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Yamareco

皇海山(すかいさん)

健脚で挑みたい足尾山地の百名山

"皇海山"
"皇海山"

皇海山は群馬県と栃木県にまたがる標高2144mの山です。両県にまたがる足尾山地の盟主に相当し、また日本百名山の一座です。
栃木県が定める山のグレーディングでは、体力度および技術的難易度が最も高い山で、登り応えがあるとして注目されています。なお栃木県の特産である「スカイベリー」という苺の品種名は、この山にちなんでいます。

"赤城山から望む皇海山"
"赤城山から望む皇海山"

古くは笄山(こうがいさん)と呼ばれていました。
笄は髪を掻き揚げたり、頭を掻くための棒状の道具です。東西に長く伸びる頂稜が、これに似るとしたことが由来のようです。やがて "こうがいさん" の読みに「皇開山」が当て字され、「皇海山」へと変化しました。現今の "すかいさん" の読みは、誤った呼び名が浸透したためと言われています。

原始の森を抱く山

"鋸山付近:アズマシャクナゲ"
"鋸山付近:アズマシャクナゲ"

皇海山は古い火山体ですが、今はすっかり森に覆われ、豊かな自然が広がっています。
山頂付近はシラビソが茂り常に青々としています。一方、山腹はブナダケカンバが自生し、新緑や紅葉といった移ろいが見られます。また初夏はツツジやシャクナゲの花が鮮やかです。

"コウシンソウ"
"コウシンソウ"

高山植物もいくつか見られますが、よく知られているのはコウシンソウです。
コウシンソウは食虫植物で、薄紫色の小さな花を咲かせます。命名は皇海山の南東にそびえる庚申山で発見されたことに基づいており、付近の群生地は国の特別天然記念物の指定を受けます。

山駆けが行われていた霊山

"一の鳥居"
"一の鳥居"

皇海山は古来、信仰の山でした。一説によると、開山者は日光の男体山を開いた勝道上人(しょうどうしょうにん:735-817年)であると伝えられます。
信仰の中心は庚申講で、皇海山は庚申山の奥の院とされています。庚申山の取り付きの手前には、庚申講に縁のある猿田彦神社の跡や、朱塗りの一の鳥居があります。

"鋸山"
"鋸山"

江戸時代によく行われていた修行は、庚申山から鋸山、皇海山へと登拝する「三山駆け」です。
3座を繋ぐ稜線は痩せて険しく、ぎざぎざと12の峰が連なります。それぞれのピークには駒掛山薬師岳などの名前が付けられています。第一峰は庚申山で、鋸山は第十一峰、皇海山は第十二峰です。また、庚申山を「親帽」とし、第二峰の御岳山を「二帽」、第三峰の駒掛山を「三帽」・・・とする山名も持ちます。
さらに庚申山から鋸山をまとめて「鋸十一帽」と呼ぶこともあるようです。

落ち着いた雰囲気の山頂

"皇海山山頂"
"皇海山山頂"

皇海山山頂の周囲は木々に囲まれています。展望は無く、どことなく秘峰感を漂わせています。

"皇海山山頂:青銅の剣"
"皇海山山頂:青銅の剣"

山頂標識からほど近い場所には、青銅の剣が祀られています。これは明治時代に、庚申講の指導者であった木林惟一が奉納したものです。

入山は銀山平から

"銀山平キャンプ場"
"銀山平キャンプ場"

皇海山へは栃木県の銀山平から登ります。
銀山平にはキャンプ場を備えた銀山平公園と、美肌の温泉で知られる「庚申の湯」が堪能できる宿泊施設があります。

"抗夫浴場跡"
"抗夫浴場跡"

ひと昔前まで銀山平は、約400年続いた足尾銅山の資材置き場や、労働者の社宅などがあった地です。周辺は、抗道の入口や抗夫浴場などの遺構が点在しています。

唯一の登山基地・庚申山荘

"庚申山荘"
"庚申山荘"

皇海山の山頂へ至る道のりは長く、たいていの登山者は2日間以上をかけて臨みます。お決まりの行程は初日に庚申山荘に泊まり、翌日は朝早くから登頂を目指します。
庚申山荘は山中での唯一の宿泊場所です。素泊まりのみのため、食事は自分達で用意します。ハイシーズンは管理人が常駐しています。

"鏡岩"
"鏡岩"

銀山平から庚申山荘までは比較的易しい道で、ハイキング気分で歩くことができます。
関東ふれあいの道「ヤシオ咲く庚申の道」に設定されており、「鏡岩」「夫婦蛙岩」といった奇岩や、勝道上人の碑などが見ものです。

"庚申七滝"
"庚申七滝"

