山に学ぶ (その6)
広島県を中心とする西中国山地にはツキノワグマが250頭前後生息していると言われているが、私が熊と出会ったのは2回だけ。1回目は寂地峡から寂地山へ登っている時。そして2回目は餅ノ木峠へ向かって車を運転している時でこれは登山中ではなかった。
山に入れば熊が出るので鈴を鳴らしながら歩くようにと言われている(熊が出そうに無い所でも鈴を鳴らす登山者もいるが、これは少し迷惑な感じがする)。
これらの山の中でも、とくに奥深い山に一人で入ってもほとんど出会った事はなかった。ほんとうに熊と出会って恐かったのは西中国山地以外の山の中。
その一つは岐阜県高山市郊外の位山と川上(かおれ)岳を縦走中のこと。両者を結ぶ山稜はなだらかであるが背丈よりはるかに高い笹藪が延々と続く。そのため登山者のため幅2m位に渡って笹が刈り払われていた。物音一つしないシーンと静まり返った山を一人で歩いているとその笹藪の中からなにやら動物の足音らしきものが聞こえてきた。何の足音だろうか確かめるために歩をゆるめた。するとどうだろうか、四本足の動物が重い足取りでのそりのそりと歩いているではないか。その歩き方から推測すれば熊以外には何ものでもない。しかも大きな熊だ。その姿は笹藪に隠れて見えなかったがその距離はわずか2〜3m。
もしここで襲って来たらと思うと生きた心地がしなかった。とにかく熊に気付かれないよう息を殺しながら静かに歩いた。そのためか熊はそのまま藪の中に消えて行き、まさに命拾いをした一幕だった。
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