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2010年07月31日 15:44素面全体に公開

1/山変化

山に登り始めて変わった事が三つある。



一つは【勇気・感動】という言葉が、実に素直に頭に浮かぶようになった事である。



例えば初心者なりに「ここに踏み入っていいのか。」「この状態で先に進んで良いのか。」と考える事はしばしばある。
単独であれば余計である。

いつも自問自答する。「この選択は勇気か?無謀か?」と。
自分なりに考えながら、山行を楽しみながら少しづつ成長している。

しかし、山に行っていなければ私の生活に「勇気」などという言葉は頭に思い浮かびもしなかっただろうと思うのである。



あるいは人から勇気をもらったという事がある。


大の運動音痴である自分は、いわゆるスポーツ番組を見ない。
ルールが分からない。楽しさが分からない。
ましてやオリンピックを見て選手から「勇気をもらいました!」とか
「感動しました!」という気持ちが良く分からなかったのだ。

 
しかし歩荷駅伝を見に行った時、40キロを背負った最終走者がゆっくり、ゆっくり懸命にその一歩を踏み出そうとしている姿に素直に感動した。

他のチームはとっくにゴールしている。
しかし、絶対ギブアップはしないという意思がすぐ後ろを歩いていた自分にも感じとれた。
何か熱いものが自分の中に湧き上がった。
自然と応援する言葉が口をついて出た。


それはテレビで箱根駅伝を見るのが苦痛だとすら思っていた自分には考えられない事だったのだ。


それと同時に(空身の自分がなにをそんなにしんどがっっているのだ。見習え。もっと頑張れるはずだろう。)と思ったりもした。


また、その歩荷駅伝が開催されている尾根で盲目の方に出会ったこともある。
隣の人に「次の段差は結構、大きいですよ。ゆっくりおりましょう。」と声をかけてもらいながらゆっくり、ゆっくりおりて行くところだった。


目が見えなくても、この土の匂いや風や足の感触は感じられる。
気持ちがいいだろうなあと思った。


そして、この尾根を往復するにはずいぶん早くに来たんだろうなあ。どのくらい時間がかかるものなのだろう。などと思ったりもした。


そして最後に思ったのは、自分がある日突然目が見えなくなったらどうするだろう。それでも山に行きたいと思うだろうか。という事である。



そこで長く思い出さなかった記憶が蘇った。
10年以上も前の事である。

頚椎損傷の方の身の回りの手伝いに行っていた時のこと。
と言っても買い物や食事を作るとか本当に簡単なお手伝いだった。

彼は外科医になることを嘱望されていたのだが、ある日後ろから車に衝突されて半身不随になり、心療内科の医師になった人だった。

私は多くの人が彼に一種差別的だったり、腫れ物にさわるように接するのを間近に見ていた。
しかし、病院の医局で白衣を着こんだ後では、患者さんでない人の態度まで変わるのも見ていた。

医者という一般社会的ステータスが彼が決して可哀想な人ではない。
と人の認識を変えるからなのだと思う。
それは10代前半だった自分にですら目に見えて分かった。


ある日悔しくて泣いた。
本人は「事故にあう前は、本当に嫌な奴だったと思うよ。自信満々で。でも何だかんだ言ったって、今の僕は人の世話にならなきゃ生きていけない。それが有難い事だって思ってるから、別にそんな事はいいんだよ。」と笑っていた。


それからしばらくしたある日、食事を作っていて味噌汁を沸かしてしまった事がある。
家で彼と同じようにストローで味噌汁を飲んでみた自分は、
それがやたら熱く感じるのを知っていたので謝ったのだが
「犬や猫じゃないんだから、僕もそのくらいは自分で分かるし、ちゃんと食べれるよ。」と笑って言われた。


また泣いた。本当に腫れ物に触るように接していたのは自分だったのかと彼の前でおいおい泣いた。
今思い返しても、随分と無神経な事をしたと思う。
しかし彼はまた笑ってなだめてくれた。





