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日比谷で映画を見て皇居の外周を走って帰ってきたことは何度もあるけど、うちから皇居まで行って帰ってきたのははじめて。フルマラソンくらいの距離かなと思ってたのに30キロしか行かなくて逆にビックリ。帰りははからずも虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズ、元麻布ヒルズの三連チャンを巡ることに。
#朝ラン #早朝ラン #ランニング
オーディブルは村上貴弘『働かないアリ、過労死するアリ』をはじめから終わりまで聞く。
「昆虫の多くは基本、寿命が1〜2年と短い。特に寒い冬を越すためには、卵や幼虫、蛹で越冬することが多く、成虫のままで冬の寒さを乗り切ることができる種類は意外に少ない。
一方、アリは夏の暑さでも冬の寒さでも生き残ることができる。たとえば、マイナス30℃くらいまで下がるモンゴルの草原にも、数十種類のアリが生息している。地中深くに潜っていれば、簡単に冬を越すことができる。
なぜアリは厳しい環境条件下でも、成虫の状態で生き延びることができるのだろうか? その答えは、「社会」を作ったからということになるだろう。しかしながら、原因と結果は複雑に絡み合っている。
アリは真社会性と呼ばれる見事な社会を作る。その定義は①集団が子どもを協力して育て、子どもを産まない個体が存在すること。②繁殖だけを行う女王(アリ)が存在すること。③世代が重なること、の三つだ。そして、真社会性となるための条件は、「長寿」と個体としての「弱さ」だ、と考えられている。
通常1年しか生きられない短命の生物は、集団を作るメリットを受ける前に死んでしまう。わざわざ集団を作って面倒な機能を獲得し、お互いに協力しても、その利益は数年先にしか出てこないとなると、これは単独性にならざるを得ない。
一方で、寿命が数年以上と長くなると、集団でいるメリットが大きくなってくる。現存するアリはすべて真社会性のため比較することが難しいので、別の昆虫で説明しよう。
農業害虫でもあるアザミウマという小さな昆虫がいる。植木などに発生する黒くて細長い虫を見たことがあるかもしれないが、それがアザミウマだ。アザミウマは世界中で5000種ほどが知られている。その中で真社会性を獲得しているのは、わずかに7種のみだ。
この7種は、いずれも非常に栄養分の少ない植物を食料源とし、ゴールと言われる虫コブに引きこもって生活する。栄養が足りないと短命になると思われるが、実は逆で貧栄養のほうがゆっくりとしか成長できず、長生きになる。意外なのだが事実だ。
これら貧栄養アザミウマは、アザミウマとしては長命の3年の寿命を持ち、虫コブの中で仲間だけで引きこもりながら過ごす。すると協力行動が進化し、「兵隊アザミウマ」が出現し、皆が利他的行動をとるようになる。
そう、「弱さ」こそが協力行動や利他的行動の進化のカギとなる。「弱い奴ほどよく群れる」といったネガティブな言い方があるけれど、生物の世界においては、弱いものほど集まって社会を作ったほうが合理的なのだ。
ちなみに、アザミウマは虫コブという隔離された社会があるので、そこで暮らす個体はすべて血縁者だ。したがって、血縁をわざわざ見分ける能力は進化せず、特にほかの虫コブに入っているアザミウマを襲うこともなく、非常に平和な社会となっている。
一方で、哺乳類、鳥類、爬虫類や魚類では真社会性は進化しにくい。たとえば、イワシなどの小型魚類。さまざまな生物が暮らす海の中で、小魚はとても弱い存在だ。そのため、群れと作って外敵から身を守る。けれど、寿命が短いし、広い海の中で血縁者だけで集まることも難しいだろう。
『スイミー』のように群れを作って、大きな魚へと対峙しているように見える。けれど、実際は個々の魚が集団の内側の安全なところに逃げ込もうと必死に動いて、あの形になっているにすぎない。勇敢に捕食者と戦う利他的なソルジャーはなかなか誕生しないのだ。」
「また、長寿と関連するのだけど、たとえば地下のような低酸素状態に適応すると、自然に寿命が長くなり社会が進化する傾向がある。
その代表格が「ハダカデバネズミ」と「ダマラランドデバネズミ」だ。齧歯類(ネズミの仲間)の寿命がせいぜい2〜3年程度なのに対して、ハダカデバネズミは最長寿命が37年以上! 平均で30年ほどは生きると言われている。
