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Yamareco

記録ID: 113205
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
甲斐駒・北岳

鳳凰三山縦走(百名山)

2010年07月30日(金) 〜 2010年08月01日(日)
 - 拍手
Junjapa その他9人
GPS
56:00
距離
17.5km
登り
1,823m
下り
2,095m

コースタイム

・7/30(金) 甲府駅8:30=10:00夜叉神峠入口10:15-10:50炭焼窯跡11:00-11:25夜叉神峠11:40-12:30休憩ベンチ12:45-13:35山火事跡ケルン13:50-14:30苺平14:40-15:05南御室小屋[泊]
(実行動時間計3時間45分・休憩時間計1時間05分)

・7/31(土) 南御室小屋4:00起床5:00-5:35ガマ岩5:45-6:20薬師岳6:35-7:15観音岳7:30-8:05赤抜沢の頭手前鞍部8:20-8:45赤抜沢の頭9:00-9:05賽の河原9:25-9:50鳳凰小屋10:15-10:50五色の滝11:15-12:10 1835m地点12:25-13:00南精進ヶ滝13:15-14:00堰堤14:10-14:55青木鉱泉[泊]
(実行動時間計6時間55分・休憩時間計3時間00分)

・8/1(日) 青木鉱泉=[チャーターバス]=新宿駅=[西武新宿線]=東伏見駅
天候 7/30(金) 曇り夕方にわか雨
7/31(土) 曇りのち晴れ
8/01(日) 晴れ
過去天気図(気象庁) 2010年07月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
(往路) 東伏見駅=[西武線]=国分寺駅=[JR]=甲府駅
(復路) 青木鉱泉=[チャーターバス]=新宿駅=[西武新宿線]=東伏見駅
コース状況/
危険箇所等
 学生時代のクラブのOB会山行で鳳凰山に行きました。この鳳凰三山に行ったあと、家族で台湾に旅行に行ったんですが、台湾ではしばしば神社の軒先を見上げていました。というのもどの神社にも「龍と鳳(おおとり)の彫刻」があったからなんです。普通ならこんなことはまずしませんが、”鳳凰”三山に行ってきたばかりだったので何となく親しみを感じたというわけです。
 現地の観光ガイドは「龍(りゅう)と鳳(おおとり)は神社の守り神なんです」と説明してくれていました。ぼーっと考えていたのは鳳凰という想像上の動物の名前がなぜ南アルプスのこの山に付けられなのかということでした。

 7・30(金) 甲府駅ではメンバーで一番遠いところに住むOさんが待っていました。大阪・高槻から直行便夜行バスで甲府までかけつけられたそうです。最近は各地から都会にバスが出ていますが大阪ー甲府でナンで直行便があるんでしょうかね、よくそれを見つけましたねーと一同元気に質問を繰り出して元気がいいけど、それって山に入るまでかな?(笑)

 タクシーに乗り込んで夜叉神峠登山口へ。道すがらコンビニで食糧調達。最初のコンビニではオニギリが売り切れ。コンビニでオニギリがない? ちゃんとオニギリくらい準備しとけよ…とこれまた一同ぴーちくぱーちく。夜叉神峠登山口には30人の大集団がいました。彼らも南御室泊まり? カンベンしてよー(笑)。おじさん、おばさんが多いなぁ。ん?あ、そうか・・・自分もおじさんかぁ。つい目が昔に戻っていた。そうかあれから○年以上経っているんだな〜(苦笑)。

 新人のころ鳳凰三山という名がひどく気高く思えました。薬師・観音・地蔵には“岳”がついていて険しい山を想像させたし、夜叉神やら南御室などの地名もナニやら抹香くさい。新人は夜叉神峠の登りでバテる話をさんざん聞かされていたので、夜叉神の「夜」の文字が暗黒のバテを連想させて暗い気持ちになったりしました(笑)。

 夜叉神峠は先着していたおじさんおばさん軍団に占拠されていました。峠の売りの展望はというと残念ながらガスの中。隠されると見たくなるのは山の景色と○○? 白い景色の向こうに想像を巡らせました。

  井上靖は「夜叉神峠」というエッセイで次のように書いています。
『(前略)私たちは磧に腰を降ろして、内山さんに夜叉神峠の名の由来を聞いた。昔、御勅使川(みだいがわ)の水源に荒ぶ神が住んでいて、悪疫、洪水、暴風雨などを司って、民を苦しめていた。里人はこうした災害を夜叉神祟りと呼んでいた。淳和天皇の時、朝廷は勅使を御差遣になり、水難防除を祈らせられた。峠の鞍部には夜叉神の祠が祀られた。それ以来御勅使川の名前ができ、峠は夜叉神峠という名になった。(後略)』