山の話しからは随分と脱線したが、その時のことをまざまざと思い出した。

思うに自分はそれ以来、そういう事から避けてきたと思う。
そういう事とはハンディキャップとか呼ばれているものの事である。

なるべく考えたり、考えを述べたりしないようにしてきた。
自分が軽々しく言うべきではない。
接するべきではない。
ましてやパラリンピックを見て感動した。
勇気をもらったなんておこがましい。
所詮、本人にしか分かりはしないのだ。
自分がそれを言うのは偽善だと全力で鍵をかけていたのだと思う。



しかし、その尾根で盲目の方に出会ったとき素直に感動した。
なぜざら(あの人は自分1人では山に登れない事をしっている。
でもそれを恥じたり、変に引け目に感じたりせず、隣の人に感謝もありつつ登っているのだろうな。
自分がもし突然、同じ立場になったならそれでも登りたいと思うだろうか?
きっと思うだろう。
しかし、あの人のような彼のような気持ちには早々なれないだろう。
すごい人だ。)

と勝手に思ったからである。



実際のところは分からない。
その人の気持ちはその人にしか分からない。


でも私は勝手に感動すると共に勇気をもらった。
自分の中でずっと考えないようにしてきた事柄である。
自分が言うといかにも胡散臭いものとつっぱねて来た部分である。
それがいとも簡単に素直にそう思う事ができた。


山が自分を素直にしてくれていると近頃、気が付いた。

山はいいなあ。
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コメント

RE: 1/山変化
山では素直になる…

私は山に行くと自分をむき出しにされる感じがします。
いろんな面で…。

素直に感動し、勇気を感じられるのは、そういう心が根っこにあるからこそなんだとおもいます。
それはなかなか得難い素養で、その点素晴らしいなあと感じました。
2010/7/31 21:35
ゲスト
Komadoriさんへ
そんな大層なもんではないです^^;

むき出しって素直と同義ではないですか?

あれ。違う…のかな(^^;;

深く考えたことなかったけど…

自分なんか下山と同時に「欲望」がむき出しですよ。

腹減った。眠い。風呂は入りたい。ヤマレコ書きたい。
仕事かったるい。明日も山行きたい。とか(ーー;)
2010/7/31 21:48
RE: 1/山変化
おはようございます。
6月25日の磐梯山。
もしかして、あのグループにおりましたか?
とても感じのいいグループでした。

いや、深い意味はありませんが気になって...
2010/8/1 8:09
RE: 1/山変化
>目が見えなくても、この土の匂いや風や足の感触は感じられる。
>気持ちがいいだろうなあと思った。
これはぐっときた。私も見かけたことがあります。

勇気・・・そして、走るにしろ登山にしろ、
問題なくできてしまう、事実。
オラァッ俺だって!テンションあがるぜ!!
2010/8/1 21:47
ゲスト
citrusさん、こんばんは。
ねじりはちまきのお師匠に、ほっかむりの弟子。
という怪しい風体の二人組みを見ませんでしたでしょうか?

終始二人で写真を撮ったり、西向いちゃあそこ登りってみたい。東向いちゃあそこ下りてみたいとか大騒ぎしてました。

もしお近くいらっしゃってたらお騒がせしました^^;

あの日は山頂での展望が少し残念でしたね。
地元の方から磐梯山は、猪苗代湖から朝上がってくる水蒸気で午前中は雲って、午後は晴れることが多いとうかがいました。
2010/8/2 0:14
ゲスト
スーパーランナーさんへ
本当にすごいなあと思いましたよ。
もし、自分に何かあったとしても、歳をとって体が今より思うように動かなくなっても山に来たいと思いました。。

ところで、腰がシクシクしてるのに「次は30キロやりたい!」とか駄目ですよ。
折りたい背骨のアンカー殿はもう自分1人の体ではありません!!

なんちゃって、体は大事ですよね。
わっちも腰痛体操しよ〜ぉ♪
2010/8/2 0:23
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