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Day11 : 2024.8.7
薬師峠から双六小屋
時間 10:33
距離 20.3km
登り 1587m
下り 1331m
今回の縦走で初めて熟睡したな...。
「午前1時」にセットしたFENIX 7X Proの振動で目覚めた。やっぱり昨日の行程が相当堪えたのだろう。昨日の夕方、ヤマテンから「8月7日から9日にかけて中部山岳が荒れる」という警告メールが流れてきた。できるだけ雨に降られない可能性を上げるため、午前3時の行動開始を寝る前に決めた。今日のルートは昨日より長いが、以前に全部トレースしたことがあった。なので気持ち的には大分余裕があった。そして、今日の幕営予定地の双六小屋までくれば、ゴールできるイメージがぐっと高まる。
真っ暗な中、午前3時過ぎに薬師峠を出発した。先ずは太郎平小屋までの木道を歩く。さすがにこの時間にスタートする登山者は皆無だった。3時半前に太郎平小屋に到着した。ここからルートはぐっと寂しくなる。道は特に悪くはないのだが、真っ暗な中1人で歩くのが不気味だった。
神岡新道との分岐を分けて、日の出の少し前の午前5時過ぎ、北ノ俣岳(2661m)に登頂した。雨はまだ降っていなかったが、空は雲に覆われ、いつ雨が降ってもおかしくないようだった。しかし、北ノ俣岳で日の出待ちをしていると、正に太陽が上がってくるタイミングでミストのような雲が切れ、周囲の山並みがキレイに見え始めた。昨日苦しんだ薬師岳、またこれから向かう方向には槍ヶ岳もしっかり姿を現した。幻想的な光景に思わず見とれてしまう。
少し休憩した後、黒部五郎岳へ向けて行動を再開した。このルートは藪を掻き分けて進む所が多く、昨夜雨が降ったのか、あるいは朝露なのか、ズボンも靴下もびっしょりになってしまった。しばらく歩くと、すぐに赤木岳を越えた。この赤木岳は、不思議だが山頂を越えた何でもないところに山頂標識が設置されている。赤木は山よりも赤木沢の方が有名かもしれない。登山を趣味にしてから1年程経ったころ、折立から右回りで、雲ノ平、水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、黒部五郎岳、薬師岳と周回した。2泊3日のタイトな行程だったので、地図を見ながら「薬師沢小屋から赤木沢を遡行してショートカットできないかな?」と画策した。それで赤木沢の状況を薬師沢小屋に聞いてみようと、雑誌に載っていた番号に電話をした。するとその番号は現地の番号ではなく、町中の予約センターの番号で、電話に出た女性は何も知らなかった。薬師沢小屋は電波が全く入らず、現地には電話がないらしい。その女性に、この辺りの小屋を牛耳っている太郎平小屋に電話するように言われた。早速太郎平小屋に電話すると、多分小家主のような声色の男性が電話口に出た。何も知らない登山初心者の僕が無邪気に「赤木沢は普通の登山者でも通れますか?」と質問すると、「通れません...」と呆れ声で一蹴された。しかし、今回一緒に八ツ峰上半をやったTbさんが数日後に赤木沢を遡行し、「全然余裕ですよ!」と、沢装備さえあれば問題ないと教えてくれた。
黒部五郎岳への登りがスタートする手前で、ずっと履いていたレインウェアのズボンを脱いだり、びっしょりになった靴下の水を搾るために少し休憩した。その時、後ろから若い男女のペアがやってきた。本日初めての登山者との遭遇だった。スタートした時間を聞くと、太郎平小屋泊で軽荷とはいえ、僕より1時間ほど遅いスタートだった。軽く「負けた...」とショックを受ける。ここで彼らにパスされた。
黒部五郎岳の肩への本格的な登りが始まる。何となく少しムキになり、スピードを上げて登っていく。登りが始まって直ぐ、天気がよくなりつつあり、背後に広がる稜線がキレイに見え始めた。その辺りの岩に腰掛けて、例のカップルが写真を撮ったりして休憩し始めた。その隙に2人を抜き返し、そのまま一気に肩までいいペースで登り続けた。
午前8時15分頃、黒部五郎岳の肩に到着した。黒部五郎岳へは、ここの道標辺りにザックをデポし、軽荷で登ることができる。当然デカザックをデポし、山頂へと登っていく。5人くらいの年輩のパーティーに途中で追い付き、後ろに付きながら、10分ほどで山頂に到着した。山頂からは雲が多いながらも、辺りの山々が一望できた。とにかくでかい薬師岳、赤牛岳も辛うじて雲から姿を見せていた。水晶岳から鷲羽岳、そしてその手前には雲の平山荘も確認できる。例の5人パーティーに写真を撮ってもらい、また彼らを撮ってあげ、山頂を後にした。
