まだ、9月中旬なのですが、水不足のエリアが増えてきて、山小屋経営に影響を与えています。
沢では渇水が続き、例年の11月のような雰囲気で、源流域の沢は涸沢のようになっている場所もあります。
先日、剱岳北方稜線へ行ってきました。
剱岳本峰から長次郎ノコル、池ノ谷ガリー、三ノ窓と順調に小窓ノコルへ向かい、小窓雪渓上には午前10時前には着きそうで、昼には池ノ平小屋に着いてランチでも食べようと思っていました。
池ノ平小屋から出発してきたパーティとすれ違った際、彼らは小窓雪渓が通過できないと小屋で聞いて、池ノ平山を5時間掛けて降りてきたとのこと。
後輩のガイドパーティは「本郷さんなら小窓雪渓を降りられると思います」と言っていたので、ここの雪渓を何度も通過している自分なら、ロープ付けて絶妙なラインを選べるだろうと考えていました。
しかし、小窓雪渓を見て驚きました。
雪渓が細く、ほぼ解けて氷河がむき出しで、竪穴(ムーラン)だらけ。
もちろん、ピッケル、アイゼンは持って来ていて、ロープを結んで下降したとしても安全に下降できるルートはありませんでした。
墜ちれば発見されるのは、おそらく数百年後。
ネパールの6500m付近のクレバスに堕ちた経験がある自分には、とてもここを下降する選択肢はありません。
こうなれば、残る選択は2つ。
北方稜線を剱岳へ戻るか、池ノ平山南峰を登るか。
池ノ平山と小窓の間は10数年前に2回通過しているので、その悪さは解っていました。
お客様2名に待ってもらって偵察に行き、登れると判断して池ノ平山へ向かいました。
おそらく、小窓から池ノ平山へ登るパーティは我々が今シーズン初めてでしょう。
グズグズの泥と脆い岩、草付きを繋いでスタカットクライミング。
下にいる2名に絶対石は落とせないので、時間は掛かるがラインを斜めに取りながら登る。
途中からは下へ向いた藪を漕いで、トータル3時間掛けて池ノ平山南峰へ。
昔は残置ロープもしっかりしていて、藪のトンネルができていたはずだが、廃道になって久しく、すっかり自然に帰っていた。
今後、温暖化が継続すれば、北方稜線を秋まで歩くには、池ノ平山を整備するしかないでしょう。
そして、今現在は源次郎尾根も取り付くことができなくなり、長次郎谷も入れないので八ツ峰に行くことも難しくなりました。
今までは北方稜線は秋にいくもの。紅葉に囲まれた源次郎尾根のベストシーズンは10月と紹介していたが、これからは雪渓に絡むルートは8月までと考えねばならない。
地球温暖化の影響をまざまざと感じさせられた今シーズンでした。
ルートのベストシーズンは以前とは違うタイミングになりそうです。
池ノ平山、もう何十年も取り付いて無いですね。直近では2016年が最も残雪が無かったと記憶していますが、あの年だって9月末まで小窓雪渓は通れたと記憶しています。
私も予定では明日、北方稜線に行く予定でしたが、小窓雪渓がスタカットしながらでも通過出来ないとの事で中止しました。
このまま裏剱を眺めず夏山シーズン終了も切ないので、今月末に下で仙人池まで行く予定です。
こんな気象が当たり前にならない事を祈るばかりです。
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