイキング
1.装備
1.1八イキンクの装備
1.2八イキンクでのロープ使用装備
2.山行
2.1山行統括
2.2緩傾斜の雪面をアイセンなしで通行する
2.3アイゼン及ひピッケルなしでの雪面滑落停止方法
2.4技術的に困難な場所の通過
2.5核心部・難所での安全確保
2.6山行計画と山行の実施
3.トレッキング・ハイキング中の衛生管理
3.1伝染病の予防法
3.2渡航先に応したワクチン接種
3.3下痢予防と処置方法
3.4狂犬病予防
3.5長期遠征時に必要なファーストエイドキット
4.登山ルートグレート
5.遠征山行管理と統率
5.1リーダーが準備すべき書類
5.2遠征山行に備える.
5.3ローカルサポートチームを統率する
5.4責任あるツーリズムを励行する
5.5メンバーの意識を向けさせるべきポイント
5.6遠征山行の成功のために
6.山行の評価と反省
■クライミング
1.装備
1.1携行すべきギア
1.2ロープの種類
1.3ダイナミックロープの種類
1.4ロープを傷める原因
1.5ロープの管理と保管
1.6ロープを一重巻きにして携行する
1.7ロープを二重巻きにして携行する
1.8カラビナの種類
1.9ヘルメットを装着するべき理由
1.10ニ本のロープの結束方法
1.11スリング類の携行
1.12プロテクション・ギア類のメンテナンス
2.ロープを結ぶ
2.1結ひ方(ノット)の種類
2.2ロープをハーネスに正しく結束する
2.3パートナーとのダブルチェックが必要な理由
2.4クイックドローの向き
2.5カラビナにロープをクリップする
2.6クリップのスタンスと技術
2.7落下するとどうなるか
2.8落下したリードクライマーへの衝撃を最小化する方法
2.9プーリー(滑車)状態による影響を考慮する
3.シングルビッチルート
3.1ビレイヤーの心構え
3.2ブレーキアシスト機能のない(従来型)器具でクライマーをビレイするには
3.3ブレーキアシスト機能付き器具でリードクライマーをビレイするには
3.4ビレイヤーのセルフビレイが必要になるケース
3.5リードクライミング時のロープの位置
3.6トップロープをセットする前に必要な注意事項
3.7終了点での下降セット
3.8クイックドローの回収
4.ピレイステーション
4.1 基本的なビレイステーションの保護
4.2 ゼロピン(折り返し)まで距離を取ってビレイステーションを保護する
4.3 ボルトのあるピレイ点ですべきこと
4.4 2点のボルトアンカーから振り分ける
4.5 流動分散を使用しないケース(固定分散)
4.6 流動分散を使用するケース
4.7 ロープで振り分け分散を用いてセルフビレイをとる方法
4.8 自然を利用したプロテクションの取り方
4.9 トラッドクライミングでのプロテクションの選択
4.10 ナッツの使用法
4.11 カムの使用法
4.12 カムの回収
4.13 トラッドクライミンクでのビレイステーション構築ポイント
4.14 トラッドクライミングでのビレイステーション構築方法
5.マルチビッチルート
5.1ビレイステーションでの正しい手順
5.2トラッドクライミンクでのビレイに関する注意点
5.3フォローの確保
5.4フォローがビレイステーションまで登ってきたら
5.5ツルペ登拳の際のビレイステーションでの手順
6.懸垂下降(ラッペリング)
6.1懸垂下降の準備
6.2ロープを結束するノット
6.3懸垂下降のセット
6.4懸垂下降の際のバックアップ
6.5フリクションヒッチは器具の上か?下か?
6.6最も適切なフリクションヒッチは?
6.7ロープの保持
6.8複数回懸垂するときには
7.ちょっとしたコツとトラブルシューティング
7.1バートナーを確保する・トップロープの確保をする
7.2ムンターヒッチでセカンドを降ろす
7.3従来型モデルの器具てセカントを降ろす
7.4荷重のかかっているロープの懸垂下降
7.5ビレイ器具を落としてしまったら
7.6セカンドが越えられない箇所を助ける
7.7フィックスロープを登り返す
7.8下からのビレイによる懸垂下降
7.9傷んたロープでの懸垂下降
7.10傷んだロープの結び目を通過するには
7.11懸垂下降の途中でスタックしてしまったバートナーを助けるには
7.12確保された状態で途中のアンカーから敗退する
7.13スタックした懸垂ロープを回収する
8.クライミングのグレード
9.評価と反省
■アルビニズム
1.装備
1.1氷河帯に携行する装備
1.2アイス、雪、石、ミックス、それぞれのルートに適した装備
2.ロープワーク
2.1氷河帯でのクライマー間のロープ長、予備に必要なロープ長
2.2同時登攀のロープワーク
2.3バーティーメンバー間の距離
2.43人以上のバーティーでのロープワーク(雪上)
2.5高技術難度ルートでのロープワーク
3.登拳
3.1勾配40度以下の斜面
3.2勾配40~50度の斜面
3.3いつ、とこて、ショ-トロープを使用するのか
3.4ショートロープの技術一手に持ったロープを放す
3.5難度の低い岩稜を安全に登るには
3.6アイススクリューの種類
3.7アイススクリューの使用場所
3.8アイススクリューの使用法
3.9ピトン、八一ケンの種類
3.10ピトン、ハーケンの使用場所
3.11ピトン、八一ケンの使用法
4.積雪及び氷河帯でのビレイステーション
4.1積雪時ビレイステーションの場所選定
4.2スノーボラードの構築
4.3デットマンの使用法
4.4スノーフルークの使用法
4.5アイスクライミング時のビレイステーション構築
4.6ビレイステーションから次のステーションまでの登り方
5.クレバスレスキュー
5.1クレバスへの滑落を停止させる
5.2強固なアンカーの構築
5.3クレバスからの自己脱出
5.4アンカーへの荷重移動
5.5怪我がなく自力で動けるクライマーの引き上げ
5.6怪我をしたクライマーの引き上げ
6.夏季雪崩への対処
6.1夏季に雪崩の危険を軽視する理由
6.2雪崩による重大事故
6.3事故からの教訓
6.4夏季雪崩の種類
6.5夏季雪崩の判断
6.6出発前にすへきこと
6.7勾配の測定
6.8実際の山行を組織するには
6.9雪崩発生時の対処方法
6.10雪崩ビーコン(トランシーバー)での捜索方法
6.11雪崩に巻き込まれた人を掘り出すには
7.コツとトラブルシューティンク
7.1ピッケルでの雪面滑落停止
7.2V字スレット(アバラコフ)の作り方
7.3積雪斜面にビバークシェルターを掘る
7.4新雪斜面にビバークシェルターを掘る
8.登山グレート
8.1アルファベットと数字を組み合わせたグレードシステム
8.2クラシックグレードシステム
8.3ロシアグレートシステム
9.評価と反省
以上
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