申し訳程度に生えた毛と大きな2本の歯が特徴のハダカデバネズミ(そのまんまの名前!)は、哺乳類なのに体温調節ができない。このネズミは哺乳類で唯一(唯二)の真社会性動物だ。女王ネズミ1個体と数個体の王、兵隊と働きデバネズミに役割が分かれている。女王ネズミから生まれた個体がどうやってソルジャーやワーカーになるのか? それは、女王ネズミのおしっこい生殖腺の発達を抑える物質が含まれていて、その物質が届く範囲にいると子どもが産めなくなるからだ。
エチオピアなどのアフリカ北東部の砂漠の地下にトンネルを掘って、そこに80〜200個体ぐらいで暮らしている。すると、巣の酸素濃度は6%で、二酸化炭素濃度は7〜10%というかなりの低酸素、高二酸化炭素状態になってしまう。人間が生存可能な酸素濃度の下限は16%で、10%を切るとほぼ死んでしまう。二酸化炭素濃度10%で意識障害や死に至るケースもある。こんな厳しい大気の組成でもハダカデバネズミは生きていける。無酸素状態でも仮死状態になって、心拍数を下げ、呼吸を止め、最長で18分間は生きられるというから驚きだ。
実は低酸素状態に関する生物の応答はノーベル賞の研究がかかわっている。2019年のノーベル生理学・医学賞受賞の研究テーマは「低酸素誘導因子HIF(ヒフ)遺伝子」だ。この遺伝子が発現すると、低酸素状態に対抗するためのさまざまなタンパク質が生成される。
そのプロセスでもたらされる生物への影響は非常に興味深い。一つが長寿命、そしてもう一つがガンの抑制だ。ハダカデバネズミでは、HIF遺伝子の発現がマウスやラットに比べ有意に高く、それにより長寿命でガンにかかりにくいのではないかと推測されている。」
ドイツのバーガーキングで、閉店20分前に客を追い出したワンオペ従業員を見て。
「日本のサービスの質の高さは、海外からも称賛される。すばらしい「おもてなし」だと。でも、そのサービスを受ける側ではなく、提供する側の労働環境として考えると、評価はだいぶ変わってくる。
カスタマーファーストで働く人は、かなりしんどいはずだ。カスハラが時折、問題になるけれど、日本社会の生きづらさは、サービスの受け手側がわがままになりすぎているからではないか。
ドイツはというと、サービスよりも労働者の環境が優先。お客は二の次。客が耐久力を上げないと、生き残っていけない社会だった」
「「俺が帰りたいから、閉店時間20分前でも店を閉める!」というような、働く個人を大切にするドイツと、カスタマーファースト実現のために、働く人が死ぬ気でがんばる日本。皆さんは、どちらがより生きやすいと思うだろうか?」
ダーウィンの進化論が誤解されがちな点。進化にあらかじめ決められたゴールはないし、環境の変化に応じて、生き残る個体も変わってくる。生存と選択に「たまたま」そうなったということ以上の意味はない。
「ただ、適者生存と自然選択(自然淘汰)という言葉はあまりにも五感が強く、勘違いや誤解が生まれてしまった。
適者生存も自然選択も「優れたものが生き残る」ということでは決してない。誰かが(神様のように)優劣をつけているわけではない(もしそうなら宗教と変わらなくなってしまい、科学ではなくなってしまう)。
進化は必ずしもよい方向を目指すわけでも、目的を持って変わるわけでもない。しかも、その変化には膨大な(時には数千万年単位の)時間を要する。
世代を何万と重ねるうちに、環境に合ったものが生き残るわけだけれど、決して、ある特性を持ちえたものだけが、あたかも”勝者”として残るわけではない。多様な部分もちゃんと残る。これが重要だ。
みんな、キリンの首が長いと思っているかもしれないけれど、首が短いキリンもいるし、ものすごく首の長いキリンだっている。
変化し続けるのも、変化しないのも、賢いのも賢くないのも、強いのも弱いのも、環境に適応できていればその特徴は長く残る(ちなみに、賢い/賢くない、強い/弱いに優劣はない)。
一方で、環境に適応できなければ、ゆるやかに何世代もかけて少しずつ減っていきますよ、というだけのことなのだ」
「現在、キノコアリは20属約250種あまりいるとされている。僕らが「ムカシキノコアリ」と呼んでいる、起源に近い「ハナビロキノコアリ」などの仲間は、一つの巣にいる働きアリの数が30〜50個体と少なく、小さなキノコ畑を作る。労働は年齢によって分業されるだけのシンプルな社会だ。
一方、起源に近いキノコアリが登場して、数千万年後に登場したハキリアリは、もっとも文化した特徴を持つ。数百万個体を抱える巨大なコロニーを作り、働きアリの分業は進み、個体サイズも2mmから1.5cmと多様で、なんと10を超える働きアリのクラスが存在する。体の大きさによって役割が決められる、複雑な社会になっている。
