ちょっと前からロープの使用について勉強しております。公園で結び方を練習してみました!とか、登山道の端っこでちょっとだけやってみました!ですとか、何冊か教本読みました!とか、そんなレベルなんですけれども。勉強したり練習したりということを楽しくやってはおりますけれども、山で実際に使うとなるとあんまり自信はありません。
いくつか理由があって自信がないのですけれども、主たる理由が「どの程度の安全を確保できるのか判断できない」というものだったりします。100m落ちたけどロープつけてたから無傷でピンピンしてます!とは、多分ならないですし。実際に持ってるロープを使って助かるのって、いちばんシンプルな意味で考えて、どの程度の転落までになるんでしょ?
で、それを考える前にですね。白状します。ワタクシが購入いたしましたのは、その。補助ロープなのです。2m落ちたら死ぬやつです。ダイナミックロープ持ってないのに落下のこと考える意味ってあるの?という話でしかないのですが、補助ロープでどこまで使えるかって意味で考えてみたいわけです。だって買っちゃったし。…買っちゃったんだもん!山道具屋さんで購入した際の店長さんの「まあ、ズリ落ち防止くらいなら……」という苦笑いを思い出すと恥ずかしくなります。
ここでちょっとだけおさらい。ロープの種類についてです。私のように登山道を歩きメインでやってるとなかなかピンとこないところですが、転落に対してロープで助かりたい場合、助かるロープとそうでないロープがあるようです。まっすぐ真下に落っこちる、いわゆる転落に備える場合に使うのはダイナミックロープという種類のロープだそうでして。これ、ロープ自体がびよーんと伸びて、転落してもその衝撃を軽減してくれるみたいですね。イメージ的にバンジージャンプが近いのかもしれない。100m落っこちてもやった人みんながニコニコしてるのって、ロープがばびょーん!と伸びて落下の衝撃をなかったことにしてくれるからなのでしょう。いえ、だからといってその、進んでやりたいとはちょっと思わないですけれども。
そしてもう少し確認。さっきから転落だの衝撃だのと言っておりますが、ロープを結んでいて転落を止めたとしても、止まったその瞬間には人体への衝撃が発生するようでして。アレです、ジャンプして体重計に飛び乗ると体重が倍くらいに表示される、或いは体重計が壊れたり床が凹んだりするアレ。アレが人体にくるようです。落下した距離やロープ径、繰り出したロープの長さなんかの影響をアレコレと受けて、最終的に6kn(キロニュートン)という数字を超えた衝撃になると大怪我をしてしまうようですね。なるほど、わからん。
で、ロープの種類の話に戻りまして。ダイナミックロープは落下時に伸びてこの衝撃を緩和してくれるけど、補助ロープは伸びない。衝撃を緩めてくれません。補助ロープしか持ってないのなら、そもそも落下する危険があるようなところに行っちゃいけない。じゃあ具体的にはどのくらいの落下が想定される場所がダメなんだろう?
