南ア南部縦走(茶臼岳、イザルヶ岳)※光岳は断念
- GPS
- 56:00
- 距離
- 33.6km
- 登り
- 2,805m
- 下り
- 3,006m
コースタイム
- 山行
- 5:40
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 6:00
- 山行
- 12:50
- 休憩
- 0:25
- 合計
- 13:15
天候 | 晴、曇、雨、みぞれ、雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
|
コース状況/ 危険箇所等 |
▼光岳を再訪したい 光岳には2010年10月に登頂しました。山頂エリアのイザルヶ岳、センジュ原、光岳小屋などがすばらしかったです。それ以来、自宅のある浜松から直線では最短距離にある100名山でありながら、交通機関などの不便さ、さらに周辺の林道の土砂崩れによる通行止めなども加わり、容易に再訪できないもどかしさを感じていました。 今年はゴールデンウィーク前半の29日から5連休がとれたので、この休みを使い光岳を目指すことにしました。確実なルートは、静岡県側の畑薙湖から茶臼岳を経由した単純往復です。これならば、畑薙湖に車を置けば行くことができます。しかし、折角、光岳まで行くのならば、単純往復ではなく、長野県の遠山郷まで抜けたいという考えが生まれ、オフシーズンに公共交通機関を使って南ア南部に行くというサブテーマが付いた山行になりました。 ▼作戦 そこで、いろいろプランを検討し、以下のような作戦を立てました。 一日目(4月29日)浜松から朝一番の新幹線で静岡に入り、静岡駅からしずてつジャストラインで横沢、さらに横沢から静岡市が運行する自主運行バス(乗合タクシーと言ったほうがわかりやすい)で畑薙湖から2km下にある白樺荘に入り、ここから徒歩で登山口を目指し、登山口となる畑薙湖横のゲートを経て、横窪沢小屋まで移動。横窪沢小屋の冬季小屋で宿泊。 二日目(4月30日)横窪沢小屋から茶臼小屋、茶臼岳、喜望峰(時間があれば仁田岳往復)、易老岳、イザルヶ岳を経て、光岳小屋まで移動。光岳小屋の冬季小屋で宿泊。 三日目(5月1日)光岳小屋から光岳、光岩、加加森山、池口岳を経て遠山郷の大島へ下山。大島からはタクシーを呼び遠山郷の中心地である和田まで移動。和田の旅館で宿泊。 四日目(5月2日)和田から乗合タクシーでJR飯田線の平岡駅まで移動。 という山中2泊3日(+下山後一泊)のプランになりました。ただ、正直なところ自分の体力や技量ではかなり無理なコース設定で、その場合はもちろん畑薙湖に戻る敗退プラン、あるいは易老岳から易老渡へ下山するというエスケーププランに加え、保険としてテント装備一式、非常食のほかに丸一日の予備食料を持っての行動となりました。 |
写真
感想
▼一日目(4月29日)
最初の関門は静岡駅でバスの乗り場が何番線かわからないというささやかなトラブルでスタートしました。朝が早く係員はおらず、登山装備の人は皆無という状況で、ピッケルを手にした怪しげな男がウロウロする姿は危険な香りすらします。幸いにも出発10分前になって、バス停の清掃スタッフらしき方が現れたので、ようやく並ぶ場所がわかりました。ここから1時間ほど路線バスに揺られて横沢へ、ここでさらに乗合タクシーに乗り換えて白樺荘を目指します。乗合タクシーには荷物スペースはないとウェブサイトには書かれていましたが、大型ザックひとつくらいならば最後部座席の後ろ側に置けます。乗客は地元の方が2名と、自分、それに畑薙大吊橋から大浜海岸までマラソンをするという御仁の4名でした。大浜海岸でピンことなかった自分が恥ずかしいのですが、この御仁はきっとTJARの選手かそれを目指している方だったのでしょう。もっといろいろ話を聞けばよかったと山中に入って小さな後悔。
