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更新日:2020年05月10日 訪問者数:329
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日本の山々の地質;第2部 北アルプス、2−5 常念岳〜燕岳岳(常念山脈北部)
bergheil
2−5章 常念岳、大天井岳、燕岳 (常念山脈北部)
2−5章 常念岳、大天井岳、燕(つばくろ)岳 (常念山脈北部)

 常念山脈は、霞沢岳から常念岳、大天井岳、燕岳、餓鬼岳まで、きれいに並んだ一続きの山脈ですが、実は蝶が岳と常念岳との間を境に、地質が大きく異なります。

 2−4章で説明した通り、霞沢岳から蝶が岳までは、古い堆積岩(主に砂岩)でできているジュラ紀付加体です。一方、常念岳から北の稜線は、花崗岩でできています。
 花崗岩の特徴がよく現れているのは燕岳周辺で、足元はザクザクとした、花崗岩の風化物である“ザレ”で覆われており、その中に花崗岩でできた小岩峰が独特の景観を作り出しています。たとえば、メガネ岩、イルカ岩とも呼ばれている小岩峰が、ざらざらした表面の花崗岩らしい表情を見せています。
 また、燕岳の北にある餓鬼岳付近も「剣ズリ」と呼ばれる切り立った花崗岩の稜線があり、燕岳の東になかば独立峰としてそびえている有明山も、登ってみると花崗岩の多い急登が続きます。
 常念岳の山頂部は、燕岳とはちょっと感じが違っていて、大きな岩がゴロゴロと山積みになっていますが、地質図によるとここも、山頂の一部を除き、同じ時期、種類の花崗岩でできています。

 この一帯の花崗岩は、常念山脈北部だけでなく、後立山山脈(裏銀座コース)南部の野口五郎岳付近など、北アルプス中央部にもかなり広がっています。常念山脈北部の花崗岩は、「有明花崗岩」とも呼ぶようです(文献1)。

 花崗岩はもともと、地中深くでマグマがゆっくりと固まってできた岩石(深成岩)であり、本来は固い岩石です(例えばヨーロッパアルプス モンブラン山群の多くのクライミングルートやピークは花崗岩、日本でもフリークライミングのメッカ、奥秩父の小川山も、花崗岩でできています)。しかし花崗岩も地表に出てきて時間がたつと、構成する鉱物(石英、長石、雲母)の粒が大きいせいで、風化が急に進んで、ザレを作るようです。(粒子径が小さい土状のものは「マサ土」と呼ばれる)

(注;花崗岩のような深成岩で鉱物の粒が大きのは、深成岩の特徴であり、マグマだまりの中でゆっくりと冷えて固化していくので、鉱物結晶が成長するのに余裕があるせいです。一方、火山から噴出した火山岩は、噴出後に急激に冷えて固化するので、鉱物結晶が十分成長する暇がなく、構成鉱物のサイズはミクロンサイズとなることが多いです)

 なお、あくまで私見ですが、同じ花崗岩であっても、常念岳山頂部のように大きな岩がゴロゴロした状況と、燕岳のように、ザレが多い状況との違いは、地表に出てから風化を受けた歳月の違いがあるのかも知れません。地質図をよーく見ると、常念岳付近は、南部にある砂岩層がパラパラと残存しており、花崗岩が地上に顔をだしてからあまり長い年月が経ってないように見えます。そのため、まだ大きな岩屑までにしか風化されてなく、一方、燕岳付近は、常念岳よりずっと前に花崗岩が地表にでたために、風化作用が長く働き、構成する鉱物(石英、長石、雲母)まで分解されザレ地を作っているのかもしれません。

 また常念山脈北部での花崗岩の風化には、氷河期における周氷河作用と呼ばれる、寒冷環境による風化作用(岩の割れ目にしみ込んだ水分が凍ると、体積膨張により、割れ目が拡大して、岩が小さく割れていく)の影響がかなり大きいように思われます(文献2)。

 これらの花崗岩は、中生代、白亜紀の後期(約8000−6500万年前)に、地中(おそらく地下5-10km)にあったマグマだまりがゆっくりと固結し、その後、第四紀(約260万年前以降)に北アルプス全体が隆起した際に、地中から上昇してきて、元々、上に乗っかっていた地層が浸食、剥離されて、今では山々の稜線を形作っているわけです。

 白亜紀後期から古第三紀前期(約8000万年〜約5000万年前)にできた花崗岩は、西南日本内帯にわりと多く分布しています。その範囲が多いのは(日本の)中国地方で、その前にあったはずのぺルム紀付加体類の下から地表に顔をだしており、古い地層の分布がバラバラになってしまっています。また花崗岩とセットとして、同時期の火山岩(マグマが地表に噴出してできた岩石)も、中国地方にはよく見られます。

 これらのことから、白亜紀後期から古第三紀前期にかけての西南日本内帯は、火山が並んだ火山帯だと考えられており、地表に噴出したものは火山岩(安山岩、デイサイトなど)、噴出せずに地中で固化したのが花崗岩や花崗閃緑岩といった深成岩だと思われます。


文献1)「超火山 槍・穂高」 原山、山本 著、山と渓谷社 刊(2003)
文献2)「日本の地形」第5巻 「中部」 4−3章 飛騨山脈の項、小泉他 編、
     東京大学出版会(2006)
常念山脈北部の地質図
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