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Day12 : 2024.8.8
双六小屋から南岳小屋
時間 7:25
距離 11.3km
登り 1283m
下り 841m
昨日でロングの行程は終了した。ここから先は危険な箇所はあるものの、ショートでコースタイム対比速く歩けることが分かっている。縦走中の標準の午前4時に双六小屋をスタートした。
のっけは樅沢岳へのしっかりした登り返しだ。さすがに人が多いエリアだけあって、自分より少し先行している男性ソロの姿が前方に見えた。4時40分頃、樅沢岳に登頂した。樅沢岳は百高山にも選ばれる、かなりどっしりした山だ。双六小屋からすぐなのだが、200mの登り返しがキツく、西鎌尾根を通る行程でないと、足を伸ばすのが億劫だ。山頂標識は登り返しが終わったすぐの所と、もう少し先に進んだ所の2か所にあった。先ほどの男性ソロをここでパスした。
今日も朝方は雲が多かった。樅沢岳を少し越えた所でライジングサンを迎えた。雲にまみれながらも、いつもの煌々とした太陽の「赤」を拝むことができた。2023年に焼岳から北アルプス南北全踏破をした時は、西鎌尾根を下りで使った。登り返しもあるが、基本下り基調なのに、ものすごく体力を消耗した記憶が強く残っていた。今回は登りなので、「どれだけ疲弊するんやろうな...」と、びびりまくっていた。今日の核心は西鎌尾根になるだろう。
いい意味で、完全に間違っていた。
それは樅沢岳から少し行った硫黄乗越でビデオを撮っていた時だった。後方から地面を滑り下りるような物凄い音が聞こえた。驚いて振り返ると、先程とは違う男性ソロが猛烈な勢いで急坂を駆け下りてくる。「なんか恐ろしいスピードやな...」。僕はゆっくり歩くつもりだったので、当然ここでパスされる筈だった。硫黄乗越にあっという間に下りてきたのは、年の頃30代とおぼしき痩せたアスリート体型の登山者だった。少し会話をすると、体調を崩した友達が先に下山し、新穂高で待っているので、急いでいたらしい。昨日はどうしても行きたかった水晶岳に双六小屋から1人でピストンしたそうだ。今回の行程やこれまでの山行を聞くと、中々いないレベルの猛者のようだった。しかし、アルプスは殆ど来たことがないらしく、地元の山口県の右田ヶ岳に何度も何度も登っているらしい。僕が親不知から縦走を続けていると言うと、興味を持ってくれ、僕の歩くペースに合わせて歩いてくれた。思いの外話が弾み、2人で楽しく話しながら縦走することになった。これは実にありがたかった。西鎌尾根はかなりきつくなると覚悟していたが、話しながら歩けたお陰で、殆ど苦もなく歩き通せてしまった。途中で高校生の山岳部の団体に出会ったが、軽荷の彼らを、デカザックを担ぎながらドンドン追い越して行った。
あっさりと槍ヶ岳山荘に到着した。山荘の外のテーブルにザックを下ろし、2人で槍ヶ岳山頂への身支度をする。この猛者はYAMAPネームをnblueyaさんといい、かなり若く見えたが40代だという。槍ヶ岳は初めてで、少し不安を感じていると言う。僕も最初そうだったが、「槍ヶ岳山頂への登山道は、小学6年生程度の運動能力があれば全く問題ない」ことを説明した。ましてや、今までの山行歴からすると、みんなをドンドン追い抜くペースで歩けるはずだ。
ヘルメットを装着し、山頂へとスタートした。幸い余り渋滞はなく、彼が登れることは分かり切っていたので、結構な本気ペースでドンドン登っていった。結局、約10分で山頂に到着した。山頂ではたっぷり時間を使い、彼はマニアックに祠の裏側の写真を撮っていた。「ここを撮る人はあんまりいないと思うんですよね(笑)」と言いながら。下りは少し渋滞していた。3人のグループが慎重に下りていたからだが、彼らは槍ヶ岳山荘のボランティア医療スタッフだった。医療と言っても、登山者への簡単な対応しかしないので、特に資格は必要なく、2泊3日くらいの短期で募集があると言う。下りはゆっくり下りたが、20分ほどで山荘に戻ってきた。
nbluyaさんはアルプスの経験がそれほどないので、先に下山した友達が彼に細かく下山ルートの指示を伝えていた。それによると、飛騨乗越で飛騨沢へ分岐するとのことだった。僕と歩くのを気に入ってくれたようで、「もう少し着いて行っていいですか?」と言われたので、「南岳新道からも新穂高に抜けることは可能ですが、結構大変な道ですよ」と伝えた。飛騨乗越で分岐する方が、時間的にもかなり速いだろう。結局、できるだけ早く友達と合流してあげた方がいいということで、彼とは飛騨乗越でお別れとなった。
飛騨乗越から今日の幕営地の南岳小屋を目指す。このルートは、大喰岳、中岳、南岳と3つの3000m峰を越えていく実に気持ちのいい縦走路だ。久々にソロに戻り、各ピークでスマホでビデオを撮りながら、気ままに歩いていく。残念ながら南岳に着く頃には完全にガスってしまっていた。ここまで来れば、今日の行程はもう終わったも同然だった。南岳小屋へ一気に下り、相変わらずガラガラのテント場に到着した。時刻はまだ11時半頃だった。
いつ雨が降ってもおかしくなかったので、さっとテントを張り、小屋に受付をしに向かった。南岳小屋は登山者で混雑することもなく、静かで居心地のいい小屋という印象だ。今回もそのイメージを裏切らないでいてくれた。受付を済ませ、まずは軽食を食べようと、前にも食べた槍カレーを注文した。ルーから毎回作るような本格的なカレーで、かなり旨い。当然ビールも買い、しばらく受付前のテーブルで至福の時を過ごす。テーブルの奥には蛇口があり、天水だが水も調達できる。また、コンセントも用意され、30分100円程度で充電できる。また、テント泊者もお弁当を注文することができ、当然注文した。
テントに戻ると、一旦雨が降り始めた。丁度いいタイミングで、テントに当たる雨音を聞きながら、軽い昼寝にありつけた。昼寝から目を覚ますと雨は上がっていて、その隙にさっき注文したハンバーグ弁当を受け取りに小屋へ向かった。ビールも買い込み、テントの中でおいしく夕食をいただいた。
黄昏時になり、少し雲が切れて来ていたので獅子鼻の方へ歩いて行った。意外に登山者で賑わっていて、眼前に広がる大キレットをみんなで眺める。雲が切れて北穂高岳の姿が露になる度に歓声が上がった。常念岳も見え始め、思いの外楽しい時間を楽しむことができた。「さあ、明日はいよいよ大キレットだ」。北アルプス南北全踏破、終盤の核心の始まりだった。
北アルプス南北全踏破2024八ツ峰Included: https://www.youtube.com/playlist?list=PLNdyNlVYCXFUA90Cus7t558HScbVmhgZl
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