白樺荘で下車すると、ささやかなイベントが開かれていて、無料で鹿汁をいただきます。乗合タクシー(静鉄タクシー)の運転手もいらっしゃったので、オフシーズンにどうやって畑薙ダムまで行けばいいのかを相談すると、白樺荘まで乗合タクシーで来て、さらにそこからタクシーを呼べばいい(予約しておけばいい)とのことでした。距離にして4キロくらいですので、送迎料がかかるにしてもそれほどの金額にはならないでしょう。
自分の場合はタクシーを予約してありませんので、徒歩で登山口を目指します。まず畑薙ダムの堰堤まで1時間、そこからさらに登山口となる畑薙大吊橋まで1時間の予定です。TJARの選手と思しき御仁は先に行ってしまい、一人で歩いていて30分ほどで、後ろから来た車に声をかけてもらい、畑薙湖横のゲートまで乗せてもらうことができました。お話を聞くと、明日茶臼岳を登る単
独の男性登山者で、私と同じように横窪沢小屋で泊まるとの由でした。ありがとうございます。
ゲートで県警に登山計画書を提出し、40分歩いて畑薙大吊橋に到着します。ここには小さな東屋があるので、ここで自分が荷造りをしなおしたいということで、親切な運転者の方には先にってもらい、小屋での再開を約束します。長いつり橋を渡ると急坂
が始まります。特に最初の鉄塔まではきつく、一気に汗が噴出します。ここを歩くのは2度目なのですが、なかなかキツイです。
その先もヤレヤレ峠まで急登が続きます。その先は、小さな吊橋を何度も渡ったり、急な階段を登ったり、水場で喉を潤したり、ウソッコ沢小屋を見学したりといろいろイベントのある道を進みます。ウソッコ沢小屋から中の段までは特に急登で、しかも土砂崩れでルート変更のために足場も悪く、20kgを超える荷物が肩に乗りかかります。前線が通過するためか急速に天気も悪化しはじめ、中の段まで来たところ本降りになってしまいました。ハードシェルの上下を出し雨具とします。雨は、時にみぞれになったり雪になったり変化します。
ゴアテックスのない時代ならば低体温になりかねない危険な状況なのかもしれませんが、不快であることを除けばあまり問題はありません。中の段から1時間ほどで横窪沢小屋に到着です。小屋には先ほどの車に乗せていただいた運転者の方のほかに、南アルプスのベテランの方もいらっしゃり、この3名で広々と宿泊しました。
▼二日目(4月30日)
翌朝は4時に起床し、サトウのご飯をおかゆにして食べます。朝食は手短にしたつもりだったのですが、広げた荷物のパッキングに手間取り、5時半出発より少し遅くなってしまいました。小屋の横の尾根を登っていきます。天気は上々で爽快な登山が約
束されました。横窪沢小屋の時点では雪はなかったのですが、徐々に雪が増えてきます。水呑場では完全に雪に覆われていてどこが水場かわかりません。
前日は下山者とはすれ違わなかったのですが、今日は茶臼小屋に宿泊された方々が次々と下山してきます。10名以上の方とすれ違いましたので、昨夜の茶臼小屋は結構にぎやかだったようです。樺段で、ここより上は完全に雪だよという下山者のアドバイスを受けアイゼンを装着します。しばらくすると雲ひとつない青空の下に稜線や茶臼小屋が見えてきます。ただ、見えてからが遠いというのはいつものことで、なかなかな到着しません。やっとの思いで小屋に到着しました。小屋の中を見学するためには、アイゼンを外さなければならないので、パスします。水場は完全に雪の下でした。風は強かったですが、建物の影に入れば問題はなく、日差しはまぶしく暖かで、やや長めの休憩を取ります。
茶臼小屋から茶臼岳へは夏道とは少し異なり直登するルートを通るようです。トレースがしっかりありますので、それを進んでいきます。11時過ぎに登頂。写真を撮ったりして10分ほど滞在し、光岳に向かいます。茶臼岳から易老岳までは夏場も通ったことがありません。
