ザックに 登攀具に アイゼンに 厳冬期用ブーツに・・・
まぁ、1人で十数万円も 5人の新人は 好きなようにお買い物をしました。
もちろん、「タダ」です。
が・・・・
しばらくして部室に行くと、バイトのシフト表が張ってありました。
ナニコレ?
そう、タダ?でもらった十数万円の代金を、その登山店でバイトをして、チャラするのですよっ💦
しかも返済期間は3か月・・・当時は時給400円。
おいおいおい。
授業をサボらねばなりませぬ。
聞いてへんでえ! こんな契約・・・
なんて言えば殺される雰囲気でした。
後で知ったことでしたが、その数パーセントは、先輩方の懐に行く算段でした。
まぁ、ピンハネです。
バイトの内容は、ズバリ 接客&レジをすることです。
おいおい、私なら少しは中・高校と山をかじっていましたが
残りの4人は、ズブの素人ですよー。だいたい、山にも登ってませんがなぁ。
研修も無しで いきなり 店員さんです。
そんな素人が、有名登山店で 夜の部は、2Fの山岳専門ブースを独りで任されるのですよ💦。
ゼルプストいいのある? と お客さんに聞かれても
「はぁ? 何ですかそれ・・・」と 言うしかないでしょう。
ゼルプストと言うのは、今で言う「ハーネス」です。
ロープもザイルです。
そう、英語じゃなくて当時はドイツ語ですね。
ある午後7時頃、たった一人で任されていたブースに、それなりの山屋さんらしきお客さんが ウロウロしていました。
「すまんが、ほぇーぶす のホワイト 置いてある?」
・・・・
心の中で
「ほぇーぶすぅ? ホワイト?・・・」
「めっちゃブスで色白な女子か?・・・」
後で知りましたが、ホェーブスと言う、有名なメーカーのガソリンストーブ(バーナー)の燃料として使う、ホワイトガソリンの事です。
「あっ、・・・今、在庫を調べてきますね」
そう誤魔化して、1Fに居る本物のバイト店員さんの元に走りました。
「ほぇーぶすのホワイト」って どこにありますか?
「なんやそれ? ブスが使う? 化粧品ちゃうんけ?」
「そんなん この店に置いてるんですかっ?💦」
「おいてないわ。「今、在庫を切らせてます」と 言っとけ!」
2Fに上がると、お客さんは、カラビナやスリングを見ていました。
「なんで こんなお客さんが、化粧品を買うのかな・・・ひょっとして、雪焼けしないような 日焼け止めクリームなのかなぁ?」
「すみません。今 在庫をチェックしましたが ほぇーぶすのホワイトは、切らしておりまして・・・申し訳ございません・・・」
お客さんは、
「そうかぁ・・・まぁ、レギュラーでも ちょっとくらいは 使えますよね?」
「レギュラー? そうか、この人は 何人かのパーティ(チーム)の中のレギュラー的な 玄人さんなんやなぁ・・・」
「はいはい、レギュラーなら なんぼでも 行けますよ(^^)/」
と、答えてしまいました。
「やっぱりなぁ。俺もそう思ってたんよ。流石に●●山荘の人が言うのやから、俺の言うのが正解やったんや。」
「はい、素人さんには難しいかもしれませんが、レギュラーさんなら、大丈夫ですよ(^^)/」
後で知りました・・・レギュラーとは、自動車に入れる赤い色を付けたレギュラーガソリンの事です・・・。ホェーブスの燃料は、レギュラーガソリンでも短期間は使用は可能ですが、目詰まりを起こすので、色の付いていないホワイトガソリン(透明)を使用しなければなりませんでした。(値段がレギュラーガソリンの3倍以上です)
「君、おもろいなぁ・・・」
「ところで、何やら凄い素材が出たそうやなぁ?雨具やテントにも使われるらしいな。その「ゴア」は、いつごろ この店に来るの?」
。。。「ゴア?」 あのマグマ大使の天敵の「ゴア様」が来店するんかっ!」
なるほどなぁ・・・そうやって イベントもするねんなぁ。
「私は、詳しくは聞いておりませんので イベントの開催日は いつになるかちょっと・・・わかりません。」
「おおっ、ゴアのイベントが開かれるんかっ! そりゃ 絶対に来ないとあかんなぁ。なんせ、今までで最強らしいからな。雨も寄せ付けずにムレもしない。理想やな。」
「あの地球侵略を狙う「ゴア様」が理想かぁ・・・。おもしろいお客さんやなぁ。」
「はい、ゴアは強いですよ。ぜひ、イベントにお越しくださいね。」
「おおー、素材も三層になって、挟み込んでいるからなぁ。俺も強い素材とみていたんや。でも、価格が高いからなぁ・・・」
「ゴアのフィギュア(人形)って そんなに複雑にできていて 値段も高いのか?」
言っておきますが、この年の前にアメリカで商品化された 今では王道のど真ん中を行く素材のゴアテックスのことなのですよー。
そんなん しりませんがなぁ・・・
本当に ええかげんな 店員で ごめんなさいですっ。
大体、そんな山岳部の新人を 山岳専門ブースに配置するのが おかしいですっ。
まぁ、現代でも 山屋さんのお店なのに まっまっ そういう店員さんいますよっ。
今はネットで調べたら済みますから、口だけはうまいですっ。
でも、ネットに出ていない(現地)の事を質問すると ボロがでてきますね。
正直に言います。
モ※※ル 神戸店で
「年末から正月に富士山に登るのですが、行けますかねぇー」と
口達者な店員さんに 聞いてみました。
「あっ、おきゃくさん、お正月は富士山ですかっ!」
「はい」
「富士山は、北アルプスみたいに冬型の気圧配置では雪が降らない、太平洋側の山で、絶壁もありませんし、夏に行かれたのならば、行けますよ。念のために8本爪アイゼンを買われたらどうですか?ストックがあると更に山頂までラクチンに行けますよ。素敵なご来光を見られるといいですね。」
・・・このヒト・・・まるで 冬の富士山の事知りませんねぇ・・・
「こんな装備で冬富士に登ったら、死にますよっ・・・・」
っと言いかけましたが、やめました。
自分も 若いころに 同じような事をしていたのですから・・・・。
でも、冬の富士山は、ギンギンに研ぎ澄ました12本の本格的アイゼンとピッケルがなければ、滑落死してしまいます。
そのような 死に至るような 口から出まかせは、ちょいと慎みたいですね。
教師を辞めても 今なら山屋さんで チョイとだけ あの時のよりもマシな バイトができるかも…(笑)