落下時に伸びてくれないということは、落下の衝撃がそのまま人体にくるわけです。で、6knという数字が出てきたけれども、その数字がどんなものだか何となく掴めない。一般論レベルで考えてみますと、高所作業等に関して厚労省が提示している、転落防止柵の設置が義務付けられる高さ。これ、2mです。2m落ちると人が死ぬか大怪我しちゃうよ、と厚労省のお墨付きが出ているのですね。
その2m落下について私の体重+荷物の90kgで考えてみます。どのくらいの衝撃が発生するのかな。するとですね。
衝撃力=(90kg×自由落下2m時の落下速度6.3m/s)/衝撃発生時間0.5s
これが1134kgf(キログラムフォース)となって、そして1134kgf=1134×9.8/1000となって、11.11knになる、と。
人体が耐えられる衝撃力の限界が12knだそうです。ほぼ一撃ですねこれ。
わかっていたことではありますけども、実際に数字に出してみるとびっくりします。現実には手をついたり何かにしがみついたりするでしょうから多少は軽減されるのでしょうけれども、ロープに吊り下がっての落下となるとこれに近い衝撃がきてしまうのでしょう。膝をピーン!と伸ばして2階から飛び降りるようなものでしょうか。死んじゃう。
で、やっと本題。90kgの私が落ちたとして、補助ロープで助かる限界の数字ってどうなんでしょう。2m落下でほぼ一撃でしたから、1mなら半殺しくらいで済むかもしれない。計算してみましょう。
衝撃力=90×落下速度4.4m/s÷0.5×9.8÷1000
で、7.76kn。
やった!計算通り半分死ぬだけで済んだ!……転落ってほんとダメなんだな。
なんかもう、やっても無駄な気もしてきましたけど、計算するだけは一応しておきましょう。1mでもダメならもう半分にして、0.5mならどうでしょう。
衝撃力=90×落下速度3.13m/s÷0.5×9.8÷1000で、5.5kn。
痛い!ものすごく!痛い!けど怪我はしない!……かも、しれない!ギリギリですねこれ。
ヘルメットやヘッデンなんかでおなじみのペツルがこの辺の実験をしてるようで、4knの衝撃力を「怪我はしなかったが深刻な衝撃」と評していました。5.5という数字も許容しないほうがいいんでしょうね。ペツルも4kn以上の実験はしてなかったですし。
さてそんなわけでして、私が既に購入してしまった補助ロープで落下ダメージから逃れたい場合、有効なのは50センチまでという、びっくりな結論が出ました。なんか、山道具屋さんに「最初から言ってるじゃん……」と呆れられてしまいそうです。ただその、言い訳じゃありませんけれども転滑落に対する初期制動としては有効でしょうし。登山道のお助けロープもだいたい伸びないやつだし。懸垂下降できるし。濡れた防寒着干したりするのに使えるし。日のあるうちに寝袋干しておけば夜はお日様の匂いとともに寝られるし。ちょっと悲しくなってきました。
普段やらない難しい計算なんかをしたもので疲れてしまいました。「補助ロープで転落防止しちゃダメだよ」なんていう、説明書のいちばん上に書いてあるような結論のためにこの長々しい文章を読ませてしまった皆様もお疲れになったかと思います。すみませんでした。何か実用的な使い途を思いついたらまた何か書いてみますがその前に、上記計算で使用した衝撃発生時間0.5秒という数字は国立登山研修所による確保理論中で使用されていたものを根拠とし、また自由落下速度については「生活や実務で役立つ計算サイト」中の計算機によることを付しましておしまいにいたします。
なかなかアカデミックな内容で思わず読んでしまいました。
ロープも購入については考えたことあるのですが、実際役に立つかどうか考えたら使わなさそうで躊躇しています。ただでさえあれもこれもとザックにつっこむ性格なもので、荷物の重量だけが増えていきそうです笑
コメントありがとうございます。そして初めから出ている「補助ロープでクライミングしちゃダメだよ」という結論を長々と読ませてしまってすみませんでした!
単独でのロープを検討されてましたでしょうか?実は私もそれがスタート地点でした。勉強すればするほど、ロープってパーティーで使うものなんだという考えが見えてきまして、単独で役立てる方法ってなかなか見えてきません。
ただ上で書いたものはあくまで、真下にバーン!と落ちる転落に対してのものでして、滑り落ちていく滑落に対してはまた変わるのではないかと思います。実際、公園の滑り台で2mほど滑落してみたときは衝撃というのは感じませんでしたし。
知識として勉強、練習するのはとてもたのしいですし、物干し紐を作り、仲間の濡れた防寒着を乾かした時は大変役に立ちました。切り売り2m程度のロープで安く押さえて勉強、練習はとてもオススメですよ!
なかなかそんな場面て出くわすこと無いしそもそもそんな危険な場所には行きませんしね。
車に常時積んでる牽引ロープみたいなもんですかね笑。安心感を持っておきたいだけです。もちろんそれを正しく使える知識が大事なんですけどね。
実際にすべり台で試してみる行動力、いやはや恐れ入りましたm(_ _)m
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