 「夜叉」は人を食う鬼で仏に帰依して最後は守護神となった変なやつだけれど、荒れ狂う川の源に夜叉が住んでいて、お祈りで神である夜叉神になって治まったという話は災害の歴史ともよく符丁しているように思えます。この由来は信憑性があるように思える。ちなみにその夜叉神、小屋の北側に今でも祀られているそうです。

 夜叉神峠を出発して樹林の中、切り取られた陽射しの造形を地面に楽しみながらがコメツガ・シラベの樹林帯を行きます。木のベンチがあり休憩したりしました。ここはなかなか雰囲気がいい! 小広い杖立峠に着きます。かつて麓の芦安村の人々は原生林の伐採や炭焼きに野呂川に通っていました。この峠で立ち止まり背丈を超える背負子に杖をさし入れて一息つく姿が目に浮かぶようです。われわれは軽い荷物なのに杖ならぬストックを突きながらふーふー言って通ります。ここから鷲ノ巣山に続く尾根道を“五葉尾根道”といいますが昨今のガイドブックを見るとその記述もありません。こうしていにしえの道が人々の記憶からなくなってしまうのも一抹の寂しさがありますね。

 「山火事跡」は以前より樹林が成長してそれらしくなくなくなりました。以前展望は白で白峰三山の展望は望めません。苺平は一息つける場所。シロバナノヘビイチゴが咲いているのが命名の由来です。このイチゴ、名前はヘビだけどふつーのイチゴと同じくらい美味なんですね。ここから辻山を往復するという話も出ますが、早く小屋で宴会をやりたいという意見が支配的(笑)で、直行することにしました。山径を歩いていると、南御室小屋に宿泊を希望する人は携帯で電話をしてほしいなんて看板がかかっています。山小屋側としてはお客さんの数を早めに知りたいということだろうけれど、山の中で携帯とはナンだか雰囲気を壊すよなぁなんて思ってしまうのは私だけでしょうか。

 南御室小屋に到着しました。平安時代の昔、孝謙天皇が転地療養で山深い南アルプス・奈良田にやって来たのが縁で“御室”ということだそうです。(ちなみに御座石も同じ理由で”御”がついている) 以前来たときは小広い草原のど真ん中にキレイな沢が流れている別天地・・という印象を持っていたけれど、今は樹林が成長して真ん中の沢も涸れていて鬱蒼とした森に包まれた小平地という感じでした。ちとがっかり。小屋へのチエックインもそこそこに小屋前のベンチで宴会!・・・いつもどおりでその手際のよさには唖然という感じですが・・いいですねぇ(笑)

 7/31(土)
 朝を迎えるとやはり白の世界。今日もダメかな。一部のメンバーは昨日やりすぎて二日酔い。ちと不謹慎ですね。安全面でも問題あるますし。ということで一同、牛のような歩みで南御室小屋をでます。しかしそこからは白ザレ、いよいよ待望の白砂青松の幕開けだ。(白砂青松は海岸に使う言葉ですがあえてコレ!)

 昔むかし、南アルプスは海でした。それが隆起して今の南アルプスになったので。海底に積み重なっていた堆積岩でできています。その堆積岩の下からそれを突き破ってやってきたのが真っ白な花崗岩です。その花崗岩がこんにちの鳳凰三山や甲斐駒を作りました。だから地味な色の南アルプスにあって鳳凰三山や甲斐駒は色白で見目麗しいのです。噴き出してきた花崗岩の南の端が南御室小屋あたりとなります。地形図をよくみると南御室小屋のある鞍部で南北の尾根が少し差し違えているけれども、堆積岩と花崗岩の境い目を示すものではないかと私は思っています。

 この花崗岩、ケーキの上のクリームみたいなもので鳳凰山の山体すべてを花崗岩で覆われているわけではありません。花崗岩クリームの左端は鳳凰三山の西側山腹になります。花崗岩がそこまで堆積岩のケーキを覆ったということです。だから鳳凰三山の観音岳に西側から突き上げるシレイ沢の遡行記録を読むと、”沢の岩相が途中から白く明るく変わる”といった記述が見当たりますが、それもこういった理由からです。ちなみにシレイ沢とは”白く変わる”という意味の訛りなのではないかとわたしは思っています。

