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そしてその3、膝への負担をどう減らすか。実は私、去年の今頃は膝をすっかり傷めてしまって歩けなくなるまで悪化させてしまった時期でした。原因は、自分ではまったく思っていなかったオーバーユース。使いすぎです。そこまで傷めてしまうともう完全には治らないようで、すっかり治った今でもあぐらをかくと膝が少し痛いです。お医者さんが言う「完治」っていうのは「戻る範囲内では完全に治りました。これ以上はよくなりません」という意味なんですねえ……いやともかく、そんな状態の私の膝ですが、いまのところテント2泊の20kgでも大きな問題なく山行ができています。ありがたいことです。
その2までで、上がるのに必要な力は少なくできたけど膝への負担は逃れようもなくかかっている、というお話をしました。荷物込みで90kgを超える重さを25cm上にあげるモーメントは、減らすことができても完全にゼロにできるはずがありません。絶対にかかってしまう負担をどうするかというと、膝だけではなく他の場所にも分担させようというのがその3でのお話になります。
写真1枚目はその分担として、足首関節の屈曲と股関節の伸展動作を使おうというものです。足首関節を屈曲させるのに必要な筋肉はスネの筋肉、前脛骨筋となり、股関節を伸展させるのに必要な筋肉は大臀筋を中心としたお尻の筋肉、臀筋群となります。青と赤の印は骨格と重心の位置、黄色がお尻の筋肉を使った時の筋肉の起始停止と、その際の支点になるのが白丸部分となります。
その2では、膝を前に出すというお話をしました。写真1枚目もその2とほぼ同じものになります。ただその3では、膝ではなく足首関節を曲げて重心をカカトに近づけます。うまくできると、膝ではなく足首からスネにかけて体重がかかり、「スネによりかかる」とでもいうような体感を得られます。その2で膝に感じた負担はここでは感じません。膝への負担を前脛骨筋に分担させることができました。
次に股関節を伸展させると写真2枚目のようになります。筋肉の動きに腰と膝、2箇所の支点ができました。動画で3回繰り返していますが、その1、その2と比べて更に疲れを感じづらくなりました。膝にも負担を感じません。支点が増えた分さらに疲れづらく、膝を傷めづらい登り方と言えます。
動画で見てみますと、一見ではその2の動画と大差ありません。そこで膝の動きの大きさに注目してみると、その3のほうが動きが小さくなっています。また腰から下の動きを見ると、膝の動きよりも先に腰が持ち上がっていると思います。股関節の伸展動作が先に始まり、膝はそれに付き従う形です。登山雑誌の歩き方講座で見かける「骨盤主導」ということも、これと同じことを言っているように思います。
ではその3では、膝はどのような動作をしているか。その2までと同様の動作をしてはいます。ただ股関節を先に動かせると膝には意識が向きません。体感としては、踏み出して曲がった膝が、その角度を維持したまま真下に下りるとでもいうような体感となります。曲げている自覚が薄れるほど膝への負担が減っていると言えるでしょう。
これの難点は、できるようになるまで練習が必要なこと。さっきから当たり前のようにお尻の筋肉を使うだの股関節を伸展させるだのと書いてはいますが、日常生活の中でこれを意識することってほとんどないんじゃないでしょうか?私ももちろんそうでした。頭で理解はしたつもりでも体は思ったように動いてくれません。さいわい私の仕事は階段の上り下りが多いので、その中で常に練習しました。それで年単位の時間がかかったように思います。普段やらない動作は、脳がその動きを筋肉に伝えることができないのかもしれません。脳に動作をインストールし終えるまで時間がかかってしまいました。
今でも練習しないとすぐにできなくなってしまいます。またこの動作には大殿筋と内転筋の筋力が必要になります。O脚の影響で左が特に弱かった私は、別途の筋トレで補強する必要がありました。左の股関節できちんと体重を受けられるようになったのは筋力の向上をみてからのことです。ですので筋トレをサボると脳はインストールしたはずのことを忘れるし、体は重さを受け止められずに膝がブレるし、となってしまいます。こうなってくると、なんだかレジャーの山登りをしているというよりも、何かのスポーツをやっているかのようです。
さて、とても長くなりました。山での歩き方を言語化して自らの理解を更に固めたいという試み、きちんと果たせたのでしょうか。この長い文章と個人的な試みにお付き合いくださった皆様に感謝しつつ、これにて試みを終えることといたします。
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