サイズはエアライズ2とほぼ同じくらいあるので、ザックやその他の荷物を一人分のスペースに広げても十分な余裕がある。
そんな出し広げた荷物を端の方に追いやったり、ザックの上に乱積みして少しずつ床を拡げていく。
今まで優遇されていたコッヘルやストーブなどはツェルトから放り出され、突然ゾンザイな扱いに変わる。

風に晒(さら)されたコッヘルが小さくカタカタと震え、文句を云っているようだ。。。
辺りはすでに暗闇に包まれヘッデンがないと相手の表情さえ判らない。
さて [オ・モ・テ・ナ・シ] の準備も整ったところで…
陰陽師:「スペースできたので中に入りなさい。」
フレにぃ:「??」
陰陽師:「ツェルト イン(と云いながら指で指し示す)」
フレにぃ:「…イイ…デスカ?」
陰陽師はウンウンと頷(うなず)きながら…[こんな状況を見て見ないフリ出来る日本人はおらんやろ

さっきまで陰陽師が敷いていた銀マットをフレにぃに明け渡し、自身はもうひとつ持参しておいたサーマレストを敷く事にした。
なぜマットを2枚も…?と思うかも知れないが、本来は天狗のコルでビバーク予定だったためである。
ここなら地盤が土なので、マットは1枚あれば十分快適に眠れる。
普通なら地面にダイレクトに身体を横たえなければならないところを、このにぃ〜ちゃんはどこまでもラッキーな男である。

既に19:30をまわっていたので、食事の準備をしなければならないが何を食すべきか考えてしまう。
ハイドロパックに残っている水の量は概ね1.5ℓ。
明日は穂高岳山荘まで給水できないため、行動水として約0.9ℓ〜1.0ℓ残しておく必要がある。
利用できる水量から今夜予定していた献立は味噌ラーメンとアルファー米だったが、これだと味噌ラーメンに大量の水を使い、しかも自分ひとりしか食べることができない。※
(※極限状態なら1杯のラーメンをシェアする事も可能だが、いまの状況ではお互いアレだと思うので…

しかもフレにぃに何も与えず、自分だけが温かいものをガッツリ食べるなんて事は当然出来ない。。。
…で、二人が個々に温かいモノが食べられようにと選択した食材は…、早ゆでマカロニである。
1年ほど前に自宅の乾物入れでたまたま見つけ、それ以来山行する時にはジップロックなどに小分けして持って行くようにしている。
パスタのように長物ではないし、茹でる水量も僅かで済む。しかもパスタ系はエネルギー変換率が高いため非常に重宝している。
フレにぃに背を向け、ひとり黙々と入口に向かい準備を始める。
クッカーに刻まれた0.5ℓの目盛り線まで水を注ぎ込み、ストーブに火を入れる。
マカロニを取出し目分量でシェラカップ半分×2を量り取る。
湯が沸き出したら、そのマカロニをクッカーに放り込みおよそ2分程茹でる。
それぞれのシェラカップにはポタージュスープの素を開封し、あとは湯を注ぐだけである。
各々0.2ℓ程度の湯を注ぎ、そこに茹で上がって膨らんだマカロニを投入する。
スープパスタならぬスープマカロニの完成である。
今できあがったモノをフレにぃに差し出し、割り箸を与える。
フレにぃ:「!?!?…」
陰陽師:「食べたらエエよ。」
フレにぃ:「ヒェ〜…ナンデ〜? ア…アルガト…ゴざマス…」
こんな場所なのにヘッデンの灯に誘われて、足の長い蚊のような虫や蛾などが頻繁にやってくる。
食事中にも頭の上やカップの周りを飛び交い、顔に止まったりカップに落ちて水死したりする。
その度にフレにぃは「ヒェ〜…ナンデ〜?」という口ぐせフレーズを繰り返す。
どこで教わったのか不明だが [ナンデ?]という言葉は関東圏ではないような気がする。
簡素な夕餉(ゆうげ)が済み、後片付けの後にようやくGoogle先生が現れた!(^_^)v
さっそく容量の少なくなった本体にバッテリーを接続して充電しつつも、Google先生(翻訳)による異文化コミュニケーションという新たなフェーズへと突入していくのであった。(^^)/~~~
その(5完)へ続く

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