最近読んだ本は、雫石鉱吉氏がご自身のこれまでの山登りの際に書き留めてきた山ノート等をもとに書き下した「いつまでもー山」という本だ。この本は、1984年8月に茗渓堂から出版されている。
著者の雫石鉱吉氏は、1910年に岩手県で生まれ、旧制八高(今の名古屋大学)、東京帝大を出て、宮城県石巻中学教諭を振り出しに、大阪府浪速高校、大手前女学校、北野高校で国語・漢文の教諭として多くの生徒を教え、後池田高校校長を務め、後関西外国語短期大学教授を務めた教育者である。
雫石氏は、旧制高校&帝大時代に山登り&岩登りに打ち込み、教職に就いてからも、教え子の中学生や高校生を連れて、冬山や岩登りに連れて行っていた。その後、中高年になって、高血圧症に悩まされながらも、紀伊山地の奥駆道等の縦走を続けている。
この本は、2部構成になっており、1部は若い時の「山旅ノート」から戦前の旧制高校&大学時代の山登りの怪奇体験を紹介している。また、教職に就いてから、中学校や高校の教え子を引率して山に登った際の遭難一歩手前の事例(白馬岳での天候急変事故、鹿島槍ヶ岳の落石事故、富士山登山時の雪渓滑落事故)を紹介している。いずれも、大事件になりうる遭難一歩手前の事例だった。
第2部では、筆者が67歳になって高血圧症に悩まされながらも、山登りを続けたいという強い意志の下に、南アルプス南部の茶臼岳〜聖岳ソロ縦走や、紀伊山地の弥山川朔行、大峯奥駆路の縦走時の山行事例を紹介している。
雫石氏は、山岳会等に所属しなかったが、長年山登りを続けてきた山の経験が豊富な方で、登山家と呼ばれるのは好きでないが山が好きと書いている市井の山登り愛好家である。
著者と同じ年代になって、体力の衰えを痛感しながらも、山登りを続けていきたいと思っている自身に置き換えて、内容に共感を覚えるとともに、なぜ山に登りたいのかということを改めて考えさせてもらった。
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