市販の登山ガイドブックや登山地図に未記載の山は、静かな登山が楽しめる。更にそれらや地形図にさえ、山名が表記されていない山はもっと入山者が少ない。拙著の二冊の無名峰専門ガイドブック収録の過半数の山が、地形図に未表記の山だ。地形図に独標点が記されてない山の正確な高度を掲載している場合もある。その調査例を公開しよう。
まず山名調査については
(1)基準点配点図から探す
これは国土地理院が作成したもので、五万分の一の縮尺地形図に三角点と水準点の等数を示すマークと基準点名を記したもの。三角点の場合、三重丸が一等三角点で、◎が二等三角点、○が三等三角点、一回り小さな○が四等だ。
三角点名の中には○○山や○○岳、○○森というのがあるが、これが山名である可能性がある。但し、地理院の担当者が本来の山名を知らなかったため、当該山周辺の山名を適当に点名にしている場合もある。例えば高知市の一等三角点峰、烏帽子山の点名は鷲尾山になっている。無名峰で言うなら、仁淀川町の国有林の山に国王山という点名の山があるが、本当の国王山は安徳帝の行在所跡であり、そことは位置が違っている。
尚、私の場合、それが国有林の山であれば、施業計画図を見て、それが本当に山名なのか、ただの地名なのかを判断する。
二枚目画像の施業計画図には根木石山の三角点が記されてないが、これは最初の作図時、まだ三角点が設置されてなかったことを意味している。しかし林野名に同名の名称があるから、この点名は山名であると判断できる訳だ。
(2)市町村史や郷土書から探す
確率的には三割ほどだが、市町村史によっては、地形図に未表記の山名が記されていることがある。「地勢」や「自然」の項に記述されている場合が多いが、寺社関係のページも参照したい。山頂に秋葉神社があれば秋葉山という山名である可能性があり、金毘羅権現が祀られていれば琴平山、観音堂があれば観音山という山名かも知れない。
(3)山麓住民に尋ねる
当該山の麓の50代以上の地域民若しくは郷土史家に尋ねると、山名が判明する場合もある。これも仁淀川町の無名峰のケースだが、前述の国王山の所在地を地域民に尋ねていた際、それとは別に視界に入る気になる山があったから、山名が付いているのか否か尋ねてみると、爺ケ森だと教えて貰った。雨ケ森の椿山コース途中の側にある鋭鋒だ。
後日、文献を調べてみると、爺ケ森は藩政期の絵図にも記されていた。
尚、爺ケ森に登頂時、眼前に大きな虹が懸かっていた。無名峰ならではのサプライズだ(?)。
[独標点のない山の高度数値]
無名峰の中には、三角点も独標点もない山がある。その山を市販のガイドブックに載せる場合、極力高度数値を調べるようにしている。最も有効な方法は、地形図よりも縮尺が詳しい地図を入手することだ。国土地理院の場合は五千分の一の国土基本図、森林管理局(森林管理署の上位組織)なら同縮尺の森林基本図、都道府県や市町村なら都市計画図等が該当する。但し、全国土、全担当地域をカバーしている訳ではないし、市町村によっては頒布してないケースもある。
都会の大型書店では、森林基本図以外の図を販売しているケースもある。三枚目画像の摩耶山登山コースにある東山(陸軍高射砲台跡)の地図については、神戸の書店で購入した。山頂から東に派生する尾根には兵舎跡も残っている。山行記録はhttp://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-222811.html。
また、近年の国土基本図にはあまり記載されていないが、数十年以上前に作成された他の図には、地形図に記載されてない破線が載っていることもあり、利用価値は高い。街道踏査時にも有効だ。
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