茶臼岳を過ぎてすぐのエリアだけは雪がない場所がありました。稜線で風が強く雪が吹き飛ばされてしまうのでしょう。アイゼンを外すか悩んだのですが、凍結している箇所もあり、そのままにして歩きます。10分も歩くと再び雪に覆われましたので、正
しい判断だったようです。
天気は上々、広々とした雪田の上を気持ちよく進んでいきます。ほかに登山者の姿はなく、トレースもなく、多少ルートファインディングも要求されましたが、迷う要素もほとんどありません。
ただ、実は、スケジュールの遅れが気になりだしています。明らかに進みが遅いです。夏場のコースタイムと比較すると1.5倍強の時間がかかっています。今のペースでは光岳小屋までいけません。
雪があるので水には困らず、テントもあるのでどこでも幕営はできますが、できれば広々として快適で(しかもおそらく誰もいない)光岳小屋に泊まりたいです。ということで、遅れを挽回するために喜望峰から往復することになる仁田岳はパスしましたが、午後になり雪が腐り始め、踏み抜きが頻発し遅れを回復できません。16時半でようやく易老岳です。日が沈むまで2時間半しかありません。判断に悩みます。
今日中に光岳小屋にいけないとなると、明日中に池口岳を経て大島まで下山するのは不可能です。2泊の幕営は可能ですが、さらにもうひとつのトラブルがおきるとなると食糧が尽きてしまうリスクがあります。結論は、今日は可能な限り光岳に進む。日没前に幕営し、翌朝、光岳まで往復して、易老岳まで戻り、易老渡に下山するというものでした。
結局、三吉ガレを過ぎ、小さなピークを乗り越え三吉平の手前までは進むことができました。18時半で、太陽が沈もうとしていましたので、そこで風の当たらないくぼ地となっている林間に幕営しました。
▼三日目(5月1日)
ダウンの上下とイスカのAir280と、エアーマットの組み合わせで寝ました。ホカロンを忘れたので、足元がちょっと寒かったくらいで、十分に快適に寝れました。前日と同じようにサトウのご飯をおかゆにして食べます。光岳までの単純往復なので、テントはそのままにして、荷を軽くして5時15分に出発します。
三吉平から静高平の道はやや急なので、三日目にしてピッケルを出します。下山者にも全く会わず、一人で谷を登っていきます。荷物が少なく、朝で踏み抜きの少ない時間ではありますが、やはりトレースのない雪道では期待するスピードが出ません。やはり1.5倍強の時間を要して、静高平を見下ろし、光岳とイザルヶ岳を望む小高い丘に立てました。見る限りどこにもトレースもなく、登山者の姿はありません。
天気は残念なことに曇りです。稜線で風は強いです。昨日ははっきり見えた聖岳なども良くわかりません。ソフトバンクの携帯しかもって行かなかったため、電話は繋がるもののインターネットは遅く、天気図などが見れない状況ではあったのですが、ど
うも天気が下り坂のようです。
光岳小屋や光岳まで往復するとさらに1時間はかかります。光石まで行けば1時間半ではすまないでしょう。悪天候が予想されるのにそこまでの時間的ロスはリスクと判断し、もっとも近く、眺望に優れたイザルヶ岳を目指すことにしました。広々とした
雪原を横断し15分ほどでイザルヶ岳の山頂に到着します。山頂エリアは強風のためか積雪がないので、アイゼンを一旦はずします。天気がよければ南アの山々や富士山がくっきり見える山ですが、すべてが薄ぼんやりです。光岳や光岳小屋を写真に収め、セルフタイマーで自身も写真に収め、撤収します。アイゼンを装着し、一気に下山します。さすがに雪道の下りはすばらしい速さで下山できます。テントを撤収し、10時には易老岳に向かって行動を再開し始めました。