ハキリアリは、俗に言う「進化した」キノコアリだ。でも、起源に近いムカシキノコアリもちゃんと残っている。どちらも今、適者となりこの地球上に存在している。そこに優劣はない。僕にとっては、ムカシキノコアリもハキリアリも興味深い兼kヒュウ対象であり、そして、愛おしい存在だ」
進化論の進化に果たした2人の日本人研究者。
①大野乾「進化における遺伝子重複説」と「ジャンクDNA」を提唱。
・脊椎動物では倍数性の変化など遺伝子が重複することによって、タンパク質を作るレベルも多様化し、爆発的な機能の分化=進化が促進される
・通常はゲノムが倍加すると生きられないが、植物や魚、プラナリアなど倍化を受け入れられる生物は、ちまちまと形質が変わるのではなく、ごそっと倍になることで、進化過程をジャンプするように構造が複雑になる
・5億4000万年前のカンブリア大爆発の際に、ゲノムの倍化現象がおきたと考えられる。→なぜ?という疑問に答えるのは難しい。なぜなら、進化に目的はないから。環境に合わせていったらこうなったというだけの話。
・ゲノムの中にはタンパク質を作る司令を出す部分と、まったく何をするかわからない「ジャンク」な部分があり、ジャンクな部分がゲノムの大半を占める
・30億の塩基対にはジャンクな配列がいっぱいあって、タンパク質を作る指令書となっているのはわずか2%。中身はスカスカ。
・ジャンクDNAは不要なガラクタではなく、調整領域として多様性を生み出す可能性を残している。
②木村資生の「中立説」
・ゲノムの大半は次世代に対して良い悪いといったものはなく中立。ランダムに起きる突然変異が遺伝的浮動(ジェネリックドリフト)によって徐々に集団内に広まっていくだけ。「環境に合わせて適切な遺伝配列がセレクトされる」わけではない。
・「環境に適応できた首の長いキリンが子孫を残して、キリンの首は長くなった」というのがダーウィンなら、「キリンはだいたい首が長いけど、首が短いキリンもいるし、ものすごく首の長いキリンだっている」というのが木村。
・ダーウィン進化論ではカバーしきれなかった多様性創出や、劇的な環境変動に生物が対応してきたメカニズムを説明。ダーウィン進化論と重複説、中立説を組み合わせることで進化論が完成した
進化の誤用の例。
「ビジネスの世界で財を成した人、ひと昔前で言う「勝ち組」の人は、厳しい経済環境の中を自ら切り拓き、サバイブしてきたという自負が強いのだろう。自分は環境に適応し、生存競争を勝ち抜いてきた選ばれし者であり、今の社会でうまくいっていない人間は適応できなかった、淘汰された弱者だと考えてしまうのかもしれない。
しかし、これは生物学的には別に自然選択でもなんでもない。生物学的意味であれば、適応的な形質は集団中に数が増えるわけだから、世の中「勝ち組」が多くなるはずだ。
ただ、人間が勝手に作った経済社会では、不思議なことに「勝ち組」は少数でなければならない。その少数が利益を独占することが「成功」の定義だ。不思議な話だ。自ら進化の枠組みから外れていって、少数派になりたいなんて」
「とにかく「自然選択」や「淘汰」という言葉については、誤ったイメージが定着してしまっている。「自然選択」は、今、存在しているものをふるい落としていくわけではなく、世代を重ねていくうちに、だんだん環境に合わない特徴が減り、環境に合う特徴が増えていくというだけである。現在、ここに存在している者たちはすでに「結果」だ。そこにセレクションがかかるも、かからないもないのだ」
「選ばれし者だけの、いわゆる「強者」だけの世界を目指そうとすることは、社会性生物の強みを捨てることだ。完全単独性のホッキョクグマのように生きたいのだろうか? 他者とかかわるのは交尾する時だけで、子育て中の母子以外はほとんど単独行動。さほど体も強くなく、精神的にも脆弱な人間が、そんな生き方に耐えられると本気で思っているのだろうか。
人は弱い。弱いからこそ助けて助けられながら生きている。多様な存在をありのままに受け入れ、協力しながらこれからも細く長くこの地球上に存在し続けられたら、いいなぁ」
アリが発する音の録音データと行動パターンを紐づける作業に四苦八苦し、アリ語で寝言まで言ったという著者が得た結論。
「その結果……シンプルな社会のアリも腹柄節を使って音を出してはいる。しかし、その頻度は低いものであった。中程度の社会進化のグループはシンプルなグループよりは有意におしゃべっりだったものの、ハキリアリよりは寡黙であった。そして、ハキリアリは、ものすごいおしゃべりだった。
つまり、社会進化の段階が進むにつれておしゃべりになる傾向がはっきりと現れ、それが統計的にも有意な相関が見られたのだ。こんなデータはこれまでどのような動物群でも見たことがない!
