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2019年08月13日 22:47未分類全体に公開

誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完

 後片付けも終わり落ち着いたので、後はもう何もやることが無い…。
食後のコーヒーでも淹(い)れてやりたいが、あいにく水の残量もギリギリなので応対もできない。。。。
外では一段と風が強まり、ツェルトの壁面を押してくる。
そしてとうとうパラパラと風に煽られたような音を立て雨が降り出した。

 陰陽師が普段から使っているテントならフレームポールをセットするため自立する。
しかし今回は軽量化のためとビバークスペースを勘案してツェルトとした。
ツェルトの欠点としては基本的に自立ができない。
それはフレームポールが無いからである。
だいたいはツェルト本体の前後に専用ポールかストックで支柱を立て、その支柱を軸に左右に細引き(ガイライン)を引っ張りペグダウンする。
単純に正面×2本、背面×2本の細引きで地面に固定しているだけなので、あまりにも強い力が加わるとあっけなく倒れてしまう。

 雨風が吹きすさぶ中、倒れたツェルトを再建するのは極力避けたいので、押されている側の壁に背中を押し付けガイラインに余計なテンションがかからぬよう対処する。
陰陽師がそんな挙動を起こしても、フレにぃはぽか〜んとした表情でこちらを見ている。
そんなフレにぃに…[ 君もワシのようにウォールを押すように座りなさい ] とジェスチャーで促す。
強風域でのテント泊やツェルト泊などの経験があるのかないのか不明だが、ひとつ経験値が増えたのでは…(^^)(笑)

 さてツェルトの補強も済み就寝予定の21時まで1時間程度あるので、自己紹介を兼ねたコミュニケーションを始める。
お互いスマホを持ち、それぞれ翻訳アプリを立ち上げる。
フレにぃはどこの馬の骨のモノか判らない例のあのアプリだ。(^O^)
陰陽師は由緒正しきGoogle謹製の [ Google翻訳 ] である。(^^)(笑)

 まずはお互いの名前や年齢から…
陰陽師:「私の名前はY.I。年齢は##歳。」「君の名前と年齢は?」
フレにぃ:「名前はA.P(個人情報なのでイニシャルだけ)。年齢は24歳です。」
陰陽師:「いつ日本に来て、いつまでいるんや?」
フレにぃ:「日本へは今年の3月に来ました。 来年の3月までいます。」
陰陽師:「それじゃワーキングビザで来たのか?」
フレにぃ:「違います。観光だけです。」「1年かけて日本中を観光します。」
…と答えて地図を表示する。
そこには地図上に写真のサムネイルが表示されていた。
沖縄から始まり、屋久島、鹿児島(桜島)、博多、鳥取(大山)、広島(厳島神社)、愛媛(石鎚山)、京都、三重(伊勢神宮)、岐阜(白川郷)、そして長野と…順に解説してくれた。
奥穂高登頂後は一旦松本市の知人宅へ立ち寄り、数日間逗留するとの事。
そしてその後は北海道観光を満喫するらしい。。。。
陰陽師:「1年間も時間が作れるなんて、学生なのか?」
フレにぃ:「いえ、社会人です。」
陰陽師:「職業は?」
フレにぃ:「大工です。」
陰陽師:「家を建てる大工なのか?」
フレにぃ:「…、トイレ、バス、キッチンなどを作る大工です。(^_-)」
陰陽師:「??……ふ〜〜ん。そうなんか…。」
そのような専門大工がフランスにあるのか不明だが、日本で云うところの「造作大工(ぞうさくだいく)」的なものなのかも知れない。

 大まかな自己紹介と近況を説明し合ったところで、フレにぃがメルアドとSNSのアカウントを教えて欲しいと切り出した。
陰陽師は「SNS?…。 Google+、Facebook、Twitter、mixi、LINE…のどれがいい?」と…。
フレにぃは「ボクはFacebookやってるので、そのアカウントを…。」
就寝前の最後はFBアカウントとメルアドを交換して目を閉じた。

