避難小屋での夜の話

おつかれさまです。

2018年秋の話です。

自分は冬季以外は常にソロなので、無人の避難小屋に一人で泊まることも時々あります。一人で怖いとか寂しいとかはあまり感じない性格なのでそういう夜も平気なのですが、何度か記憶に残る夜もありました。そんなある夜の思い出話です。

前から清水尾根を登りたいと思っていて、2018年の10月、下の廊下に行った際に歩いてきました。扇沢駅から入り、2日目のお昼前に欅平駅到着、そのまま祖母谷温泉方面に向かい清水尾根に入りました。その日のうちに白馬の小屋まで行くのはさすがに無理なので、避難小屋めざして黙々と尾根を歩きました。

天気予報通り午後から雨が降り始めましたが、清水尾根は清水岳の手前までずっと森の中を行くのでそれほど濡れずに行けました。15時過ぎくらいだったと思いますが水場を過ぎるとほどなく小屋が見えました。

阿曽原温泉小屋から避難小屋までは結構な行程なので（朝に佐々木さんに避難小屋まで行くといったら最初は「無理だよ。」と言われたけど、自分の姿をもう一度見て「いってらっしゃい。」と言ってくれた。）ここまで来たぜという充実感がありました。

予想通り誰もいません。祖母谷の橋を渡ってから誰にも会っていないし、自分が欅平駅を出たのも昼頃だし、自分は歩くのが速い方だからこの後誰かが来る可能性もまず無い。今日は一人か、そりゃそうだよな、とか考えながら荷物を降ろし、靴を脱いで小屋に上がりました。

阿曽原温泉小屋の大仏さんたちがこの小屋に泊まって草刈りをしているのは知っていたので、そんなに寂びれた感じの小屋では無いだろうと予想していましたが、その通りで布団や寝袋も畳んでおいてあり、人気のある小ぎれいな小屋でした。

夕飯を食べ、横になったすぐあとにそれは起きました。金縛りというか、上からものすごい圧で押し付けられて体が全く動かない。

自分がどういう動作をしたのかまでは覚えていないのですが、入口に目をやると白いお面（多分昔の白いきつねのお面）を被った、紺色の絣の着物の男の子が土間の所で円を描きながらぴょんぴょん跳ねている訳です。キョンシーみたいな感じで。

「あーそういう事か。」と思いましたが、とにかく体が上から押さえつけられていて指一本動かせない。そのうち顔の真横に黒い長髪の女性が近づいてきました。顔は真っ黒で見えない。至近距離なので服装は分からなかった。母親なのかと思った。そしたらさっきのお面の子がその女性の肩口から俺をのぞき込むようにしてこう言ったんです。

「今刺しちゃえば？」

自分はそれを聞いてこう思いました「あー、確かに今の自分は指一本動かないからこんな女子供でも何にも出来ない。体が動けばこんなの片腕で十分なんだけどな。。」と。その時は本当に刺されると一瞬思っちゃったので恐怖がよぎりましたが、すぐにそうはさせるか俺を舐めるなと怒りが湧いてきて体のコントロールを取り戻そうともがいていたらブワゥと体が動くようになり、その2人も消えました。

その後起き上がってヘッデンで小屋の中を一通り見たり、入口を開けて外を見たりしましたけど、まあ、何も居る訳は無いです。まあ、こんなのちょっとしたイベントに過ぎないと思い、また眠気が襲ってきたのでそのまま眠りについたという想い出話でした。


ここまでの話は無くとも、なんか寝にくいという事は前からあったので、今は出羽三山神社の清身守をザックに入れて行くようにしています。これを身に着けて寝るようにしてからは、なんか寝にくいという事は起きなくなりました。


そんな感じで。

コメント

junbader

dama3様
初めまして
大変リアルでゾッとしたお話でした
ヤマレコの中でも霊感のある方が時々おられますね
実は金縛りは今まで何度も遭ってます
ある夏か初秋の頃、寝ついてまもなくと思いますが
突然コオロギが鳴き始め、それをきっかけに金縛りに遭いました
目は開くし、キョロキョロも出来ましたが、幽霊のようなものは見ませんでした
体は動かないし、声も出ませんでした
が、不思議と霊的なものは感じませんでした
僕自身、霊感ゼロなんで、こういう怖いお話好きです
dama3様が見たものはいったい何だったんでしょうね

dama3

junbaderさん、はじめまして、経験談、コメントありがとうございます。
いったい何だったんでしょうね
夢ではなかったように自分は思うし、特に幽霊的なものだと決めつけている訳でもないし、今となっては一つの想い出です。でもまあ、山の中を一人で歩いていると普段目に見えているものが全てではないということを実感することも間々あります。時間というものについても考えたりします。気づきにもなるし楽しいですね。全部俺の勘違いというオチかも知れませんが。

madahiriu

初めまして。
2017年の夏に白馬から祖母谷に下った時に、この避難小屋に立ち寄りました。
小ぎれいな小屋だったように記憶しています。
泊まってはいませんが、連れが「ここは出るらしい」と言ってました。
やはり、出るのか！
びっくりするほど霊感がなく、山でこういう怖い目には遭ったことはないのですが、
怖い話は大好きです。
またなにかあったら、ヤマレコにあげてください。

dama3

madahiriuさん、はじめまして、コメントありがとうございます。
白馬から清水岳の稜線歩きは最高ですよね。あの道はとても良いです。下って温泉入ってトロッコ列車で宇奈月、富山でお寿司コースでしょうか最高ですね。
この日記を書いてみて、コメントいただいて、自分はこの小屋の評判を落としたり皆さんが怖いという意識を持たれたりするかも知れないという配慮が足りなかったのかと思いましたが、まあ、そのまま書いただけですので、さらっと楽しんでいただけたら幸いです。