はっきりとデータになって証明された時は、ゾクゾクと鳥肌が立つほどの興奮が全身を包みこんだ。これは、アリだけにとどまらない普遍的なデータになるぞ!という予感もあった。
どのような動物社会においても、コミュニケーションの頻度や質が、社会の大きさや複雑さを規定するかもしれない。そのことは人間社会にもおし広げて説明することができるかもしれない」
「あまりおしゃべりをしていなかったシンプルな社会のキノコアリは、そもそもあまり動かず、働かない。大学院生時に行った個体識別を施した50時間の行動観察では、約3割の働きアリはまったく働いていなかった。キノコを育てる「農業」をするアリとしては、非常に効率がいいというか、要領のいい生き方をしているアリたちだ。
一方で、四六時中うるさいほどおしゃべりをするハキリアリは働き者で、むしろ働きすぎの社会だ。ハキリアリの働きアリは皆、何かしらの役割を担い、システマチックに動いている。葉を切り出す仕事、巣に運ばれた葉っぱを細かくする仕事、キノコ畑のメンテナンスに幼虫のお世話、巣穴の防御など、体の大きさによって分担された労働は30を超える。働いている個体は、50時間観察で驚異の97%。
それぞれが効率よく、ほぼ24時間休みなく働き、複雑な社会を維持している」
「実験期間中に行った毎日の行動観察から「コミュニケーションを阻害したグループでは有意に利己的行動が増えた」ことも明らかになった。
これはフェロモンを出せなくしたグループも音を出せなくしたグループも共通で、巣を守るなどの自己犠牲の行動が減少し、ぶらぶら歩き回ったりする行動が増えた。
やはり協力行動や利他的行動にはほかの個体との密接な交流・コミュニケーションが必須なのだろう。それができなくなると、いくら血縁が近く仲間だと認識できても、「いや、私は関係ないし」となってしまうのかもしれない。
プラスチックケースの中で、うろうろとさまよい歩くアリを見ていると、コミュニケーションが担うのは、単なる情報の伝達だけではないと思わされる」
よく働くアリが2割、そこそこ働くアリが6割、あまり働かないアリが2割という「2:6:2」の法則について。
・北海道大学の長谷川英祐博士が「シワクシケアリ」の行動観察をした結果、明らかになった事実。
・だが、シワクシケアリはごく平均的なサイズで、ごく平均的なコロニーを築き、ごくふつうの社会をもったアリであって、すべてのアリに同じ法則が当てはまるわけではない。
・ハキリアリはよく働く。働いていないのは全体の1〜2%。24時間、仮眠を取る程度の休息しかとらずに働き続け、たった3か月で死んでしまう。過労死アリに見えるが、コロニー全体の寿命(≒女王アリの寿命)は10〜15年、最長で20年と長い。短命の働きアリが膨大な数存在することで巨大なコロニーが長命を保つ。
・起源に近いムカシキノコアリは、まったく働かないアリの割合が30%。働きアリは幼虫の世話もしない。子育てをしない唯一例外的な真社会性昆虫。
「過労死するアリが支える超巨大社会と、ゆっくりのんびり自由に、適当にサボりながら全員が長生きする小さな社会。どちらもこの地球上の仕組みとしては適応的だ。さて、僕らはいったいどっちに幸せを感じるだろうか?」
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