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2024年09月14日 18:11未分類レビュー(その他道具・小物)全体に公開

老後の楽しみ(明治の標高)

 明治の五万図は余り正確では無いという話を目にすることがありますが、定量的な評価は見たことがありません。実際のところ、当時の測量精度はそんなに酷かったのでしょうか?。三角点を調べているので、三角点の標高で調べて見る事にしました。

 三角点の標高は標石上面の標高です。地図には10cm刻みで記載されています。明治の標高は旧版五万図記載値を使いました。一方、現存する三角点の標高値は国土地理院が公開しています。これは1cm刻みなので、1cmの位を四捨五入して10cm刻みに直します。一応これを真値とします。

 二十万図の名古屋以北、以東の本州の五万図(506枚)で明治の五万図に記載された三角点の照合が終わり、19586点の一〜三等三角点が照合出来ました。全一〜三等点の約半分に当たります。ちなみに使用した地図の発行年と、国土地理院から今の三角点の情報をダウンロードした年とは100〜120年程の差があります。

 三角点を移転したり、標石を改埋したりすれば標高が変わって当たり前なので、そのような履歴の有る三角点は除きます。結果、15380点が残りました。これらの三角点は明治も今も標石上面の位置は同じで、変わっているとすれば、地殻変動があって地盤が動いた以外は無い筈です。

 これらで明治の標高 − 今の標高を集計すると、
  平均:0.0804m
  標準偏差:0.4498m
 となりました。明治の標高は均すと今より8cm高く、45cm位違う物が余り珍しくないという結果。が、細かく見ると、このまま素直に測量精度云々とは行かないようです。

 実は、集計するにあたり、2m以上標高の変わった三角点はチェックして見直してます。当方のケアレスミスもありましたが、この過程で、実に悩ましい三角点も見つかりました。

 例えば、三等三角点「佐谷」(茨城県かすみがうら市)。最新版の点の記では選点、設置は明治33年で、標石は設置当時のままの筈です。で、今昔マップ(https://ktgis.net/kjmapw/)で見ると、標高の遍歴がある程度わかります。

 明治38年測図、明治41年発行では標高173.4m。私の参照した五万図も同じ標高。これが昭和19年部修では、178.4mに変わり、平成17年要修まで同じです。今の地理院地図では178.1mです。各地図を比較しても位置が変わったようには見えません。明治の版では、178.4mとすべき所を173.4mと間違えたようにしか見えません。(周囲の三角点で5mも標高の変わったものは他に見当たらず、関東大震災によるものとは考え難い。)

 似たような例に、三等三角点「北平山」(岐阜県大野郡白川村)があります。これまた改埋などの標石を弄った履歴は見当たりません。

 今の標高は1437.4mですが、明治の五万図では1487.5m。ひなたGIS(https://hgis.pref.miyazaki.lg.jp/hinata/)で昭和5年要修の五万図が見れますが同じく1487.5mです。それ以外の数値には読めません。

 ところが、その1487.5mと書かれた五万図で、三角点周囲の等高線を追うと、標高は1420m以上1440m未満の筈です。1480mを越えているのは等高線と合いません。観測結果は1437.5mで、それに従って等高線は引かれたけれど、標高記載は3を8と間違え1487.5mとしてしまったと思えます。地殻変動で50mも標高が変わるのは尋常ではありませんから、さすがにこれは等高線を根拠に訂正しました。

 どうも、3,8,9は鬼門のようで、上記のように単純ミスで取り違えたと思われる例が散見されます。昔の五万図で、印刷程度の余り良くない物では、判別に悩む例は珍しくありません。正直に言っちゃえば、今の標高を参考に"心眼"で見ないと読めないものもあります。なので、当方の読み間違いを完全に排除するのも困難です。誤って、大きな標高の違いになればチェック出来ますが、0.1mの桁で間違えていればまずわかりません。1mの桁でも、わからないケースはあり得るでしょう。見直しで最終的に53点(0.4%)の三角点で2m以上変わっていることになりましたが、本当のところは疑問です。標高が2m以上変わる事はあるかも知れませんが、極稀な筈です。

 う〜〜ん。明治の五万図のエラーと言って良いとは思いますが、測量上の誤差とは関係無い。ある意味、これも当時の実力ですが、どうしよう?。全てピックアップするのは実質無理。当方の読み間違いも完全に排除するのは難しいですから。

 と言うような話もありますが、15380点の明治と今の標高差を累積度数分布グラフで見ると、±2σ位の範囲では少し曲がってますがまぁ直線。言い換えると、この範囲では正規分布っぽい分布になってます。その直線を伸ばすと3σ=0.9m位。その外では±2.5σを過ぎた辺りから大きくズレたデーターがポロポロ出てきて大きく曲ります。これらが標準偏差を大きくしているのは間違い無い。この辺のデーターは測量精度とは関係の無い何か問題があり、除外して考えて良いと思います。具体的な例は前述の通りです。他にも色々あるでしょう。

 累積度数分布グラフの直線部から読み取った3σ=0.9mにも測量精度以外の要因も含まれています。まず間違い無く、書き間違い・読み間違いもあるでしょう。ですから、明治の三角点標高測定誤差はこれより良かった筈です。かなりいい加減な見積もりですが、他に3つくらい要因があるとすれば、σ=0.15m位でしょうか。そして、0.5%程度の三角点標高は、看過できない単純なエラーが含まれていたように思います。

 ちなみに、標高が高い方が(基準面である海面から離れるので)誤差が大きくなるように思えますが、そんな傾向はありません。むしろ逆です。低い所の方が今の標高との乖離が大きい三角点が多い。これは険しいところに有る三角点程改測され難い(従って昔の観測結果が使われ続ける)って事かもしれません。

 明治の三角点の標高測定精度は±0.9m(3σ)未満は確実。0.5〜1%程度と余り少なくない三角点標高値には、看過出来ない単純な錯誤も含まれ、大きく違っている。それが明治の五万図の三角点標高の現実。そんな感触を得ました。

 旧版五万図上の三角点の照合は、まだ半分弱しか終わってないので、今回はお試しです。本来、もう少し丁寧に見るべき所をエイやぁっ!とやってしまった所もあります。まぁ味見レベルです。基礎になるDBの完成まであと三年かかる見込み。完成すれば、五万図毎や設置年度や測量官別に標高の変化に違いが有るか?の比較とかも可能になります。周囲の三角点とはかけ離れて標高が変わった三角点をはじき出す事も可能になる予定。その時に改めてやり直してみますかね。

 国土地理院では令和7年4月1日に全国的に標高値の改定を行うようです。
https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/hyoko2024rev.html
を参照してみてください。どうも標高測定は緯度経度よりも精度が落ちて、なかなか難しいようです。一応今の標高値を真値としましたが、そうとも言い切れない様子。さて、新しい標高値はどう変わるんでしょうね?。公開されたら今の値と比較してみますかね。楽しみに待つことにしましょう。貴方の馴染みのあの山の標高は.....、思いの外、高くなったりして。
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