去年に続いて、なんか夏休みの宿題報告っぽいですが....。
ふとしたきっかけから、明治・大正の五万図全国整備に興味を持ち、その基盤となった三角点網の整備を調べています。今進めているのは下記三点。
1)三角点リストの整備
現存点は勿論、冠字選点番号の抜けから、あった筈の三角点も反映した一〜三等点のリスト。まだ漏れているものがあると思いますが、かなり押さえた筈。このリストで見ると、五万図全国整備完了後から少なくとも1109点は廃点になっている筈(2019年4月1日現在の国土地理院公表数と比較)。これは五万図完成時にあった筈の三角点の約2.8%に当たります。国土地理院の公表数には後に新設されたものも含むし、2019年度以降に廃点になったものもあるので、実際はもう少し多く、恐らく3%程度が廃点になっていると思います。
等級、点名、冠字選点番号、緯度経度標高、掲載五万図名、所在市町村名、当初の点の記の有無、移転履歴の有無、選点、造標、観測、埋石の日付と測量官名などの一覧。全ての欄が埋まった三角点から、冠字選点番号しか判らないものまで様々。
2)点の記のテキストファイル化
明治、大正の点の記を片っ端から読み解いて、テキストファイルに落としています。現存点は最新版の抜粋も転記(移転等の履歴を知る為)。現存点の最新版は成果異常点を除いて全て済。明治・大正の点の記は、当時あった筈の全三角点の内、
一等点:962点(96%)
二等点:4933点(97%)
三等点:22421点(68%)
が済。一二等点は当時の点の記が閲覧が可能な三角点は済んだ筈。三等点は一年で3271点前進して2/3が終了。まぁ、廃点や当時の点の記が残ってない等で読めない三角点もありますが、それは置いておいて、当時の点の記が見れるものを順次片付中。
3)旧版五万図との照合
去年から始めたのがリストと旧版五万図の三角点記号との照合。旧版五万図(国土地理院に謄本申請出来る、測量年が最も古い中で発行日が最新のもの)に記載された三角点をピックアップしてリストと照合し、図中に等級、冠字選点番号を書き添えています。今まで506枚(40%)が済。二十万図の"名古屋"以北、以東の本州が終わりました。約半分の一〜三等点が含まれます。
(2),(3)を進め、(1)の空欄を埋めていく作業を進めています。まずは、設置された全一〜三等点を洗い出し、当時の点の記と併せてデーターベースにするのが目標。それで五万図全国整備完了時の三角点網の再現が出来、当時の点の記の記載内容や設置位置/時期、担当測量官等で検索可能になります。本当はそこからデーターベースの様々な機能を駆使して全貌を探るのが本番なんですが....。
五万図全国整備完了時にあった筈の三角点中、現時点で240点が冠字選点番号しか判らず。これは全体の0.62%に当り、旧版五万図上のどれか?の決め手がない。そもそも実際に設置されたかも定かではない。せめて点名が判れば実在が確認出来、地名と照らし合わせてどれか解る場合も多いのですが....。当然、旧版五万図には照合出来ない三角点も出てくる(今まで済ませた内の0.49%)他に、あった筈の場所に三角点記号が無かったりするケースもある(同0.16%)事もわかりました。平野部では開発等の影響で廃点・移転(kmレベルで移動している場合もあります)が多々有り、当初の三角点網は崩れていて照合が難しく、結構不明点が発生する場合があります。一方、山岳地域は大体当時のまま残っていて、不明点はほとんど発生しません。
ナカナカ当時の三角点網を100%再現するのは難しそう。99%までは辿り付けると思いますが....。当時の点の記と旧版五万図とを照らし合わせて行けば再現出来るだろうと思っていたのですがねぇ。
リタイヤ後に何をして暮らそうか?と思っていた所で見つけたこの作業。もう9年位やっています。軍資金を蓄えリタイヤしてもう3年半を過ぎました。ゴールどころか、折り返し点を過ぎたかもわかりません。毎日、旧版五万図や点の記とにらめっこ。全くヒマにならない。コロナ明けには活動再開の筈だったのに、お山に行くヒマも無い(苦笑)。
当時の点の記全てを読み解き、五万図完成時の三角点網を再現して、その構築作業の全貌を調べたなんて話は聞いたことがありません。小生の知る限り、一般向けの書物には、三角点網整備については断片的な記述しかありません。でも、このために全国を跋渉した測量官が書き残した点の記という一次資料や、その結果の五万図が残っています。誰もやったことが無いなら、やることに幾許かの意味も有りましょう。Because it is thereです。もう稼ぐ必要は無く、時間のたっぷりある年寄りには丁度良い。若い人の邪魔にもなりませんしね。組織を離れ、個人の力でどこまで行けるか?。登山とは異なりますが、一つの挑戦でもあります。
百年以上、日本地図の基盤を担い続けた三角点網。電子基準点や観測衛星等に役目を譲りつつありますが、今でも現役。登山者なら山頂の三角点標石を認め、ああ着いたと思った人は多いでしょう。地図のお世話にならない登山者はモグリです。それはどのように整備されたのか?。先人の軌跡を追いかけてます。
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