しかし、出発してまもなく、みぞれ交じりの雨になります。ゴアテックスを着ているので低体温の危険はありませんが、ルートファインディングが難しくなります。雪も腐り始め踏み抜きが頻発します。樹林帯ではあったものの三吉ガレの手前のピーク付近では、進む尾根を間違えた上に、雷がかなり近くで鳴り、雨足も強まるというやや危険な状態に陥りました。慎重に行動し、ようやく13時に易老岳まで戻ってこれました。
直ちに易老渡まで下山を開始しますが、2254ピークなどの小ピークを乗り越えるのに緊張を強いられました。雷鳴はなくなっていたものの、依然、みぞれ交じりの雨が降り、足元は、雪とぬれた岩場、それをアイゼンを装着した状態で進まなければなりません。
夏場はトラバースする小ピークも、直登直降します。直登直降も安全とはいえないのですが、トラバースはもっと困難なのでしかたありません。危険なエリアを過ぎると次は踏み抜き地獄です。5歩に1歩の割合くらいのペースで踏み抜きます。
標高が1500メートルを切るくらいになってどうにかアイゼンをはずします。そのころには雨もやみ始めます。結局、面平に到着したのは17時を回ってしまいました。しかし、面平は信じられないほどの巨木が林立する美しい場所です。雨上がりに夕日差し、幻想的な風景です。
ここから易老渡までは50分の場所ですが、濡れたハードシェルを片付けたりして時間をロスします。さらに登山口まじかの場所で土砂崩れで登山道が歩きにくくなっている場所もあったりして、結局、登山口に付いたのは19時になってしまいました。
ここまでで、実に14時間行動しています。自分の登山暦の中で最長の登山時間を更新しました。でも、これで終わりではありません。ここから、道路が崩落し一般車の通行が禁止されている(実は歩行者も通行禁止の)林道を2時間歩かなくてはなりません。崩落した場所は、北又渡のすぐ近くです。しかし、既に補修は終わっているとの情報を得ていましたので、天候の悪化のリスクを犯して尾根沿いに池口岳を目指すのではなく、こちらを選んだわけです。実際、今日の雷鳴などを考えると正しい判断だったと思っていますし、道路は本当に綺麗に修復されていました。また、易老岳の分岐地点から通行止めのゲートまで、下山ルートのどこにも通行止めの標識はありませんでした。
疲れてはいましたが、ビール呑みたさに最後の力を振り絞ります。ビールの思いはすごく、今回の山行で唯一ガイドブックのコースタイムを上回って、北又渡には20時30分に到着しました(笑)もちろん易老渡からの道中は真っ暗でヘッドライトをつけます。北又渡には稜線から携帯電話でお願いしていた天竜観光タクシーさんが待っていてくれました。(北又渡は携帯が繋がりません)
▼おまけの話
北又渡から旧南信濃村中心地の和田までは30分ほどかかります。(費用は7000円ほどでした)時間があるのでタクシーの運転手さんといろいろと話をしました。
(1) 易老渡や便ヶ島へは、今年の夏も一般車の乗り入れは禁止だそうです。
(2) 昨年の夏は、「梨元ていしゃば」から易老渡や便ヶ島への登山者向けの乗合タクシーの運行があったのですが、今年は日帰り温泉施設「かぐらの湯」から運行されるとのことです。下山後など、便利になりそうです。
(3) この地区を走るタクシー会社は2社で、1社は「天竜観光タクシー」、もう1社は「遠山タクシー」です。どちらも家族経営的な小規模なタクシー会社なので予約をしたほうが良いです。
(4) オフシーズンに平岡駅からバスで「かぐらの湯」まで来て、そこからタクシーに乗り換えてゲートのある北又渡まで行ってくれるのか?と聞いたのですが、「もちろん」と答えてくれました。これは翌日「遠山タクシー」さんにも聞いたのですが、同様でした。
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