 翌朝は4時頃起床。
深夜は風が強く吹きツェルトが大きく揺れていたが、今はだいぶ収まり小康状態となっている。
雨も時折降ったり止んだりしていたが、小雨程度なのでしれている。
薄っすらと明るくなりだした外を覗くと、昨日と変わらぬ濃霧に近いガスが立ち込めている。
「何か喰うか?」と問うと、「朝飯は食べないのでいいです」と…。
じゃ撤収作業にかかろうかとそれぞれの荷物をまとめ始めるが、フレにぃは自分のシュラフを丸めて終了。。。
こっちは外部に出しっ放なしのコッヘルやガスストーブ、食糧等々大量にある。
ある程度収納できた時点でフレにぃと銀マットを外に出し、続いて荷を手渡していく。
そしてフレにぃのザックを手に取った瞬間衝撃が走った。
な、な、なんと軽いのか‼‼
片手で持ち上げ、前腕を伸ばしても重さを感じない‼
体感的に6〜7圈 重たくともせいぜい8圈
その後自身のザックを掴んだ時に悲しくて涙がこぼれそうになった事は言うまでもない。

 最後は外に出てツェルト本体とアンダーシートを畳み込めば完了である。
フレにぃにお手伝いさせるのも何なんで…「先に行ったらいいよ」と促す。
しかし、一宿一飯の恩義を感じてか「待ってます」と云う返事が返ってきた。
陰陽師(心の声):[気持ちはありがたい…。だけど…、だけどな…背中に背負ったこの荷物がオレたち二人を引き裂こうとするのだよ…(泣) だからさ…オレに構わず先に行ってくれ…]
そんな声なき声をグッと飲み込み「明るいうちに上高地に到着しないとだめだから、先に出発しなさい。」と説明する。
時刻は4:40過ぎ。 順調に進めば8時〜9時には奥穂に到達するはずである。
山行前にファミマで購入した、もっちりあんドーナツと手巻きソーセージドーナツ。
どちらも大好物だけど、そのうちの手巻きソーセージドーナツを手渡す。
フレにぃは待ってましたと言わんばかりにそれを握り締めると、逃げ入るように逆層スラブの……。(@[email protected])
イヤイヤ…(笑)…「アリガト…ござーマス」と爽やかに微笑み、逆層スラブに立ち込める霧の中へ消えて行った。(^O^)

 それから数分後、逆層スラブの中途半端な鎖を握り締めながら「チキショー‼ 何でこんなにザックが重いんや〜(泣) チキショー‼ チキショー…」と、泣き叫ぶ陰陽師の姿があった…。
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登録日: 2016/8/15
投稿数: 1072
2019/8/14 8:53
 RE: 誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完
onmyo-jiさん、おはようございます。
はじめまして。

貴重な体験をされましたね。
onmyo-jiさんの優しさと器の大きさを感じました。

フレにぃはきっと、帰国後にonmyo-jiさんのことを「命の恩人」として語り継いでくれていることでしょう。

願わくば、フレにぃも今回の経験から学んだことを今後に活かしてもらいたいものですね。
登録日: 2013/3/22
投稿数: 16
2019/8/14 12:15
 RE: 誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完
MonsieurKudo 様

はじめまして、陰陽師と申します。
コメント頂きまして、ありがとうございます。(^^)

貴重な体験…と云うより自分自身の中では有ってはならない経験だと感じました。
想定外の病気や怪我なら致し方ありませんが、空漠たる時間読みや装備不十分が原因での遭難は極力避けたいものです。
ただ外国人なので日本の山地図などの購入法が判らず、仮に購入出来たとしても日本語(漢字)で記載された内容を解読することもできないのでは…と考えます。
それが、この日記に登場する「簡素な線地図」に見て取れます。

一昔前のヤマ屋や山小屋のオヤジのように頭ごなしに上から目線で恫喝するのではなく、「何故このような状況に至ったのか…」と時間を遡って空想できれば、何となく見えてくるモノもあります。
そして今後のことを考え、できるだけ簡素に山の気象や自分の経験した危険なことなど説明しました。
数日後には北海道へ行くと云ってましたので、もし同じようなスタイルで登山されては困るので、北海道の山の話も掻い摘まみながら…(^_-)

器の大きさ云々…ありがとうございます。
しかし、あのようなシチュエーションであれば誰もが同じ対応をされると思います。(^^;)
特に日本人は優しい人が多いので…。
登録日: 2016/10/19
投稿数: 103
2019/8/14 18:26
 RE: 誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完
陰陽師さんこんばんは!

