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最近、ガイドで山に入っている時も、何となく頭から離れず悶々としています。
この間、自宅の本棚から、以前手にしていた本を読みなおしました。
「クマ問題を考える」田口洋美:著
2017年に刊行された書籍ですが、まさに今問題になっている、ヒトと野生動物の関連性について語られています。
クマの生態や食性、季節による行動域の変化など、色々な視点から彼らの行動について学ぶことが出来ます。
私が当時驚いたのは、クマ同士でも生存競争のため、殺しあうことがあるということ。厳密には、発情したオスグマが自分の遺伝子を優先して残すため、関係のないメスグマの子を殺して、メスの発情を促すということですが…
考えてみれば、厳しい環境のなかで起こっている自然の成り行きなのだと理解できました。
クマ以外でも、イノシシやキツネ、ニホンジカなどの中大型獣との軋轢は今に始まった事ではありません。
ヒトが農地を開拓していく過程で拡大した緩衝地帯(バッファーゾーン)が農業従事者の減少により、減ってきているから、ということは分かります。
日本の土地の7割は森林、つまり国土の7割にはどこでも野生動物が生活している、ということなので、いかに私たちが彼らと共存していくか?を考える必要があるわけです。
でも、実際に日常生活のなかで、山や森林に意識を傾けて生活しているヒトは1割以下もいない訳で…
ホント難しい問題です。
観光地でクルマの中からクマにエサを与えて…なんて言語道断ですが、我々登山者の行動も問われていると思います。
遠くに見つけたクマをカメラで撮影する行為、これはクマの警戒心を下げてしまうわけで、いわばヒトにとっての被害促進行為ですよね。
私も今後、個人やガイドで山に入る際は特に、野生動物との共生については色々と考えていくことになるとは思います。いや、考えざるを得ないでしょう。
ただ、ヒトは情報を伝え合う事が出来るので、私からでも伝えられることは何なのか?と考え続けたいと思います。
最後に、「クマ問題を考える」のあとがきから一部抜粋。
“今日のように、コンピュータやAI(人工知能)といった科学技術の進歩に相反して、野生と向き合う現場はマンパワーに頼らざるを得ない。
AIがクマたちの面倒を見てくれるわけではないし、また威嚇追い払いや駆除といった労働を変わってくれるわけでもない。私たちがこれを実践しなければ、だれも代わってはくれない。
そのような意味で、野生動物と向き合う現場は、文明生活のなかにポッカリと空いた聖域のように見えてくる。しかもそこは生と死の現場である。”
山を愛することと、野生動物への理解を深め、我々の行動を変えることは同義である、と言える時代になることを願うばかり。
・・・
引用:「クマ問題を考える 野生動物生息域拡大期のリテラシー」
著者:田口洋美
出版:山と渓谷社
ISBN 978-4-635-51042-4
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