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#朝ラン #早朝ラン #ランニング
オーディブルは新庄耕『地面師たち』の続き。
ハリソン山中の底知れぬ闇と欲望に畏れおののく。
「つまらないじゃないですか」
「誰でもできるようなことをチマチマやってたら。小さなヤマよりは大きなヤマ、たやすいヤマよりは困難なヤマ。誰もが匙を投げるような、見上げればかすむほどの難攻不落のヤマを落としてこそ、どんな快楽もおよばないスリルと充足が得られるはずです」
「ライフルを両手にかかえて、少し離れたところから、ガイドが襲われているのをじっと見てました。熊っていうのはあれですね、意地汚いいんですよ、ネコ科とちがって。獲物を仕留めずに生きたまま食べてしまう。ガイドも悲鳴をあげながら、食われてました。ガイドが私の眼を見て助けを求めるんですよ、何度も。そのうちガイドの声が聞こえなくなって、代わりにグリズリーが頭蓋骨を噛み割る音が聞こえてきました」
「ひと通り食べて満足したんでしょう。グリズリーが、ボロ布のように地面に残ったガイドの脚だか腕だかの肉を咥えたんです。そのまま立ち去るのかと思いましたが、なにを思ったんでしょうね、とつぜん肉片を離して私の方を振り向いたんですよ。感情の読めない、つぶらな瞳でした」
「想像できますか皆さん、そのときの私の心境を。あのときほど、全身で、生きているという実感を得た瞬間はありませんよ。無我夢中で、ありったけの弾をグリズリーの巨体に撃ち込んでやりました。仕留めたあと、不思議と頭は冷静でしたが、ペニスがはちきれんばかりに昂ぶっていたものですから、ガイドの血にまみれて、だらしなく伸びきったグリズリーの舌に射精してやりました」
「もしかしたら私は、あのときの興奮をいまも忘れられないでいるのかもしれません」
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