ほんと、なんと言うか頭が下がりますm(_ _"m)ペコリ

確かにその状況なら助けないわけにはいかないですよね!
でも当然の事をしたまでですから的にご謙遜されてますが、私だったら同じ事ができたかどうか・・・

陰陽師さんが居なかったら遭難してますよその方!
事の重大さが理解できてるのか心配です(・∀・;)

その後、Facebookでやり取りされてるんですか?
恩知らずでない事を祈ります🤞
登録日: 2013/3/22
投稿数: 16
2019/8/14 22:42
 RE: 誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完
aiko20160721 さんこんばんは(^^)/
コメントありがとうございます(^^)

 ええっと…あのぉ〜…(汗) 何というか…謙遜しているわけではありませんが、自分的にはそれほど大層な事と捉えていないのが本音デス。(^^;)
同じ状況に遭遇しましたら、どなたでも大小同異の対応をされた事だと思います。

 確かにあの地であの状況で一夜を過ごせば、いくらかの体力の消耗は避けられないかも知れません。。。
しかし、もしかしたら状況判断して後退するなどして少しでも風の当たらぬ場所へ探索&退避していたかも知れません。
要するにその場の状況により安全の確保を自分なりに考えていたかも…と。

 本人が事の重大さをどれほど感じているかは判りませんが、傍からとやかく云ったところで当の本人が気づかねば単なる「馬耳東風」で終わりますしね〜
何ともムツカシイところでもあります。はい…(^^;)

 投稿後記になりますが、ツェルト撤収後に奥穂へ向かう道中、奥穂側から進んできた最初の登山者に「道すがら外人の若者と会いましたか?」と問うと「会ってない」という返事が…!!(@[email protected])
その時ばかりは背筋に冷たいモノが走りました。
その登山者に背格好や身なりなど説明し、再確認するほどでした。
益々不安な気持ちのまま次に出会った登山者にも問いかけましたが、判らないと。。。
だんだん不安になり、「万が一の場合は天狗岳下降点と逆層スラブの2点を重点的に捜索しなければ…。」と真剣に考え始めました(^_^;)
3人目の登山者の方から「フランス人の青年でしょ?出会いましたよ(^^)」と云われた時にはホント安堵しました(^o^)
私もその方に助けられた気分になり、シンドイですがやっと楽しいソロ登山に戻れました。!(^^)!

 FBでのやり取りについて、aikoさんにだけコッソリお教えしますと…
穂高岳山荘のテン場へ到達してからスマホを機内モードから通常モードに変えると、大量のメールなどに混じって、FBのメッセンジャーからメッセージが届いていました。
そこには「こんばんは! 生きている上高地に到着しました! 借金があります、ありがとうございました!」(原文のまま) と、ヘンテコな翻訳文が載っていました。(^o^)
登録日: 2016/10/19
投稿数: 103
2019/8/14 23:36
 RE: 誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完
うわぁ、良かったですね〜!
無事に下山できたみたいで♪
私もホッとしました^_^

きっと何か違う形で返って来ますよ♪
今回の善行が(´v`)ニィ
登録日: 2013/3/22
投稿数: 16
2019/8/15 0:21
 RE: 誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完
aikoさん

あはは〜〜 知人に面白半分でこの話をすると…「そんな善人ぶった事して今度は富士山でも噴火したら大変やから止めてくれ!」と異口同音に云われます
(笑)
だって陰陽師のサブハンドルは「悪魔の化身」「ダークサイドからの使者」等々メチャクチャな云われ方なもんですから(^^;)
未だに御嶽山の噴火は半分私のせいみたいに扱われております(;_;)

因みに自慢ですけど、子供の頃から「(悪運を)持ってるヤツ」なので、今更悪運がひとつ増えたところでね〜…(^^;)
登録日: 2016/10/19
投稿数: 103
2019/8/15 6:00
 RE: 誰も来るはずも無い地での訪問者(5)完
陰陽師さん

な、な、なんと言う言われよう!
(◎_◎;)

これからも山行記録、日記、
見守らせて頂きまする!

除霊~~\(-ω- )三( -ω-)/~~浄霊

(>人<;)


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