|
|
このご時世、わが身は人混みを避け隠家で冬眠生活。冬眠の暇つぶし、行き着く先は本読み一択。
久しぶりに日本登山界の先駆者、田部重治の本を開いて日本黎明期の山旅に思いをはせる・・・。
著書『旅への憧れ』のなかに、大正から昭和初期の登山者の動向が記され、そのころの登山者は「日本アルプス」に血道をあげ、「富士山などは遠くから眺める山で、わざわざ登るほどのことはない」見方をされていたと述べている。
往時、富士山に登る多くの方は「富士講」信者の方々で「羽黒三山」「四国お遍路」なども聖地巡礼のお山巡り。
登山形態での富士登山が花開いたのは戦後になってからですね。
さて、田部さん自身は富士山を登ったのは60歳を過ぎて「自分も老人の境に近づいている・・・そろそろ富士登山を遅ればせながら決心した・・・」と、老いてからの、遅ればせながらの富士登山を語っている。
三合目の茶屋で登山者が田部さんの重そうなザックを見て、「あなたの年ではそのザックは重過ぎる、登るのは止めたほうがいい」と忠告されたり。
中腹で登山者の生態模様を眺め「登る人間は黙々とし、降りる人ははしゃいでいる」と記し、田部さんは次々に登山者を追い越し八合目の茶屋で一泊。
茶屋では皆に「お爺さん、お年の割にはよく登ってきましたね」などと、褒められたと、そのときのことをリアルに描写している。
普段、山を登ることもない人が富士登山では多く見られ、みな蒼黒い顔をし、足がのろくなっている。「みな早く登ろうとするが、焦れば焦るほど足が進まずお疲れ気味だ」と。
「富士山は悠々とした気分で、ゆったりとした気持ちで進むのが最も早道である」と富士登頂の感想を述べている。
じつは何を隠そう、私も情けなくも、未だに日本一の富士山を遠くから眺めているだけの偏屈者。が、知識だけは“耳年増�疔�を持して「そろそろ」と様子を窺っている今日この頃なんでありますね。
私的に登るとなれば、富士山ルートで最も古い古道。最短距離で登れる「富士宮ルート」でしょうか。
蛇足ながら“日本一の富士の山�瓩箸茲�形容されるが、戦前は日本一のお山は台湾の「新高山・3,950ｍ」
真珠湾攻撃の奇襲隠語「ニイタカヤマノボレ」は台湾の「新高山（現・玉山）」のこと。
・明治中頃「富士講」登山者の出で立ち
・宇宙飛行士・野口聡一さん撮影の、山頂が冠雪した富士山の雄姿。