庚申七滝はやや寄り道になりますが、別名が「七段の滝」で庚申山のシンボルとされています。

難路が続く・クラシカルなコース

"皇海山登山地図(庚申山〜鋸山〜皇海山)"
"皇海山登山地図(庚申山〜鋸山〜皇海山)"

庚申山荘から先は、2つのルートが選択できます。
ひとつは三山駆けの行場で、庚申山鋸山を経て皇海山を目指します。
シャクナゲが生える尾根は上部に進むほど眺望が良く、日光の山々を望みます。また、いくつものピークを越える達成感が得られます。
ただし道はたいへん険しく、熟達者向けです。

"庚申山〜鋸山:鎖場"
"庚申山〜鋸山:鎖場"

鎖や梯子を使って登る箇所もあり、三点支持といった岩場での歩行技術を駆使して挑む必要があります。そして、限られた時間の中で歩き切る体力も求められます。

"鋸山山頂"
"鋸山山頂"

鋸山山頂は、なかなかの展望地です。皇海山のどっしりとした山頂部が眼前に現れるほか、日光白根山男体山赤城山、谷川連峰なども見晴らします。

中級者向けのトラバース道

"皇海山登山地図(庚申山荘〜六林班峠〜皇海山)"
"皇海山登山地図(庚申山荘〜六林班峠〜皇海山)"

もう一方のルートは、庚申山鋸山の山稜を迂回したトラバース道です。

"六林班峠〜樺平:登山道"
"六林班峠〜樺平:登山道"

傾斜は緩やかですが、ひたすら長い歩きが続きます。樹林帯の林床は、がよく茂っています。

"六林班峠〜樺平:渡渉"
"六林班峠〜樺平:渡渉"

途中、小さな沢をいくつも横切ります。

庚申山登山とお山巡り

"庚申山展望台より鋸山(左)と皇海山(右)を望む"
"庚申山展望台より鋸山(左)と皇海山(右)を望む"

庚申山登山も、なかなかの評判を集めています。
庚申山の山頂こそ見晴らしはありませんが、近くの展望地からは鋸山と皇海山が並び立つ姿を望むことができます。またコウシンソウの花畑も、登山のお目当てとされています。
とは言え中腹から山頂は岩場で、危険箇所もあるため上級者向けです。

"庚申山登山地図"
"庚申山登山地図"

庚申山への道は、猿田彦神社跡から二手に分かれます。庚申山荘を経由する道と、大回りして奇岩怪石の中を歩く「お山巡りのみち」です。

"お山巡りのみち:めがね岩"
"お山巡りのみち:めがね岩"

お山巡りのみちは「めがね岩」や「鬼の耳こすり」など、独特の形をした大岩が乱立する面白味のあるコースです。関東ふれあいの道に指定されていますが、難易度が高いため踏破の認定対象からは除外されています。

塞がれた最短コース・不動沢

"栗原川林道:トンネル"
"栗原川林道:トンネル"

かつては群馬県の皇海橋からも登ることができました。「不動沢コース」なる沢筋を詰めた登山道で、日帰り山行が可能なことから群を抜いて人気でした。しかし2020年3月に、皇海橋へ通じる栗原川林道が悪路のため閉鎖されてしまい、現在は利用できません。
登山口 銀山平
周辺の山小屋 庚申山荘
基本情報
標高 2144m
場所 北緯36度41分23秒, 東経139度20分13秒
カシミール3D
■沼田市Webサイトより
登山口までの栗原川林道につきましては、度重なる台風や大雨による路肩崩落等の被害、年月の経過に伴う岩盤の脆弱化による落石の増加等により、安全な通行の確保が図れないことから、今後通行することができません。
そのため、「皇海橋の登山口から」の入山はできませんのでご注意ください。
(2021/3/3現在)
山頂

山の解説 - [出典:Wikipedia]

皇海山(すかいさん)は、栃木県日光市と群馬県沼田市との境界にある山である。足尾山地に属する。標高2,144m。日本百名山の一つ。約160万〜90万年前に活動した古い成層火山だが、侵食が進み、また樹林に覆われ、今日では火山らしい面影はない。
東西に長い頂稜を持つが、北側は国境平付近まで標高差にして500m以上も切れ落ちている。

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    栃木県側からの入山のみとなり、難易度が一気に高まった日本百名山の皇海山。 群馬県側の栗原川林道は崩壊により立ち入り禁止となり、今まで一般的に登られていた不動沢ルートも通行不可になりました。 クラシックルートと呼ばれるこのコースは多くの岩場や危険個所の通過、不明瞭な藪の処理、そして歩き通すだけの体力など総合力が試される上級者〜熟達者向けの行程。 平ヶ岳にも勝るとも劣らない「国内最難関の百名山」と言えるでしょう。

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