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芦生研究林は1921年から京都大学が現南丹市美山町に地上権を設定して学術利用してきた森林で、森林成立以後人の手が加わっていない原生林が多く残されていること、気候条件が暖温帯〜冷温帯の両方にまたがることなどから生物多様性に富み、「植物を学ぶものは一度は京大の芦生演習林を見るべし」(分類学者・中井猛之進)と言われたほどの豊かな森です。残念ながら、近年ハイカーの増加による植生破壊や遭難事故が後を絶たないことから一般人の入林は厳しく制限されることになりましたが、研究林境界の稜線などは私自身好んで歩くエリアになっています。本書は、この芦生の森を20年間に亘って文字通り「全ての尾根と谷を歩きつくしてきた」福本さんによる現状の報告と、その森が直面している危機について熱意をもって記されています。
私が福本さんに実際にお会いしたのは今年に入ってからの2回だけ、いずれも芦生境界の山中でした。私が福本さんが毎週のように更新されているブログ「芦生短信」
http://blog.livedoor.jp/ashunomori2/
の読者である事を告げると、下山まで快く動植物の生態についてガイドをしながらご一緒して下さいました。歩きながら出会う植物の同定だけでなく、「下を向いて咲く釣鐘状の花は虫が止まりやすいように先が反り返っている。でもサラサドウダンの花はそうなっていない。どうやって虫を迎え入れているか?」など、独自の考察を交えながら知見を話してくださり、退屈しない時間になりました。本書の前書きを寄稿されている研究林長の石原さんは福本さんを「市民科学者」と評されていますが、分野は違えど自然科学研究に身を置いている私から見ても全く同感に思えました。本書前半では、芦生の森が見せる四季折々の表情が、福本さん独自の視点から時にユーモアを交えつつ紹介されています。
後半は、過酷な調査によって明かされた、現在の芦生の森が直面する危機的状況を切迫感を持って伝える内容になっています。訪れるたびに姿を消していく希少植物、飢えた動物たち…。直接の原因はシカの増加、ナラ枯れ等ですがいずれも人間の活動と無関係ではありません。芦生に限らず日本中で同様の里山の荒廃が問題になっています。我々は、その原因の一端を担っておいてただ傍観するだけで良いのでしょうか。また、驚くほど多様な生きものたちが調和して形成された森の姿に学ぶべきことはないのでしょうか。そんな訴えかけで本は締め括られます。少しでも多くの方に本書を手に取っていただき、そのような事に関心を持つきっかけになればと思います。
本書の正式な出版予定日は12月28日で、大手のネット書店では年明けからの取り扱いになっているようです。現在福本さんのブログから直接申し込めるようになっており、私はこちら経由で送付して頂きました。
ナカニシヤ出版 書籍紹介ページ:
http://www.nakanishiya.co.jp/book/b597045.html
ブログの申し込みページ:
http://blog.livedoor.jp/ashunomori2/archives/51936650.html
暫く歩かれている様子がなかったので心配しておりましたが、
今日久しぶりにHPをのぞかせて頂いたら、特に危惧する事もなかったようで何よりでした。
それにしても、相変わらず、いいところを歩かれていますね。
イザナミ峠の破線ルートも歩いて確かめに行かれて、field君らしいです。
と、HPの方にコメントをと思ったら、この日記!
今日はfield君の日だなーなんて思っています。
私なんて、ホンのかけらくらいしか知らない芦生ですが、
もっと知りたい芦生なので、ひさぶりに買ってみようかな。
最近は、買わずに図書館で借りるばかりになんですが・・・。
今日つくづく思ったのですが、
あなたの撮られる樹木の写真。良いですね。
この人は木が好きなんだなーと思いました。
どうもご無沙汰しています。しばらく皆様のヤマレコにも姿を見せず失礼していました。今はいつも通りに歩いていますのでよろしくお願いします。
本について、芦生固有の植物の話ももちろんありますが、北山の他のエリアでもお馴染みのものも沢山紹介されていますし、四季を通じて山の自然に親しんでいる人には共感できる内容だと思うので、気が向かれたら入手してみて下さい。
木ですか? 確かに、知り合いになる人には野草の花が一番のお目当てという方が多いですが、私は清々しい森の木々に包まれて歩くのが山で一番好きなことかもしれません。
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