 南御室小屋周辺でスタートする花崗岩は薬師岳〜観音岳と白い世界を展開したあとアカヌケ沢の頭でフィナーレを迎えてしまいます。高嶺とアカヌケの頭の鞍部で花崗岩が終わり早川尾根は堆積岩となります。早川尾根を北に縦走して再び美しい花崗岩に出会えるのは甲斐駒の六方石周辺に行ってからですが、じつは鳳凰三山の花崗岩と甲斐駒の花崗岩は早川尾根の稜線を外して東側で繋がっています。

 白いアカヌケ沢の頭から向こうの高嶺を見ると色も地味で頂上まで樹林が覆いモッサリしているのがわかりました。堆積岩がかつてのように水を含み、それゆえ樹林が頂上まで覆いつくしてしまっているのでしょう。ちなみにアカヌケ沢は文字通り岩が赤いことから名づけられましたが、それは花崗岩と堆積岩とが接しあった現場であり、堆積岩が花崗岩マグマの熱さのために“ヤケド”してしまってアカくなったことに由来しています。豪快な南アルプスに咲いた花崗岩の華。南御室小屋からの白い道にもそんな地球のドラマがあることに思いを馳せながら歩くのもまた楽しいものです。
 
 砂払岳の登りでまたまた大軍団。ガイドの人がこの花はゴゼンタチバナですよ・・・、この花は、○○ですよ・・・と説明を聞いて、われわれもなるほどと記憶のメモリーチップに。でも30分たつともう忘れています(笑)。

 果たして薬師岳でガスが遠のきはじめ、観音岳の登りでは天空が少しずつベールを脱ぎ始めます。白根南嶺の笊が岳がその両耳を出しはじめるかと思うや悪沢岳や白峰三山からも雲の潮がひいていきます。北岳は頂上だけまだ白い雲が乗せていてまるでローマ法王です。白根御池やバットレスの4尾根・中央稜などはよく見えていて雪が詰まった急傾斜の大樺沢が眼前に展開します。謄写版のロールを回して出てきたインクの画像のように白いわら半紙の上に富士山が浮かび上がり始めました。その手前のもっこりはきっと毛無山でしょう、富士山を支えるりっぱな従者の役割をになっています。東に目を転じれば大きなフォッサマグナの谷を隔てて奥秩父や八ヶ岳が見えます。あの尖っているのが金峰の五丈岩。手前が深田久弥終焉の地、茅が岳。八ヶ岳は赤岳や阿弥陀も意外に鋭鋒に見えます。このフォッサマグナから御座石鉱泉も青木鉱泉もその割れ目に沿って沸き出してた温泉です。

 観音岳の頂上では三角点の標石があおむけに寝転んでくつろいでいる。昔の地形図では三角点がありましたが、最近の地形図では三角点の表示がありません。標石が抜けてしまったことで国土地理院も容赦なく三角点のピークから外してしまったらしい。一度決められたら変化しないものと思っていた三角点がなくなっているというのもちょっと淋しいですね。

 観音岳と地蔵岳の間はV字の結構なアルバイトです。地蔵岳の賽の河原。賽の河原とは三途の川の河原のことでたくさんの石仏が並んでいる。なかには小さな赤ちゃんを抱いた地蔵もある。ここまで持ち上げさせた母の気持ちに思いをいたしたりしました。いつの間にかハダカんぼうになった甲斐駒を見る。その菱形岩壁がきれいに見えたりする。

 さて下るぞ! 一同、早くも気持ちは青木鉱泉へ。一歩でも前へ!を合言葉にどんどん下ります。まさにドンドコ沢です。この沢は下る人のために命名された?

 それから2時間後、自分は青木鉱泉の温泉に浸かって恍惚の人になっていました。温泉につかりながら山を反芻することほど幸せなときはない。

 あ、それで最初の台湾で考えていた鳳凰山の命名の由来のことですが、「鳳」はオス、「凰」はメスのオオトリという意味なんだそうです。山名の由来にはいくつか説があってひとつには決められないのですが、鳳凰山が大昔、大鳥ガ岳と呼ばれており、その山すそを広げる姿”おおとり”と鳳が結びついて鳳凰となったようです。意外にあっけない幕切れでちとガッカリだったんだけど、それがわかって鳳凰三山の山行がすっきり終わった感じでした。

感想

・久々の鳳凰三山でした。
・最初は、ガスっていましたが、だんだんと晴れてきたのが感動的でした。最初から晴れているよりも感動が増しましたね。
・辻山をアタックしようと思いましたが、だれも行こうという人がいなくて諦めました(汗)
・青木鉱泉では久々に多くの方々とキャンプファイアをやりました。一軒宿っていいですネ。

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