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幼い孫がお泊まりに来たいと言う
ジイジとバアバは諸手を挙げて歓迎だ
孫がこんなにも可愛いなんて
若い頃は想像だにしなかった
きっと太古の昔
人のDNAに刷り込まれたのだろう
いそいそと孫の待つ家までお迎えに
帰りに寄ったマーケット
可愛い孫が
2リッターのジュースを買えと言う
1泊2日じゃ飲み切れない
余ると困るから
小さいのなら買ってあげる
とは言ってみたものの
売り場を彷徨えど同じのは見つからない
しばらく涙ながらの抗議
ポロリポロリと大粒の
涙がみるみる服を濡らしてゆく
ジイジとバアバは
この手の攻撃には成す術がない
そこを突いて来るので質が悪い
ここで折れたらジイジの威厳は崩れ去る
心を鬼にしてダメ出しを続けるが
もう心が折れそう
と思ったとき
バアバがなだめて事なきを得る
良かった
しかし
売り場には新手の刺客が待ち受ける
偏食と言って良いのだろうか?
可愛い孫はらしからぬ食材を好む
今度は大葉とパセリを買えと言う
幸いジイジとバアバはどちらも食べられる
だが
ひと束の量が多すぎる
だから
どちらかひとつなら買ってあげる
と言ってみたのだが
両方買えと再び猛抗議
こうなったらジイジも意地だ
決められないならどっちも買わないよ
絶対に譲らない
と
覚悟を決めて相対する
でも
先ほどの比じゃない
大粒の涙で
周囲が振り向く泣き声で
ジイジの限界線に真っ向から挑んで来る
幼子と張り合っても甲斐ないが
言い出した手前譲れない
店員さんの
同情の微笑えみだけが唯一の救い
抱き上げなだめながら店外へ
ジイジも欲しいものがあったのだが
可愛い孫が放った一言
買っちゃダメ!
従わざるを得ない
そうだな
君の希望を打ち砕いたのだから
当然の代償だ
築き上げてきた良好な関係性
これしきで壊れてしまうとは思わないけど
内心ハラハラドキドキ
二者択一の究極シチュエーション
経験して強くなってもらいたかったんだよ
愛しの孫どのへ