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Day13 : 2024.8.9
南岳小屋から穂高岳山荘
時間 5:17
距離 4.3km
登り 789m
下り 762m
今日は更に短い行程なので、午前4時40分の遅いスタートとした。初めて大キレットを歩いたのは登山を始めて1年くらいの頃だった。びびりまくりながら、獅子鼻から下り始め、のっけでむちゃくちゃな道間違いをしたのが懐かしい。大キレット越えは確かに危険だが、上手い具合にトラバースが付けられていて、見た目よりは簡単だ。少し気を付けた方がいいのは、この時期に2年連続ここを通ってみて、2年とも外国人の団体に出くわしたことだ。確か2023年は中国人で、今回は韓国人だったと思う。それほど登山に慣れている感じでもなく、英語もほぼ通じなかった。思いもよらない事故に繋がる可能性もあり、適度に距離を空けて歩いた方がいいと感じた。
2つの鉄梯子、最低コルと歩き、6時頃に長谷川ピークに到着した。ここは以前は登山道から北穂高岳を見て右に少し入るので、気付かずスルーしやすかった。しかし、最近登山道に面した岩に「長谷川ピーク」と書かれた茶色の道標が付けられ分かりやすくなった。当然右に入り、逆層スラブのような岩を少し登り、「Hピーク」の文字を確認した。岩はフリクションが効き、逆層だが特に危ない感じはしない。
A沢のコルを越え、6時40分頃、飛騨泣きにやって来た。ここも以前は分かりにくかったが、しっかり道標が付けられ、まず見過ごすことはないだろう。ここは北穂高岳側からくると下りになり、クライムダウンする時に足元が見えにくく、かなり怖い。しかし、登りの場合はグイグイ登れて楽しい。
飛騨泣きを越え、最後の急傾斜を登り切り、北穂高小屋にやって来た。時刻は7時過ぎで、大キレット越えに費やした時間は2時間半ほどだった。北穂高小屋は、小屋の前のスペースが気持ちのいいテラスになっている。そこからは、渡ってきた大キレット越しに、槍ヶ岳を含む絶景を楽しむことができる。ザックをベンチに下ろし、早い時間なので軽食はまだなのは分かりきっているのに、一応小屋に入って確認する。「カップラーメンとかならありますが...」。他の小屋でも何度も聞いたセリフを聞き、「なら大丈夫です」と同じ答えを返す。
外に戻ると、テラスの奥で小屋番の女性が嬉しい物を販売していた。一杯一杯丁寧に淹れる挽きたてのコーヒーだ。通りすぎる登山者へのねぎらいなのか、小屋宿泊者へのモーニングなのか。こんなありがたいサービスはないと感じた。しかも一杯500円で、こんな高所なのに格安だ。速攻注文しに行った。しっかりと待たされ、白い上品なコーヒーカップに注がれたコーヒーを運んできてくれた。テーブルで飲むのはもったいないので、槍ヶ岳を真正面に望むカウンター席に移動する。期待と見た目通りの美味しさで、大満足だった。ここで、もうこの時間から出来上がっている宿泊者達と心地のいい会話を楽しみながら、たっぷり休憩した。
今日はルートは危険だが、思いっきりショートの行程なので、ゆっくり行動を再開した。小屋の裏手が北穂高岳の北峰の山頂で、ここに引っこ抜ける山頂標識がある。これを担いで写真を撮るのがお約束だ。ここから何気なく歩いていくと、やたらとテントが張れそうなスペースにやって来た。「なんか完璧なビバーク地やな...」。しかし、直ぐに「あー!これが北穂高小屋のテント場か!」と意味を理解した。しかし、ここに僕がいるということは、既にルートをミスしているということだった。気付かないうちに、南稜分岐で南稜(北穂高岳の一般ルート)を下ってしまっていた。ちなみにこの南稜分岐が北穂高岳の南峰のようだ。
結構下ってしまった道を登り返し、奥穂高岳方面へ軌道修正した。実はここから涸沢岳までのルートは、こっそり大キレットよりも危険な道だ。初めて大キレットを通った時は、アドレナリン全開で大キレットを通過し、その勢いそのままに、全集中で通り抜けた。
このルートも個人的には涸沢岳から来る方が難しいと思う。涸沢岳の稜線からルンゼを下りる所は、登りだと問題ないが下りる場合は全集中だ。やたらと名前が仰々しい奥壁バンドを越え、最低コルを通り、鎖がある危険な登りをこなし涸沢岳への稜線に無事に乗った。厳冬期に涸沢岳西尾根からこの稜線に乗った時は、やれやれと一息付けたことを思い出した。
それなりに安心感のある稜線を歩き、涸沢岳直下にやって来た。ここに謎に涸沢岳の道標があるが、道標から左に上がったところが本当の山頂だ。今回もしっかりと山頂を踏んでいく。山頂からも直接穂高岳山荘へと下りる道が付けられているので、それほどロスはない。山頂からは、今日の幕営地の穂高岳山荘の建物を見下ろせ、その先に奥穂高岳、右手にはジャンダルムが見える。左手には前穂北尾根の稜線、振り返れば歩いてきた北穂からの縦走路、その左奥には槍ヶ岳も見える。超景色だ。時刻はまだ9時40分だった。
10時ぴったりに穂高岳山荘に到着した。ここの幕営受付の作法は知らないと無駄に時間を使う。各区画には地面に番号が書かれたタイルのようなものが埋め込まれている。番号を頭に入れ、自分で空いている所に先にテントを張る。山荘に近い所はどこも狭く、ガイラインをちゃんと張るのは不可能だ。張り終わったら、小屋内の受付の列に並ぶ前に、手前の棚にある幕営届けを記入する。そして、受付に行き、幕営届けと共に何番にテントを張ったのか伝える。
この山荘は恐らく北アルプスのリアル山小屋で唯一クレジットカードが使える。とてもありがたい。また、以前からテント泊者も夕食のお弁当を注文できたが、今年から山荘泊者に混じって、食堂で夕食が食べられるようになっていた。もちろん夕食を申し込んだ。食料は余っていたのだが、山荘で夕食を食べるは縦走の楽しみの1つだったからだ。
たっぷりと時間があるので、今日も奥穂高岳に行ってもよかったが、山荘でダラダラする誘惑に負けた。小屋の土間のテーブルに座り、好きなだけビールを飲む。軽食もカレーを食べた後に、さらに担々麺も平らげた。夕食は特に目新しいものはなかったが、ご飯とお味噌汁はお代わり自由で、またそこでも何度もお代わりした。食べても全く太らないのも長期縦走のいいところだった。僕は身長175cmで普段67kg位だが、縦走後には5kgほど体重が減っていた。
明日はいよいよゴールの日だが、一般道最難関ルートを重荷で越えて行く。ただ天気もいい予報で、双六小屋辺りから元気が溢れて来ていたので、全く不安はなかった。
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