8時40分頃、黒部五郎岳の肩に戻ってきた。ここから黒部五郎小舎を目指す。黒部五郎岳から黒部五郎小舎までは、知っての通り、ルートは2つある。肩から行く一般的なカールルートと、山頂から直接行く玄人向けの稜線ルートだ。カールルートは3年前に通ったことがあったので、稜線ルートをできれば行きたいと思っていた。しかし、ちゃんと地図を見ておらず、稜線ルートは山頂から続いていることに、肩に戻ってきてから気が付いた。稜線ルートを行くなら、肩に荷物はデポできないということだ。しかも、黒部五郎小舎まで、カールルートだと1時間半ほどなのに対し、稜線ルートは2時間半以上かかる。天気は回復傾向だったとはいえ、今日のゴールの双六小屋にはできるだけ早く着かないと、ヤマテン予報が正しければ危ない。残念ながら、もうカールルートで行くしかないと判断した。
カールルートは序盤はそれなりの傾斜の下りたが、それが落ち着くと、とにかく美しい登山道になる。至るところに小川が流れていて、とても気持ちいい。そこで水の補給もできる。しかし、高橋庄太郎氐の「北アルプス テントを背中に山の旅へ」によると、このカールには熊が出没するらしい。カールに入る直前に熊スプレーをいつでも発射できる体勢を整えた。景色に癒されながらも、かなり疲れがたまっていたのか、黒部五郎岳山頂から小屋まで1時間半とは思えないくらい遠く感じた。まだ時間が早かったが、黒部五郎小舎で軽食を食べられることを期待しながら、何とか歩き続けた。
ちょうど午前10時頃、黒部五郎小舎に到着した。小屋は開けた広い平らなスペースに建っている。すっかり天気は回復し、太陽の光をたっぷり浴びることができた。小屋には子供連れの複数の家族のグループや、自分と同世代のオッサンのデュオがいたりと賑わっていた。テーブルに荷物を下ろし、濡れた靴下を乾かそうと、靴下を脱ぎ、エクイリビウムからテントサンダルに履き替えた。幸い軽食はやっていて、悩んだ挙げ句、食べ過ぎのカレーは控え、親子丼を注文した。この小屋は水が豊富で、ひねれば水が出る蛇口がある。ありがたいことに無料で飲み放題だ。また、水で冷やされた冷たいゼリーも購入することができる。ここでたっぷり休憩し、今日の幕営地の双六小屋へと出発した。
例の折立からの縦走中、三俣山荘から三俣蓮華岳へ登り返している時に、年輩の男性登山者が頑張って登っている所に追い付いた。「どちらに向かうんですか?」と声を掛けると、「双六小屋です」と、黙々と登りながらうつむき加減で答えてくれた。その当時はまだ山の位置関係が頭に入っていなかったので、「双六岳も近いんだなぁ」と思ったことを思い出した。その時は、三俣蓮華岳から黒部五郎小舎までが、下りであるにも拘わらず、すごく遠く感じた。(雲ノ平から水晶岳に寄って、その日最後の歩きだったので当たり前だが...)。今回は登りになるのでもっと辛いはずだし、さらに三俣蓮華岳から双六小屋まで頑張らなければならない。
三俣蓮華岳への登り返しは、最後に何度か騙しがあったが、意外に楽に終えた。時刻は12時を少し回ったところだった。今日の天気予報はかなり悪かったものの、ここまで何とか雨に降られずに歩けていた。しかし、かなり雲が多くなってきていて、降られる前に双六小屋に幕営できるか怪しくなっていた。この三俣蓮華岳と双六岳を結ぶ区間は、北アルプスの北部と南部をつなぐ要衝だ。そのせいか三俣蓮華岳は今回で4回目だったので、あまり長いはせずに直ぐに双六小屋へとスタートした。
この三俣蓮華岳から双六小屋の間にはルートが3つある。今回は急いでいたのと、双六岳にも最近よく来ていたので、巻き道ルートを選択した。一番傾斜が緩く、早く双六小屋に到着できるルートだったからだ。1年ほど前の6月に通った時は残雪があり、恐ろしいトラバースもあったが、この時期は楽チンな筈だ。
完全に間違っていた
思った以上にアップダウンがあり、「まさか、あれ登り返させるんちゃうやろうな?」と遠くから見えた猛烈な急登を、思いっきり登り返した。「これ直登ルートの方が楽ちゃうか?」。それでも、やはりコースタイム通り1時間ちょっとで双六小屋への最後の下りになった。幸い天気は何とか持ちそうだ。最後の結構嫌になる下りを下りきり、双六小屋に到着した。時刻は午後1時半過ぎだった。
ここは受付の前に先にテントを張ってもいいので、雨に降られる前に急いでテントを張った。何とか今日もそれなりのロング行程を、無事に歩き通すことができた。そして、やっとゴールできるかな?という実感が沸いて来た。寝床が整ったので、直ぐに小屋に受付しに行った。この小屋は水が豊富で、商業的にも力を入れていて、長期縦走者には本当にありがたい。テント泊も特定日は予約が必要だが、幕営地はかなり広く、予約は何とか取れるだろう。黒部五郎小舎で結構しっかり食べていたので、それほどお腹は空いていなかったが、食べれる時に食べられるだけ食べるメンタリティーになっていた。軽食を2食も食べ、好きなだけビールを飲みながら、ゴールが近づいてきたという感覚をひしひしと感じていた。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLNdyNlVYCXFUA90Cus7t558HScbVmhgZl
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