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#朝ラン #早朝ラン #ランニング
オーディブルは貴志祐介『新世界より 中巻』の続き。
予想通り、悪鬼も業魔も破壊衝動を抑えられなくなった人間の成れの果てだった。悪鬼は生来人間に対する攻撃抑制をもたず、愧死機構も機能しない突然変異の結果生まれた子どもであり、周囲の人間を片っ端から殺戮しまくるラーマン・クロギウス症候群に侵された人を指す(ラーマンもクロギウスも数万人を殺害した少年の名前だという)。業魔は後天的に漏れ出す呪力をコントロールできなくなった橋本・アッペルバウム症候群の患者であり、むしろ、心根のやさしい人がなりやすいという。おのれの願望とは裏腹に、とめどなく増殖を続け、周囲に悪影響をばらまき続ける業魔の中には、みずから死を受け入れる人も少なくない。瞬がそうであったように。悪鬼や業魔の蛮行を防ごうにも、通常の人間には人間を攻撃できない愧死機構が備わっているため、太刀打ちできる人がいないことが、この問題を複雑にしている。子どもが17歳になるまで人権を認めないのも、悪鬼や業魔になりかねない子どもを教育委員会の職権で処分できるようにするための方便だという。
覚の祖母だという倫理委員会の議長、朝比奈富子は自分の細胞のテロメアを修復できるという唯一無二の能力により不老長寿を得た267歳の化け物であり、二度と悪鬼や業魔を出さないために果断にことに当たる清濁併せ持つ鉄の女だった。その富子が、早季に跡を継いでもらいたいという。
〈鎖は常に、一番弱い環から破断するのよ。私たちは、常に、最も弱い者に対して、気を配らなくてはならないの〉
〈たった一人の悪鬼によって、容易に一つの町の住民が皆殺しにされてしまうのよ。しかも、一度しか爆発しない核爆弾と違い、体力が保ってしまえば、際限なく殺戮を続けることだってありうる。……業魔に至っては、一人の人間の精神の平衡が失われただけで、理論上は、地球が消滅してしまうことさえ、考えられるわ〉
(きちんと予防すればいいのでは、という早季に対して)
〈違う。そうじゃないのよ。あなたはどういう形で呪力が暴発するか、その様態だけに気を取られている。問題の本質は、そこに無限のエネルギーを秘めた力があるという事実、そのものなの。私たちはまず、日本列島だけで5万発から6万発の核兵器をしのぐ脅威が存在するというところから、考えなくてはならないの。……そのうち二つが、行方不明になったとき、たかが二つと言って片付けられるかしら?〉
こうした言葉が呪いとなって、早季はその後、倫理委員会や教育委員会側の人間として判断するようになってしまう。自分たちのことだけ考えていればよかった幼年期が、富子の一言で突然終わりを遂げたのだ。
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