災害ボランティアは、どこか山に通ずるものがあるように思う。
今後の自分への備忘録的なアドバイスの意味を込めて、書き残しておこうと思う。
なお、決して災害ボランティアの経験が豊富にあるわけではないので、そのことは最初に免責しておきたい。
【事前の情報収集】
山へ実際に入るまでには、事前の情報収集が欠かせない。
登山口とそこまでのアクセス、水場の有無、山行ルートの距離と所要時間など、事前の情報収集を欠いては「安全登山」をとても謳うことはできない。
災害ボランティアについても、事前の情報収集は不可欠である。
災害ボランティアの受入れの対象は災害ボランティアセンター(以下、「ボラセン」という)によって異なるが、「市内」であったり「近隣市町村」であったり「県内外問わず」であったりする。
また、災害ボランティアセンターへどのようにして行くかも重要な点である。
今回、茨城県では茨城県が設置した常総市のボラセンへ向かったが、浸水による通行止めなどの交通規制が各所であり、通常のルートでは向かえなかったため、それらを避けて向かう必要があった(当然といえば当然だが)。
スマートフォン持ってて良かった。
さらに、ボラセンによっては必要な道具・装備の案内や、不足している支援物資の持参の呼びかけなどがあったりするので、この意味でも情報収集は重要である。
【謙虚な姿勢で臨む】
山に対して傲慢な態度で臨むことは、遭難を招きかねないため謙虚な姿勢が必要であるが、災害ボランティアについてもこの姿勢は大事だと思う。
まず念頭においておきたいのは、復興における主体は被災地域の住民、すなわち被災者であり、ボランティアはあくまでサポート役だ。
だから、ボランティアである自分達が主役であるかのような振舞いは厳禁だ。
また、家や財産が被害を受け、中には家族を失ったりして心身にダメージを受けている被災者に対し、配慮を欠く行動も厳禁である。
サポート役としての立場をわきまえた、謙虚な姿勢がここでも求められると思う。
また、災害ボランティアセンターが立ち上がると、ついどんなボランティア作業があるのかとか、ボラセンまでどのようにして行ったらいいか、支援物資は何が必要かなど問い合わせてみたくなるが、直接連絡を取ることは控えておきたい(中には連絡を欲しいとするところもあるが)。
ボラセンの職員が平常時と同じような状況で仕事を行えているはずはまずなく、被災者からボランティア要請を受けたり、その要請に応えるための手続きを行ったりとバタバタしており、そこへ被災者でもない個人が問い合わせを行えば、ボランティア要請をしたい被災者が連絡を行えなくなったり、ボラセンの仕事が滞ってしまう一因になりかねないからだ。
ボラセンの仕事とは、災害ボランティアの受付だけではないのだ。
「せっかくボランティアへ行きたいと思ってるのに」。
そういう声もあるかもしれない。
だが、ボランティアはあくまでサポート役だ。
サポート役が主役の行動を妨げてしまってはサポートになっていない。
ボランティアが人の善意で成り立つことは事実であろうが、だがしかし善意の押し付けはあってはならない。
善意は押し付けるものではない。
自らの善意が、被災者の生活再建よりも優先されるべきものであるわけがないからだ。
優先順位を混同してはいけない。
【ヘッドライト】
山における必須アイテムの一つ、ヘッドライト。
日帰り山行であっても必須の道具である。
今回、栃木県では、床上浸水のあった被災者宅にて、流れ込んだ泥や草の除去に従事した。
前日までに、他のボランティア有志によって浸水した家財や畳は運び出されてあったので、この日は床下に溜まった泥の除去となった。
濡れた床板をバールで剥がし、床下の泥の除去にあたる。
バールは一緒に被災者宅を訪れた他のボランティアのものだったが、バールがこれほど有用だとは初めて学んだ。
しかし、部屋の蛍光灯が切れているのか、それともそこだけ電気がきていないのか、どうにも部屋が薄暗い。
これでは、泥がどの範囲にどの程度残っているのかが分かりにくい。
こういうときは、こんなこともあろうかと準備しておいたヘッドライトの出番だ。
山岳用のヘッドライトは軽量・強力・コンパクトで、実用性もさることながら携帯性が抜群だ。
そして何より、懐中電灯と違い両手が空くので作業に専念できる。
被災家屋なら、電気が通わず暗い中での作業もあるだろうから、灯りはやはりマストアイテムかもしれない。
【登山靴】
被災家屋におけるボランティア活動には、様々な危険が潜むという。
例えば、落ちていた釘の踏み抜きによる足の怪我もその一例だ。
水没して足元が見えない中、誤って釘を踏みつけてしまった例もあるという。
このため、災害ボランティアの現場では安全靴や強固なインソール入りの長靴が有用であるとされているが、登山靴も意外に有用であるようだ。
確かに、登山靴は(モノにもよるが)ソールが硬く、防水性があり、頑丈なので災害の現場でも通用するのだろう。
もっとも、どんな作業に従事するのか分からないのが災害ボランティアなので、いくら登山靴でも得手不得手があるのだろうけれど。
【食料や水は自前】
被災地域では食料や水が不足していることは珍しくない。
したがって、被災地域に入るボランティアはそのことを踏まえ、食料や水は自前で用意しておく必要がある。
登山者の多くは、前夜泊や山小屋泊、テント泊などで自炊の装備を持っているので、被災地域に車中泊などで泊まりながらの活動を行うこともできる。
この点でも、やはり山道具は強いなと思う。
自分も今回、2日間(という短い期間ではあったが)災害ボランティアに参加したが、車中泊に備え携帯コンロとガス、フライパンを持参した。
因みに持参した携帯コンロは、市販のカセットガスが使えるので市街地ならガスの補給が容易にできるSOTO ST-310。
高所でないなら別にハイパワーのガスでなくても十分だ。
こうしてみると、登山者は結構災害ボランティアとしてうってつけなのではないかと思う。
もともと、電気・ガス・水道の十分でない場所で活動するのが登山者であるだけに、同じように電気・ガス・水道の十分でない被災地域であっても行動できるのだと思う。
もっとも、実際に災害ボランティアに参加する登山者は多い。
登山用具メーカーの服装や装備を持っているので、すぐに同志だと分かるからだ
9月18日現在でも、県内外問わずボランティアを募集しているところは複数ある。
有能な災害ボランティアの手によって、一日でも早い被害の収束を願う。
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