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#朝ラン #早朝ラン #ランニング
オーディブルは逢坂冬馬『ブレイクショットの軌跡』の続き。
覚醒剤所持で逮捕された社員が社長を逆恨みし、インサイダー取引疑惑に巻き込まれ窮地に立たされたラビリンス創業社長宮苑は、レピュテーションリスクと自社株暴落の被害を最小限にとどめようと、取締役会に解任動議を出そうと画策していた役員たちの先手を打ってみずから辞任を申し出て、造反組のリーダーをあえて代取に指名して、解任劇そのものを無効化する。
「おかしいんじゃない。楽しみなんだ。挫折が初めてだから。それから再起することが」
「強者を減点法で採点する多くの市民が、こいつは減点できないと判断したとき、最後に嫌う要素は何か分かるか? 『完璧さ』だよ、冬至くん。俺が頑張って世間に振りまいた印象は、危うくそこに行きかけていた。非人間的なまでに完璧な自分を演出してみせれば、多くの人たちは、自分に比して何一つ劣るところがないように見える人間など不自然だと嫌う。あるいは、きっと人には言えないどす黒い何かがあるに違いないと思い込み、それでバランスをとる。しかし、一敗地に塗れ、その徹底的挫折から再起を果たした人間は、苦労人だ。人は成功者の苦労話が大好きであり、むしろ、苦労した成功者が好きだ。常勝の苦労知らずと思われていた俺も、そこにいける」
「腕が鳴るぜ」とうそぶく宮苑は、冬至の想像のはるか上を行く傑物だった。ラビリンスはたしかに苦境に立たされ、役員報酬をカットされた冬至もローン残債の残るタワマンを売り払い、愛車ブレイクショットもやむなく手放すが、手放したことで、「マネー、ライフ、ゲーム」を地で行く宮苑の飽くなき欲望とスピード感にいつのまにか飲み込まれていた冬至は、安定志向、平和志向だった本来の自分を取り戻す。正気に戻ったかのように。
そのブレイクショットを中古で手に入れたのが、冬至の息子のサッカー仲間の父親・後藤友彦(自動車修理の板金工)だったというのは明らかにやりすぎで、作為を感じる。ということは、後藤もまた、ブレイクショットを手にしたことで、本来の自分を忘れて、なにかのトラブルに巻き込まれるのだろうか。
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